平成26年海審第2号
             裁    決
         遊漁船第七佐藤丸岩礁衝突事件

  言 渡 年 月 日 平成27年3月19日
  審  判  所 海難審判所(前久保勝己,西村敏和,加藤昌平)
  理  事  官 吉川弘一
  受  審  人 A
     職  名 第七佐藤丸船長
     操縦免許 小型船舶操縦士

             主    文

 受審人Aの小型船舶操縦士の業務を1箇月停止する。

             理    由
 (海難の事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成25年9月22日00時25分
 若狭湾

2 船舶の要目
  船 種 船 名 遊漁船第七佐藤丸
  総 ト ン 数 7.3トン
    全   長 15.46メートル
    機関の種類 ディーゼル機関
    出   力 426キロワット

3 事実の経過
 第七佐藤丸(以下「佐藤丸」という。)は,船体中央部に操舵室を配置し,レーダー1台及びGPSプロッターを装備した,最大搭載人員が旅客12人船員3人のFRP製遊漁船で,A受審人が1人で乗り組み,釣り客6人を乗せ,いか釣りを行わせる目的で,船首0.6メートル船尾1.6メートルの喫水をもって,平成25年9月22日00時05分福井県内外海漁港犬熊地区を発し,同地区の北西方沖合7海里付近の釣り場に向かった。
 ところで,内外海漁港犬熊地区は,若狭湾の支湾である矢代湾の湾奥に位置していた。そして,矢代湾湾口付近には,沖ノ石と呼ばれる高さが6.4メートルで,南北に約60メートル東西に約20メートルの岩礁(水上岩)が存在し,佐藤丸のGPSプロッターに同岩礁が表示されていた。
 また,A受審人は,平成19年8月頃から遊漁船業に従事し,毎年5月から11月の間は月に20回ないし25回,12月から4月の間は月に10回ないし15回遊漁に出掛けており,矢代湾湾口付近を通航する際,いつも沖ノ石を50メートルないし100メートル離すようにしていた。
 A受審人は,操舵室中央にある舵輪後方の右舷寄りに立って操船に当たり,釣り客2人を船首甲板に,同3人を船尾甲板に,同1人を操舵室後方のキャビン内にそれぞれ座らせ,前方に認めた遊漁船の集魚灯の明かりを目安に釣り場の方に向けることとし,00時17分半少し前黒グリ灯標から203度(真方位,以下同じ。)3.0海里の地点で,針路を315度に定め,機関を回転数毎分1,500にかけ,15.5ノットの速力(対地速力,以下同じ。)で,手動操舵により進行した。
 00時23分A受審人は,黒グリ灯標から231度2.8海里の地点に達したとき,正船首方960メートルのところに沖ノ石が存在し,その後,同岩礁に向首したまま接近する状況となったが,自船の釣る場所を探すため,釣り場に先着していた10隻ほどの遊漁船の集魚灯の明かりを見て,その散在状況を確かめることに気を取られ,レーダーで沖ノ石の方位及び距離を測定して同岩礁との位置関係を把握するなど,船位の確認を十分に行わなかったので,このことに気付かなかった。
 こうして,A受審人は,同じ針路,速力で続航し,ふと魚群探知機に目を向けたとき,水深が急に浅くなっていくのに気付き,急ぎ機関を中立としたが,間に合わず,00時25分黒グリ灯標から242度3.0海里の地点において,佐藤丸は,原針路,原速力のまま,沖ノ石に衝突した。
 当時,天候は晴れで風力1の南東風が吹き,視界は良好で,潮候は上げ潮の中央期であった。
 衝突の結果,船首部を圧壊し,釣り客6人が左大腿骨骨幹部骨折,右頬部皮膚裂創などを,A受審人が前頭部左下部開放骨折などをそれぞれ負った。

 (原因及び受審人の行為)
 本件岩礁衝突は,夜間,矢代湾湾口付近を釣り場に向けて航行する際,船位の確認が不十分で,沖ノ石に向首進行したことによって発生したものである。
 A受審人は,夜間,矢代湾湾口付近を釣り場に向けて航行する場合,湾口付近に存在する沖ノ石を安全に航過することができるよう,レーダーで沖ノ石の方位及び距離を測定して同岩礁との位置関係を把握するなど,船位の確認を十分に行うべき注意義務があった。しかるに,同人は,自船の釣る場所を探すため,釣り場に先着していた遊漁船の集魚灯の明かりを見て,その散在状況を確かめることに気を取られ,船位の確認を十分に行わなかった職務上の過失により,沖ノ石に向首していることに気付かずに進行して衝突を招き,船体に損傷を生じさせ,釣り客6人を負傷させるとともに自らも負傷するに至った。
 以上のA受審人の行為に対しては,海難審判法第3条の規定により,同法第4条第1項第2号を適用して同人の小型船舶操縦士の業務を1箇月停止する。

 よって主文のとおり裁決する。




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