平成27年海審第3号
            裁    決
          貨物船環洋丸乗揚事件

  言 渡 年 月 日 平成28年3月17日
  審  判  所 海難審判所(松浦数雄,上田英夫,河野守)
  理  事  官 吉川弘一
  受  審  人 A
     職  名 環洋丸船長
     海技免許 三級海技士(航海)
  受  審  人 B
     職  名 環洋丸三等航海士
     海技免許 三級海技士(航海)(履歴限定)

            主    文

 受審人Aの三級海技士(航海)の業務を1箇月停止する。
 受審人Bを戒告する。

            理    由
 (海難の事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成26年3月24日10時21分半
 宮城県仙台塩釜港港外

2 船舶の要目
  船 種 船 名  貨物船環洋丸
  総 ト ン 数  4,953トン
    全   長  114.92メートル
    機関の種類  ディーゼル機関
    出   力  3,971キロワット

3 事実の経過
 環洋丸は,船橋前部中央に操舵スタンド,左舷側にレーダー2台,右舷側に機関遠隔操縦装置,後部に海図台及びGPSプロッターを備えた船尾船橋型貨物船で,岩永及び大野両受審人ほか9人が乗り組み,セメント4,482トンを積み,船首4.99メートル船尾6.07メートルの喫水をもって,平成26年3月24日09時30分仙台塩釜港塩釜区を発し,京浜港横浜区に向かった。
 ところで,仙台塩釜港は,石巻湾の西側にあって北部の塩釜区と南部の仙台区の2港区に分かれ,港界付近には,花淵灯台から096度(真方位,以下同じ。)2.7海里のところに地ノ高根,その東方約300メートルのところに中根,その南方約200メートルのところに沖ノ高根及び同灯台から122度3.6海里のところに大根と称する水深5メートル以下となる浅所がそれぞれ存在しており,大根は南北幅約200メートル,東西幅約400メートルであった。
 A受審人は,仙台塩釜港への入航経験が豊富であったことから,地ノ高根,中根,沖ノ高根及び大根の各浅所(以下「港界付近の浅所」という。)が存在することを知っており,海図の各浅所を赤色で囲って注意を要する印を付け,同港の航路を出航して塩釜灯浮標を通過後も,航路出航時と同じ針路で引き続き約2海里東行する予定針路線を記入し,港界付近の浅所の北方を通過してから針路を転じて南下する予定としていた。
 A受審人は,発航から,B受審人を操船補佐に,甲板手を操舵にそれぞれ当たらせて操船指揮に就き,1号レーダーを1.5海里レンジで,2号レーダーを3海里ないし6海里レンジで,及びGPSプロッターをそれぞれ作動させて航路を出航した後,10時06分花淵灯台から066度1.93海里の地点で,針路を129度に定め,機関を全速力前進にかけ12.0ノットの速力(対地速力,以下同じ。)で,手動操舵により進行した。
 A受審人は,塩釜灯浮標を左舷に見て通過し,10時12分少し前花淵灯台から088度2.65海里の地点に達したとき,まだ港界付近の浅所をかわしていなかったが,船尾方の同灯浮標が遠方となったように見えたことから同浅所の北方を通過したものと思い,自ら船位の確認を十分に行うことも,B受審人に対し,同浅所との位置関係を報告するよう指示することもなく,針路を168度に転じて自動操舵とし,正船首約1.9海里のところの大根に向首する状況となったことに気付かず,甲板手を降橋させて続航した。
 一方,B受審人は,船橋配置に就いたとき海図を見て港界付近の浅所が存在することを知ったが,針路を転じるとき,船長が予定針路線のとおり操船するものと思い,船位を確認して同浅所との位置関係を報告するなど,操船補佐を十分に行わなかった。
 A受審人は,地ノ高根の東縁を通過し,10時13分半仙台塩釜港の港界を出て,10時19分少し前花淵灯台から114度3.22海里の地点に至り,B受審人に指示して針路を175度に転じたものの,依然として大根に向首したまま進行した。
 A受審人は,10時20分塩釜船舶通航信号所からVHF無線電話により浅所に向首しているとの連絡を受け,左舵20度をとったものの,及ばず,10時21分半花淵灯台から121度3.56海里の地点において,環洋丸は,船首方向が133度となったとき原速力のまま,大根に乗り揚げた。
 当時,天候は晴れで風力2の北西風が吹き,視界は良好で,潮候は下げ潮の中央期であった。
 乗揚の結果,船底に破口等を生じ,後に全損となった。

 (原因及び受審人の行為)
 本件乗揚は,仙台塩釜港の港界付近において,出航中,船位の確認が不十分で,大根に向首進行したことによって発生したものである。
 運航が適切でなかったのは,船長が,船位の確認を十分行わなかったばかりか,三等航海士に対し,港界付近の浅所との位置関係を報告するよう指示しなかったことと,三等航海士が,操船補佐を十分に行わなかったこととによるものである。
 A受審人は,仙台塩釜港の港界付近において,操船指揮に就いて出航する場合,港界付近の浅所の北方を通過してから南下する予定としていたのだから,同浅所に向け針路を転じることのないよう,船位の確認を十分に行うべき注意義務があった。しかるに,同人は,船尾方の塩釜灯浮標が遠方となったように見えたことから同浅所の北方を通過したものと思い,船位の確認を十分に行わなかった職務上の過失により,同浅所に向け針路を転じ,大根に向首する状況となったことに気付かず,進行して乗揚を招き,船体に損傷を生じさせて全損となるに至った。
 以上のA受審人の行為に対しては,海難審判法第3条の規定により,同法第4条第1項第2号を適用して同人の三級海技士(航海)の業務を1箇月停止する。

 B受審人は,仙台塩釜港の港界付近において,出航中,操船補佐に当たる場合,港界付近の浅所の存在を知っていたのだから,同浅所との位置関係を報告するなど,操船補佐を十分に行うべき注意義務があった。しかるに,同人は,船長が予定針路線のとおり操船するものと思い,操船補佐を十分に行わなかった職務上の過失により,大根への乗揚を招き,船体に損傷を生じさせて全損となるに至った。
 以上のB受審人の行為に対しては,海難審判法第3条の規定により,同法第4条第1項第3号を適用して同人を戒告する。

 よって主文のとおり裁決する。



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