平成27年海審第4号
             裁    決
         旅客船ニューおおしま5乗揚事件

  言 渡 年 月 日 平成28年12月13日
  審  判  所 海難審判所(松浦数雄,古城達也,大北直明)
  理  事  官 河野守
  受  審  人 A
     職  名 ニューおおしま5船長
     操縦免許 小型船舶操縦士

             主    文

 受審人Aの小型船舶操縦士の業務を1箇月停止する。

             理    由
 (海難の事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成26年8月1日20時26分
 愛媛県美濃島東岸

2 船舶の要目
  船 種 船 名 旅客船ニューおおしま5
  総 ト ン 数 19トン
    全   長 17.10メートル
    機関の種類 ディーゼル機関
     出   力 845キロワット

3 事実の経過
(1) 設備等
 ニューおおしま5(以下「おおしま」という。)は,平成17年9月に進水し,2機1軸を備えた最大搭載人員旅客60人船員2人のFRP製旅客船で,船体前部に操舵室を設け,同室前部右舷側に舵輪,機関遠隔操縦装置,レーダー及びGPSプロッターを設備して舵輪後方に操縦席及びその左舷側に2人掛け椅子を備え,操舵室の後方に,中央に通路を設けて両舷に3人掛け椅子を8列及び最後尾両舷に2人掛け椅子を備えた客室を配し,主にB社にチャーターされて愛媛県新居浜港と同港北方約7海里沖合の美濃島北岸に設置されたC社の私設桟橋(以下「C桟橋」という。)との間の不定期旅客輸送に毎月10日ないし12日従事していた。

(2) A受審人の経歴等
 (省略)

(3) 本件発生に至る経緯
 おおしまは,A受審人ほか1人が乗り組み,旅客5人を乗せ,船首0.8メートル船尾1.2メートルの喫水をもって,平成26年8月1日20時23分C桟橋を発し,降雨によって視程が約500メートルとなった中,新居浜港に向かった。
 A受審人は,発航から,単独で操船に当たり,GPSプロッター及びレーダーを0.75海里レンジでそれぞれ作動させ,20時24分半少し過ぎ美濃島南部に位置する標高110.8メートルの二等三角点(以下「美濃島三角点」という。)から021度(真方位,以下同じ。)650メートルの地点で,C桟橋の北北東方にある防波堤先端に設置された街灯のような灯火(以下「防波堤灯火」という。)を右舷に見て,針路を055度に定め,機関を回転数毎分(以下,回転数については毎分のものを示す。)1,300にかけ13.0ノットの速力(対地速力,以下同じ。)で,手動操舵により進行した。
 20時25分A受審人は,美濃島三角点から026度750メートルの地点に達したとき,まだ予定した転針地点まで約200メートル手前の位置であったが,激しい降雨で視界が制限された状況下,防波堤灯火が右舷後方にかわって見えなくなったことから予定した転針地点に至ったものと思い,作動中のレーダー又はGPSプロッターの表示を見るなど,船位の確認を十分に行わず,針路を138度に転じて美濃島東岸に向首する状況となり,このことに気付かないまま続航した。
 A受審人は,出航作業を終えて戻った甲板員を操舵室左舷側中央寄りの椅子に,乗客1人を同左舷寄りの椅子に,4人を客室後部の椅子にそれぞれ座らせ,20時25分半僅か前美濃島三角点から037.5度710メートルの地点に至り,船首方に漁網の浮標を見て同浮標をかわすため,針路を140度に転じ,視界が制限された状況となっていたことから前方に目を向けながら,同一の針路及び速力で進行し,20時26分美濃島三角点から058度700メートルの地点において,おおしまは,原針路及び原速力のまま,美濃島東岸に乗り揚げた。
 当時,天候は雨で風力4の北東風が吹き,潮候は上げ潮の初期で視程は約100メートルであった。

 乗揚の結果,船底外板に破口等を生じ,後に廃船処理され,旅客1人が上顎骨骨折を負った。

 (原因及び受審人の行為)
 本件乗揚は,夜間,美濃島東岸沖において,航行中,針路を転じる際,船位の確認が不十分で,同岸に向首して進行したことによって発生したものである。
 A受審人は,夜間,美濃島東岸沖において,激しい降雨で視界が制限された状況下,同島から新居浜に向け航行中,北東方から南東方に針路を転じる場合,同岸に向け進行することのないよう,作動中のレーダー又はGPSプロッターの表示を見るなど,船位の確認を十分に行うべき注意義務があった。しかるに,同人は,防波堤灯火が右舷後方にかわって見えなくなったことから予定した転針地点に至ったものと思い,船位の確認を十分に行わなかった職務上の過失により,南東方に針路を転じて美濃島東岸に向首する状況となり,このことに気付かないまま進行して乗揚を招き,船体に損傷を生じて廃船とさせ,乗客1人を負傷させるに至った。
 以上のA受審人の行為に対しては,海難審判法第3条の規定により,同法第4条第1項第2号を適用して同人の小型船舶操縦士の業務を1箇月停止する。

 よって主文のとおり裁決する。



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