平成27年海審第5号
            裁    決
       漁船第二十八大安丸防波堤衝突事件

  言 渡 年 月 日 平成29年2月2日
  審  判  所 海難審判所(上田英夫,松浦数雄,濱田真人)
  理  事  官 鎌倉保男
  受  審  人 A
     職  名 第二十八大安丸船長
     海技免許 四級海技士(航海)(履歴限定)

            主    文

 受審人Aの四級海技士(航海)の業務を1箇月停止する。

            理    由
 (海難の事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成26年10月30日17時10分
 北海道稚内港

2 船舶の要目
  船 種 船 名  漁船第二十八大安丸
  総 ト ン 数  160トン
    全   長  38.10メートル
    機関の種類  ディーゼル機関
    出   力  1,029キロワット

3 事実の経過
 第二十八大安丸(以下「大安丸」という。)は,船体前部に操舵室を配置した沖合底びき網漁業に従事する鋼製漁船で,同室前部中央に操舵スタンドを設けたほか,機関遠隔操縦装置,レーダー2台,GPSプロッター及び魚群探知機を備え,A受審人ほか15人が乗り組み,操業の目的で,船首2.5メートル船尾4.0メートルの喫水をもって,平成26年10月29日22時45分稚内港を発し,同港北北西方約14海里沖合の漁場に向かった。
 ところで,A受審人は,天候不良のため1週間前から出漁せずに自宅で過ごし,この間に毎日約8時間の睡眠をとり,発航当日も2時間ないし3時間の休息をとって22時頃帰船していたので,発航時に睡眠不足や疲労した状態ではなかった。
 A受審人は,出港操船に引き続き単独の船橋当直に就いて操船に当たり,23時15分漁ろう長と交替して休息をとった後,翌30日00時10分目的の漁場に到着し,投網に約20分,えい網に約30分及び揚網に約15分を要する操業を開始した。
 A受審人は,投網時に操船に当たるほか,えい網時及び揚網時に漁ろう長を操船に当たらせて自らは操舵室で見張りに当たり,休息をとることなく北北西方に移動しながら10回のえい網を繰り返してまだら等5.4トンを漁獲し,操業を終えて稚内港に向け帰途に就くこととし,15時11分半稚内灯台から346度(真方位,以下同じ。)16.8海里の地点を発進し,針路を同港港口の東防波堤東端付近に向く160度に定めて自動操舵とし,10.0ノットの速力(対地速力,以下同じ。)で進行した。
 発進後,A受審人は,単独の船橋当直に就き,操舵スタンド後方の肘掛けと背もたれが付いた椅子に腰を掛けて操船に当たり,16時28分稚内灯台から005度4.2海里の地点に達したとき,発航後の睡眠不足と操業による疲労から眠気を催したが,間もなく港に着くので,それまでに眠ってしまうことはないものと思い,椅子から立ち上がって手動操舵で操船に当たるなど,居眠り運航の防止措置を十分にとることなく,椅子に腰を掛けたまま当直を続けていたところ,いつしか居眠りに陥った。
 こうして,大安丸は,東防波堤に向首したまま続航中,17時10分稚内港東防波堤東灯台から280度110メートルの地点において,原針路及び原速力で,同防波堤に衝突した。
 当時,天候は晴れで風力4の西南西風が吹き,潮候はほぼ低潮時に当たり,日没時刻は16時25分,航海薄明の終わりは17時30分であった。

 衝突の結果,右舷船首部外板に破口を生じて沈没し,引き揚げられた後廃船処理され,東防波堤に修理を要する損傷はなく,機関長が20日間の通院加療を要する両膝関節打撲傷等を負った。

 (原因及び受審人の行為)
 本件防波堤衝突は,日没後の薄明時,稚内港北北西方沖合において,操業を終えて同港に向け帰航中,居眠り運航の防止措置が不十分で,東防波堤に向首進行したことによって発生したものである。
 A受審人は,日没後の薄明時,稚内港北北西方沖合において,操業を終えて単独の船橋当直に就き,同港に向け自動操舵により帰航中,発航後の睡眠不足と操業による疲労から眠気を催した場合,居眠りに陥らないよう,椅子から立ち上がって手動操舵で操船に当たるなど,居眠り運航の防止措置を十分にとるべき注意義務があった。ところが,同人は,間もなく港に着くので,それまでに眠ってしまうことはないものと思い,居眠り運航の防止措置を十分にとらなかった職務上の過失により,居眠りに陥り,東防波堤に向首したまま進行して衝突を招き,船体に損傷を生じさせて廃船処理され,機関長が負傷するに至った。
 以上のA受審人の行為に対しては,海難審判法第3条の規定により,同法第4条第1項第2号を適用して同人の四級海技士(航海)の業務を1箇月停止する。

 よって主文のとおり裁決する。



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