平成27年海審第6号
            裁    決
         漁船第八十八眞盛丸乗揚事件

  言 渡 年 月 日 平成29年3月14日
  審  判  所 海難審判所(松浦数雄,濱田真人,大北直明)
  理  事  官 浅野真司
  受  審  人 A
     職  名 第八十八眞盛丸船長
     海技免許 六級海技士(航海)
  指定海難関係人 B
     職  名 第八十八眞盛丸甲板員

            主    文

 受審人Aを戒告する。

            理    由
 (海難の事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成26年10月21日22時38分
 島根県雲津漁港北方海岸

2 船舶の要目
  船 種 船 名  漁船第八十八眞盛丸
  総 ト ン 数  114トン
    全   長  37.00メートル
    機関の種類  ディーゼル機関
    出   力  617キロワット

3 事実の経過
 第八十八眞盛丸(以下「眞盛丸」という。)は,船体中央に操舵室を配し,同室前部中央に舵輪を,左舷側に機関コンソールを,右舷側にレーダー2台及び音響測深機を,同室後方の無線室にGPSプロッターをそれぞれ装備した,かにはえなわ漁業に従事する鋼製漁船で,A受審人及び甲板部航海当直部員の認定を受けたB指定海難関係人ほか8人が乗り組み,操業の目的で,船首1.7メートル船尾3.6メートルの喫水をもって,平成26年10月15日16時50分境港を発し,島根県隠岐諸島北方沖合80海里付近の漁場に向かった。
 A受審人は,翌16日05時40分前示漁場に到着後操業を始め,べにずわいがに約21トンを漁獲して21日13時25分同漁場を発進し,帰途に就いた。
 A受審人は,14時30分白島埼灯台から022度(真方位,以下同じ。)40.6海里の地点に至ったとき,乗組員に帰航中の当直時間を割り振り,B指定海難関係人を夜間単独の船橋当直に当たらせることとした。
 このとき,A受審人は,B指定海難関係人が6日間にわたる連続した操業に従事し,その間,1日当たり約15時間就労して5時間程度しか睡眠に充てられない状況であり,睡眠不足に加え疲労が蓄積した状態であったことから,居眠りに陥るおそれがあったが,これまで同人が居眠りに陥ることなく船橋当直に当たっていたので,改めて指示するまでもないと思い,眠気を催したら直ちに船長に報告するなど,居眠り防止についての指示をしなかった。
 B指定海難関係人は,20時00分西郷岬灯台から162度7.5海里の地点で,単独の船橋当直に就き,針路を190度に定めて自動操舵とし,機関を回転数毎分660にかけ,翼角13度として10.9ノットの速力(対地速力,以下同じ。)で島根県地蔵埼北方沖合を進行した。
 B指定海難関係人は,21時00分美保関灯台から003度18.1海里の地点に達したとき,操舵室の右舷側に立ち,窓に寄りかかった姿勢で当直を続けていたところ眠気を催したが,窓を開けて風に当たったり,直ちに船長に報告したりするなど,居眠り運航の防止措置を十分にとらなかった。
 B指定海難関係人は,いつしか居眠りに陥り,雲津漁港北方海岸に向首続航中,ふと目が覚めて,無線室のGPSプロッターの画面で間近に陸地が迫っていることを認め,急いで操舵室に戻ったもののどうすることもできず,22時38分美保関灯台から284度2.3海里の地点において,眞盛丸は,原針路,原速力のまま,同海岸に乗り揚げた。
 当時,天候は雨で風力5の北東風が吹き,潮候は上げ潮の末期にあたり,島根県松江市には強風,波浪注意報が発表されていた。
 A受審人は,衝撃で乗り揚げたことを知り,昇橋して事後の措置に当たった。

 乗揚の結果,船底部に凹損及び破口を生じて機関室等に浸水し,後に廃船とされた。

 (原因及び受審人の行為)
 本件乗揚は,夜間,地蔵埼北方沖合において,漁場から境港に向け帰航中,居眠り運航の防止措置が不十分で,雲津漁港北方海岸に向首進行したことによって発生したものである。
 運航が適切でなかったのは,船長が,海技免許を有しない甲板員を夜間単独の船橋当直に当たらせる際,居眠り防止についての指示をしなかったことと,甲板員が,居眠り運航の防止措置を十分にとらなかったこととによるものである。
 A受審人は,地蔵埼北方沖合において,漁場から境港に向け帰航中,B指定海難関係人を夜間単独の船橋当直に当たらせる場合,睡眠不足に加え疲労が蓄積した状態であったから,同人に対し,眠気を催したら直ちに船長に報告するなど,居眠り防止についての指示をすべき注意義務があった。しかるに,A受審人は,これまでB指定海難関係人が居眠りに陥ることなく船橋当直に当たっていたので,改めて指示する必要はないと思い,居眠り防止についての指示をしなかった職務上の過失により,同人が居眠りに陥り,雲津漁港北方海岸に向首進行して同海岸への乗揚を招き,船底部に損傷を生じさせ,廃船とさせるに至った。
 以上のA受審人の行為に対しては,海難審判法第3条の規定により,同法第4条第1項第3号を適用して同人を戒告する。

 よって主文のとおり裁決する。



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