備讃瀬戸東航路は、海交法に定める航路の中で区間が最も長いことから、衝突事件も60件と最も多く発生しています。
 同航路のレーン別で発生状況を見ると、東行レーン36件で、西行レーン24件より多く発生しています。発生地点の分布を見ると航路のほぼ全域にわたって発生していますが、宇高西航路との交差部付近に多く、次いで宇高東航路との交差部付近、カナワ岩北方付近での発生が目立っています。
 航法別に見ると、視界制限状態における航法不遵守が17原因と最も多く、次いで各種船舶間の航法不遵守が14原因、追越し船の航法不遵守が10原因などとなっています。
 これらの事件を衝突時の態勢別で見ると、追越しの関係となっているものが多く、その要因は、追越し船側の単独当直での見張り不十分が圧倒的に多くなっています。また、追越される船舶の前方に漁船などの第三船が存在している場合も多く、追越される船舶がそれらを避航するために減速、転舵して追越し船の前路に進出した例も少なくありません。
 各種船舶間の航法不遵守(航行中の動力船が漁ろうに従事している船舶の進路を避けなかった)は14件で全航路における発生の6割強を占めており、その発生地点を見ると、カナワ岩北方から柏島南方にかけての範囲で8件発生しています。
備讃瀬戸東航路における衝突事件発生地点の状況
裁決事例
備讃瀬戸東航路を航行中操舵装置の故障で同航船と衝突した事例
 夜間、備讃瀬戸東航路を西行中のパナマ船籍の貨物船(1,985総トン)は、操舵装置の故障で左舵5度をとったまま操舵不能となった際、応急措置が不十分で、急速に左転し、無難に替わる態勢にあった同航の貨物船(483総トン)の前路に進出して衝突に至った。衝突の結果、貨物船(483総トン)は、右舷中央部に破口を生じて沈没し、次席一等航海士が船内に閉じこめられて溺死した。

 

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