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委員長記者会見要旨(平成23年10月26日)

平成23年10月26日(水)14:00~14:30
国土交通省会見室
後藤昇弘委員長

発言要旨

1.運輸安全委員会設置3周年を迎えて

 運輸安全委員会委員長の後藤でございます。10月の定例の記者会見を始めさせていただきたいと思います。お手元の資料にありますように、この10月1日をもちまして運輸安全委員会が設置されて3周年を迎えました。そこで、私から一言所感を述べさせていただいて、その後で、航空案件の進捗状況についてご報告いたしたいと思います。また、当委員会の勧告に対し、事業者から措置状況について報告がありましたのでご紹介いたします。さて、運輸安全委員会は、平成20年10月1日に発足しましてから、早くも3年が経過いたしました。先月には「運輸安全委員会年報2011」を発行したところでありますが、それを見ますと、平成22年末までの過去3年間の事故等の発生状況は、航空分野で事故48件、重大インシデント28件、鉄道分野で事故33件、重大インシデント15件、また、海事分野では区分が他と異なりますが、重大な船舶事故では平成21年、22年の2年間で27件発生しております。航空、鉄道では共に3年間の事故発生件数は遡る3年間の事故数に比べて減少しておりますが、再発防止と被害軽減を目的とする私どもの調査の結果が貢献しているとすれば幸いであります。更に、この間、調査結果に基づき、事故等の再発防止並びに被害の軽減のため講じるべき施策又は措置について、必要があると認めるときは、事故等の関係者に対し勧告、又は関係行政機関に意見を述べることにより、改善を求めてきました。
 更に、当委員会になって強化された企画機能を活かし、報告書を分かりやすく解説したニュースレター等も数多く発行してまいりましたし、運輸安全委員会設置法第28条の2にあります「被害者等への情報提供」について、その適時・適切な提供方法を考慮しながら、より良く実施するように取り組んでおります。このように事故調査の基本的な理念の実現に向けて取り組んでまいりました。
 しかしながら、ご承知のように残念なことも発生しております。平成17年4月25日に発生したJR西日本福知山線列車脱線事故の調査過程において、航空・鉄道事故調査委員会の当時の委員が、JR西日本からの働きかけに応じて、調査状況等の情報漏えいを行っていたことが判明しました。当委員会は国民の皆様の間で失われた信頼を回復するため、ご遺族・被害者、有識者等の方々に、検証メンバーとなっていただき、約1年半にわたって徹底的に検証作業を行っていただきました。その結果、本年4月15日に、「JR西日本福知山線事故調査に関わる不祥事問題の検証と事故調査システムの改革に関する提言」が国土交通大臣及び当委員会に提出されたところであります。
 その中では、情報漏えい等の事実関係の検証結果から、最終報告書の内容への影響はなかったとの評価をいただき、更に国民からの信頼を得る今後の事故調査システムのあり方について、10項目の提言がなされました。この提言に従って、本年7月、業務改善有識者会議を設置し、そのご指導を賜りながら「業務改善アクションプラン」を当委員会において作成・実施することとし、当委員会の社会的信頼性を高めるとともに、真に必要とされる事故調査を実現できるよう業務改善に取り組んでいるところであります。
 特に「適時適切な情報の発信」については、必要な情報の提供・開示を行うことで事故調査の透明性を確保し、信頼性の向上に努めます。また、事故再発防止と被害軽減の観点から、できる限り迅速に報告書を作成するとともに、調査途中でも国土交通大臣などに対して意見を述べ、事故再発防止のために有益な情報を提供するなど、タイムリーで積極的な情報発信に努めて参ります。
 今後とも、運輸安全委員会は、事故再発防止のため、また、運輸の安全の実現のために欠かすことのできない信頼される組織へと発展して参りたいと考えております。引き続き、ご支援を賜りますようお願いいたします。

2.事故調査の進捗状況報告

 続きまして、事故調査の進捗状況報告として、四国航空株式会社のヘリコプター火災事故について、現時点での調査の進捗状況を報告させていただきます。
 お手元の資料1をご覧下さい。はじめに事故の概要ですが、四国航空株式会社所属のヘリコプター、ユーロコプター式AS350B3型、写真1が同社の同型機ですが、これと同じタイプのJA6522は、本年9月22日、午前9時23分、機長及び電力会社社員2名の合計3名が搭乗し、高松空港を離陸しました。台風15号通過後における送電線点検のための飛行でしたが、10時9分頃、機内に焦げ臭い匂いが発生し、やがて機内に白煙が発生したため、10時12分頃、東かがわ市引田の野球場に不時着しました。
 着陸後、搭乗者は全員脱出し負傷者はありませんでしたが、機体は炎上し大破しました。
 付図1をご覧下さい。これは事故機の推定される飛行経路を示しております。
 現在までの調査の状況ですが、9月22日から9月24日まで、航空事故調査官2名を現場に派遣し、初動調査を実施しました。
 調査内容としては、事故発生現場及び事故機の残骸の調査の他、事故機の運航状況及び整備状況の調査、関係者からの口述聴取等を実施しました。
 残骸の状況は、写真2にあるとおりです。4ページ目の下の方をご覧ください。エンジン、スキッド及び最後部の垂直安定板を残し、ほとんどの部分が焼損しておりました。
 これまでの調査により判明した主な情報として、事故機に発生した火災の状況が、ある程度判明しました。まず、午前10時9分、これは離陸後46分後になりますが、機内に焦げ臭い匂いが発生し、やがて白煙が床付近から上り始め、機内は操縦席から計器が見えないほど煙で真っ白になりました。その辺の状況が5ページに火災の状況として書いてありますので、ご覧下さい。機長は、足元付近の窓から地上を見ながら、午前10時12分頃、東かがわ市引田野球場に不時着しました。
 着陸直前の地上1から2フィートで、ラダーペダルが固着し、若干右を向いて接地しました。間一髪で無事に着陸したような状況であります。
 事故機の飛行中の目撃情報によりますと、6ページの付図2にありますとおり、貨物室の床付近から白煙が出て、貨物室の外板が黒く変色しておりました。これらのことから、火災発生場所は、貨物室付近と考えられます。
写真3、4、5の着陸後の写真を見ますと、着陸直後には貨物室のドアが開き激しく炎と煙が噴き出し、直ぐにテールブームが脱落し、やがて貨物室から機体全体に炎と煙が広がったことがわかります。
 次に、事故機の貨物室付近の状況がどうであったのかが調査でわかっております。事故当時、事故機の貨物室付近には、配布資料の3の括弧2に記載しましたように、主に5つの電気装備品と、それらの接続する電気配線があり、貨物室には多数の可燃物が搭載されていました。
 今後の主な調査としましては、発火源の可能性が疑われる装備品等の詳細調査、直前の定時点検に関する詳細調査、火災時の非常捜査に関する詳細操作、また気象等の情報収集などを予定しております。

 次に、現在、運輸安全委員会が調査を行っている事故及び重大インシデントの調査状況について、ご報告したいと思います。
 詳細は、資料2をご覧ください。航空は調査中の案件が現在38件。そのうち審議中が10件。それから意見照会中のものが4件となっております。
 鉄道は調査中の案件が17件。そのうち審議中のものが3件。意見照会中のものはありません。
 船舶は調査中の案件が38件。そのうち報告書案として審議中のものが22件。意見照会中のものが4件であります。ただし、船舶の方は東京で扱っている重大案件のみであります。

3.勧告に基づく措置

 次に資料3であります。遊漁船しぶさき10号の沈没事故に係わる勧告に基づく措置の状況について報告したいと思います。
 平成21年11月28日に長野県の諏訪湖で発生しました本事故の調査結果につきましては、先月末の9月30日に事故調査報告書を公表するとともに、船舶所有者であります株式会社しぶさきに対しまして、事故の防止と事故が発生した場合における被害の軽減のために講ずべき措置について勧告したところであります。
 今般、本勧告に基づく措置の状況について、お手元にお配りしております資料のとおり、同社から、「講ずべき措置に関する計画」として、安全重点施策を定め全社を挙げて安全第一に取り組む、船舶検査を適切に受検するなどして所有する船舶の堪航性を確保するなどの報告を受けましたのでお知らせしたいと思います。堪航性と言いますのは、船舶がその航行予定海域で予想される通常の危険に耐え、安全に航行できる能力を言っております。船舶安全法や船員法に、船主・船長の堪航性の保持義務が規定されております。航空の方では、これは耐空性と申しまして、airworthinessと言いますが、船の堪航性はseaworthinessと呼ばれております。
 なお、本実施計画による同社の具体的な対応が完了したときには、再度、報告を受けることとしておりますので、その節には、また改めてお知らせしたいと思います。
 原因関係者への勧告は、事故の再発防止や被害軽減のために講ずべき措置の実施を求めるものであり、それらが確実に実施され、安全性の向上につながっていくことが肝要であります。
 今般、勧告で求めた措置の実施が始まり、安全面で一歩前進した取り組みが始まったということであります。今後とも当委員会としてはこのような取り組みを重ねてまいりたいと考えております。

 私から説明することは、以上であります。何かご質問があれば受けたいと思います。

主な質疑応答

(四国航空ヘリコプター火災事故関係)
問: 四国航空のヘリコプター事故の件ですが、貨物室付近からの出火という見立てのようですが、可燃物からの出火なのか、又は機体から出火したのかということの見通しはどうですか。
答: 今のところはっきり申し上げることはできません。可燃物がいくつか積み込まれていて、かつ電気配線があって、そのどこが最初に発火したのかということを現在調査中ということです。機体によるものなのか積載した物によるものなのか慎重に調査を進めております。

問: 消防当局から燃焼の状態とか消防の基準とかの情報は得られているのでしょうか。
答: 消防で調べたことももちろんあると思いますが、それらの情報も加えて、我々の方で判断をどうするかということになります。こういうことで結論をもう少し待っていただきたいと思います。

問: 資料の最後のページに、「5.その他」のところに、「指名あり」となっていますが、これはどういう意味ですか。
答: これは、この事故に関係している製造国であるフランスに対して調査に参加するか否かを照会しましたところ、来日する予定はないけれども、窓口として指名しましたということでした。また、機体製造者のユーロコプターとエンジンを製造したターボメカ社から各々1名の顧問を窓口として指名があったということです。今後、連絡事項や報告書のドラフトができた段階で照会をすることになりますので、その窓口ということです。国内では、原因関係者である四国航空株式会社及び機長等に対しても我々がまとめた事実関係について意見をいただくことになります。

問: 着陸直前にラダーペダルが固着したとありますが、理由としてはどのようなことが考えられますか。
答: 多分、下部の方が焼けて固着したと思われます。大変危険でして、ペダルは機首の旋転(ヨーイング)を支配する舵でありますが、これが効かなくなると回転しながら落ちることになるわけですから、着地したときに横倒しになったりすることがあり得たと思われます。たまたまこの時は上手く降りられたのですが、非常に危険な状態だったということは言えると思います。

問: 資料に「貨物室付近の装備品、搭載品」とありますが、装備品というのは、機体そのものに付いているものという理解でいいのでしょうか。
答: ストロボライトの電源、衝突防止灯電源というのは飛行に必要な装備品です。搭載品というのは、荷物として積んでいたというものです。

問: 装備品や搭載品の中で、特に燃えやすいとか発火しやすいというものはどのようなものですか。
答: これは今後注意して調べないと、今の段階では申し上げられません。

問: これは燃えにくいものとか、これは燃えるものとかその辺はどうですか。
答: それぞれが、どのような状況だったのか現在調査中ですので、ご理解いただきたいと思います。
このような火災になるような事例は滅多にないことで、日本ではあまり報告されておりません。飛行機では、外国で大きな火災事故が起こっております。1996年にTWA800便が、ニューヨークから飛び立った後にセンターフューエルタンクが空になって、燃料が少し残っていたのが蒸発して空気と混じって、それが燃えやすい状態になった時に、電気信号により火花が飛んだ可能性があるとNTSBは解説しております。大爆発を起こしておりますので、電気の配線系統は気をつけないといけません。
それから、1998年にスイスエアーの111便が、カナダのハリファックス付近で、火事を起こしたという通信を残して海に墜落し、二百数十人の方が亡くなったとういう事故があります。その火事がどこから発火したのか判明していないと記憶していますが、電気系統から起こったというのも一つの可能性だということであります。
そのようなこともありますので、ストロボライト電源とか衝突防止灯電源とか、それを繋いでいる電線で火花が飛ぶ可能性はなかったか、或いは熱くなって壁を焼くことはなかったか、その辺を慎重に調べているところです。

(旅客船第十一天竜丸転覆事故関係)
問: 浜松市天竜区の天竜川の転覆事故の件ですが、今月の初旬に現地で調査されたと思いますが、その中で新たに分かったことはありますか。
答: 10月に行いました調査は、船の性能を調べるということで、船の速さとか復原力がどのくらいあるのかというような船の基本的な性能を計測したというものです。解析に時間がかかりますので、まだ公表できるものは揃っていないとご理解いただければと思います。

(業務改善関係)
問: 委員会の改革の関係で質問します。検証メンバーから10項目の提言がなされていましたが、できるところから進めているということですが、そのうち実現がなかなか進まないというか難しいという点はどんなところでしょうか。
答: おっしゃるように業務改善のうち、情報発信などは、このような会見の場などを通じて適時適切に行うべく進めておりますが、難しいのは以前の会見でも申し上げましたが、警察の捜査と我々の調査の関係です。これを今後どのように進めていくかについては、相手があることですので、少し時間がかかると考えています。業務改善は、全体としてはアクションプランを作ってやっていく予定ですが、アクションプランの策定を待たずにできるものは早めにやっていこうという、このような姿勢で取り組んでおります。

問: 警察庁との協議の進捗状況をもう少し具体的に伺うことができますか。
答: 相手があることですので、控えさせていただきたいと思います。もう少し進展して、話し合いがまとまったら発表させていただきます。ご理解いただきますようお願いします。

(その他)
問: 先月の会見で全日空のインシデントについてCGで説明されたのですが、その日の夜の全日空の会見において、我々とやりとりをする中で、「運輸安全委員会との兼ね合いで、運輸安全委員会が発表されたことについて我々は一切言えない」との発言がありました。関係者が、事故原因そのものについて調査中というのは理解できますが、それ以外の起きた事実、例えば「当社ではこのように確認しているので、このような対策をとりたい」というようなことについて、委員会の方で「言ってはいけない」という決まりがある、若しくは「言うな」というようなことを言っているという事実はあるのでしょうか。
答: そのようなことはありません。調査中であるということで慮ってくれたのだと理解します。

問: 以前は、「運輸安全委員会が調査中であるのでコメントを控える」ということも理解していましたが、現在は、委員長が早い機会に説明いただけるようになったので、業界全体に再発防止の観点から、説明できる事実関係は公表すべきではないかということについて、委員会からアクションを起こすことはできないでしょうか。
答: 委員会は、9月28日に、DFDRのデータを基に作成した映像を公表するとともに、その事実情報を航空局へも通知しております。航空局からは、それに関して各航空会社に対し安全情報が通達されておりますので、当面の実行すべきことはやっていると考えております。調査していく間に、これは早く知らせた方がいいというような事実がでてきたら、その場合もすぐに情報提供をして、再発防止の対策がとられるように努力しております。

問: これは質問というより意見になりますが、我々としては、当局も関係者も同じ見方に立って、積極的に発信できるものは発信していくということを、委員会の方からも、「委員会を言い訳にするな」というようなことを言っていただければ助かるのですが。
答: もちろん積極的に発信していただくのは結構だと思います。我々だけ調査するのではなくて、当事者が調べるのも結構だし、監督官庁が調査するのも結構です。意見聴取などを通じて、我々の調査したことに対して意見を出していただくのも大事なことだと思います。

問: 事業者として再発防止につながるような事実については、公表して構わない。隠すものではないということですよね。
答: はい。おっしゃっていただいても構いません。原因関係者からは、機器の提供を受けて必要な情報をもらうとともに、口述聴取などを通じて会社の考え方或いは操縦士等の考え方についても聞いております。

以 上

資料

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