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委員長記者会見要旨(平成25年9月25日)

平成25年9月25日(水)14:00~15:03
国土交通省会見室
後藤昇弘委員長

発言要旨

 運輸安全委員会委員長の後藤でございます。
 ただいまより、9月の月例記者会見を始めさせていただきます。
 本日は、お手元の資料にありますように、この10月1日をもって運輸安全委員会が設置されて5周年を迎えますので、最初に私から一言所感を述べさせていただき、その後、事故調査の進捗状況として、9月19日に発生したJR貨物函館線列車脱線事故の件、安全勧告及び勧告に基づき講じられた措置について航空の案件を2件、さらに英語版の船舶事故ハザードマップ運用開始の件、地方事務所の分析集発行の件、そしてNTSBハースマン委員長の表敬訪問の順でご報告させていただきます。

1.運輸安全委員会設置5周年を迎えるにあたって

 来る10月1日をもって運輸安全委員会が設置されて5周年を迎えますが、私から一言、所感を述べさせていただきます。
 我が国の事故調査の歴史をふり返りますと、航空事故の原因を究明するための組織として、昭和49年(1974年)1月、「航空事故調査委員会」が設置されたのが始まりです。その後、平成13年(2001年)10月、鉄道部門が加わって「航空・鉄道事故調査委員会」に改組され、さらに航空及び鉄道の重大インシデント調査も行うこととなりました。
 そして、平成20年(2008年)10月1日、旧海難審判庁の原因究明部門との統合再編により、3モードにわたって、原因究明機能の強化、事故再発防止機能の強化、被害者等への情報提供といった諸課題に応えていける、より独立性の高い組織として、今日の「運輸安全委員会」が発足いたしました。
 これまで、当委員会としては、適確な事故調査の実現や効果的な再発防止に向け、事故調査に必要な知識、技量の向上を目指し、日々研鑽を積むとともに、研修等の充実や内外の関係機関との連携を強化することなどにより、調査体制の充実強化に努めてまいりました。
 そのようななか、発足後1年となる平成21年9月、JR西日本福知山線列車脱線事故の調査過程における情報漏えい問題が判明し、同事故の調査報告書にとどまらず当委員会が行う事故調査に対する国民の信頼を大きく失墜させることとなりました。
 当委員会としては、事態を極めて深刻に受け止め、同事故の被害者やご家族及びご遺族並びに有識者の方々で構成された「福知山線列車脱線事故調査報告書に関わる検証メンバー」において徹底した検証をお願いし、結果的には、最終報告書への影響はなかったことが確認されましたが、同時に、同メンバーから、運輸安全委員会の今後のあり方について、事故調査の透明性の確保、被害者対応の充実、組織問題に踏み込む等事故調査の充実などを内容とする提言をいただきました。
 これを受け、平成23年7月、「運輸安全委員会業務改善有識者会議」を設置し、有識者からのご意見やご指導をいただきつつ、全員野球で業務改善に取り組んでまいりました。
 平成24年3月には、組織のミッションを明確化するとともに、適確な事故調査の実施、適時適切な情報発信、被害者への配慮、組織基盤の充実といった4つの行動指針を柱とする「業務改善アクションプラン」を策定したところであり、引き続き国民目線での事故等調査に向け、不断の努力を行ってまいる所存です。
 情報発信という点では、平成23年8月からは、委員長による定例会見を開始し、事故調査の進捗状況や業務改善状況などについてご報告しておりますが、各界からのご意見等もいただきながら、さらに充実してきたいと考えております。
 被害者への配慮については、被害者との双方向のコミュニケーションを図るべく、平成24年4月に「事故被害者情報連絡室」を設置し、事故被害者の皆様のご要望に応じた情報提供などを行っているところです。
 また、昭和62年に当時の航空事故調査委員会が公表したJAL123便の御巣鷹山墜落事故に関する調査報告書について、ご遺族の皆さまの疑問点にできるだけ分かりやすくお答えするため、本事故の遺族の会である「8・12連絡会」にご協力をいただき、当該報告書の解説書を作成、平成23年7月、公表いたしました。
 さらに、これまで鉄道事故報告書の英訳版はありませんでしたが、貴重な教訓を海外における鉄道安全対策に役立ててもらうため、本年7月、福知山線列車脱線事故調査報告書の概要について、英訳版をHPに掲載したところです。
 また、船舶関係では、これまでに蓄積された貴重な事故データをもとに、地図上に過去の船舶事故を表示するとともに、海域の危険性なども一目でわかるようにした、「船舶事故ハザードマップ」を作成し、本年夏に公開したところです。船舶の安全運航や船員の教育・安全講習などに幅広くご活用いただけるものとして高い評価をいただいております。
 このたび、運輸安全委員会は、満5年という節目を迎えるわけですが、ますます高まる当委員会に対する国民の皆様からのご期待やご要望にしっかり応えるべく、組織一丸となって頑張ってまいりますので、今後とも、当委員会へのご理解とご協力を賜りますよう、お願い申し上げます。

2.事故調査の進捗状況報告

(1)日本貨物鉄道(株) 列車脱線事故関連

 平成25年9月19日(木)に発生しましたJR貨物 函館線 列車脱線事故の調査状況について、報告します。資料1-1をご覧下さい。列車脱線事故は、18時05分ごろに発生したもので、運転士は、大沼駅を発車後、異常を感じたため、ブレーキを使用し、停止後に確認すると、列車は脱線していました。なお、列車の運転士に怪我はありませんでした。
 調査は、事故発生翌日の20日から21日に亘り、鉄道事故調査官2名を派遣して、軌道、車両の調査や関係者からの聞き取り調査などを行いました。
 6~9ページをご覧下さい。写真のように、列車は6両目(機関車を含める)の後台車全2軸、7両目前台車全2軸、8両目の前後台車全4軸、9両目前台車全2軸が脱線していました。次に10、11ページをご覧下さい。2番線から本線に入る分岐器の手前約8mの付近から、列車の進行方向左側のレール頭部の右側面に左車輪が軌間内に脱線した際のものと思われる痕跡がありました。
 この脱線箇所付近の軌間を、本事故後に計測をしたところ、JR北海道が定めている基準値(19mm)を超える37mmでありました。なお、この計測値は、脱線により拡大した値を含んでいる可能性も考えられます。
 また、当委員会からの求めに応じて、JR北海道から提出された資料によると、この位置付近の軌間は、本年6月にJR北海道が計測をした結果では、JR北海道が定めている基準値19mmを6mm超えていました。
 運輸安全委員会といたしましては、引き続き軌道の検査データ、車両、列車の運転状況等の調査を行うとともに、本社を含めた保守の実施体制とその状況についても調査を行い、入手したこれら資料の取り纏めを行い、原因究明のための分析を行って参りたいと考えております。

(2)その他の調査の進捗状況

 次に現在、運輸安全委員会が調査を行っている事故及び重大インシデントの調査状況について、ご報告いたします。説明は省略させていただきますが詳細は、資料1-2をご覧下さい。

3.勧告に基づき講じられた措置

 次に、安全勧告又は勧告に基づき講じられた措置2件についてご報告させていただきます。

 (1)フェデラルエクスプレスコーポレーション所属マクドネル・ダグラス式MD-11F型N526FE着陸時の機体損壊及び火災事故に係る安全勧告に基づく措置状況

 1件目ですが、平成21年3月23日に発生したフェデラルエクスプレスコーポレーション所属マクドネル・ダグラス式MD-11F型機N526FEの火災事故についてでございます。資料2-1をご覧下さい。
 「安全勧告」につきましては、航空事故の場合、国際条約である「国際民間航空条約」に基づいて実施するものであります。
 本事故は、成田国際空港へ着陸の際にバウンドを繰り返し、左主翼が破断し、機体が炎上しながら左にロールして裏返しとなり、滑走路西側の草地に停止したというものです。機長及び副操縦士の計2名が死亡しております。
 本事故の調査結果につきましては、平成25年4月26日に調査報告書を公表するとともに、関係国である米国連邦航空局(FAA)に対して安全勧告を行いました。
 今般、FAAから、安全勧告に基づく措置の状況について、通知を受けました。その回答内容について、ご説明します。資料2-1の1枚目の裏面をご覧下さい。
 最初の項目(1)についてですが、今後設計される航空機においては、垂直方向の卓越する過大な荷重が生じた場合に脚が適切に分離することが確保されるように、耐空性基準の改正及びアドバイザリーサーキュラー(AC)を発行予定であると回答がありました。
 (2)の項目については、現行の基準においても火災による煙やガスの発生と拡大を防止するための十分な措置が講じられており、追加措置の予定はないとの回答でありました。
 続きまして、ボーイング社に対して指導すべき措置の項目(1)についてですが、LSAS(縦安定増大システム)に対するこれ以上の機能変更は、他のシステムに悪影響を与えるおそれがあると考えており、LSASの機能追加は予定していないの回答でありました。
 最後の項目(2)についてですが、バウンドを表示する視覚表示装置を設計し承認する方向に賛成するという回答が得られました。また、ボーイング社は、2014年1月までの承認を目指して機体が接地しているか否かを表示するシステムの開発に着手しているということであります。
 今回のFAAの措置は、技術的に現状では実施が困難であると判断し受け入れられないとしている項目もありますが、設計指針の見直し及び新しい装置の開発を実施するとしており、全体としてみれば、当委員会の指摘をしっかりと受けとめた、妥当な対応をしていただいたものと考えております。

 (2)四国航空(株)所属ユーロコプター式AS350B3型回転翼航空機火災事故(荷物室からの出火)に係る勧告に基づく措置状況

 2件目ですが、平成23年9月22日に発生した四国航空株式会社所属ユーロコプター式AS350B3型JA6522の火災事故についてでございます。資料2-2をご覧下さい。
 本事故は、高松空港を離陸し、送電線監視飛行を実施中に機内に焦げくさい臭い及び白煙が発生し、香川県東かがわ市の野球場に不時着し、その後、炎上し大破したというものです。死傷者はいませんでした。
 本事故の調査結果につきましては、平成25年6月28日に調査報告書を公表するとともに、原因関係者である四国航空株式会社に対して勧告を行いました。
 今般、四国航空株式会社から、勧告に基づく措置の状況として、
 ・積載物の移動防止措置については、飛行規程及びネットの固定状況の点検の周知徹底。
 ・爆発物等については、告示の基準を再確認した上で輸送するよう周知徹底。
 ・また、非常事態における適切な操作については、定期検査の審査項目として確認するという独自の措置を実施した旨の完了報告がありました。
 これらにつきましては、勧告の内容を反映したものになっておりますが、四国航空株式会社においては、今後とも引き続き、より一層の安全性向上に努めていただきたいと思います。
 米国連邦航空局(FAA)への安全勧告と四国航空株式会社への勧告は、事故の再発防止や被害軽減のために講ずべき措置の実施を求めるものであり、それらが確実に実施され、安全性の向上につながっていくことが肝要であると考えております。
 今後とも、当委員会としてはこのような取組みを重ねてまいりたいと思っております。

4.英語版「船舶事故ハザードマップ」の運用開始

 資料3をご覧下さい。5月に公開しました船舶事故ハザードマップの英語版ホームページを作成し、本日より公開することとしました。
 これは、日本の外航船社等から日本近海を航行する外航船は、外国人船員が多く乗り組んでおり、船舶事故ハザードマップの英語版があると安全運航や船員教育に役立つとの要望が多くあり、対応したものです。
 ちなみに、今月9日から10日にかけてスイスのインターラーケンで行われた、第9回欧州船舶事故調査官会議(EMAIIF9)において、船舶事故ハザードマップについて紹介したところ、「漁場や漁法に関する情報は商船等にとってわかりやすい」、「事故の傾向等を把握するのに有効である」との評価をいただいております。
 ページの英語化は行いましたが、現在、報告書の表示の多くは日本語となっておりますので、今後、報告書の英語化を順次進めて参りたいと思っております。

5.地方事務所「分析集」について

 資料4-1をご覧下さい。全国8カ所(函館、仙台、横浜、神戸、広島、門司、長崎及び那覇)の地方事務所では、公表した個々の事故等調査報告書を大量に観察するなどにより、事故等の傾向や問題点を浮き彫りにすることも重要との観点から、それぞれの地方事務所における特有なテーマを選んで分析を行い、年間1冊程度の分析集を発行しているところです。
 平成25年に各地方事務所が発行(公表)した分析集は以下のとおりであり、ホームページに掲載していますが、各地方から一通り出揃いましたので、あらためてご紹介させていただきました。
 なお、仙台事務所の分析集「漁船乗組員が死傷した事故の状況」については、本日9月25日をもって公表します。
 資料4-2をご覧下さい。仙台事務所の分析集「漁船乗組員が死傷した事故の状況」については、過去4年半における54件の報告書事例を統計的に分析したものです。
 海中転落等による死亡事故については、救命胴衣の着用と防水型携帯電話の携行、ドラムへの巻き込まれ等による負傷事故については、操業前に安全に作業ができる位置を確認することなどを再発防止策として呼びかけております。
 本日9月25日付をもって公表しますが、管内の漁協等において組合員への安全教育等に活用していただければ幸いです。

6.米国国家運輸安全委員会のデボラ・ハースマン委員長の運輸安全委員会表敬訪問について

 10月4日に、米国国家運輸安全委員会(NTSB)のハースマン委員長が当委員会を表敬訪問される予定ですので、お知らせいたします。資料5をご覧下さい。
 当委員会とNTSBとは事故、インシデント調査において日常的に協力しており、今回ハースマン委員長にお会いすることにより、両組織の一層の連携の促進に資するものと期待しております。
 (※事務局より:NTSB委員長の表敬訪問については、9月30日にキャンセルとなりました。別紙をご覧下さい。)
 私からご説明するものは、以上です。
 何か質問等があればお受けします。

7.質疑応答

(日本貨物鉄道(株) 列車脱線事故関連)

問: 現時点までに判明した事実について、線路に傷が付いていた地点の、軌間を調べたところ、通常よりも37ミリ広い数値が検出されたということですけど、ここは脱線前からどうだったのか。またそれが脱線事故に対してどの程度関与しているか、どの様に評価しているかお聞かせ下さい。
答: 脱線した箇所は、2番線、これは副本線でありますが、それから1番線、これは本線ですが、2番線から1番線に入る分岐器の手前であり、先程お配りした資料1-1を参考にして頂きたいのですが、そこには列車の進行方向左側のレール頭部の右側面に左車輪が軌間内に落ちた際のものと思われる痕跡がありました。その痕跡があった位置は、分岐器の始まりから手前約8mの付近でした。この位置付近の軌道につきましては、事故後に計測をしたところ、軌間はJR北海道が定めている基準値19ミリを超える37ミリであったということが、現在の事実としてわかっているところであります。ただし、37ミリに、どのようにしてこうなったかということはまだ判明しておりません。脱線によって広がったという可能性もあるわけです。今後その点を含めてどのように脱線に至ったかということを突き詰めていきたいと思っております。
 もう少し補足いたしますと、1,067ミリというのは直線の時の値で、カーブの時は、カーブを曲がりやすくするため設計上広げてあるので、その値に対して19ミリ、そこまでが許容値ということで、今回はそれが37ミリだったということです。1,067ミリからということではないということです。

問: 事故からここ数日の間で、JR北海道の方でですね、かなりこうした軌間の広がりですとか、レールの異常について、長期間放置があったという発表がありました。それについての受け止めとですね、こうした会社の体質ですとか、保守管理体制全般に関してですね、今後どの様に調べていくつもりかについてよろしくお願いします。
答: 新聞等で報道されていることはもちろん承知しておりますが、現在、当委員会では、JR北海道に関する調査として、本年7月6日に函館線で発生しましたエンジン付近から発煙する重大インシデント、また、本年1月7日に根室線で発生しました走行中の列車のドアが開いた重大インシデント等について調査を行っているところです。当委員会としましては、今回の函館線における列車脱線事故も含めて現在調査を行っています事故及び重大インシデントについて、科学的、多角的に鋭意調査を進め、原因の究明と再発防止策の検討を行って参ります。当然のことながら、JR北海道においては防止対策が着実に実施されることを期待しております。今後どういう風に進めて行くかということについては現在まさに調査中でありまして、コメントは差し控えさせて頂きます。現在のところ申し上げられることは以上でございます。

問: 8mの長さで37ミリ、JRの調査では25ミリで、少なくとも25ミリから37ミリ広がっていた可能性があるということだとして、これだけ広がっていた場合に列車の運行の危険度というのはどうなのでしょうか。
答: 基準値は先程申しましたように19ミリで、これを超えると脱線しやすくなるということは一般的には言えると思います。しかしながら、脱線する前に別の列車が通っていて、それは脱線していません。この時になって広がったから脱線したのか、あるいは、たまたま脱線しやすい状況になって脱線したのか、その辺も含めて今後調査していくということです。
 脱線したときに、広がっている可能性もあります。脱線前の幅が37ミリだったというわけではありません。

問: 繰り返しになりますが、一連の問題に対する受け止めというものを教えて頂いてよろしいでしょうか。
答: 先程申し上げた所感と同じになりますが、資料1-2を見て頂きたいんですが、2枚目に鉄道の調査の進捗状況というものがあります。そこでJR北海道関係でどれだけあるかというと、一番左にナンバーがありますが、ナンバーで挙げますと、No.1、No.3、No.18、No.20、No.22、重大インシデントがNo.1とNo.2と、7件ほどありますね。これを参考にして頂きたいんですが、JR貨物に関して申し上げると、ここ2年で脱線事故が5件になりますかね。そのうち1件については報告書を公表しております。その1件は、原因として、貨車のブレーキ装置、ブレーキ力の伝達機構に雪が固着してブレーキ装置の作動を阻害し、ブレーキ力が得られなくなったために発生したとの報告書でありますが、これは既に公表しております。残り4件につきましても、引き続き、入手しました資料の分析等を行うなど、鋭意調査を行い、原因の究明等を行って参ります。現在進行中のものをまとめて、どういう関連性があるのか、あるいは、全体としてどのようになっているのかというのは、個別具体の事故調査について、ある程度結果が出てからでないと相互の関連及び何故これが起こったのかということが言えないということであります。

問: 現在調査にかかっている件に対してではなくて、現在JR北海道で、安全管理体制のずさんさが明らかになっている状況に対して、どういう風に思っているのかを教えて頂けますか。
答: それは大変難しいことで、つまり、我々の立場というのはどういうものかというと、事故あるいは重大インシデントを調べていって安全管理が、どこに抜けがあったのか、どうしてこういうことになったのかということを調べていくわけです。だから、調査の結果がある程度出ないことには、どういう風な安全管理体制だったのか、現実にどういう風に行われていたかということはなかなか捉えがたいところがありますので、そこで少し時間を頂きたいと申し上げた次第です。

問: この調査について今回、JR北海道の方が管理のずさんさが明らかになったことについて、再度例えば調べ直したり分析し直したりというのは、調査に影響を与える可能性はありますか。
答: 例えば、先に発表した1件についてですね、雪が積もってという、ブレーキ装置による事故の話をしましたが、これについて例えば遡ってどうなるかということになるとなかなか難しいかなという気がします。少なくとも私が憶えている限りこの件については機械的な要因ですから、それはないかなという気がします。あるいは石勝線の事故調査報告がありますが、あれは脱線のあと火災になったというものですが、脱線については、車輪踏面の検査のあり方や管理の徹底について勧告しており、今回の事案とは直接の関連はないものと思われます。一般論として申し上げるのはなかなか難しいということです。

問: 調査が終わった案件ではなくてですね、現在調査している案件について、これまで積み上げたものに付け加えてということはないですか。
答: それはあり得るかもしれません。軌道の管理については、全ての事故について今までも調べておりますので、そういった面では今回特に軌道の管理が問題になっておりますが、それで改めて特に調べるということは、見てみないとわからないと思いますけど、特にはないと思います。

問: 運輸安全委員会の調査は非常に丁寧で、時間もかけて、それぞれ1件の調査について精緻な分析をされていると思いますが、相次いでいることに対して、総括的・包括的にまとめて要因が考えられるといったことをまとめて公表するといったことは考えられているのでしょうか。
答: 将来そういったことを考えられないでもないですが、今のところ考えておりません。ただ、全体の事故として特徴があがってきたときに、共通点、相違点がどういうふうにあるか、ということは当然総括することになると思いますので、その時点で必要になれば、そういうことも考えられると思います。

問: 調査をしていて全体の案件については言えないというのはわかりますが、200件強の軌道の広がりの放置について驚きといいますか、過去にこういったことがないようなので、どう受けとめていらっしゃるかお聞きしたい。
答: レール異常をすべて調べるわけではないのです。全体的なものは鉄道局が行政的な調査をなさることになると思います。我々は個別の事故について調べているのです。できあがった段階で関連があれば調べることはあると思いますが、報道されたもの全部に立ち合っているものでもありません。あるいは、将来必要になるかもしれません。情報は集めておりますので、全体的なこととして、言えることがあるかないかといった検討はすることになると思います。

問: 今後の調査予定に、軌道の管理及び保守の実施体制に関する調査とありますが、これは、JR北海道の組織的背景についても踏み込んでいって調査するという趣旨も含まれるのでしょうか。
答: 我々は現実に、物理的にこうなっていたということをまず調べていって、全体としてこうなっていた、それには何か組織的な要因が関連したかどうか、という調べ方をしますので、いきなり組織的な観点から入るということはいたしませんが、地道な調査の結果を見てからということだと思います。

問: 先ほどおっしゃっていた直線は1,067ミリで、カーブの部分は、運輸安全委員会の見解としてはいくつなのでしょうか。
答: 数値はわかりませんが、カーブが曲がりやすいように、だいたい10ミリとか20ミリ広げることが一般的です。それは正規のやり方です。19ミリという基準値は、それに対してどれだけ広がっているかという限界値です。

問: 当該カーブの広さは今のところ運輸安全委員会としてはいくつと。
答: 基本的には、1,067ミリにスラックの10ミリを足したものです。それから19ミリ広がっていたということです。

問: 数年前の石勝線の事故があって、そこでいろいろとあって組織の問題が出てきて、その上で今回のようなことになって、そういった視点からは、しっかり調査してこうなったということについては、どうお考えですか。
答: 石勝線の事故調査については脱線及び火災の件について報告書が出ておりますが、組織の面からの検討は少なかったと思います。後の事故との関連等については、やっておりません。組織の面で影響は石勝線の火災についてはそこまでする必要が無かった、というように理解しております。
 組織の問題をどこまで考えるかということによると思うのですが、石勝線の脱線事故の場合は車両関係の保守のやり方を改める。石勝線重大インシデントの場合は信号の工事に対してやり方を改めるべきだとある種そういったところの組織の中でのやり方については今までも勧告を出すなどしてきました。少なくとも委員会のそもそもの目的というのは、単独の事故に対して原因を究明して類似の事故の再発防止をするというものです。それぞれ、いろいろ比較してやることが再発防止に非常に役立つということであれば否定することではないのですが、いきなり組織全体の問題というのは通常は難しいと思います。

問: 信号の補修でも軌道の補修でも、一般の人からすれば、補修ができていないということで、そんなに変わらないと思うが。
答: それはいくつかの案件を調べてみて共通性があったときに初めて言えることにだと思います。今後、そういう視点も持ち続けながら調査を続けていきたいと思います。

問: 個別の事故として、9月19日に発生したJR貨物の脱線事故については慎重なお答えとなるのも理解できるが、JR北海道という組織として、保守管理がずさんだったことが明るみに出ましたが、公共交通機関の安全を守る司のトップとしてどのようにお考えか。
答: それが真実であれば、そこを科学的、多角的に調べるのが我々の役割です。つまり待っていただきたいというのは、調査としてそこまで辿りつくかどうかということです。
 いろんな事故が起きていますが、共通事項としてそういうことがあるとすれば、調べなければいけない。どこまで辿っていかなければならないのか。調査を始めたばかりなんです。終点を指し示して、そこから調査をしていくかというとなかなか難しいところがあります。もちろん、先程申しあげたような視点を持ちながら調べていきたいと思います。
 今の段階でここまでいけるというのがはっきりと言えるかというと、なかなか難しいところですが、そういう視点は大事にしていきたいと思います。

問: そういう視点とは。
答: 組織的な間連があるかどうかということ、つまり、各線区で似たような現象が起こっていることは、そういう組織的な問題が関与しているのかどうか、そういう視点は持ち続けながら調べていきたいと思います。それが事故に直接結びついたかということは、これからの調査を待つ必要があるということです。
 どうしても我々は物理的な観点を主体にしますので、そういう人間的な観点というものは別にしているわけではなく、大事なものは勿論取り上げているが、以前、福地山線脱線事故のときにお話ししましたとおり、そこまでいかなければならないときはいくわけです。そういうことですから、見守っていただければと思います。できるだけ早く結論を出すように努力したいと思います。

問: 進捗状況で出ている脱線事故5件にあっては、軌道が広がっていたというものはなかったのか。
答: 中間報告を出したものはあるかも知れませんが、まだ公表できる段階の調査内容ではありません。現在進行形の調査の内容であり、今、その内容が漏れると、様々な影響がある可能性があるということを、常々心配しております。

問: 今回の事故では、初動調査結果での数値を出されていますが、他の事案の初動調査の段階ではどうだったのかということをお聞きしているのですが。
答: 今の時点で、軌道がおかしかったという事実をこれまでに公表したことはありません。

問: 調査中なので回答できないということですか。
答: はい。

問: 今回、8mにわたって最大で37ミリ広がっていたとありますが、10ページの図で、大体どのあたりですか。
答: 列車が進んだほうの反対側、この図で、約8mと書いている右の矢印のあたりが一番広がっていました。

問: ここの一点が広がっていたのか、一定の区間が広がっていたのか。
答: 一番広がっていた部分が37ミリでした。

問: そのあたりが一番広がっていて、ポイントの方にいくにつれて、軌間の広がりは狭くなっていたという感じですか。
答: データがまちまちであるため、一概に一定の方向に狭くなっているというわけではありません。

問: 傷がついていたのはこの8mの区間で、19ミリより広がっていた部分というのはこの前後でどのくらいあったのでしょうか。
答: 申し訳ないですが、細かいデータを持っていません。

問: これは、あとで調べていただいてご回答いただけますか。
答: それがどういうデータになるか解析してみないとわからないこともあり、出てきた数値をどんどん出すというのは、難しいところだと思います。

問: 可能な限りお答えいただければいいのですが。
答: どんな調査になるのかまだわかりませんし、まだすべてのデータを整理していませんので、難しいと思います。

問: カーブということですが、図では直線のように見えますが。
答: 前にある全体を示す図では左カーブになっています。左カーブの内側の車輪が内側に脱線しています。

問: どのくらいのカーブだったのですか。
答: 左曲線で半径400mです。5ページの図に左曲線と書いてあるところの最後のほうです。

問: レールの鉄骨は切れ目無しで書かれていますが、これは模式図だからですか。繋がった一本のレールですか。
答: 10ページの図の、約8mと記載した2本のレールのうちの下のレールには繋ぎ目が見えます。

問: 繋ぎ目のあたりで右側に脱線したのですか。
答: 左側の繋ぎ目のあたりで右側に脱線していました。

(米国国家運輸安全委員会ハースマン委員長の運輸安全委員会表敬訪問関連)

問: NTSBのハースマン委員長の表敬訪問について、来日の目的と、過去にNTSBの委員長が表敬訪問されたことがあるのかどうか教えて下さい。
答: 前の委員長のローゼンカー氏が訪ねてこられたことはあるのですが、退任された後でしたので、現役の委員長が来られるのは初めてになると思います。委員会に来られる以外にどんな目的があるかは存じ上げないというしかありません。

問: 後藤委員長がNTSBに訪問されたことはあるのでしょうか。
答: 直接アメリカに行ったことはありませんが、委員長会議がありますので、何度かお目にかかったことはあります。

問: 来日の目的は如何でしょうか。
答: ハースマン委員長も今年の1月に再任され、3期目なので、それを機会にあるいはいろいろなところにご挨拶に行っておられるのかもしれません。本意は我々では推測しかねますが。我々としては、日本のJTSBを訪ねて頂いて、たいへん光栄に思っております。

問: ボーイング787の時に、連携して調査をやっておられるかと思いますが、例えば、調査官の方の労いであるとか、何かしら話をするということもあるのでしょうか。
答: もちろんそういう話も出るかと思いますが、787調査については、NTSBの担当者とは毎日やりとりして情報交換しているので、そういう話が出るとしても、調査方向とか全体的な枠組みの話が出ることはあるかもしれませんが、内容そのものについて話すことは、多分無いと思います。
NTSB委員長の来日については、前のローゼンカー委員長が自動車関係の最新の安全技術のために来日されています。

問: その時は、JTSB委員長を表敬されたのでしょうか。
答: JTSBには寄られませんでした。

(四国航空(株)所属回転翼航空機火災事故に係る勧告に基づく措置状況関連)

問: 四国航空側の講じた措置についてはありましたが、EASAに対する安全勧告について回答は来ていないのでしょうか。
答: まだ返事が来ていません。ただし、四国航空に対する勧告とは内容が異なっておりますので。

問: 四国航空に対するものとは別ですね。
答: 別です。

問: 既に製造された機体への措置についても、勧告で示しているということですね。
答: EASAに対する安全勧告はヘリコプターに対する改善勧告で、四国航空に対しては四国航空という運航会社対する勧告ですので、それぞれ別のものです。
 EASAに対する安全勧告は、荷物室にある電気装備品及び配線について考慮されたいということと、航空機の非常操作のうち、記憶によって直ちに対処しなければならない事項を明示しろと指導して頂くことをご検討いただきたいというものです。

資料

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