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委員長記者会見要旨(平成28年4月26日)

平成28年4月26日(火)13:00~13:16
国土交通省会見室
中橋和博委員長

発言要旨

 運輸安全委員会委員長の中橋でございます。
 ただいまより、4月の月例記者会見を始めさせていただきます。

1.事故調査の進捗状況報告

(九州新幹線脱線事故関連)

 はじめに、4月14日午後9時26分頃、JR九州 九州新幹線の熊本駅~熊本総合車両所間で回送列車が脱線する事故が発生しました。この事故による負傷者はありません。
 運輸安全委員会としましては、本事故の調査を行うため、15日~16日の間、鉄道事故調査官3名を現地に派遣し、
 ・ 脱線の状況
 ・ 車両や軌道の損傷状況
 ・ 関係者からの聞き取り 等
 の調査を実施しました。
 引き続き、車両、軌道・構造物、地震観測データの情報収集など必要な調査を実施し、原因究明を行ってまいります。

(専門委員の任命)

 次に、専門委員の任命がありましたので、ご報告申し上げます。
 個別調査において外部の専門的知見を得る必要がある場合、運輸安全委員会設置法第14条に基づき、学識経験者を専門委員として任命し、調査に参加していただいております。
 平成27年7月26日に発生した調布市小型機墜落事故につきまして、これまで、調査により収集した各種データ等の整理・分析を進めてきました。
 今般、収集したデータを基に、今後、さらにシミュレーター等を活用した事故機の詳細な飛行解析を進めるため、飛行技術の研究分野において、専門的な高い識見を有するJAXA航空技術部門 飛行技術研究ユニット人間工学セクションのセクションリーダーである舩引 浩平氏が4月18日付で専門委員に任命され、今後、調査に参加していただくことになりました。

(調布小型機墜落事故関連)

 米国で行われましたエンジン、プロペラ等の分解調査に関する結果については、4月22日にNTSBから報告を受けました。
 現在、その報告内容を精査しているところです。
 今後は、これまでの調査で得られた事実を含め、分析を進めていく予定としております。

(進捗状況一覧)

 続きまして、現在、運輸安全委員会が調査を行っている事故及び重大インシデントの調査状況についてですが、説明は省略させて頂きますので、詳細は資料をご覧ください。

 私からは、以上でございます。
 何か質問等があればお受けいたします。

2.質疑応答

(調布小型機墜落事故関連)

問: 米国で行われたエンジン、プロペラの解析結果について概要を教えていただけますか。
答: ライカミング社につきましてはエンジン本体及び補機類、それからハーツェル社からはプロペラ、プロペラガバナー、ターボチャージャーに関する分解・調査について報告を受けました。両社からの結果報告によりますと、「各残骸部品を分解しての調査からは、不具合発生の可能性を示すような状況は確認されなかった。」とのことでございます。

(九州新幹線脱線事故関連)

問: 九州新幹線について現時点で脱線の原因や、話せることがあれば教えてください。
答: 現在調査中でございまして、詳細につきましてはお話できる段階ではございません。引き続き、車両、軌道・構造物、それから地震観測データの情報収集などを実施して、分析等を進め、原因究明を行ってまいります。

問: 九州新幹線について、新幹線の脱線が国内で4例目ということで、損傷状況などご覧になっていると思うのですが、結果はまだ調査中ということですが、どのように受け止められましたでしょうか。重大なものであったとか。
答: 地震によるところの脱線に関しましては3例目ということになります。過去、中越それから東日本大震災の脱線と似ているか、また別の原因なのか、今原因究明をしているところでございます。いずれにせよ、過去の2例の脱線に関しての対策に関しましてはきちんととられており、今後、不十分なところがないかを含め、調査していきたいと考えております。

問: 不十分なところということですが、早ければ明日にも運行再開の見通しであるわけですが、その辺についてのご所見をいただければと思います。
答: 現時点では原因究明がまだきちんとできておりませんので、今お話しするところはあまりないかと思います。

問: 不十分であるというお話がありましたが、そのままの状態で運行再開するのは特に問題はないということでしょうか。
答: 運行者の方も安全には十分配慮して運行するものと考えております。

問: 先程、不十分とおっしゃったところをもう少し具体的に教えて頂けますか。
答: 今、原因を究明中であり、具体的なところまで申し上げられないことをご了解頂ければと思います。

問: その辺が明らかにされないと、JR九州さんとしても手の打ちようがなかなか難しいし、乗られる方も今後、復旧した場合に不安になったりするかも知れないので、出来れば教えて頂きたいと思います。
答: 地震による新幹線の脱線事故は今回が3回目で、1回目は中越地震の際の上越新幹線脱線事故で、2回目は東日本大震災時の仙台での東北新幹線の脱線事故です。それぞれの地震は中越が直下型で、仙台の場合はプレート型ということで、周波数とか振動の形態が違うため脱線の形態が異なるわけです。中越の時はいわゆるロッキング脱線という四股を踏むような脱線で、仙台の時は振り子のように共振してレールを乗り越えた脱線です。今回はそれに対して共通性があるのか、新たな特性があるのか、これから地震の波形とか高架橋の振動とか推定してみないと分からないので、それなりの時間がかかるのではないかと思います。対策については、阪神・淡路大震災時に新幹線は幸いなことに走ってはいませんでしたが、高架橋が大幅に壊れたことを踏まえ、耐震補強が行われております。中越の時には、多少の損壊はありました。東北新幹線と今回は高架橋の耐震性ということでは、ほぼ対策は満たされているのではないかと思います。上越事故後に新幹線対策協議会での検討を踏まえ、脱線防止ガードや逸脱防止ガードなどを各社が付けています。今回、九州新幹線の事故発生区間には付けられていなかったのですが、今回の区間は曲線部で高速で走るところではありませんでした。事業者においては高架橋の健全性を確かめた上で、徐行等の措置を取りつつ運行を再開するとのことです。詳細については、これから細部を調べるため現時点では申し上げられません。

問: 直下型の地震の場合は、P波とS波を感知するシステムは機能しないのではないかといわれていますが、この点のご所見はいかがでしょうか。
答: 感知して作動するのは時間的に不可能に近く、早期の地震探知システムが機能を発揮することは難しいと思われます。仙台の場合は、脱線はしましたがプレート型であったので、もともと70㎞位の速度で走っていましたが、脱線したときには20㎞ほどに落ちていましたので、プレート型地震では一定の効果があるのではないかと思います。直下型では事前に感知してブレーキをかけることは、ほとんど不可能だとの考えで良いかと思います。

問: 不十分であるかどうかを調査する前に、今、言及されたのは脱線した場所であっても脱線防止装置は不要だと発言されたと認識したのですが、今後もその場所にはいらないということですか。
答: 全てのところに付けた方が良いとの考え方もありますが、その場合、危険度の高いところから付けていくとの考え方になります。

問: 脱線した場所は危険な場所ではないのですか。
答: 比較的、速度が高くないということで、高速で走る部分に比べれば危険度は少ないと思われます。

問: そこには設置しなくてもよいということですか。
答: 設置した方が良いとの考え方がありますが、より早く付けた方がよい場所が他にあるかも知れません。それは調べてみないと分かりません。

問: 脱線した場所に、その装置がいるかいらないかは、一度、脱線が起きているわけですが、それよりも先に付ける場所があるということですか。
答: それは相対的な評価ですのでわかりません。大きく逸脱しないようにするのが逸脱防止装置で、今回は逸脱はしていますが、より必要度が高いところがあるかも知れませんので、調べてみないとわかりません。

問: 逸脱の仕方によっては車体が倒れていた可能性もあったわけですが、それを含めてどうなのでしょうか。
答: 全ての場所に付ければ良いとの考え方もありますが、現実的には経費とか工程とかがありますので、緊急度の高いものから付けることが重要であると思います。直下型地震が起きたとき、よりリスクの高いところから付けることが現実的であると思います。一般的には脱線しても逸脱しない方が良いのです。今回は回送列車ですが、現場は半径1,000mの曲線であって、営業列車でも早く走らない場所です。

問: 高架橋の健全性を確かめているが徐行運転するので大丈夫との発言がありましたが、徐行というのは車であれば20㎞程度かと思いますが、新幹線の世界だと何㎞位になるのでしょうか。
答: 通常その区間を走る最高速度に達しないことを徐行としています。徐行というのは運転規制と言って速度を下げるもので、特に100㎞以下とかの定義はありません。

資料

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