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委員長記者会見要旨(平成29年12月19日)

平成29年12月19日(火)14:00~14:14
国土交通省会見室
中橋和博委員長

発言要旨

 運輸安全委員会委員長の中橋でございます。
 ただいまより、12月の月例記者会見を始めさせていただきます。

1.事故調査の進捗状況報告

 はじめに、事故調査の進捗状況について、ご報告します。
 前月の定例会見から新たに調査対象となった事故及び重大インシデントについては、鉄道モードで3件発生しています。
 12月6日の函館線銭函駅での列車脱線事故、12月11日の東海道新幹線名古屋駅での重大インシデント及び12月16日の鹿児島線千早駅での人身障害事故となります。
 その他の進捗状況については、お手元の資料をご覧いただければと思います。

 次に主な案件の調査状況について、3件ご報告します。

 1件目は、専門委員の任命についてです。
 この専門委員とは、個別調査において外部の専門的知見を得る必要がある場合、運輸安全委員会設置法第14条に基づき、学識経験者を専門委員として任命し、調査に参加していただくというものです。

 対象事案は、平成29年10月に南海電鉄南海本線で発生した橋梁の沈下に伴う列車脱線事故で、現在、調査により収集した各種データの整理・分析を行っているところですが、このたび、河川の流水による橋脚が沈下したメカニズムに関する分析を進めるため、鉄道総合技術研究所の防災技術研究部 大田直之部長を専門委員として任命し、今月、12月からすでに調査に参加いただいております。

 2件目は、12月11日、名古屋駅において発生した新幹線車両における重大インシデントについてです。

 12月12日に鉄道事故調査官3名を現地に派遣して、車両の台車に発生した損傷及び亀裂の状況に関する調査、列車の運行経過に関する鉄道係員からの聞き取り調査等を行っています。

 運輸安全委員会としましては、今後も博多総合車両所へ移送した台車の詳細な調査、車両の整備・点検状況に関する調査等々の情報収集を進めるとともに、得られた情報の整理・分析を行い、亀裂に至った要因を含め、車両の損傷発生の原因究明を行って参ります。

 3件目は、11月8日、山梨県内の場外離着陸場を離陸し、栃木ヘリポートに向かって飛行していた東邦航空所属のヘリコプターが、群馬県上野村の道路上に墜落し、搭乗者4名全員が死亡した航空事故事案について、その後の調査状況についてです。

 前回の会見でお伝えしましたが、本件の調査は事故機の設計・製造国であるフランスと協力して進めています。

 現在、墜落原因を詳細に調査するため、同機のテールローター等を機体の設計・製造者の施設があるフランスに発送し、今週、12月18日から23日にかけ、運輸安全委員会の航空事故調査官1名を現地に派遣し、フランスと協力しながら、詳細な調査を行っているところです。

 引き続き、運輸安全委員会では、機体の詳細調査、関係者からの聞き取り等の各種データの収集を行うとともに、得られたデータの分析を行い、早急な原因究明に努めて参ります。

 最後に、この定例記者会見も、本日が今年最後ということになりましたので、この1年を振り返って総括させていただきます。

 まず、事故調査報告書の公表についてですが、前月までの件数として、今年は、航空が22件、鉄道が23件、船舶の重大案件が14件の合計59件の事故調査報告書を作成し、公表しています。

 主な報告書を紹介いたしますと、まず航空では、平成27年7月に発生しました調布の小型飛行機墜落事故の報告書を7月に公表、併せて、国土交通大臣に対しまして、自家用小型機の安全性向上策に関する勧告を行いました。
 鉄道では、平成28年4月に発生した熊本地震に伴う九州新幹線脱線事故の報告書を先月11月に公表しました。
 船舶では、平成28年12月に発生した9名の死亡・行方不明者となった漁船大福丸転覆事故の報告書を11月に公表しました。

 いずれの事案におきましても、報告書にまとめられた調査結果に基づき、今後、関係者が必要な措置を講じ、安全性の向上を図ることで、同種事故の再発防止につなげていかれることを期待しているところです。

 次に、今年発生した事故等についてです。
 昨日までの件数となりますが、航空は事故が20件、重大インシデントが17件の計37件、鉄道では事故が19件、重大インシデントが1件の計20件、船舶は重大事故が11件、インシデントが1件の合計12件、各モード合わせて69件の事故及び重大インシデントが発生しています。
 主なものとして、航空では、今年は特に小型航空機とヘリコプターの事故が増えており、3月に発生した長野消防防災ヘリの墜落事故、6月の立山セスナ機墜落、8月の奈良での小型機墜落、11月の上野村ヘリ墜落と、多くの死亡者を出す痛ましい事故が続いています。
 運輸安全委員会としては、再発防止策を含む報告書を早期に取りまとめ、航空機の安全の向上に寄与していくところです。

 鉄道では、今年発生した調査対象事故19件のうち踏切道に関係するものが約半数の9件、そのうち第3種及び第4種踏切道関係は7件となっています。
 こうした踏切道における死亡事故については、調査対象となった平成26年度から合計しますと29件発生しておりますので、これまでの調査報告を踏まえ、事故の傾向・問題点・防止策の分析を進め、再発防止につなげていきたいと考えているところです。

 船舶では、今年6月に伊豆半島沖でコンテナ船と米海軍のイージス艦が衝突する事故が発生していますが、これについても米国コーストガードと連携して事故調査を進めているところです。

 国際協力では、今年9月、国際運輸安全連合ITSAの委員長会議を東京で開催しています。
 また、インドにおける鉄道事故調査支援など、各モードにおいて国際連携・協力が一層進みました。今後とも安全向上に資する国際的な取組を続けていきたく考えております。

 以上、簡単にこの1年を振り返ってみました。

 本日、私からご説明するものは、以上です。
 何か質問等があればお受けします。

2.質疑応答

(東邦航空ヘリコプター墜落事故関連)

問: 東邦航空所属のヘリコプター墜落事故について、フランスのメーカーにはテールローター以外に何を発送したのですか。
答: 計器板を発送しています。

問: 現地に調査官を派遣して機体の状況を調べるということですが、いつまで調査官を派遣する予定ですか。
答: 23日までの予定で、テールローターを中心にフランスの事故調査当局とメーカー及び日本の運輸安全委員会で調べているところです。

問: 今回の墜落原因はテールローターにあると見て調査を進めているのですか。
答: テールローター・ブレードの取付ピンが破断していたということが分かっておりますので、そのことを中心に何故破断したのかを調査をしているところです。

(東海道新幹線重大インシデント関連)

問: 新幹線の重大インシデントについて、初の重大インシデントということもあり、関心が高く、一部報道では亀裂の長さが10センチ以上といわれていますが、現在、運輸安全委員会で把握している亀裂の状況等、分かる範囲で教えていただけますか。
答: 調査官から報告を受けているところでは、14センチほどの亀裂が入っていたということを聞いています。その亀裂が原因となって、様々な異音とか異臭とかしたことが考えられますが、詳細につきましては、これから調査していくところです。

問: 亀裂が入っていた理由についても、今後の調査ということですか。
答: はい、台車の亀裂というのはあまりないということですが、これにつきましても設計・製造・検査すべてのところで、何故このような亀裂が発生し、かつ検査で見つけられなかったのかということを含めて調べていきたいと考えています。

問: 台車の異音に気付いてから3時間程度運行を続けていたということも報道に出ています。それを踏まえ、かなり危険性の高かったインシデントと思われているのでしょうか。
答: 台車の亀裂が直接脱線につながるかどうかは、今の段階で何ともいえないところですが、少なくとも異音なり異臭がした段階で、止めてもらえれば良かったのではないかと思っております。これにつきましても運転係員等の聞き取り調査をしているところですので、そのあたりについても安全に関わることがあったのかどうか調査をしていきたいと考えています。

問: JR西日本の話では、当日未明の目視検査では亀裂がなかったということですが、委員会のこれまでの聞き取り状況等を踏まえると、亀裂は走行中に発生した可能性が高いとお考えですか。
答: これは、あくまでも一般論で、今回の新幹線がどうであったかはこれから調査してみなくては分からないのですが、亀裂というのは、だいたい何か小さな起点があって、それが何回も使っているうちに徐々に広がっていくもので、急に発生したものとは考えにくいと思われます。

問: 一般論ベースで考えると、いきなりパカッといったのではなく、細かいものがあり、その見落としということも可能性として考えられるのでしょうか。
答: そうだと思われますが、台車等の下回りの検査は難しいと聞いています。そのあたりについても、何故検査で見つけられなかったのか、詳しく調べていきたいと考えております。

資料

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