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委員長記者会見要旨(平成30年4月24日)

平成30年4月24日(火)14:00~14:20
国土交通省会見室
中橋和博委員長

発言要旨

 運輸安全委員会委員長の中橋でございます。
 ただいまより、4月の月例記者会見を始めさせていただきます。
 本日は、事故調査の進捗状況及び国際業務体制の強化についてご報告します。

1.事故調査の進捗状況報告

 はじめに、事故調査の進捗状況について、ご報告します。
 前月の定例会見から新たに発生した事故及び重大インシデントについて、航空モードでは、4月9日に発生した関西空港での大韓航空機の機体損傷事故、4月11日に発生した羽田空港でのタイ国際航空機の重大インシデント、4月15日に発生した広島県尾道市でのせとうちシープレーンズ社の機体損傷事故、4月22日に発生した広島県安芸高田市での超軽量動力機の墜落事故の4件、鉄道モードでは、4月11日に発生した予讃線での踏切障害事故の1件、船舶モードでは、4月2日に発生した江東区有明の岸壁での練習船日本丸実習生死亡事故の1件、3モード合わせて6件の事故及び重大インシデントが発生しております。

 次に、主な案件の調査状況について、ご報告します。

 1件目は、3月24日8時11分頃、関西空港発福岡行きピーチ・アビエーション151便エアバス式A320-214型が、福岡空港に着陸した際、前脚タイヤ2本を横に向けてパンクした状態で、滑走路上に停止した航空重大インシデントについてです。
 これまでの調査で、パイロットの操作を前脚タイヤに伝えるトルクリンクという部品からピンが脱落していたことが確認されたことから、3月30日、運輸安全委員会は、航空局に対して当該情報を提供しました。
 今後、機体の設計・製造国であるフランスの事故調査機関の協力を得つつ調査を進めるとともに、調査によって得られたデータの解析を実施し、早急な原因究明に努めてまいります。

 2件目は、4月9日21時33分頃、韓国済州発関西空港行き大韓航空733便ボーイング式737-900型が、関西空港B滑走路において着陸復行を行った際、機体を損傷させた航空事故についてです。
 機体の損傷により事故と認定されましたが、乗員・乗客の負傷はありませんでした。
 運輸安全委員会は、事故発生の通知を受け、4月10日及び11日の両日、航空事故調査官3名を派遣し調査を行いました。
 その結果、機体後部胴体下面に最大幅約20㎝、長さ約150㎝の擦過痕、滑走路上に約15mの擦過痕を確認しました。
 今後、機体の設計・製造国である米国及び運航・登録国である韓国の事故調査機関の協力を得つつ調査を進めるとともに、調査によって得られたデータの解析を実施し、早急な原因究明に努めてまいります。

 3件目は、4月11日23時51分頃、バンコク発羽田行きタイ国際航空660便ボーイング式747-400型が、羽田空港に向けて進入中、同空港の北東約8㎞、高度約170m付近において、対地接近警報装置の警報が作動したため、当該警報に従い、着陸復行を行った航空重大インシデントについてです。
 運輸安全委員会は、4月17日に航空重大インシデント発生の通知を受け、航空事故調査官4名を指名し調査を行っております。  これまでに、当日の管制官からの聞き取り調査を実施しております。
 今後、操縦士からの口述聴取や管制交信記録、管制レーダー記録等の解析も進めつつ、早急な原因究明に努めてまいります。

 その他の進捗状況については、お手元の資料をご覧ください。

2.国際業務体制の強化

 次に、国際業務体制の強化についてお知らせします。

 国際調整及び協力に関する業務について、この4月に事務局の組織改編を行い、総務課に「国際渉外室」を新設しました。

 「国際渉外室」は、これまで配置されていた「国際渉外官」を強化したもので、主な改編の目的は、国産ジェット旅客機MRJの展開により、新たに設計・製造国としての国際的な役割や責任が加わることから、事故発生に備えた国内外の関係者との連携体制の構築や国際ルール改正への対応能力の強化を図ったものです。

 併せて、来月開催される国際運輸安全連合の委員長会議についてご紹介します。この会議は、日本では、昨年9月に初めて開催され、ホスト国として私が議長を務めたものです。
 国際運輸安全連合の正式名称は、International Transportation Safety Associationで、頭文字をとってITSAと呼ばれています。
 ITSAは、米国、フランス、オーストラリア等16の国や地域の事故調査機関の委員長級をメンバーとし、航空、鉄道や船舶など複数の輸送モードをカバーする国際的な組織です。
 その主な目的は、毎年各国メンバーが集まって開催される会議において、事故調査から得られた教訓や様々な情報を共有することにより、運輸の安全性を向上させることにあります。
 今年の会議は、5月13日から16日の間、アゼルバイジャンのバクーで開催され、当委員会からは、私と鉄道部会長の奥村委員、事務局職員の3名で出席し、「航空機からの非常脱出に関する安全意識普及の取組」や「地震による新幹線脱線事故とその対策」を紹介する予定です。
 このような国際会議への参加を通じ、海外の関係者とも積極的に情報共有や意見交換を行い、我が国の運輸の安全性向上に取り組んでまいります。

 本日、私からご説明するものは、以上です。
 何か質問等があればお受けします。

3.質疑応答

(ピーチ・アビエーション機重大インシデント関連)

問: ピーチ機の重大インシデントについて、ピン以外にもトルクリンク周辺から部品が脱落しているかと思いますが、その後、周辺の部品は見つかったのでしょうか。
答: 現在、ピン以外は見つかっていません。

問: 不具合は、着陸時に起きたものなのか、あるいは離陸時に起きたものなのか、どちらとお考えでしょうか。
答: 調査を進めている段階です。ピンは、着陸時の滑走路上で見つかりました。

(大韓航空機事故関連)

問: 大韓航空機の事故について、着陸復行の際に機体下面を損傷したということですが、着陸した瞬間に接触したのか、着陸をやり直そうとした時に接触したのか、どちらとお考えでしょうか。
答: 復行の過程で接触したと聞いておりますが、現在、調査中ですのでそれ以上のことは分かっておりません。

(国際業務体制の強化関連)

問: 組織改編で国際渉外室を設置したことについて、改めて日本としての役割として、どのようなことをしていかなければならないのか、お伺いできますでしょうか。
答: 現在、MRJは型式証明取得の作業を行っているところですが、今後、MRJが事故等を起こした場合、設計・製造国の役割として調査に参加するための対応。また、ICAO(国際民間航空機関)などの場で事故調査関係の意見発信をしていくということです。

(新幹線重大インシデント関連)

問: 新幹線の重大インシデントについて、進捗状況はどの程度でしょうか。
答: 現在、原因究明に向けた調査を継続的に進めており、台車の亀裂の発生原因に関し、台車の設計、製造から使用過程に至るまで幅広く詳細な調査・分析を進めているところです。当委員会としては、できるだけ早期に調査結果を取りまとめるよう努めてまいります。

問: 中間的に調査内容の公表とか経過報告をされる予定はありますか。
答: 現在、調査の進捗に注力しているところであり、経過報告については、今後、調査・分析により得られた内容や、調査に要する期間等を考慮して、委員会として判断していくことになります。

問: 2月末にJR西日本と川重重工が、製造上の不備により台車の強度が不足していた可能性があるとする発表を行いました。運輸安全委員会では、1月の会見で経過報告の可否について質問があり、改めて必要とあれば途中経過なり事実情報を公表するということでした。そのJR西日本と川崎重工が会見する直前の2月の会見では、台車問題には言及されず、3月の会見で両者が発表された事実を追認する形を取られました。本件について、利用者は同種事故の発生を強く懸念していて、報道各社も興味深く、調査結果を見守っている段階です。中立的な立場の運輸安全委員会が利用者の判断材料となる情報を公表するのは、至極真っ当なことであり、運輸安全委員会のホームページを見ても、タイムリーで積極的な情報発信をうたっておられます。判明した事実については、二者の話を追認するのではなく、独立独歩で速やかに公表すべきだと考えますがいかがでしょうか。
答: おっしゃるとおり、我々もその努力をしているところで、そう言う事実が判明した場合には、是非ともその様にしようと考えています。ただ、一方で中途半端な調査結果でもって発表することにより、逆に間違った情報を出してしまう可能性もあるわけで、慎重にそのあたりは判断して、必要な情報は出来るだけ早く発信していけるように考えています。

問: JR西日本と川崎重工の会見内容については、ある段階で把握されていたと思いますが、それを運輸安全委員会として、追認する形で発表しなかったというのは、あまり重要な事象ではなかったとのお考えですか。
答: 非常に重要な事象だと考えております。JR西日本、川崎重工についても、それぞれ独自に調査を行われており、再発防止対策をできるだけ早くやろうとされているところで、それは各事業者、製造業者が当然やっていただくものと考えております。それとは別に運輸安全委員会は、どうしてこういう事象が発生したのかということをきちんと調査して報告書にまとめるという努力をしているところです。

問: 10月で運輸安全委員会の前身の事故調から改組して丸10年になると思いますけれども、JR福知山線の脱線事故からもうすぐ13年、当時、委員の方が調査内容をJR西側の働きかけで漏洩したという問題もあって、組織改善としていろいろ進めていると思いますが、今まだ足りない点とか、もっと改善していきたい点、思っているところがあれば教えて下さい。
答: ご存じのように、私ども福知山線脱線事故の時に情報漏洩というものを契機としまして、ご遺族や有識者などの第三者による検証を行っております。平成24年に業務改善アクションプランを策定いたしまして、適正な事故調査の実施、適時適切な情報発信、被害者への配慮、組織基盤の充実の観点から、公正中立な立場で客観的・科学的な事故原因の究明に取り組んでいるところです。そのあたりは、全て実施され、かなり改善されたと思っています。

問: 先程のJR西日本と川崎重工の話とつながると思いますが、これまでも調査結果の公表まで1年とか1年以上かかるものがあります、いろんな見地から検証され、調査されていると思いますが、同じような事故の再発防止という点から見ると、あまりに時間がかかりすぎるとその重要性が霞んでしまう可能性が十分あると思います。委員長もそれを意識され、早期に、早期にと言っておられる。時間がかかるというのは、こちら側も理解はしていますが、そういう中で、利用者の視点から情報公開とか発信の強化というものの必要性について何か感じられていますか。
答: そのあたりは重々意識しており、社会的関心の強い大きな事案については、非常に時間がかかるものが多いので、1年を目処に途中経過を出すということはこれまでもやってきております。本件については、様々な情報が事業者あるいはメーカーから出ておりますので、我々が出す必要性があるのかということも考え、委員会で審議して、必要ならば途中経過なりの情報を発信していきたいと考えているところです。

問: 一般論として、事業者とかメーカーは、不都合なことは隠すおそれがあるというのも事実です。隠すかどうかは別として、中立的に誰にも影響されないところが、そういう情報発信するというのは極めて重要であると思いますが、その点についてはいかがでしょうか。
答:  そういう意味で、しっかり調査をして、どう考えてもこれが原因であるという確信を得て報告書にまとめているところですので、どうしても時間がかかってしまう。その前に事業者なりメーカー側が発表をするわけですけれども、それについて誤っているならば、早めに何らかの情報発信することになるかと思います。そのようなスタンスで、できるだけ公平に正しい原因究明を目指しているところです。

資料

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