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運輸安全委員会発足10周年記念シンポジウムの開催について

中橋委員長挨拶

10年を総括する石川委員

ヒューマンファクター分析の重要性を指摘する小松原教授

 

事故調査の課題を議論するパネルディスカッション

 

議論をリードする中西委員

 

閉会の様子

 運輸安全委員会は、平成20年10月1日に当時の航空・鉄道事故調査委員会と海難審判庁の原因究明部門を統合再編して発足後、平成30年10月に10周年を迎えました。
 これを記念して平成30年10月5日に東京都千代田区大手町のサンケイホールにおいて「ヒューマンファクターに着目した事故の特徴と運輸安全委員会が果たすべき役割」をテーマとするシンポジウムを開催、航空、鉄道 及び海事分野の事業者や関係団体、関係行政機関等から348名のご出席をいただきました。

 冒頭、中橋和博委員長からの挨拶の後、法制担当の石川敏行委員による「運輸安全委員会の10年を振り返る」と題する記念講演が行われました。
ここでは、運輸安全委員会の発足の経緯や審議体制、報告書の公表や勧告数などの外部発信の状況、情報発信の一環として作成したシンボルマークのほか、船舶事故ハザードマップの提供など、運輸安全委員会のこれまでの取り組みを振り返り、概説いたしました。

 その後、早稲田大学理工学術院の小松原明哲教授により「これからのヒューマンファクターを考える」をテーマとした基調講演を賜りました。その中で、小松原教授からは、人口減少とヒューマンファクターとの関係に言及され、「人口減少によって人手が不足すると業務の質と量が変わるため、今後、人的要因に起因する事故が増加するおそれがある」旨のご指摘をいただきました。

 後半のセッションにおいては、航空、鉄道及び船舶の各首席事故調査官から、ヒューマンファクターに着目した調査事例や事故調査の課題、将来展望に関するプレゼンテーションが行われるとともに、引き続き中西美和委員をコーディネーター、航空部会の宮下徹委員、鉄道部会の奥村文直委員及び海事部会の田村兼吉委員 及び基調講演で御講演頂きました早稲田大学の小松原教授をパネリストとするパネルディスカッションが行われました。

 パネルディスカッションは、3つのアジェンダに分けて行われ、アジェンダ1では、「ヒューマンファクターの視点から見た事故調査の現状・課題・将来展望」について議論がなされ、①原因関係者との間で事故調査が責任追及ではなく再発防止が目的であることに対する理解の醸成が事故調査への協力を求める上で重要であること、②想定外の事故を想定するといった視点に基づいて日頃から異常時に備えるべく事故の対処に係る訓練を行っておく必要があること、③インシデントの調査から得られた「大きな事故に繋がりかねない不安全要素」を見い出して、関係事業者等に対して注意喚起を行っていくことが再発防止に繋がること、などの意見が出されました。

 続くアジェンダ2では、「諸外国との比較における事故調査手法」をテーマにディスカッションがなされました。ここでは、①アジア諸国等から求められている日本の鉄道の事故調査手法やスキル等の知見の発信により、事故調査で世界の鉄道の事故防止に貢献する活動をしていくこと、②外国の例に見られるようなヒューマンファクターに関する専門家の育成を図るとともに、モード横断的なヒューマンファクターに関する調査体制を確立する必要があること、③諸外国の事故調査機関が参集する国際会議において、各国の事情を共有し、連携することによって、相互の情報収集などが可能となるようなネットワークを構築することが重要であること、などの意見が出されました。

 最後のアジェンダ3では、「変化する社会情勢、新技術、自然環境を見据えた対応」をテーマに議論がなされました。それにより出された意見としては、①大型台風による走錨事故など、大規模自然災害による事故に係る分析力を強化するとともに有効な再発防止策を発信し貢献していくこと、②船舶の自動運航の指標となり得る衝突危険性を算出する技術に関する研究を関係機関と連携して進めていく必要性、③人口減少による対応として、人手不足を自動運転、AI等で補っていく場合に、発生する事故の本質が変わっていく可能性があることから、それに対応できる新たな調査分析手法を考えていく必要があること、などがあげられました。

 シンポジウムを締めくくる中橋委員長の講評では、ヒューマンファクターに対する適確な理解が同種事故の再発防止に寄与すること、事故調査においては主観的要素に留意しつつ科学的・客観的手法を活用した原因究明を行う必要があること、更には、特に今後のヒューマンファクターに関して、航空、鉄道及び船舶の全分野の事故を横断的に評価・分析できる人材の育成・確保の必要性について述べられるとともに、各々の事業者の日頃からの安全推進に対する意識の高さに対する感謝の意を表され、更には、我々自身も安全に対して最大限の努力を払っていかなくてはならないと述べられ、閉会となりました。


シンポジウムの配布資料は下記からダウンロードできますのでご覧下さい。