浸水時の地下室の危険性について

 

 

 昨年6月の福岡水害と7月の東京都内の豪雨の際に、建物の地下室が浸水したことにより、それぞれ1名の方が亡くなる事故が発生しました。これを受け、建設省の関連公益法人「財団法人日本建築防災協会」と建築防災関係団体で構成する「建築物防災推進協議会」は、建築設計者向けにパンフレット「地下室の洪水時の危険性について」を作成しました。

主な内容は、

  1. 洪水時に水が建物の地下に流入するスピードは非常に早い。小さな地下室ほど短時間で水であふれる。
  2. 閉じている扉の向こうに水がある程度溜まると、外開き扉も内開き扉も開けることができなくなる
  3. 低い位置にコンセントなどがあると、浸水の初期で電気系統が停止する。電灯が消える、エレベータが使用できなくなるなど、避難に障害が生じる。

などで、地下室への入り口の床をできるだけ高くするなどの事前の対策を提案するとともに、浸水し始めたら速やかに避難することの重要性を訴えています。

 パンフレットは建築技術者向けに作成されていますが、図やイラストを多用しており、一般の方でも参考にできるよう工夫されています。

 今後、建築関係団体の機関誌や講習会等を通じて建築技術者を対象に知識の普及を図る予定です。

 また、()日本建築防災協会のホームページパンフレットの内容を公開しています。

浸水時の地下室の危険性について ‐地下室を安全に使うために‐

作 成 財団法人日本建築防災協会、建築物防災推進協議会

監 修 建設省住宅局 建築物防災対策室

構 成 A4版カラー、8ページ

〔問合せ先〕

パンフレットの入手に関しては...

()日本建築防災協会

       電話 03-5512-6451

総務部長 高橋 吉徳

総務課長 内田 仁

記者発表の内容に関しては...

建設省住宅局 建築物防災対策室

       電話 03-3580-4311

室  長 小川 富由(内線3961

防災係長 鈴木 恵子(内線3965

 

参 考

水圧によって扉を開放できなくなる機構について

      詳しくは、パンフレットのp.56をご参照ください。

 外開き扉の場合、扉の外側に水が溜まると、扉に水圧がかかるため、扉を開けるためには水圧に対抗して扉を押す必要があります。

 人間が扉を開放するために押すことのできる力は成人で1020kgfとされており、例えば、パンフレットの中で扉の幅などを仮定した上で行った試算の結果では、扉の外側に数十cm程度の深さの水が溜まると外開き扉を開放できなくなることが示されています。

 一方、内開き扉は扉を開ける向きに水圧が押していることになるため、外開き扉と異なり容易に開放できるように思われますが、実はそうではありません。

 水圧が、扉を固定しているデッドボルト、ラッチボルトにかかるため、扉を開ける際にサムターン又はドアノブを回そうとしても回せないのです)(用語については下図をご参照ください)。

 パンフレットの中で様々な仮定した上で行った試算の結果では、内開き扉も数十cm程度扉の向こう側に水が溜まるとデッドボルトやラッチボルトの解除が困難になることが示されています。

     

洪水時に水が建物の地下室に流入するスピードは非常に早いため、外開き扉であっても内開き扉であっても、水が流入し始めてから短時間で扉からの避難が困難となります。

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注:もし、デッドボルト、ラッチボルトを解除できたとしても、その瞬間に水圧によって扉が押されて急激に開き、けがをする怖れがあるため、注意が必要です。