「21世紀の豊かな生活を支える住宅・宅地政策について」
中間報告(要旨)
T.新たな政策体系への転換の背景
1.これまでの住宅宅地事情をめぐる背景と政策の変遷
(1)住宅宅地事情をめぐる背景の変遷
○昭和48年に住宅不足の状況が解消。
○人口・世帯数は一貫して増加し特に大都市圏では土地に対する需要が堅調であったため急激な地価上昇。
○バブル期を経て大都市圏の一般勤労者世帯にとって従来以上に深刻化。
(2)住宅宅地政策の変遷
○昭和50年代には住宅政策の重点は、量の確保から質の向上に移行。第七期住宅建設五箇年計画においては、民間、公共併せた住宅市場全体を対象領域とした政策が強調。
○需給逼迫に対して宅地政策は一貫して大量供給を推進。そのため素地価格の安い遠隔地を中心にした宅地開発を実施。
2.住宅宅地政策に関する現状と課題
(1)我が国の「居住」の現状と課題
@持家を中心に着実に向上している床面積等
○持家を中心に我が国の住宅の平均床面積は着実に向上
・持家の1戸当たりの平均床面積は、昭和48年の103.1uから平成10年には123.9uまで拡大
(イギリス:102u、ドイツ:122u、フランス:112u)
○一方、賃貸住宅の戸当たり平均床面積は、依然持家の半分以下
(平成5年時点で45.1u(昭和48年時点では、39.5u))
A国民の居住ニーズの高度化、多様化
○国民の居住についての不満の状況を見てみると、住宅そのものに対する不満や住宅の広さに対する不満の割合は減少する傾向。
○借家世帯の住宅に対する不満率は56.8%と高い水準(持家世帯の不満率は、42.9 %)。
○「住環境」に対して不満と答えた人の割合は増加(昭和63年の33.2%から平成10年 には35.8%へと増加)。
○特に、住宅の各要素に対する評価「高齢者等への配慮」に対して不満と答えている人の割合は66.4%と高水準。
○欠陥住宅問題等住宅の質に関する不安が存在
B大都市圏の劣悪な住宅ストック・居住環境
○戦後直後とそれに引き続く高度経済成長期の住宅不足の時代に建築された住宅ストックが大量に存在し、これらは、質よりも量が重視されたこともあって、その老朽化が進むと同時に、床面積等が生活水準の向上に対応できず陳腐化が進行。
・終戦後から昭和55年までに建築された住宅ストック数は、全住宅ストックの44.6%程度 (平成10年)
・三大都市圏の終戦から昭和55年までに建てられた借家で最低居住水準未満のものは、25.1%、誘導居住水準未満のものは84.6%であり、著しく低水準。
○住宅不足の時代に無秩序な市街地拡大が行われたこともあって、大都市圏を中心に防災上危険な密集市街地が多く存在。
○ファミリー世帯の都心部からの転出等により居住地が遠隔化。
C土地取得に強い関心を置いた住宅取得中心の住宅市場
○これまでの住宅取得は、「住宅双六」と言われるように、借家からマンション、そして最終的には 新市街地における戸建住宅の取得を目指すのが一般的。
○こうした住宅取得は、地価が継続的に上昇していく中で、資産形成の手段として土地が非常に有利性の高い資産であったことから、必要な居住サービスを得るための住宅確保という観点よりも、土地取得に強い関心を置いたもの。
○上物としての住宅を重要な資産と考え長期的な視野に立ってより高い質を求めたり、適切な維持管理によりその質の維持を図ることに対するインセンティブに乏しかったという側面が存在。
・取り壊された住宅の平均耐用年数は、我が国では26年程度(米国:44年、イギリス:75年)
○我が国においては、新築・建替え中心の住宅市場が形成され、既存の住宅を有効に活用するための中古住宅市場、賃貸住宅市場、リフォーム市場が未発達。
D少子・高齢化の急速な進行と居住に関する不安
○核家族という家族文化が初めて経験する高齢化が進行中。先行する参考事例が全くない中で、高齢期の新たな住まい方が模索されている状況にあり、高齢期の住生活に多くの人々が不安を保有。
○都市における居住環境も含む生活様式の現状が少子化に影響。
(2)我が国の宅地事情の現況と課題
@バブル崩壊以降の宅地事情
○都区部の場合、企業がリストラにより社宅用地等を放出することで中高層集合住宅用地等の供給が増加
○近郊部の市街化区域内農地では、インフラが整備されているところから宅地化が進んだため、今後は適地が減少
○大規模事業を成立させることが難しくなってきており、宅地供給事業は小規模化
○現在、様々な構造変化を踏まえ大転換期の到来の時期であり、新たな宅地政策の構築が必要。
A宅地ストックの活用と改善
○大都市の中心部における老朽木造密集市街地の改善の遅れ、農地の部分的転用、相続を契機とした敷地の細分化が進行
○郊外においては長時間通勤と交通手段の不十分さ、生活利便・文化施設の不足
○今後は新規世帯増の圧力が低下することからも、ストックの有効活用による良好な居住環境を備えた宅地形成の誘導が一層重要
3.住宅宅地政策をめぐる経済社会環境の変化
(1)経済社会の変化による住宅宅地需要構造への影響
@住宅需要構造の変化
○21世紀初頭にかけて世帯増加率は鈍化。一方で高齢世帯、単身世帯は増加。
・2015年までの15年間で約300万弱の世帯数の増加が推計。1985年から2000年までの15年間の世帯数の増加が942万世帯であることと比べれば、増加数は3分の1。
・高齢者世帯は、2015年までに約560万世帯増加(高齢者単身世帯は277万世帯)。単身世帯は、182万世帯増加。
○産業構造の成熟に伴い大都市圏への人口流入が沈静化。
○こうしたことから、マクロの住宅ストックについては、新規住宅建設に対する需要は次第に減少していくものと予想。こうした状況に加え、環境制約という観点にも配慮することが必要。
A宅地需給の逼迫感の緩和
○人口・世帯数の一貫した増加により需要が常に堅調であり、そのことが宅地需給に逼迫感
○今後は少子化の影響等により需要側の中核となっていた層は長期的に減少
○首都圏において趨勢から見た場合も都区部における宅地需要は相対的に高いものとなるが、再開発や高度利用等を促進することで宅地需給の逼迫感が増すことはなく、全体としては、宅地需給の逼迫感は相当に緩和、解消
(2)土地神話の崩壊等による住宅宅地取得行動の変化
○これまでのような土地取得に強い関心を置いた住宅取得は、継続的な地価の上昇、高い経済成長、年功序列型の賃金体系等の日本型雇用慣行が前提となり成り立っていた仕組み。しかし、これらの経済社会条件は、構造的に変化。
○土地は値上がり続けるという土地神話は崩壊。企業の行動としては、不要資産処分の動きが急。個人レベルでは、「今宅地を買わなければ将来も買えなくなる」「宅地さえあれば」という考え方は変化。
○従来の土地取得に強い関心を置いた居住水準向上システムに限界が生じ、上物の住宅そのものの資産価値にも強い関心が置かれるようになる他、必要な居住サービスを生み出すものとしての住宅の確保に重点が移行することが予想。
(3)居住ニーズの多様化
○住宅宅地が有する居住サービスの質に対して消費者が強い関心を持ち、家族のニーズにきめ細かく対応した多様なものを志向。
○高度経済成長期に住宅を必要とする世帯は、新たに形成された核家族世帯であり、夫婦と子供という画一的な家族の形態。今後は、世帯構成の多様化に伴う居住ニーズの多様化への対応が重要な課題。
○一人の人間が会社、家庭、地域コミュニティ、好縁共同体等の様々な社会集団に多元的に帰属することが予想。こうした個人と社会集団の新たな関係の確立は、居住に対するニーズの多様化に結びつくことが予想(SOHO、コレクティブハ ウジング、マルチハビテーション等)。
(4)環境制約の増大等
○環境制約の増大等を背景に、住宅宅地供給及び居住段階における環境負荷の軽減に配慮する必要。
(5)都市構造の変化と地方の課題
○「都市化社会」から「都市型社会」への移行に伴って、住宅市街地整備についても、既成市街地の再整備を重視。地方については、中心市街地の活性化や都市との交流による地域活力の維持、増進が必要。
(6)行政のあり方の変容
○中央省庁再編、地方分権の推進。
4.新たな住宅宅地政策の方向性
住宅と宅地は密接不可分な関係。このため住宅そのもの及びその周辺の居住環境を対象とした住宅政策と主に土地を対象とする宅地政策はそれぞれ固有の対象領域を持つものであるが、今後一層の連携が必要。
(1)成熟社会における住宅宅地政策の課題
○今後の住宅政策の課題は、
・現在の住宅宅地ストックを、長期耐用性、環境との共生、長寿社会への対応等に配慮されたものへと再生し、「居住」に関する多様な選択肢を用意すること
・既存ストックを活用しつつ、自立した個人がその自己実現を支えるニーズに最もふさわしい「居住」が選択できるようにするため、ストックの流動化を実現すること
であり、住宅宅地政策をこうした選択を可能とする政策体系へ転換。
○その転換に当たっては、下記の視点が重要。
(市場重視)
国民の価値観、家族形態の多様化に対応して、国民生活の基盤である「居住」についても競争を通じた適正な価格の下で、多様な選択が可能となるようにしていくことが必要。これらの多様な選択は市場機能の活用により実現することが最も効率的。
(ストック重視)
従来、住宅宅地は、個々の家族等が生涯所有し続けたり、その直系家族に引き継がれていくことが一般的。 しかし成熟社会においては、自由に住替えを行うことによって、ライフスタイル、ライフステージに応じた適切な住宅宅地を選択したいという要求が強まる。こうした選択を可能にするためには、社会全体に備わっている住宅宅地ストックを有効に活用していくことが必要。このように、住宅宅地ストックは、社会全体として使用される「社会的資産」としての側面が強まり、「社会的資産」としての住宅宅地ストックを国民が最大限に活用できる制度の整備・活用を図ることが、重要な政策課題となる。
(2)新たな住宅政策の基本的方向性
今後の住宅政策の基本的方向性は、「市場を通じて国民が共用しうる良質な住宅ストック(社会的な資産)を形成し、管理し、円滑に循環させることのできる新しい居住水準向上システム」の確立を目指していくことである。
このため、
○ストック重視、市場重視の住宅政策体系を支える計画体系の再編
○高度成長期ストックの更新等を契機とした住宅ストック・居住環境の再生
○既存ストック循環型市場の整備による持続可能な居住水準向上システムの構築
○少子・高齢社会に対応した「安心居住システム」の確立
○成熟社会の住宅政策を支える公民の役割分担によって住宅政策体系を再編。
(3)新たな宅地政策の基本的方向性
従来からの大量供給の推進にかわる新しい宅地政策の理念として掲げたものは以下の点
○消費者・生活者志向型の宅地供給支援
○アフォーダブルな住宅宅地取得等への支援
○環境と安全性の重視
○既存の宅地の有効利用
○高齢社会への対応
U.新たな政策体系への転換のための具体的方向性
1.住宅政策体系再編の具体的方向性
(1)ストック重視、市場重視の住宅政策体系を支える計画体系の再編
住宅計画体系の見直しに当たっては、今後の重要な政策課題である既存ストックの改善、ストック循環による住替え促進等についても、目指すべき姿、想定する効果等を明示し、国民への十分な説明責任を果たしつつ、自らの政策を評価し、それを将来の政策の企画立案に活かしていくという観点(アカウンタビリティの確保、政策評価)を重視することが必要。
@住宅計画体系のあり方
○住宅計画体系の見直しに当たって重視すべき我が国「居住」の問題点
・ストック循環によって居住水準向上を図る前提である本格的ストック形成が行われていないこと(世帯構成と比較してストック体の面積バランスが借家を中心に極端にいびつな構造となっていること、高齢社会に対応してバリアフリー化されたストックが形成 されていないこと等)
・良質な住宅ストックの形成・循環が行われる市場環境が整備されていないこと(借地借家法の正当事由制度等による市場に歪みの存在等)
○このため今後、「長期的視点に立った良質ストックへの再生」、「国民の多様なニーズに対応するストック循環の実現」に係る各種施策を計画的、集中的に推進することが必要。
○このため住宅計画体系を、下記のように再編。
ア 新築、建替え、リフォーム等の「ストック整備」に係る施策のプログラムとそれによって目指す「住宅ストックの姿」の想定
イ 市場整備等「ストックの循環」の推進に係る施策プログラム
ウ アとイによって目指す「居住水準の姿」
A住宅・住環境の整備目標(住宅計画体系の見直しに伴う、居住水準、住環境水準についての見直しの検討)
@)新たな居住水準のあり方
○誘導居住水準等に係る世帯達成率目標の引き上げとそれを支える住宅ストックの面積バランスの想定を明示することを検討。
○定性的な配慮事項としての規定にとどまっている住宅性能について、外部性が存在するもの、今後ストック増加を重点的に促す必要があるものについては、備えるべき基本的性能を明示した上で、21世紀初頭におけるストック全体の質的構成の想定についても明示することを検討。
A)新たな住環境水準のあり方
○住宅市街地に求められる最も基礎的な要件である安全性・防災性・衛生等の確保を計画的、重点的に推進する明確な政策目標として、現行の「基礎水準」を、一定期限までに「緊急に改善すべき住宅市街地」の目標として再構成する必要。
○地方公共団体や各種機関が連携した、地域の実状に応じた施策の指針として、基礎水準、誘導水準を再構成し「住宅市街地の改善・向上等の指針」を明示することを検討。
B目標年次の設定等
○例えば、2015年(全国レベルでの世帯数ピーク)を目標年次として設定し、5年毎に必要な見直しを行うことを検討。
○計測可能性の観点から、項目及び、統計のあり方に関する検討が必要。
(2)高度経済成長期ストックの更新等を契機とした住宅ストック・居住環境の再生
@21世紀に向けた良質な住宅ストックの新規形成方策
@)高度化・多様化した国民の居住ニーズに応えうる新築住宅市場の環境整備
ア)良質な住宅の健全・確実な取得支援
イ)良質な賃貸住宅の供給促進
ウ)住宅品質確保促進制度の着実な実施
エ)建設、維持管理、建替え等ライフサイクルを通じたコスト削減
A)経済社会の潮流に対応した新たな住宅ストック形成の観点
ア)環境問題の重要性の増大に対応した住宅ストックの形成
a)スケルトン住宅等長期耐用住宅の整備
b)住宅分野でのリサイクル等廃棄物対策の推進
c)環境共生住宅の整備及び室内環境対策の推進
イ)情報化技術を活用した新しいコミュニケーションを支える情報化住宅の整備の推進
Aストック社会、循環型社会にふさわしい住宅ストックの新たな更新、維持管理のあり方
@)公共賃貸住宅ストックの新たな活用方策
300万戸余りの公共賃貸住宅のうち、約4割を占める昭和40年代ストックについては、今後一斉に建替時期を迎えることが予想され、今後改善に関する取組みの強化が必要。
ア)ストック活用に係る総合的計画体系の整備と計画に基づく的確な改善・更新
○建替事業による改善・更新に加え、ストックの特性や地域のニーズに合わせた手法の選択を行い、効率的なストックの活用を図っていくことが必要。
○このため、国においては、ストックの総合的な活用の観点からの整備計画と投資のフレームを確立する必要。また、各都道府県及び各事業主体においても、住宅マスタープラ ン等において、ストックの総合的活用のための計画の策定を推進し、的確な整備と管理 を図っていく必要。
イ)スーパーリフォーム等全面的改善事業に対する支援の充実
○様々な改善・更新を別個に行う仕組みとなっている現在の改善事業の仕組みを、ストックの総合的な活用計画の策定を前提に総合的な事業展開を可能とする体系に組み替えて いくことが必要。その際、長期間管理することを前提とした全面的な改善については、長期的な財政運営の観点から財政負担の平準化の効果が期待し得るものであり、国による支援についても強化が必要。
ウ)居住水準設定の見直し等を踏まえた公営住宅家賃の算定方法の検討
○居住水準設定の見直しや住宅ストック改善の推進等、新たな住宅政策の課題に配慮した 家賃算定方法について、家賃の設定状況を踏まえて検討を行う必要。
エ)改善事業の推進に係る技術開発と費用対効果を適切に評価するための手法の開発
オ)地域整備との連携による地域に融合した団地の再生
○公共賃貸住宅ストックの改善・更新に際し、地域のまちづくり等へ寄与する視点を重視し、福祉施設等の導入や環境問題への対応など、地域に融合した団地の再生を目指す必要。
カ)公団既存賃貸住宅ストックの活用等
○公団の既存賃貸住宅ストックについて、リニューアル等の改善、敷地の適正利用と居住 水準の向上を図る建替えを着実に推進していく必要。
○開発開始から数十年が経過した公団ニュータウンについて、居住環境を更新していくための方策について検討。
キ)公営住宅と公団、公社住宅の併設等によるバランスのとれたコミュニティの形成
ク)公営、公団、公社の各事業主体間の連携強化と統合的運用による居住者属性に応じた住替え促進
○住宅ストックを効率的かつ的確に活用し、供給する観点から、公営、公団、公社の各事業主体間の連携を強化するとともに、地域単位で募集に係る情報提供や募集業務等の統合的運用について検討を進める必要。
A)マンションストックの新たな更新・維持管理方策
いわゆるマンションは、2000年に築後30年を超えるものが約12万戸、築後20年を超えるものが約93万戸となるなど、今後、築後相当の年数を経たものが急激に増大していくものと見込まれており、適切な維持管理、建替えを確保することが必要。
ア)マンションストックの適切な維持管理に関する支援の充実
a)適切な維持管理が評価される仕組みの整備
○管理組合の運営状況、修繕や耐震診断・改修の実施状況等の情報開示等。
b)計画的な修繕の実施
○マンション修繕積立金を住宅金融公庫が受け入れ、融資の優遇を行う制度の創設、長期修繕計画策定の促進、リフォーム技術の開発等
c)総合的な相談・支援体制の整備
○相談窓口の設置、管理や修繕に関するアドバイザーの派遣等による情報提供、管理 会社の情報開示や、マンション管理業に関する制度的な検討等
d)管理規約の整備
イ)建替えに対する支援
a)建替え方針決定等の合意形成支援
○準備組織の活動支援や専門的相談システムの整備等
b)高齢者等に対する支援
○高齢者や低資力者等の者の居住の安定、仮住居等に対する支援施策。
c)事業実施支援のための制度スキームの検討
○建替えの事業面について、事業実施主体の確立や権利の保全等、事業の安定的かつ 円滑な実施のための制度的枠組みを検討。また、融資・補助の活用などの総合的支 援方策が必要。
d)公庫融資の拡充
○公庫融資における、老朽マンションの建替え促進のための融資の拡充。マンション の建替え等に当たって、高齢者の継続的な居住を可能とするため、通常の割賦償還 によらないリバースモーゲージ的な償還方法上の工夫について検討。
B)賃貸住宅のストックの更新
ア)広くて良質な賃貸住宅への建替え促進
○定期借家権の導入促進等により、企業によっても賃貸住宅供給が行われる競争的な市場を通じた良質なストックへの更新を促進することが最も重要。
○これらの民間事業者のストック更新を促進するため、融資、税制上の措置の拡充を検 討する他、特定優良賃貸住宅制度を活用。
イ)老朽木造密集市街地等における賃貸住宅ストック更新
○密集市街地等における計画的な老朽住宅等の共同協調建替え等に係る総合的低利融資制度を創設し、これと連携した密集住宅市街地整備促進事業の拡充を図るべき。
B都市・地域における居住地再生
@)21世紀の都市居住再生に向けた住宅市街地整備の方向性
ア)都心居住の推進と密集市街地の整備等による安全で快適な住宅市街地の形成
○都心居住に資する住宅の整備、総合設計制度等を積極的に活用したまちづくり、密集 市街地の早急な改善。
○新耐震基準以前に建設された住宅について耐震診断、耐震改修を推進し、地震保険制 度との連携を図ることについても検討。
イ)新たな居住ニーズに対応した住宅供給の推進
○在宅勤務、コーポラティブ、SOHO等
ウ)人にやさしいまちづくりの推進
エ)住民、NPOと連携した修復型の住宅市街地整備の推進
○修復型の住宅市街地整備における、地域住民やNPOの活動に対する支援のあり方を検討。
オ)証券化手法等を活用した再開発の促進
○再開発の推進に当たって、信託、不動産特定共同事業、証券化等地権者の参画方法や 保留床の処分方法の多様化を図ることを検討。
カ)居住環境整備のために必要な公共施設等の整備の推進
○既成市街地における居住環境整備に資する公共施設等の整備を総合的に行う方策を検討。
キ)都市の居住環境整備のための公庫融資の充実
a)密集市街地や商店街の再整備の促進
○個人住宅、賃貸住宅、非住宅用途の建築物が混在している密集市街地等において、これらの建替え促進のための複合用途建築物の整備に必要な資金について初動期資金を含め、総合的に低利で融資する制度を創設すべき。
b)郊外住宅地における住宅の流動化の促進
○郊外住宅地における、地域社会の高齢化の進行に伴う空家の発生等に対処するためにも、中古住宅流通等を促進する融資を充実。
ク)消費者の適切な居住地選択に当たっての環境整備
○市場を通じた住環境の改善・向上等のため、住環境に関する国民の「居住地選択時の参考指標」を明示。
A)地域活力の維持・増進に資する住宅整備の推進
ア)地域活力の活性化に資する住宅供給の促進やまちづくりの支援
○中心市街地、中山間地域等活力低下が懸念される地域の活性化を図るため、地域の産業政策や地域振興策と連携し、地域資源を活用した個性豊かなまちづくりを支援する住宅の供給促進を図ることが重要。
○地方部の深刻な高齢化に対応するため、高齢者の生活、介護を支える住宅の整備と近隣社会コミュニティの再生を図ることが重要。
イ)都市と地方の連携を促進する観点からのセカンドハウス等への支援促進
○都市と地方の交流を通じた地域活力の維持・増進、都市に住まう者の豊かな居住の確保を図るため、セカンドハウス、SOHO等を活用した多様な居住を推進することが重要。
Cストック誘導型税制・融資の構築
@)税制のあり方
ア)良質な住宅ストックの形成を誘導するための支援のあり方
○良質なストックを誘導するためのあり方について検討。
イ)国民の持家に対するニーズに対応した、住宅の取得に対する安定的な支援のあり方
○住宅取得支援のための税制のあり方については、国民の住宅取得能力の向上を図るという住宅政策上の観点から検討を行う必要。
ウ)不足している良質な賃貸住宅の供給を促進するための支援のあり方
○良質な賃貸住宅の供給促進という観点からの事業者への支援のあり方について検討。
A)新たな融資メニューを中心とした公庫融資のあり方
ア)良質な住宅の健全・確実な取得の支援
所得や地価の右肩上がりを前提とできなくなったことに対応して、良質な住宅の健全・確実な取得を支援する観点から公庫融資制度のあり方を検討する必要がある。
a)長期固定金利
○公庫融資は引き続き長期固定金利を基本とすべきである。
b)政策金利としての公庫金利のあり方
c)返済負担の右肩上がりの見直し
○ゆとり償還制度の廃止
○段階金利制度のあり方について、公庫金利のあり方を総合的に検討する中で検討すべき。
d)頭金の確保の支援
○住宅債券制度の拡充等を検討。
e)完済時年齢を考慮した償還期間設定
イ)新築・中古及び持家・借家のバランスのとれた住宅市場の整備
a)良質な中古住宅に対する融資条件の改善
○良好な状態に維持された中古住宅について、新築住宅並みに融資条件を改善することを検討。
b)中古住宅購入とリフォームの一体融資の創設
c)耐久性の高い住宅ストックの形成と適切な維持管理の促進
○耐久性の高いストック形成に向けて、技術基準を強化するとともに、耐久性の向上に応じて償還期間を見直す。
d)良質な賃貸住宅の供給促進のための融資の拡充
○経営採算性向上のための融資条件の改善、企業による賃貸住宅供給のための土地・借地権取得費融資の実施等制度を拡充
e)持借流動化への対応
○公庫融資においても、住宅取得後の自己居住要件の弾力化等を検討。
(3)既存ストック循環型市場の整備による持続可能な居住水準向上システムの構築
@中古住宅市場の活性化への取組み
我が国の中古住宅市場の活性化のためには、
・性能評価、履歴情報等の情報の充実による中古住宅の評価システムの確立
・中古住宅の評価を取引時の価格査定に適切に反映させることにより、現状では築後20年を経過するとほぼ無価値となっている建物評価の適正化 を実現することが不可欠である。
(参考)
・米国の中古住宅流通量は、日本の約26倍の規模。米国では、住宅の平均寿命が44年と日本の26年に比べて長く、適切な維持管理が施された住宅が円滑に流動化。
・米国では、リフォーム等の実施状況が価格査定に反映される評価システムが構築されており、所有者にとっては、中古住宅を購入しても、維持管理次第ではキャピタルゲインを得ることが可能。
@)中古住宅の評価・情報活用システムの確立
ア)中古住宅の評価体制の充実
○性能表示制度の活用、中古住宅評価のための体制整備。
イ)リフォーム実施記録等の履歴情報を蓄積するシステムの整備
○住宅の新築時、リフォーム実施時を通じて、工事時期、工事箇所、工事内容等の記録を蓄積するためのシステムを整備。
A)中古住宅の適切な価格査定の実現に関する条件整備
ア)価格査定のためのマニュアルの整備
○築後20年を経過するとほぼ無価値となっている建物価格査定方法を見直し、住宅性能表示、中古住宅の評価、維持管理・リフォームの実施状況を価格査定に反映する仕組みを構築。
イ)実効ある価格査定作業体制の整備
B)市場における住宅に係る情報の提供機能の整備
ア)消費者が安心して取引が行えるための住宅の価格、課税、性能、履歴等に関する情報の整備
イ)物件情報を的確に入手できるシステムの整備
a)レインズ(不動産流通標準情報システム)の情報の充実
b)業界団体独自の情報ネットワークの構築
c)売り主が直接自己所有物件の情報を提供するシステムの構築
d)データベース化等
C)円滑な取引の支援
○専門的なアドバイス、コンサルティング機能の充実、売買後のトラブルへの対応のため、中古住宅の瑕疵保証制度について検討。
A賃貸住宅市場の活性化への取組み
@)定期借家権の導入の促進
○低所得高齢者の居住安定施策を充実しつつ、定期借家権の導入を促進。
○標準契約書の作成、相談機能の充実等。
A)賃貸住宅市場に関する情報機能の整備
B)適正な賃貸住宅管理の確保、資産活用の多様化への対応
ア)健全な賃貸住宅の経営、管理、改善等を行う産業の育成
○資産管理サービスを行える専門的知識、経験を有する専門家の育成と、これを活用した本格的賃貸管理業の育成。
イ)賃貸住宅管理のあり方の検討
○管理業者と貸主及び借主との間のトラブル処理に関する措置について、その整備及び改善を図ることを検討
ウ)貸主及び借主双方を対象とする第三者による相談機能の充実
○貸主及び借主双方を対象とする第三者による相談機関の設置について検討。
エ)取引コストへの対応
○敷金、権利金、礼金、退去時の現状回復費用等賃借人が負担すべき費用のルールのあり方についての検討等。
Bリフォーム市場活性化への取組み
@)リフォーム技術の向上のための条件整備
ア)住宅の新築段階からの取組み
○長期耐用都市型集合住宅の建設及び再生技術の開発、スケルトン住宅の開発等の検討。
イ)住宅設計の標準化、部材の規格化等の促進
A)リフォーム市場における市場環境整備
ア)消費者がアクセスしやすいリフォーム市場の確立
○リフォーム業者情報、工種・工法・技術の情報等の情報提供機能の充実、標準的なリフォーム実施プランの作成等を検討。
○リフォームに関する専門的な相談体制の充実を検討。
イ)消費者が安心して利用できるリフォーム市場環境の整備
○一定以上の施工水準を確保するため、施工方法の標準化、リフォーム工事の規模等に応じて検査機関による検査、検査員の派遣等による施工管理のあり方について検討。
C市場における円滑な住宅ストックの循環を促進するための税制上の支援のあり方
○賃貸住宅も含めた住宅の流通促進を図る観点からの税制上の措置について、検討。一方、消費税については、我が国の消費税の仕組みや他の財との均衡の問題を踏まえつつ、検討していくことが必要。
○住宅の譲渡に関する税については、ライフステージに合った住替えを円滑に行えるよう検討を行う必要。
○リフォーム投資に対する支援のあり方について検討。
D総合的な住宅サービス関連市場の育成
住宅をベースとして展開される様々なサービス事業(介護ビジネス、子育て関連ビジネス、ホームセキュリティサービス、資産運用に関するコンサルティングビジネス等)と住宅産業との連携を強め、住宅を中心とした総合的なサービス事業の展開が期待される。今後の我が国経済を支える新たな産業創出を図るという観点から、これらの新たな産業活動に関する将来像の提示、支援等を検討することが必要
(4)少子・高齢社会に対応した「安心居住システム」の確立
少子・高齢化が急速に進行しつつある中で
@中低所得高齢者を中心として、バリアフリー化された良好な住宅ストック形成を早急に図ること
A高齢期の「居住」に関する不安を取り除く環境整備を図ること
B家族の子育て負担を軽減する良好な住宅、居住環境整備を図ることを内容とする「安心居住システム」を創り上げることが急務。
@福祉施策との連携に基づく良好な住宅ストックの形成
@)高齢者向け公的賃貸住宅の供給促進
○高齢者の多様な居住ニーズに応じた安心して居住できる場の選択を可能とするため、多様な住宅等の供給に関する総合的計画を策定し、それに基づいて福祉施策と一層の連携を図った高齢者向け住宅の供給を促進することが必要。
○ハード面でのバリアフリー化のみならず、多様な住宅への生活援助員の派遣、緊急通報システムの整備等、生活支援サービスの充実のための方策について検討する必要。
A)既存持家のバリアフリー化推進
○住宅金融公庫の改良融資の活用、高齢者が融資を受けやすくする方策について検討。
A高齢期の居住の不安を取り除く環境整備
@)高齢者に対する情報提供と相談のための体制の充実
○高齢期の住まい方や高齢者向けの住宅及び有料老人ホーム等の施設についての情報を提供するとともに、高齢期の居住についての相談に応じる体制を整備、充実。
○バリアフリー化に当たって高齢者の身体状況にあわせた総合的なアドバイスを行うことができるような体制を整備、充実。
A)高齢居住者保護の充実等
○高齢者向け住宅を提供する事業者による情報の的確な提供や、公正な契約締結のための措置等について充実。
○入居時に家賃相当額を一時金として一括前納する方式を採用する場合の、倒産等に対応するための高齢者の居住安定策の充実の検討。
○民間賃貸住宅に関する家賃滞納や損害賠償等に関する保証制度、高齢者に対する住宅のあっせんなど地方公共団体等によるきめ細やかな施策を促進することが必要。
B)高齢者の資産を活用したストック循環
○単身または夫婦のみで生活する高齢者の、自己の居住用財産を活用した、住替えを可能とするため、中古住宅市場や賃貸住宅市場の活性化のための条件整備及びリバースモーゲージの普及、促進。
B家族の子育て負担を軽減する良質な住宅ストック形成
○子育てしやすい環境整備を図る観点から、ファミリー向けの良質な賃貸住宅の供給、職住近接のための都心居住の推進、地域に必要な保育所等と賃貸住宅の併設等福祉施策分野との連携を積極的に推進。
2.新たな宅地政策の具体的方向性
(1)消費者・生活者志向型の宅地供給支援
消費者の求める利便性に関して、従来よりも個々人による選択の幅が大きくなり 宅地も選別が進む。
@「職住近接」ニーズに応える宅地供給支援
地価下落により都区部においては再び中高層住宅等の供給が増加。また、交通利便性の高い所では近郊の20〜30km圏であっても通勤時間の短縮が可能であり、実質的に職住近接ニーズの実現。
○大規模工場跡地等の土地利用転換
○虫食い状の土地の流動化
・素地価格に開発利益を加えた価格で買い戻しできる制度。
・虫食い状の土地の交換に伴う流通税の免除。
・事業者以外の権利者や投資家がプロジェクトに参加できる手法の整備。
○再開発の推進、円滑化
○不動産インデックス情報の整備
○郊外部の宅地の利便性の向上
・オフィスや利便施設の誘致や交通機関と一体となった宅地供給の推進。
A「ゆとりある居住空間実現」ニーズに応える宅地供給支援
ゆとりある生活空間の可能性、緑地等のある良好な周辺環境によって消費者・生活者の多様な希望に対応した住宅宅地の供給を促進。
○宅地化農地の計画的宅地化
・基盤整備に対する公的援助の強化方策を検討。
・地区計画における地区施設整備の支援を検討。
・計画的一体的開発を推進。
○定期借地権付住宅等の供給を促進
・定期借地権付住宅等の多様な供給スキームの創設を検討。
・定期借地権付住宅への税制の特例を検討。
・定期借地権の活用による共同事業を推進。
・定期借地権の活用による賃貸住宅の供給促進。
○宅地化農地等を活用した戸建賃貸住宅の供給
○新たな就業スタイルへの対応
・情報インフラ整備とインテリジェント化に対応した宅地供給。
・豊かな自然環境に囲まれたアメニティの高いスペースの確保。
(2)アフォーダブルな住宅宅地取得等への支援
取得、買替え、住替えを円滑に行う上で重要なのは、アフォーダブルな住宅宅地取得等に関する選択肢が豊富にあること。
例えば定期借地権付住宅はその一つ。
取得、買替え、住替えを活発化させるためには市場における障害の除去が必要。
@流通市場における宅地周辺の環境等に関する情報提供の充実
A流通費用の低減、適正化
○不動産市場の公正化、透明化。
○登録免許税の見直しを検討。
B宅地の性能に関する評価手法の検討
C定期借地権付住宅市場における流通の促進
○定期借地権付住宅の中古市場の育成を推進。
○定期借地権の保証金の返済を確実に担保するための手法の検討。
(3)環境と安全性の重視
環境への関心の高まりに応じた宅地供給を図るとともに、環境負荷を抑制。また、宅地の防災性の向上等を支援。
@緑地・オープンスペースの確保と環境の保全
○オープンスペースの創出や緑化の推進。
○良好な都市環境の形成に資する農地についてはその緑地機能に着目し適切な保全の必要性。
○宅地開発については緑地保全、環境負荷との良好なバランスを維持。
A安全性・防災性の向上
○災害のおそれのある地域における住宅等の立地抑制方策等の検討。
○宅地の安全性を客観的に判断しうる情報提供の検討。
(4)既存の宅地の有効利用
新規開発重視にかえ、工場跡地や既存住宅地等の活用による宅地供給の推進や宅地の細分化防止等により良好な市街地形成を重視。
@良好な宅地ストックの維持・形成
○まちづくりの方針の充実。
○宅地細分化を防止や規模拡大に資する方策の検討。
A良好な宅地環境の形成
○小規模な宅地開発事業を良質なものへ誘導。
○定期借地権の活用で広い宅地規模を実現。
(5)高齢社会への対応
高齢社会に対応したコミュニティの維持・形成を図るとともに、高齢者の生活パターンに則した居住状況改善のための支援策が必要。
@高齢社会に対応したコミュニティの維持・形成
○一斉高齢化を避けるために入居者の年齢階層の多様化。
○まちづくりの観点からも面的なバリアフリー化。
○学校用地等の福祉施設等への円滑な更新。
A高齢者の生活パターンに即した居住条件改善のための支援
○住宅宅地等を担保にする等による生活資金等の確保策を検討。
○公的主体が預かる定期借地権の保証金を担保にしたリバースモーゲージ。
(6)地方部における宅地供給
大都市圏ほど宅地需給は逼迫しておらず、住宅宅地価格は高くはないが、中心市街地の衰退や宅地需要の減退等に対応した施策の推進。
@中心市街地活性化を推進
○まちづくりの計画に沿ってバランスの取れた整備とそれに対する再開発の促進等。
○公的主体を活用したまちづくりの推進。
○定期借地権制度等を活用し、空き店舗等の利用促進。
A自然環境等と調和した宅地供給の実現
(7)宅地政策における税制のあり方
○戦後の高度成長期以来の大都市への人口集中に対応し、住宅宅地の大量供給を支援するものとして各種の税制上の措置が講じられてきたが、今後の宅地供給が消費者志向型の供給とストックの有効活用を重視するものに次第に移行していくことを踏まえて、土地税制の見直しを進める必要。
○一方、バブル後の地価下落と長期にわたる景気低迷の中で、土地の流動化がより 重要な課題としてクローズアップされるなど、保有課税や流通課税等の資産課税のあり方が、宅地政策と深くかつ複雑な関わりを持つに至っている。こうした観点から、土地に係る一般的な資産課税制度についても、新たな視点に立って、ポストバブル期の新しい土地税制の体系を構築していく必要。
3.新たな住宅宅地政策を支える公民の役割分担
(1)基本的考え方
○21世紀の豊かな居住は、市場における
・自由な競争に基づく適正な価格の良質な住宅の供給
・十分な情報に基づく自立した個人の選択により実現されることが基本。
(2)公的主体の役割の考え方
○国民の多様な居住ニーズに効率的に応えていくためには、市場の活用を住宅宅地政策の基本とし、その際の公的主体の役割は、下記の観点に限定することが必要。
@市場の環境整備(基盤整備と制度的枠組みの整備)
A市場の誘導(適正な資源配分の実現)
B市場の補完(社会的弱者に対するセーフティーネットの整備等)
(3)地方の独自性、自主性の発揮
○地方公共団体等地域の実状に通じた機関が、その状況を反映した独自のビジョンに基づいて主体的、自立的な役割を発揮することが最も重要。
○特に今後、福祉、まちづくり等の分野と住宅宅地政策との連携が求められることを勘案すれば、総合的な行政主体としての地方公共団体の役割は増大。
(4)総合的な行政領域における政策展開
○在宅介護をにらんだ住宅宅地政策と福祉政策との連携、情報通信技術と住宅関連技術の連携等総合的な行政領域における展開を図ることが重要。
○これらの住宅宅地政策の新たな展開が、地域の実状を踏まえた「新たな居住像」の提案、賃貸住宅管理業と介護サービス業が融合した新たなビジネスの展開等「新たな産業活動」の創出を自立的にもたらすシステムとなることを期待。
(5)住宅宅地政策を担う多様な主体等
@住宅金融公庫改革の必要性
ア)民間住宅融資との協調
a)併せ貸しの促進
○民間住宅融資との協調のみならず、民間住宅融資を引き出す観点からも、公庫融資と民間融資との併せ貸しを促進。
b)民間住宅金融の円滑化の方策
○公庫融資額の段階的縮減を図り、併せ貸しを促進する場合において、民間住宅ローンにより、縮減部分が適切にカバーされるよう、住宅融資保険を民間金融機関にとって利用しやすい制度に改善することを検討。
c)民間住宅ローンの証券化の支援
○中小の金融機関の住宅ローン債権の証券化を支援するため住宅融資保険の活用も今後の課題。また、民間住宅ローンの証券化債権の元利金の期日払い保証を行うことも将来の課題として検討。
イ)ALM(資産負債管理)の徹底
ウ)資金調達の多様化
○金融市場の現状等を踏まえ、少なくとも当面は、政府信用を活用した安定低利資金が確保できる政府からの借入れを引き続き公庫の資金調達の中心とすることが必要。
○その上で、補完的に政府保証債の発行や住宅ローン債権の証券化を金融情勢に応じて適切に併用できるようにすべき。
エ)公庫の住宅ローン債権の証券化
A都市基盤整備公団の活用
○住宅・都市整備公団を廃止し、新たに設立される都市基盤整備公団においては、改革の趣旨を適切に活かしつつ、市街地の整備改善並びに賃貸住宅の供給及び管理に関する業務を着実に実施することが必要。
○大都市圏の再編整備に向けた広域的政策を推進、健全な住宅宅地市場を整備する先導役、その他国家的見地から必要な施策、今までの経験を活かした支援。
B今後の地方住宅供給公社業務の展開
○今後増加することが予想されるマンションの建替え
○密集市街地の整備や中心市街地の活性化等まちづくりと連動した面的住宅整備促進
○公営住宅ストックの改善、更新の支援体制の整備等における地方住宅供給公社の活用を検討。
CNPOとの連携
○NPOを住宅宅地施策を担う新たな主体として積極的に位置付け、その支援策について検討。
D宅地政策における公民のルールづくり等
○事業期間の短縮と金利負担の軽減。
○国と地方公共団体の役割分担の見直し。
○公共公益施設整備負担の見直し。