国際海事機関(IMO)の概要


1.IMOの歴史
 海運は元来非常に国際性の高いものであるため、既に19世紀後半から主要海運国が中心となって、各種の技術的事項に関する会議を開催し、灯台業務や海難防止、海難救助等の海上の安全の確保を目的とする国際条約等の国際的取決めがなされてきた。
 その後、第二次世界大戦を経て、国際連合は、船舶輸送の技術面の検討のため、常設の海事専門機関設置の必要性を指摘した運輸通信委員会の報告に基づき、1948年(昭和23年)3月、国際連合海事会議をジュネーブで開催し、IMCO(Inter-governmental Maritime Consultative Organization:政府間海事協議機関)の設立及び活動に関するIMCO条約を採択した。なお、我が国は、戦後の対日平和条約の締結がなされていなかったため、本会議には招聘されなかった。本条約は、その発効要件として100万総トン以上の船腹を有する7カ国を含む21カ国の受諾を求めていたが、1958年(昭和33年)3月、我が国が受諾書を寄託することにより発効要件が満たされ、発効に至った。
 その後、1975年(昭和50年)11月に機関の活動内容の拡大及び加盟国の増加に伴う機関の名称変更等の必要性に鑑み、IMCO条約の改正が採択され、1982年(昭和57年)5月に同改正が発効したことにより、IMCOはIMO(International Maritime Organaization:国際海事機関)に改称され、現在に至っている。

2.IMOの設立目的
 IMO条約第1条に詳細に規定されているが、国際貿易に従事する海運に影響のあるすべての種類の技術的事項に関する政府の規則及び慣行について、政府間の協力のための機構となり、政府による差別的措置及び不必要な制限の除去を奨励し、海上の安全、能率的な船舶の運航、海洋汚染の防止に関し最も有効な措置の勧告等を行うことを目的としている。

3.加盟国数
 加盟国;158カ国、準加盟国;2カ国(香港、マカオ) (2000年5月現在)

4.IMOの組織
1.総会
a.全ての加盟国で構成
b.2年に1度開催
c.任務は事業計画及び予算の決定、理事会の構成国の選挙等

2.理事会

a.32カ国で構成
b.理事国の任期は2年(現在の理事国の任期は2001年11月まで)
c.日本も理事国

海上安全委員会 (Maritime Safety Committee(MSC))
a.全ての加盟国で構成
b.任務は、船舶の構造・設備、危険貨物の取扱い、海上の安全に関する手続き・要件、安全の見地からの配員、その他海上の安全に直接影響のある事項を審議、検討し、関連する国際条約の採択、改正及び各国への通報、条約の実施を促進する措置の検討等
c.詳細な検討は下部の小委員会に付託

法律委員会(Legal Committee(LEG))
a.全ての加盟国で構成
b.任務は、船主の民事責任等、海事に関する法的事項全般についての検討

海洋環境保護委員会(Marine Environment Protection Committee(MEPC))
a.全ての加盟国で構成
b.任務は、船舶に起因する海洋汚染の防止に関する国際条約の採択、改正及び各国への通報、条約の実施を促進する措置の検討等
c.詳細な検討は関係小委員会に付託

小委員会(Sub−Committee)
a.IMOにおける審議の効率を図るため、その所属する上部委員会(MSC及びMEPC)の付託を受け、専門的な技術的事項について審議
b.小委員会での検討結果は上部委員会に報告され、条約改正等のIMOとしての最終決定は原則として上部委員会



小委員会の名称審議会事項等
航行安全小委員会
(NAV:Safety of Navigation)
・SOLAS条約附属書第V章関係事項(航海設備の技術基準・積付要件、海上通航帯の指定等)、COLREG条約関係事項(海上衝突防止に関する事項)等について審議
無線通信・捜索救助小委員会
(COMSAR:Rediocommunications and Search and Rescue)
・SOLAS条約附属書第IV章関係事項(無線設備の技術基準・積付要件等)、SAR条約関係事項(海上救難に関する取決め等)等について審議
防火小委員会
(FP:Fire Protection)
・SOLAS条約附属書第II-2章
・IBCコード・IGCコード等に規定されている防火構造要件、防火材料の基準・試験方法、消防設備の技術基準・積付け要件等について審議
・議長は、吉田公一氏(艤装品研究所主任研究員)
復原性・満載喫水線・漁船安全小委員会
(SLF:Stability and Load Lines and Fishing Vessels Safety)
・SOLAS条約附属書第II-1章、MARPOL条約附属書I・IBCコード・IGCコードに規定されている復原性・区画・水密性の確保に関する要件、LL条約に基づく満載喫水線に関する要件、トレモリノス漁船安全条約に規定されている漁船の安全要件等について審議
訓練当直基準小委員会
(STW:Standards of Training and Watchkeeping)
・STCW条約に関する事項等を審議
設計設備小委員会
(DE:Ship Design and Equipment)
・SOLAS条約附属書第II-1章、IBCコード・IGCコード等に規定されている構造・機関・電気設備等に関する要件、HSCコードに基づく高速船の安全要件等について審議
危険物、固体貨物及びコンテナ小委員会
(DSC:Dangerous goods,Solid Cargoes and Containers)
・SOLAS条約附属書第VI章(貨物の積付け要件関係)及び第Z章(個品危険物の運送要件関係)、IMDGコード等に関する事項等を審議
ばら積液体・ガス小委員会
(BLG:Bulk Liquids and Gases)
・SOLAS条約、MARPOL条約、IBCコード、IGCコード等に規定されているタンカー、ケミカルタンカー、ガスキャリアに関する安全要件・海洋汚染防止要件等に関する事項を審議
旗国小委員会
(FSI:Flag State Implementation)
・IMOの各種の条約の遵守を徹底し、条約に適合しない船舶(サブスタンダード船)の排除が重要であるとの認識の下に1992年に設置された小委員会
・旗国が果たすべき責務を確実に実施させるための方策について審議するとともに、PSCの実施・強化策に関する検討等も実施


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