1966年の満載喫水線に関する国際条約(LL条約)




1.1930年の満載喫水線に関する国際条約

 1920年代、外航海運業界は過当競争状態にあり、このため過載に起因する事故が頻発した。これに対処するため1930年(昭和5年)、ロンドンにおいて国際会議が開催され、1930年の満載喫水線に関する国際条約(International Convention on Load Line,1930)が採択された。本条約の骨子は、次のとおり。
(1) 船舶の載貨の限度を定め、予備浮力及び凌波性を保持せしめるため、船舶の形状的な面から乾舷を決定すること
(2) 船体の強度の面からも乾舷を決定すること
(3) 上記各満載喫水線の算定及び表示は、各国統一的な方法により行うこと
(4) 満載喫水線を表示した船舶は、帯域及び季節的区域に適用される条件に従うべきこと
(5) 上記各項目を励行するための手段として、国の責任において検査を行い証書を発給すること
 本条約は、1933年(昭和8年)1月に1929年のSOLAS条約と同時に発効した。我が国においても、船舶安全法に基づく船舶満載喫水線規程を公布する等関係法令の整備が行われ、同年10月9日から施行された。

 

2.1966年の満載喫水線に関する国際条約

(1) 条約の概要
 1930年条約締結後の船舶の大型化、水中翼船等の新型船舶の出現、鋼製ハッチカバーの採用等造船技術の発展等に伴い、1930年条約を見直し、新たな条約を見直す気運が高まってきた。
 このため、IMCOは、1966年(昭和41年)3月ロンドンにおいて我が国を含む52カ国参加の下に「1966年の満載喫水線に関する国際会議」が開催され、約1ヶ月の討議を経て1996年の満載喫水線に関する国際条約が採択された。1930年条約からの主な改正点は次のとおり。
i. 条約適用対象船舶の範囲の拡大(150GT以上→長さ24m以上)
ii. 新型式の船舶(水中翼船等)、輸出船回航等の単一国際航海に対する免除規定の導入
iii. 基本乾舷表の拡大(長さ365mの船舶までカバー)
iv. ハッチの閉鎖装置は鋼製を原則とし、木製の場合は乾舷を増大
v. 船首高さの基準を新設
vi. 船体の構造上の強さの具体的基準を廃止(主管庁の定めるところに委ねる)
 本条約は、1968年(昭和43年)7月に発効し、我が国においても同年8月15日から施行された。

(2) 条約の構成
(条約本文)
 一般的義務、適用、条約の改正手続き及び発効要件等について規定するとともに、満載喫水線の表示、満載喫水線の水没の不可、検査の種類、実施時期及び内容並びに証書の発行について規定
(附属書I:満載喫水線を決定するための規則)
第1章(規則)
  満載喫水線標識等の形態及び標識の検証等について規定
第2章(フリーボードの指定の条件)
  船体の風雨密性を保持するための要件及び船員の転落防止設備について規定
第3章(フリーボード)
  フリーボードの計算方法について規定
第4章(木材フリーボードを指定される船舶に対する特別の要件)
  木材を甲板上に積載することにより小さいフリーボードが指定される場合の船舶の構造、積付け及びフリーボードの計算方法について規定
(附属書II:帯域、区域及び季節期間)
世界の海域を海面の波浪状態を考慮して、冬期、夏期及び熱帯に分類
(附属書III:証書(様式))
国際満載喫水線証書及び国際満載喫水線免除証書

 

3.1966年の満載喫水線に関する国際条約に関する1988年の議定書

 各条約・コード間で検査の種類、間隔、証書の有効期間等の調和を図るため、1988年10月から11月にかけてIMOにおいて開催された「検査と証書の調和システム(Harmonized System of Surveyand Certification(HSSC))に関する国際会議」(我が国を含む72カ国の政府代表が参加、3カ国1地域14機関がオブザーバーとして参加)にて採択された議定書で、検査と証書の調和システムの導入、改正方式の変更(Explicit方式→Tacit方式)、1988年時点で未発効の1966年条約の技術基準改正案の取込みを内容としている。2000年(平成12年)2月3日に発効した。

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