旅客船事故原因分析検討会
中間とりまとめ
平成17年8月
(1)
伝統的な事故防止対策の基本的考え方 2
(2)
ヒューマンファクター的視点からの問題指摘 3
(1)
人間工学的アプローチの導入 4
(2)
安全を最優先する企業風土の確立 4
(3)
安全確保に向けた事業者の自主的取組の促進と行政のバックアップ 4
(4)
事故防止技術・システムの開発・整備 5
(5)
危機発生時の対応体制の整備 5
(1) 事業者側に期待される取組み 6
(2) 行政側の施策 8
(3) 関係機関・団体等の連携による取組み 8
旅客船事
故原因分析検討会中間とりまとめ
平成17年8月
(1)
JR西日本福知山線の脱線事故をはじめ、航空分野における様々なトラブルといった最近の公共交通機関の事故やトラブルの続発により、我が国の公共交通機関
に対する信頼が大きく揺らいでいる。
これらの事故に関しては、
事故原因について調査中のものもあるが、共通因子として、人間の「うっかりミス」や、行為に伴うリスクを認識しながら意図的に行う「不安全行動*1」
に起因するヒューマンエラー*2と事故との関連が指摘されている。これを受け、国土交通省においては、平成17年6月に「公共交通
に係るヒューマンエラー事故防止対策検討委員会」を設置し、事故とヒューマンエラーとの関係について、専門家を交えた検討が行われているところである。
(2)
海事分野についてみると、年間約1.1億人の利用者を数える公共交通機関である国内旅客船の事故は、昭和30年代、40年代には大型死亡事故が続発してい
たが、昭和45年の運航管理制度の導入等関係者の努力により、近年の事故件数は、ピーク時の半数程度で推移してきたところである。
最近の国内旅客船の事故の
例としては、昨年12月の鹿児島県トカラ列島沖で小型船が荒天時に転覆し、行方不明者5名を出した重大事故や、今年5月の長崎県五島列島でカーフェリーが
濃霧時に防波堤に衝突し、数十名の負傷者を出した事故、長距離フェリーの車両甲板におけるサイドブレーキのかけ忘れに伴う車両逸走による死亡事故等があ
る。また近年海外では、1980年代から1990年代に大型旅客船で100名以上の犠牲者を出す重大海難*3が頻発している。これらの事故の原因として、
荒天時等の運航中止基準の不遵守、ブリッジにおけるコミュニケーション不足による操船不適切等を挙げることができ、旅客船事故においてもヒューマンエラー
に起因するものが多く見られるところである。
海上交通では、旅客船のみならず、貨物船、漁船等の多くの船
舶が輻輳して運航されており、旅客船の関係する衝突等の事故の原因は一概に旅客船側にのみあるものではない。また、旅客船事業の主体者の多くは、中小企業
であることも特色のひとつである。
旅客船の事故については、
一度発生した場合は、海上における救助の困難であること、また、公共輸送機関として社会的に重大な影響を与えることという特徴に鑑み、最新の事故防止のた
めの知見を結集し、事故を可能な限り防止する取組みを不断に進めていく必要がある。
このため、国土交通省海事
局では、平成17年7月に「旅客船事故原因分析検討会」を設置して、4回の検討会を開催し、旅客船のヒューマンエラー事故防止対策について検討を進めてき
たところである。
(3)
前述した「公共交通に係るヒューマンエラー事故防止対策検討委員会」は、この8月12日に中間とりまとめを行い、この中で、各交通モードに共通するヒュー
マンエラー事故を防止する考え方として、「交通事業者において安全を最優先とする企業風土の確立と安全管理体制の構築の重要性、事故防止技術の導入の必要
性」等の提言がされているところである。
海事分野に関しては、安全
管理体制の構築として先進的な取組みである、国際標準であるISMコード*4(国際安全管理規則)の導入が外航船においては義務
化、内航船については任意で進められてきているところである。国内旅客船についても、これらの取組みを参考にしながら、最新のヒューマンエラーの防止に係
る知見を整理し、運航事業者、行政、関係者等を含めた総合的な取組みのメニューを提示することをもって、本検討会の中間とりまとめとしたい。
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2.事故発生のメカニズムと事故防止対策
(1)
伝統的な事故防止対策の基本的考え方
伝統的な事故防止の考え方
としては、事業者において安全関係法令等を遵守することが安全確保対策であり、その手段として、安全関係法令等の充実及び遵守、それを担保する監査の的確
な実施が重要とされてきたところである。
すなわち、事故が発生した
場合には、事故の原因となる法令等の違反・過失が存在し、違反・過失を犯した個人の責任追及や処罰等により、法令等の遵守を担保し、安全確保を図るという
考え方であった。
(2)
ヒューマンファクター的視点からの問題指摘
@
しかしながら、法令等による規制は万能ではなく、危険行動(不作為を含む。)の一部をカバーするのみであり、法令等の遵守ですべての事故を防止することは
できない。
A
うっかりミスや不安全行動にはこれを生み出す背後要因があり、その背後要因を究明し対策を講じない限り、当該個人を罰しても真の安全確保、予防安全にはな
らない。
B
また、仮にうっかりミスや不安全行動を犯しても事故の発生に結びつかせないための、多重チェックシステム、フェールセーフシステム(ひとつのミスが事故に
至らないシステム)等の事故防止技術の工夫が必要である。
C
さらに、事故が発生したとしても、適切な事故対応によって被害を最小化することが必要である。その対応如何によっては被害は大きく異なり得るものであり、
被害を最小化する技術や体制の整備が必要である。
3.新たなヒューマンエラー事故防止対策の展開の視
点
海事分野においては、すで
に運航管理制度や国際標準であるISMコードの導入等の事故防止対策が取られているところであるが、上記のような指摘を踏まえ、以下の視点から新たな
ヒューマンエラー事故防止対策を展開すべきである。
(1)
人間工学的アプローチの導入
・ミス、違反・不安全行動の
発生メカニズムの究明とその防止対策(人間、環境、組織)
・事故・インシデント・ヒヤ
リハット事例の報告システムの確立及びその分析と活用(特に、事故再発防止策の的確な検討・実施)
・不安全な行動・状況の収集
と解消(特に、曖昧な業務指示及び実施方法の明確化)
・人間−機械系の調和及び使い易い機器とのインターフェースに
よる誤認識及び誤判断の防止並びに疲労の防止
・衝突・乗揚げの自動防止等
の先進的な知見・技術の開発とその積極的導入、専門家の知見の活用
(2)
安全を最優先する企業風土の確立
・経営トップの安全確保に対
するコミットメント・方針の明確化
・現場と経営陣、社内の部門
間の十分なコミュニケーションの確保(特に、マイナス情報、リスク情報の経営トップへの確実な伝達)
・課題・問題点に対し適切な
対応策を検討し、フィードバックするシステムの構築
・安全確保担当部門、内部監
査部門への十分な独立性と権限の付与(経営トップに直結した体制の整備)
・情報公開の促進
・経営トップから社員一人ひ
とりのコンプライアンス*5(倫理法令遵守)意識の向上
(3)
安全確保に向けた事業者の自主的取組の促進と行政のバックアップ
・安全管理体制の整備
・リスクアセスメント(事業
に伴う安全に関するリスクの洗出し)の実施と、その帰結による安全性向上対策の抽出と実施
・安全な事業実施体制の構築
(責任・権限の明確化、教育・研修、健康管理等)
・定期的なレビューと改善措
置(外部人材の活用を含む。)
・行政による安全マネジメン
トシステム(枠組み)の提示と評価(運航管理制度、ISMコード等)
・事業者の自主的取組みを支
援する環境整備(事故・リスク情報、事業者の先進的取組み事例、先進的知見・技術情報の提供、各種リスク対応策の共同研究、ガイドラインの策定、事故防止
技術の開発、教育・研修機会の提供、事業者の取組が市場等で評価される仕組みの構築等)
・事故及び違法事案に対する両罰規程を含む処分の厳格な適用及
び優良事業者へのインセンティブ制度の導入
(4)
事故防止技術・システムの開発・整備
ヒューマンエラーによる事故を防止するためには、人間と機械
のシステム全体を視野に入れ、以下の観点から事故防止技術の開発・整備を進める必要がある。
・事例解析やシミュレーション技術等を用いてヒューマンエラー
の要因の分析
・作業自体の省略や自動化レベルの最適化等によりヒューマンエ
ラーの発生の低減
・船舶や海象状況の認識を補佐・強化し、操船の支援
・操船者の状態把握等によりヒューマンエラーの兆候の検出
・エラー発生への気づきを支援する等、ヒューマンエラーに強い
システムの構築
(5)
危機発生時の対応体制の整備(クライシスマネジメント*6)
・各種危機発生シナリオの設
定、対応策の策定、体制・マニュアル・資機材等の点検・整備、訓練(応用力の養成、対応策の再検討を含む。)等
海上交通は荒天や霧等の気
象海象の状況及び地形や他船との関係等に大きく左右されるため、海上交通の安全は従来から熟練した船員に負うところが多い。しかし、高度経済成長期に発展
した海上輸送分野で大量に育成された現在の熟練船員が大量退職期を迎えている。一方、GPS、ARPA(衝突予防援助装置)、電子海図、AIS(船舶自動
識別装置)、通信設備など情報技術の開発が進んでおり、船員の作業を補佐し、あるいは分担する機器の技術も出現し導入されている。また、先に示したように
ヒューマンエラーによる事故防止に対する組織的取組みの重要性が認識され、ISMコードによる安全管理が進められている。
このような状況に鑑み、旅
客船事業においては、事業者が自主的に安全確保体制及び安全風土を構築する一方、行政は事業者が取り組むための環境整備を行うという基本的考え方に立っ
て、それぞれの立場において以下の視点から具体的対策の検討、実施を期待したい。また、内航貨物船の安全対策を検討するに当たっても共通する対策が存在す
ると思われるため、参考にしていただきたい。
なお、具体的対策の実施が、法令等による強制要件となる場合
は、関係者の十分なコンセンサスを得る必要がある。
(1)
事業者側に期待される取組み
@
安全管理体制及び安全風土の構築
・社内における安全対策推進
会議等の充実
→経営トップのコミットメン
ト・方針、リスクマネジメント*7、クライシスマネジメント等
・運航管理組織(運航管理者
の社内での地位・権限の確立、個人の資格・能力等の見極め等)の見直し
・安全に係る監査及び点検組
織の整備
・陸上職員と船上職員の責任分担の明確化と連絡体制の明確化
・任意ISMコードの導入の
推進(PDCAサイクル*8を重視した体制の確立)
・社内インシデント等の報告
制度の整備と有効活用
・危機管理体制・緊急時体制の確立
・安全マネジメントに関する
取組等の積極的な情報公開
・関係機関・団体・有識者との情報交換、連携の強化、ノウハウ
の受入れ
A 教育・研修・健康管理
・社内人材育成・登用制度の
見直し(上級職登用時の能力審査等)
・最新の研修・訓練の導入
(BRM*9(ブ
リッジ・リソース・マネジメント)/BTM*10(ブリッジ・チーム・マネジメント)研修、KYT訓練(危険予知訓練)、緊急事案対応訓練等)
・船員再教育機関との連携強
化(BRM訓練、ETM*11(エンジンルーム・チーム・マネジメント)訓練等安全に係る研修)
・定期的な安全運航審査の導
入(個人、チーム(運航・荷役作業等))
・安全優良船員の認定制度の導入、運航管理担当者の資質の向上
・外部有識者・安全優良船員
等による訪船指導、経営トップによる点検等の実施
・船員に対するメンタルヘル
スケアー、適性診断等の実施
B 安全投資
・新たな機器等の導入
(VDR(航海情報記録装置)、AIS、ワッチサポート(居眠り防止装置)、暗視装置(赤外線型、微光増幅型)、アンダーウォータースピーカー(鯨類忌避
装置)等)
・船舶の位置情報等のモニタ
リングシステムの開発・導入
・港湾における安全支援機器
(欧州で実用化されている自動係船装置 等)の開発・導入
(2) 行政側の施策
@ 運航管理制度の充実
事業者が安全を最優先する
企業風土の確立と安全確保に向けた自主的取組みを一層促進するため、運航管理制度を見直し・充実する。
・経営トップの安全への明確
なコミットメントを求める(措置)
・運航管理規程の内容、運航
管理者の選任・職務権限等の見直し
・監査方法の充実、監査体制
の充実・資質向上
A ISMコードの普及促進
事業者に対し、ISMコー
ドの普及促進を行う。
このため、ISMコードの
指導・講習会等の啓蒙活動や認証を行う執行体制の充実強化を図る。
B
事業者の自主的取組みへの支援
・「社内安全管理ガイドライ
ン」、「社内研修訓練モデル」等の提示
・事故・リスク情報、事業者
の先進的取組み事例、技術情報等の提供
・各種リスク対応策の共同研
究等
・優良事業者へのインセンティブの供与(公表・表彰等)
・地方事業者、小規模事業者等の支援及び情報交換体制の強化
C
原因究明と再発防止策の検討
事故の原因究明にあたって
は、事故事例解析やシュミレーションによる事故要因分析、及び専門家の知見を活用し、背後要因を含め運航に関するシステム全体の機能をチェックし、的確な
再発防止策を検討する。
また、インシデント・ヒヤリハット事例の報告システムの効果
的な運用を図り、事故防止対策の抽出と検討に資する。
D 事故防止技術の研究開発
潜在的危険状態への移行を可能な限り早期に防止すると共に、
気づき支援などによるエラー発生後の柔軟な対応を実現するため、以下の研究を推進する。
・操船作業の負担を評価し、作業を適正化するための作業分析技術
・当直、着離桟、避航操船時等での人間の役割を考慮した各種支援技術
・操船者の作業状況等の把握(モニタリング)技術
・音声入出力を用いたアドバイス等による気づきへの支援
E
船員教育機関における系統的な安全教育の導入の検討
F
事故及び法令違反事案に対する両罰規程を含む処分の厳格な適用
(3)
関係機関・団体等の連携による取組み
@ 海上交通の安全風土の形成と普及
・旅客等の利用者の遵守すべき事項及び安全運航最優先への理解
の促進
→安全な乗下船(出航時、着桟時の着座、車両のサイドブレーキ
の励行等)、非常時の行動等
・旅客等への気象海象等の運航予定に影響する情報の迅速な伝達
と公開の推進
A
事故調査における海上保安庁、海難審判庁、海事局等関係機関の効率的な連携方策の検討
B
事業者のインシデント情報の共有・有効活用等の検討(インシデントデータバンクの設置等)
C
海難審判庁・海上技術安全研究所といった関係機関等の連携によるデータや専門的知見の有効活用
D
海上技術安全研究所等の事故防止技術の開発における関係機関・団体等の連携の強化
E 研究開発における研究分野間及び現場との連携
・システム運用者の支援の有効性と機能分担の適正化の促進
・技術情報提供データベースやデータマイニング技術*12の
開発と導入
F 研修・教育
・運航管理者・乗組員の研修
及び資料の充実
G 部外者チェック
・派遣指導員(部内点検、訪
船指導など)制度の構築の検討
H 広報・啓発等
・事業者向けの事故等の情報
提供の充実
(1)
本検討会では、特に事業者の安全風土の構築、安全管理体制の確立という視点から、ヒューマンエラー事故防止対策として「事業者が取組むべき課題」「行政の
環境整備のあり方」を中心に議論をしてきた。ヒューマンファクターは、交通体系の重要な一要素であるが、もとより安全を担保するためには運航に関係する他
の要因も重要である。本検討会においては事故分析や事故防止の技術開発に関しても対策メニューを挙げるているところであり、マン・マシンシステム全体につ
いて、人間工学を含むシステム工学的なアプローチが必要である。
(2)
旅客船事業について、ヒューマンエラー事故防止対策として、検討・推進すべき具体的対策については、概ね網羅したものと思料する。行政側の施策について
は、「検討部会」等を置いて引き続き議論するなど対策の具体化に向け早急に取り組む必要がある。この中で、事業者側に期待される取組みが実行に移されるよ
うな「仕組み」について検討が必要である。
関係機関・団体等の連携による取組みについては、事故の原因
分析及び対策に関して「情報の共有・活用」及び「事故防止技術の開発」が大きな課題となっているが、例えばインシデント情報の収集・活用については収集・
分析の困難性等様々な問題があり、事故情報についても背景要因の分析が不十分な面もあると思料されるので、今後、関係者間のより一層の議論が必要である。
さらに事故・インシデントの原因分析から対策を検討することに加え、予め事故の発生の可能性の分析(安全分析)からシステムの安全性を高めるアプローチに
ついても連携する必要がある。
(3)
経済規制の緩和が進む状況の中で、海運事業者間のみならず他の交通モードとの間の競争も激化し、安全に関するコストは無視できないのが現状である。しか
し、事業者は、安全を最優先にする企業風土を構築し、安全確保に必要なコストをかけたことが最終的に企業価値を高めることになるという認識をもって取り組
まなければならない。
(4)
旅客船の安全運航、安全の達成については、運航会社、船員、造船会社、管海官庁、乗客、荷主の共同作業であり、「安全風土」は、安全へのゆとり、経済活動
との調和の上に成り立つ。安全風土のプロモーション(環境整備)に行政側は取り組まなければならない。
本検討会の中間とりまとめに沿って、関係者の具体的な対策の
検討が進展することを期待するものである。
村 山 義 夫 財団法人海上労
働科学研究所主任研究員
【有識者委員】
伊 藤 耕 二 川崎汽船株式会
社 研修所 主任講師・船長
小 林 弘 明 東京海洋大学
海洋工学部海事システム工学科教授
野 尻 良 彦 独立行政法人
海技大学校 教授
吉 田 公 一 独立行政法人
海上技術安全研究所 研究統括主幹
【関係団体委員】
馬 越 洋 造 全日本海員組合
沿海局長
笠 木 義 男 社団法人
日本旅客船協会 労海務部長
高 松 勝三郎 日本長距離フェ
リー協会 副会長・業務委員長
田 中 護 史 独立行政法人
鉄道建設・運輸施設整備支援機構
(辻 一 郎) 技術支援部長
堤 義 晴 社団法人 日本
外航客船協会
【オブザーバー】
外航課長
永 松 健 次(櫻 井 俊 樹)
国内旅客課長
岡 田 光 彦(丹 上 健)
安全基準課長
安 藤 昇(石 田 育 男)
安全基準課安全評価室長
池 田 陽 彦(安 藤 昇)
検査測度課長
澤 山 健 一
船員政策課長
村 上 玉 樹(内 波 謙 一)
船員労働環境課長
後 藤 洋 志
海技資格課長
羽 尾 一 郎
首席海技試験官
富 倉 邦 彦
海上保安庁
交通部安全課長 露 木 伸 宏(村 上 玉 樹)
高等海難審判庁
海難分析情報室長 西 村 敏 和
【事業者ヒアリング等説明者】
新日本海フェリー渇c業企画部長
佐々木 正 美
九州商船
代表取締役社長 横 田 庄 平
佐渡汽船
高速船部長 古川原 芳 明
(独)海上技術安全研究所
松 岡 猛
【事 務 局】
国内旅客課
運航監理官 矢 野 秀 樹
国内旅客課
課長補佐 片 山 敏 宏
注:( )
は前任者
目
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*1 「不安全行動」の定義としては、他に、ニアミスやヒヤリハットに至る以前の幅広い不安全な行動を指すもの等がある
が、本中間とりまとめでは、論旨展開の便宜から「意図」の有無を判断基準とする「失敗のメカニズム」(芳賀繁)の定義を採用した。
「本人または他人の安全を阻害する意図をもたずに、本人または他人の安全を阻害する可能性のある行動が意図的に行われたもの」
*2 「ヒューマンエラー」の定義には様々なものがある。「失敗のメカニズム」(芳賀繁)には以下のように定義されてい
る。
「人間の決定または行動のうち、本人の意図に反して人、動物、物、システム、環境の機能、安全、効率、快適性、利益、
意図、感情を傷つけたり壊したり妨げたものであり、かつ、本人に通常はその能力があるにもかかわらず、システム・組織・社会などが期待するパフォーマンス
水準を満たさなかったもの」
*3 海外の旅客船の重大海難事例
・1987年スカンディナビアン・スター(旅客船)火災海難。言語問題による避難誘導不良。犠牲者158名。
・1990年ヘラルド・オブ・フリーエンタープライズ(RORO旅客船)沈没海難。船首ドアを開放したまま出港。
RORO区域への急激な浸水により短時間のうちに転覆。犠牲者188名
・1994年エストニア(RORO旅客船)転覆沈没海難。荒天下を航行中、バウドアが脱落しRORO区域へ海水が進入。
転覆。犠牲者852名
*4 ISMコード:海上人命安全条約(SOLAS条約)付属書第\章に規定する「船舶の安全航行及び汚染防止のための
国際管理コード」
国際航海に従事する
全ての旅客船と500総トン以上の貨物船は、ISMコードに適合していなければならない。
*5 コンプライアンス:単なる法令の文言のみならず、その背景にある精神まで遵守、実践していく活動。
コンプライアンス
(compliance)の直訳である「法令遵守」よりも広い概念で捉えられることが多い。(巖著「コンプライアンスの知識」より)
*6 クライシスマネジメント:企業価値を大幅に低下させる重大な事象が発生した場合の被害の限定や復旧に向けた活動及
びこれらを想定した事前の取決め(経済産業省研究会報告書「リスク新時代の内部統制」より)
*7 リスクマネジメント:企業の価値を維持、増大していくために、企業が経営を行っていく上で、事業に関連する内外の
様々なリスクを適切に管理する活動(経済産業省研究会報告書「リスク新時代の内部統制」より)
*8 PDCAサイクル:計画(Plan)を実行(Do)し、評価(Check)して改善(Act)に結びつけ、その結
果を次の計画に活かすプロセス。品質管理の取組み(ISO9000シリーズ等)などに広く採用されている。
*9 BRM:操船指揮者
(個人)が船橋において入手可能なすべての資源(乗組員、航海機器、情報等)を適切に管理し、船舶の安全運航のために有効に機能させる。具体的には9つの
要素技術を高めること。 9つの要素技術とは計画、見張り、操船、法規遵守、船位測定、器機取扱、情報交換、緊急対応、管理
*10 BTM/ETM:
船橋または機関室におけるチームメンバーとしてチームのパフォーマンスを高めるような行動を行い、安全運航のためにトータルパフォーマンスを高める。
BTMではBRMで個々に求められる9つの要素技術に加えて2つの要素機能が求められる。
2つの要素機能とは(チームメンバー間の)相互間情報交換機能(コミュニケーション)、(チームメンバー間の)協調
管理機能(コーペレーション)
*11 *2の脚注参照
*12 マイニングは元々採鉱、鉱山から利益が出て役に立つ鉱石を掘り出すこと。データマイニング(Data
Mining、データからの知識発掘)とは、大規模なデータベースから発見されたパターンやルールを知識ベースとして蓄積・学習し、新しい知識を発見・学
習するプロセス。たとえば「収集される大量の事故やインシデントの情報を凝縮して事故予防に有効な情報を見いだす情報技術」
目
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