第1回小型船舶用救命胴衣の常時着用化に関する評価検討会の開催結果について


平成12年8月11日
海上技術安全局安全基準課安全評価室

 去る8月2日(水)に「第1回小型船舶用救命胴衣の常時着用化に関する評価検討会」を開催しましたのでその内容をお知らせします。

1.現状紹介
(1)転落事故等の現状
海上保安庁の調査によると、平成11年の海中転落者は、漁船については129名で、うち107名が死亡・行方不明者。事故者の救命胴衣着用率は3%。また、プレジャーボートについては同じく73名で、うち28名が死亡・行方不明となっており、プレジャーボートによる事故者の救命胴衣着用率は約23%。
また、事故に遭った者の中で、救命胴衣を着用していた者の生存率は81%であるのに対し、未着用者の生存率は35%。これは、救命胴衣の効果を示している。

(2)小型船舶用救命胴衣の現状
小型船舶用救命胴衣の技術基準は、船舶安全法に基づく省令(小型船舶安全規則)に規定されている。この中で、最大搭載人員と同数の救命胴衣の設置が義務付けられているが、着用の義務は課せられていない。
北海道漁船海難防止・水難救済センターより、漁業関係者の間で救命胴衣の常時着用化が推進されている「救命衣(安全衣)」の紹介があった。小型漁船の大半(80%以上)は船舶安全法の適用を受けていないが、これら不適用漁船を対象として、浮力要件を6.5kgとする基準を設け、常時着用に適した救命衣を開発し、普及させている。これは、小型船舶安全規則等で定めている7.5kgより1kg少ない値となる。

2.常時着用化に関する問題点の抽出・検討事項等(意見概要)
(1)救命胴衣の着用実態
小型船舶における救命胴衣の着用率は低いと予測されるが、具体的なデータが不足している。このため、一般ユーザーを対象としたアンケート調査により明らかにする必要がある。
救命胴衣を着用しないのは、ファッション性に欠け格好が悪い、作業性に欠ける、着づらい、暑くて長時間の着用には不向き、というのが主な理由。
救命胴衣メーカーも良い製品を作るよう努力しているが、浮力等の技術基準に適合させるために、胴衣が厚くなり、結果として作業性が悪くなる。メーカーの自助努力には限界がある。このため、技術基準の緩和(法令改正)への見直しが必要。

(2)救命胴衣の効果
救命胴衣着用の効果については海上保安庁の資料等からも明らか。
海中転落による死亡事故を減少させるという視点からは、たとえ現在の基準に適合しない救命胴衣でも着ないよりも着た方が断然効果がある。

(3)着用率向上のための施策
救命胴衣の基準の見直しにより、常時着用に適した救命胴衣を提供していくことが重要。
特に、子供用の救命胴衣のラインアップの充実等、子供に対する配慮が必要。
普及啓蒙活動も積極的に推進すべき。
さらには、次の段階として、着用の義務化を視野に入れた検討も必要。

(4)技術基準検討にあたっての注意事項
技術基準については、安全性と作業性(長時間着用)の両面からの検討が必要であり、技術的視点からの見直しにあたっては実証試験が必要。
諸外国やISOの基準等、国際基準との整合性への配慮も必要。
設計の自由を縛るような基準ではなく、必要となる基本性能が担保されるような基準とすることが重要。
漁船については、高齢者の一人乗り操業が多いこと等、漁業の実態を反映した検討も必要。
船上での作業行為を考慮すれば漁船とプレジャーボートは区別して議論すべき。

(5)その他(要望等)
漁業関係者の間で自主的に利用を進めている「救命衣(安全衣)」については、新しいジャンルとして位置付けてもらいたい。
検定のために費用がかかり過ぎてデザインやサイズが限定される。もっと検定を取り易いようにしてもらいたい。
操縦席の取り出し易い場所に救命胴衣の収納場所を作ってもらいたい。(ボートメーカーへの要望)

3.今後の予定
プレジャーボートの利用者を対象に、転落の経験、救命胴衣の着用状況、着用を率向上させるための救命胴衣の改良点等について、アンケート調査を実施。
10月中旬頃、第2回目の評価検討会開催。
12月頃、第3回目の評価検討会にて実証試験方案等について検討。
平成13年3月頃、第4回目を開催し、評価検討結果をとりまとめ。

(参 考)
  ○委員名簿(敬称略 順不同):
東京商船大学教授(委員長)   庄司 邦昭(欠席)
東京水産大学助教授( 〃 代行)   宮澤 晴彦
日本小型船舶検査機構企画部長   渡邊 勝世
小型船舶関連事業協議会第一部会長   岡本 道晴
小型船舶関連事業協議会第一部会   高階 尚也
(社)日本船舶品質管理協会船舶艤装品研究所主任研究員   板垣 恒男
(社)日本舟艇工業会環境委員会委員長   市倉穂三郎
(財)日本海洋レジャー安全・振興協会振興事業部長   島田 尚信
(社)日本海難防止協会企画部長   菅野 瑞夫
全国漁業協同組合連合会漁政部長   宮原 邦之
(社)北海道漁船海難防止・水難救済センター専務理事   佐久間 猛
マリンイラストレーター   高橋 唯美
(株)舵社ボートクラブ編集部マリンジャーナリスト   岩瀬 佳子
レディーズ・フィッシング・クラブ・オブ・ジャパン会長   小島 和子
 
その他関係行政機関等
           以 上

【ご意見募集】
 本評価検討委員会に対するご意見等がございましたら、以下のアドレスあて
メールをお送り下さい。今後の評価検討の参考にさせていただきます。
 なお、お寄せいただいた意見に対して個別に回答はいたしかねますので、あ
らかじめその旨ご了承願います。
E−mail : ANKI-KA@so.motnet.go.jp


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