第2回小型船舶用救命胴衣の常時着用化に関する評価検討会の開催結果について


平成12年10月26日
海上技術安全局安全基準課安全評価室

 去る10月19日(木)に「第2回小型船舶用救命胴衣の常時着用化に関する評価検討会」を開催しましたのでその内容をお知らせします。

1.救命胴衣着用関連情報について
(1)プレジャーボート乗船者の救命胴衣着用状況
プレジャーボートを対象として、海上保安庁第四管区海上保安本部が平成12年7月28日から8月15日にかけてヘリコプターによる上空からの目視確認した救命胴衣着用状況の調査結果の報告があった。これによると、救命胴衣の着用率は、水上オートバイ(胴衣着用率93%)、キャビンなしヨット(胴衣着用率83%)は高いが、キャビンありヨット(胴衣着用率20%)、キャビンなしモーターボート(胴衣着用率16%)、キャビンありモーターボート(胴衣着用率10%)では低い着用率であることが紹介された。

(2)海中転落事故分析
本年9月11日に北海道襟裳岬沖で発生した第五龍寶丸転覆沈没事故(14名行方不明)では、乗組員の全員が作業用救命衣を着用していなかった模様であることが報告された。
海上保安庁の資料に基づく過去6年間の海難事故概況を分析した結果が報告された。これによると、a.海中転落の事故者数は漁船が最も多く(58.0%)プレジャーボート(16.1%)がこれに続くこと、b.海中転落事故による死亡者のうち救命胴衣非着用者は、プレジャーボートでは94.8%、漁船では95.6%とそのほとんどが救命胴衣を着用していなかったこと、c.海中転落事故発生の大半が陸岸に3海里内の近い範囲で発生していること、d.海中転落による死亡・行方不明者の74.5%が20トン未満の小型船舶で発生していること、などが紹介された。

(3)諸外国における救命胴衣関連法規制概況
欧米加8カ国における救命胴衣に関する法規制について、ほとんどの国で救命胴衣の搭載義務は課されているが、着用義務については米国の州単位での対応を除き、義務付けしている国はないことが報告された。
米国では、57州等のうち51の州等(1998年現在)が、子供や水上オートバイ乗船者等を対象として救命胴衣の着用を義務付けており、救命胴衣着用による救命効果が顕著であること、また、着用義務化を行った州等の増加に伴って12歳以下の子供の溺死者数が年々減少しているなど、救命胴衣の着用化の浸透、これによる死亡者数の減少傾向が報告されていることが紹介された。

2.アンケート調査結果について
(1)アンケート実施概況
平成12年8月から9月下旬までの2ヶ月弱にかけて、当評価検討会の検討作業の一環として実施した救命胴衣着用に関するアンケート結果概況について以下のとおり報告があった。(アンケート質問票はホームページにて既掲載
アンケート実施方法
配布者 運輸省 日本小型船舶検査機構 (社)日本舟艇工業会 (財)日本海洋レジャー安全・振興協会
実施期間 H12.8.14
    〜9.22
H12.9.7
   〜9.22(30)
H12.8.11
    〜9.8
H12.8.20
    〜9.10
実施場所
(地域)
全国
(運輸省ホームページ)
全国34支部
(20通平均)
工業会加盟各社
各社全国系列販売店
小型船舶操縦士海技免状更新講習会場
(全国25会場)
対象者 一般
(有効回答数10)
船舶所有者(受検者)
(有効回答数284)
工業会加盟各社開発部門実験担当者
(有効回答数140)
販売店の顧客
(有効回答数229)
     小計369
1〜4級(湖川小馬力4級含む)小型船舶操縦士海技免状所有者のうちプレジャーボート関係者
(有効回答数513)
回収方法 メール、ファックス返信 運輸省海上技術安全局宛郵送 (社)日本舟艇工業会事務局宛回答送付 その場にて回収

(2)アンケート結果
アンケート有効回答総数は1,176件。
アンケート結果について、以下について概要報告がなされた(別添1図表)。なお、アンケート結果の分析については今後も検討を加えた上で、後日、運輸省ホームページに掲載予定。
a.救命胴衣着用状況(船種別含む)
b.落水経験(船種別含む)
c.胴衣の改善点
d.胴衣着用率向上に対する自由意見の分類
アンケート結果に対する各委員からの主な意見は以下のとおり。
a. アンケート対象者の中に、プレジャーボート製造の実験担当者が含まれており(約12%相当)、今回調査の救命胴衣着用率の数値を押し上げる要因になっているのではないか。
b. 救命胴衣着用に対する認識が想像以上に高く、着用義務化を指摘する割合が救命胴衣の改善及び啓蒙活動に関する指摘と同程度あったことが注目される。
c. 救命胴衣の着用効果等について、テレビや雑誌等でもっとPRしていくべき。

3.救命胴衣の予備試験結果について
救命胴衣の基本性能の一つである浮力(小型船舶用救命胴衣の最小浮力は現基準で7.5kg)について、必要な浮力に関する資料を得るため、浮力5.8kg,6.5kg,7.0kg及び7.5kg(吊り下げられる鉄片質量)の4種類の救命胴衣に対する浮遊性能について、平成12年9月27日、日本船舶品質管理協会船舶艤装品研究所において予備試験が実施され、この結果が報告された。(別添2写真
救命胴衣の浮力を検討する場合、単に呼吸を確保するだけでなく、少なくとも顔面の大部分を水面上に安定した状態で浮かすこととなり、その場合、必然的に水面と口元の距離は5p以上確保する必要がある。今回の予備試験結果では、合羽及び長靴等の付加物を着用して、飛び込み後、胴衣のずれを直さない場合でも、口元距離は最小5pが確保されており、平穏な海域で使用すること等を前提とすれば浮力5.8kgでも十分ではないかとの報告がなされた。なお、救命胴衣の基準としての最小浮力を検討するに当たっては、着用する人の体格等のばらつき、使用形態により想定される服装、使用海域、経年劣化等を勘案した余裕ある浮力基準を評価することの必要性が付言された。
予備試験結果の報告を受け、各委員より以下の意見がなされた。
a. 救命胴衣の浮力が5.8kgでも問題ないようだが、3kg,4kgについても実験しておくべき。
b. 予備試験の服装は軽装な気がするので、漁船の救命胴衣を考える場合には、実際の漁業従事者の装備を再現して実験すべき。
c. 実海域試験など、波浪中での試験も必要。
d. 身長、体重のバリエーションについても考慮すべき。
e. 膨張式の浮輪についても実験対象に入れて欲しい。
f. 子供などを想定し、自動復正性能に関する試験も実施しておくべき。
g. 夜間に及ぶ漂流も考慮しておくべき。
以上、予備試験結果及び各委員からの意見を踏まえ、本実験を実施することとなった。

4.今後の予定
今後、本実験を実施し、次回までに常時着用に適した救命胴衣の技術基準素案を策定するとともに、救命胴衣着用に関する啓蒙活動等の情報を収集、整理し、着用率向上に向けた実施方策についても検討を進めていくことが確認された。
次回開催は平成13年1月中旬を予定。

(参 考)
  ○第1回「小型船舶用救命胴衣の常時着用化に関する評価検討会」開催日:
                                  平成12年8月2日(水)
  ○委員名簿(敬称略 順不同):
東京商船大学教授(委員長)   庄司 邦昭
東京水産大学助教授   宮澤 晴彦
日本小型船舶検査機構企画部長   渡邊 勝世
小型船舶関連事業協議会第一部会長   岡本 道晴
小型船舶関連事業協議会第一部会   高階 尚也
(社)日本船舶品質管理協会船舶艤装品研究所主任研究員   板垣 恒男
(社)日本舟艇工業会環境委員会委員長   市倉穂三郎
(財)日本海洋レジャー安全・振興協会振興事業部長   島田 尚信
(社)日本海難防止協会企画部長   菅野 瑞夫
全国漁業協同組合連合会漁政部長   宮原 邦之
(社)北海道漁船海難防止・水難救済センター専務理事   佐久間 猛
マリンイラストレーター   高橋 唯美
(株)舵社ボートクラブ編集部マリンジャーナリスト   岩瀬 佳子
レディーズ・フィッシング・クラブ・オブ・ジャパン会長   小島 和子
船員災害防止協会安全管理士(第2回評価検討会より参加)   阿部 勇紀
その他関係行政機関等
           以 上

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