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後藤 哲也(ごとう てつや)

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最終更新日:2010年4月12日

有限会社新明館代表取締役会長

主な経歴

昭和20年
有限会社新明館 入社
平成 5年
有限会社新明館 代表取締役就任

カリスマ名称

「癒し空間演出のカリスマ」
独創的な露天風呂と素朴な街並みの整備で癒しを演出し、地域を再興させた。

選定理由

敷地内の岩山を掘り抜いて作った幻想的な露天風呂で、癒しを求める顧客の心を捉え成功。また、樹木の配置までもこだわり、統一感ある街並みと素朴でくつろげる雰囲気の温泉郷作りに取り組み、黒川温泉郷全体の活性化に貢献。

具体的な取り組みの内容

熊本県北部の南小国町に黒川温泉がある。アクセスにも便利とはいいがたい山間の温泉街を、今日も露天風呂巡りに若い女性客が浴衣姿で歩いている。自然よりも自然らしい計算された樹木の配置と、あたかも道が通路、各旅館が小部屋であるかのような街並みは、古き良き日本の田舎の素朴な雰囲気で統一され、風光明媚な露天風呂と合わせて、ストレスに満ちた日常生活から開放されて心身の安らぎを得たいという顧客の心を捉えている。

かつては閑古鳥の鳴いた温泉地が、旅行情報誌「じゃらん九州発」の人気観光地調査で98年から5年連続1位、年間観光客数は136万人(平成13年)となり、いまや有名温泉地のなかでも別格の存在となった。現在は、入湯手形をつくり、互いの旅館の露天風呂に入ることができるようにしたことにより、温泉街全体の繁栄をもたらしているが、そもそも露天風呂で客を呼ぼうと取り組んだのが「露天風呂作り、樹木に関しては右に出るものなし」と自ら語るほど、経験に裏打ちされた自信がみなぎる後藤氏である。
黒川温泉を訪れる観光客
黒川温泉を訪れる観光客
黒川温泉を訪れる観光客

なぜ、露天風呂なのか?

後藤氏は若い頃、時間があれば人気がある温泉地や京都、軽井沢といった観光地を訪ね歩き、なぜここには人が集まるのか、自分の目で確かめて回った。耳を澄まして旅行客の話に聞き耳を立てた。この場所の何をすごいと思っているのか、何を喜んでいるのか、そして何を求めているのか。そこで気づいたのは、客がお金を払って泊まりにくるのは、癒しとくつろぎを求めたいからということだった。
たまったストレスを解消し、日常生活では決して味わうことのできない時間の流れと、あるがままの自然という空間に身を置き、思う存分開放されたいという気持ちにどう応えるかが、旅館の使命ではないか。風呂は、時空を超えて心も体も最も癒される場だ。だから日本一の露天風呂を作ろう。後藤氏は決意する。

そして零細経営に危機感を感じていた23歳のときに、敷地内の岩山を掘りぬいて客が感動するような幻想的な露天風呂を作ることに取り組む。以後、10年をかけて岩山を穿ち、現在の洞窟風呂を完成させる。さらに京都の庭から独学で学び、樹木の配置等にも気を配り、よりリラックスできる空間を演出した。評判は口コミで広がり、後藤氏の勤める新明館はたちまちお客で溢れかえった。
なお、新明館は日本名湯百選に選ばれている。
「岩戸風呂」(露天風呂)
「岩戸風呂」(露天風呂)

黒川温泉の復活劇

後藤氏の着眼点は時代を先取りしていた。先駆者は常に理解されないものだが、後藤氏の信念の結実は、黒川温泉の他の旅館の目を覚まさせた。

1980年代、やまなみハイウェー(九州横断別府阿蘇道路)開通の景気が冷め、黒川温泉は閑古鳥が鳴いていたが、繁盛する新明館の後藤氏の下に、地域の若手経営者が教えを請いに訪れる。温泉地自体をいいと評価してもらわなければ、次は別の温泉地に行ってしまう。帰るときも大事だが、着いたときにもう「ここに来てよかった」と思ってもらえるような雰囲気を、温泉街全体で作る必要があった。

後藤氏は露天風呂づくり、自然をより美しく見せるための樹木の配置(風景作り)等の独自のノウハウを惜しげもなく伝授した。その結果、アドバイスを元に露天風呂を作った瀕死の旅館が建て直しに成功する。その後、他の旅館もそれに倣うことで、黒川温泉全体が息を吹き返したのだった。
さらに後藤氏の指導を元に、旅館の露天風呂だけではなく、温泉街の樹木の植栽、配置等に手を加え、自然豊かな素朴な風景にそぐわない人工的な看板の撤去に温泉街全体が取り組んだ。そして黒川温泉の現在の美しい自然と落ち着いた雰囲気が形成された。

露天風呂と風景づくりのアドバイザー

地元で「哲也さん」と呼ばれ、慕われている後藤氏だが、現在、全国の旅館の経営者、自治体などから招かれ、アドバイザーとして出向き、多忙な日々を送っている。(例 小国町の街路樹、洞爺湖温泉、飯田温泉、ほか多数)

後藤氏の経営哲学は、徹底した顧客満足度重視である。「耳を澄まし、客の話に聞き耳立てよ」「温泉に限らず、客商売はすべて同じ。自分たちが客に何を提供するかではなく、客は何を求めているのか、客はどうしたら喜んでくれるのかを最初に考えること。」という後藤氏の言葉の中に、そのすべてが表現されている。露天風呂づくりや自然を見せるための植栽に取り組み始めたとき、周囲には反対した人もいたという。「でも最後にはみんなが賛成した。それは、お客さんの喜ぶ姿を見たからなんです。」

行く先々で後藤氏は自分の経験を語る。「女性客をつかめ。今の女性のおしゃれがわからずして流行はつかめない。」「木を植えろ。」「建物にも気を配れ。自分の意見を反映できるように自ら勉強しろ。」現場で培った説得力のある知識は、後藤イズムを行く先々に浸透させている。
黒川温泉の風景
黒川温泉の風景
黒川温泉の風景

黒川温泉の成功が語るもの

黒川温泉は後藤氏の取り組みをきっかけに、地域興しとして、温泉街全体が取り組み成功した。それは、周辺の豊かな自然環境、豊富な高温源泉を武器にして、情緒ある露天風呂に取り組むとともに、「入湯手形」を生み出し温泉街全体が共生したことによるものだった。全国のいくつかの温泉地に見られる個別旅館の巨大化により、すべてを旅館の中に取り組んでしまい自己完結型となることで、周辺の旅館街、温泉街を衰退させ、結果として自己の寿命さえ縮めてしまう例とは対照的であり、今後の地域の発展を考える上で示唆に富んでいるといえよう。

後藤氏は今日も作業着で現場にたち、樹木の手入れをしながら、顧客の話に耳を澄ましている。

参考資料

「黒川温泉「急成長」を読む」(熊本日日新聞社)
「プレジデント」2002.10.14号
九州発 ものがたり黒川温泉」(読売新聞西部本社)
立ち寄り温泉みしゅらん クチコミ情報2001年7月1日~1月10日
このページに関するお問い合わせ

後藤氏ご勤務先 (有)新明館 (原則ご本人が対応)
電話 0967-44-0916
FAX 0967-44-0532

関連情報はこちら→黒川温泉 新明館ホームページ