美しい国づくり政策大綱

 

 

 

 

 

 

 

 

 

平成15年7月

国土交通省


 

− 目 次 −

前文

T 現状に対する認識と課題

U 美しい国づくりのための取り組みの基本的考え方

V 美しい国づくりのための施策展開

 

 


前文

 

 戦後、我が国はすばらしい経済発展を成し遂げ、今やEU、米国と並ぶ3極のうちの1つに数えられるに至った。戦後の荒廃した国土や焼け野原となった都市を思い起こすとき、まさに奇蹟である。

 国土交通省及びその前身である運輸省、建設省、北海道開発庁、国土庁は、交通政策、社会資本整備、国土政策等を担当し、この経済発展の基盤づくりに邁進してきた。

 その結果、社会資本はある程度量的には充足されたが、我が国土は、国民一人一人にとって、本当に魅力あるものとなったのであろうか?。

 都市には電線がはりめぐらされ、緑が少なく、家々はブロック塀で囲まれ、ビルの高さは不揃いであり、看板、標識が雑然と立ち並び、美しさとはほど遠い風景となっている。四季折々に美しい変化を見せる我が国の自然に較べて、都市や田園、海岸における人工景観は著しく見劣りがする。

 美しさは心のあり様とも深く結びついている。私達は、社会資本の整備を目的でなく手段であることをはっきり認識していたか?、量的充足を追求するあまり、質の面でおろそかな部分がなかったか?、等々率直に自らを省みる必要がある。また、ごみの不法投棄、タバコの吸い殻の投げ捨て、放置自転車等の情景は社会的モラルの欠如の表れでもある。

 もとより、この国土を美しいものとする努力が営々と行われてきているのも事実であるが、厚みと広がりを伴った努力とは言いがたい状況にある。

 国土交通省は、この国を魅力ある国にするために、まず、自ら襟を正し、その上で官民挙げての取り組みのきっかけを作るよう努力すべきと認識するに至った。そして、この国土を国民一人一人の資産として、我が国の美しい自然との調和を図りつつ整備し、次の世代に引き継ぐという理念の下、行政の方向を美しい国づくりに向けて大きく舵を切ることとした。

 このため、本年1月から省内に「美し国づくり委員会」を組織し、延べ11回にのぼる議論を積み重ねてきた。課題は多々あるが、「美しさ」に絞って、それも具体的なアクションを念頭に置きながら、この政策大綱をまとめた。

 これを契機に、美しい国づくり・地域づくりについて、国民一人一人の広範な議論、具体的取り組みへの参画が促進されることを期待する次第である。

 


T 現状に対する認識と課題 

 

(1)我が国の景観・風景の現状 

 我が国は地域による気候・風土の多様性、四季の変化に富んでおり、水と緑豊かな美しい自然景観・風景に恵まれている。その美しさは海外からも高い評価を得ている。

秩序ある畑利用が織りなす美しい田園風景(北海道網走地方)

四季を通じて多数の観光客でにぎわう姫川流域(長野県白馬村)

夕暮れの玄海灘(福岡県福岡市)

景観等周辺の自然環境に配慮した桂浜(高知県高知市)

美しいサンゴ礁のある南の島(沖縄県慶良間列島)

 

 また、地域の歴史や文化に根ざした街なみ、建造物等が各地に残されており、それらの美しさ、価値が再発見され、保全や復元の取り組みが見られる。

歴史的な景観が保存されている今井町の街並み(奈良県橿原市)

歴史的建造物を保存・活用した神戸税関本関(兵庫県神戸市)

 

 他方、国土づくり、まちづくりにおいて、経済性や効率性、機能性を重視したため美しさへの配慮を欠いた雑然とした景観、無個性・画一的な景観等が各地で見られる。

電線類により景観が損なわれている街なみ

看板等の無秩序な乱立により雑然とした景観

 

公共的空間でのごみ投棄など国民のモラルを問われる事例も見られる。

河川敷に投棄された自動車

駅前に放置された自転車

 

 美しさへの配慮を欠いていたという点では、公共事業をはじめ公共の営みも例外ではなかったと認識すべきである。

日本橋の上を通過する都市高速道路(東京都中央区)

海岸を埋め尽くしていた消波ブロック(静岡県熱海市)

 

(2)これまでの取り組み

 このような現状に対し、これまでも良好な景観・風景を守り、あるいはつくり出すための様々な努力がなされてきた。行政としても良好な景観形成のための事業や規制・誘導策に取り組んできた。

史蹟名勝との調和を図った紅葉谷川(広島県宮島町)

美観地区等や独自の景観条例により良好な景観を形成(岡山県倉敷市)

歴史的・文化的な港湾施設を保全・改修した門司港レトロ地区(福岡県北九州市)

ライトアップによる夜間景観の演出(東京都千代田区)

 

(3)景観形成の取り組みを取り巻く情勢

 一方、近年、良好な景観形成に対する関心やニーズが一層高まる中、景観形成の取り組みを取り巻く情勢に様々な動きが見られる。眺望・景観をめぐる紛争が各地で発生していること、地域の景観問題への対応のため独自の条例を定める地方公共団体が増加していること、住民団体・NPOによる公共事業や公共的施設管理への参画が進んでいることなどが挙げられる。

市民参加による道路植栽(東京都八王子市)

 

U 美しい国づくりのための取り組みの基本的考え方

 

(1)取り組みの基本姿勢

 

○地域の個性重視

 歴史、文化、風土など地域の特性に根ざし、自然と人の営みの調和の下で地域の個性ある美しさを重視していくことが重要である。また、地域の個性は、その地域の人々だけではなく、そこを訪れる人々や専門家など外部の評価も踏まえることでより確かなものとなる。

 

○美しさの内部目的化

 美しさの形成を、公共事業や建築活動などの際の特別なグレードアップとして実施するのではなく、それらの実施に際し拠るべき原則の一つ、原則として実施すべき要素の一つとして位置付けるなど、行政及び国民の活動の内部目的とする。

 

○良好な景観を守るための先行的、明示的な措置               

 現在有している地域の個性や美しさも漠然と人々に認識されているだけでは、老朽化や開発行為など他の要因により突然損なわれる場合がある。良好な景観を守るためには、地域住民自らの評価、自覚の上に立って、損なわれる前に法規制をかける等先行的・明示的措置を講ずることが重要である。

 

○持続的な取り組み

 景観・風景は長時間にわたって行政、国民個々人、企業等の様々な主体の役割分担と協働により形成されるものであり、各主体の持続的取り組みのための計画、組織、制度などのシステムの確立が重要である。

 

○市場機能の積極的な活用

 良好な景観形成が自律的に進むためには、住宅や建築物等の市場において、良好な景観の形成・保全に向けて各主体にとって経済的インセンティブが働くよう景観的な価値が適正に評価される等の環境整備を図り、市場機能を活用した景観の形成を促進することが重要である。

 

○良質なものを長く使う姿勢と環境整備

 我が国においては、特に戦後復興期以降、都市化、土地利用変化が急速に進展し、建物の更新が頻繁であった。このような状況では、無意識のうちに、「身の回りの景観・風景は所詮すぐに変わるもの」という認識に陥りやすく、良質なものをつくり、それを長く使うという意識を育てにくい。このような状況を改善するためには、良好な景観の要素となる良質なものに対し、その設計や施工に携わった者も含め、評価を与え、それを長く使う姿勢、及びそれを支える技術開発を含めた環境整備が重要である。

 

(2)地域ごとの状況に応じた取り組みの考え方

 

○美しさに関するコンセンサスの状況に応じた施策展開

 地域の美しさが地域の歴史、文化、風土などに根ざし、また、美しさに対して多様な捉え方があることを踏まえると、地域の景観の現状やコンセンサスの程度によりこの問題に対する取り組みのあり方が異なってくる。取り組みにあたっては、住民との協働のもと、試行的に良好な景観を形成すること等によって、よりよい方策を検討し、コンセンサスの形成を図ることも重要である。

 以下に典型的な取り組みの考え方を示す。

 

<悪い景観(景観阻害要因)とだれもが認めるものへの対応>

 空を覆う電線類、周囲の景観と調和しないガードレールや海岸の消波ブロック、林立する捨て看板、公共的空間のごみなどはだれもが認める景観阻害要因である。これらの除却・改良について、必要不可欠な機能の確保を前提に、行政は積極的に対応すべきである。

 景観阻害要因の除却により日常的な空間の質は相当改善するものであり、全体のレベルアップ、住民意識向上、コンセンサス形成のためにも、まず不良なものの改善が重要である。

 

<優れた景観とだれもが認めるものへの対応>

 世界文化遺産や伝統的建造物群保存地区の歴史的景観、我が国を代表する日本三景の自然景観などだれもが認める優れた景観は行政と国民の責務として保全すべきである。

 これらの地域での公共事業においては、景観への影響に特段の配慮を払うべきであり、事業実施の是非、工法等について慎重に検討する必要がある。

 また、鎮守の森のように、その地域に住む人ならだれもが守りたいと思う景観もあり、このような地域景観への配慮も欠かせないものである。

 一方、単に、既に形成された優れたものを守るにとどまらず、後世に残すべきシンボルとなるものをつくることや自然を再生することなど世代を超えて、または世代を経て初めて認められる優れた景観をつくることも、公共・民間を問わず現世代の重要な責務である。

 

<普通の地域(コンセンサスがないところ)での対応>

 普通の住宅地や商店街、地方都市の駅前、郊外バイパスの沿道、身近な水辺など国民が日常的に接する普通の地域の大部分では、歴史性、風土性、文化性など地域の個性を規定するものがはっきりせず、どのような地域としていくかという点について住民のコンセンサスが形成されにくいというのが現状である。

 このような地域では、コンセンサスを形成するプロセスを経る住民主体の地道な取り組みが重要である。例えば、比較的目標として分かりやすい水や緑を有効に活用した地域づくりを一つのきっかけとするなども考えられる。

 

(3)各主体の役割と連携

 

○住民、NPOの参画と主体的取り組み

 美しい地域づくりのためには地域住民等個々人の自覚と身近な取り組みが必要である。公共事業等の実施や公共施設の管理においても美しさの質を上げるためには、住民、NPO等の力に期待できるところは大きく、一層の参画、さらには住民等が責任を持ち主体的に取り組むことを推進することが重要である。

     

○地方公共団体、特に市町村の重要な役割

 個性ある美しい地域づくりに関する取り組みの主体として地方公共団体の役割が重要である。特に地域や住民にもっとも身近な基礎的自治体である市町村の役割は大きい。

 

○国の役割

 地方公共団体や住民による取り組みへの支援や制度づくりなどの環境整備が国の中心的役割であるが、加えて、例えば世界に誇れ歴史に残るシンボルとなる特に優れたものをつくり出すというような先導的役割を果たすことも重要である。

○企業の市場における役割

 市場機能を活用した良好な街なみなどの景観形成を促進していく上で、企業の役割は重要であるが、とりわけ住宅等建築物からまちづくりまで含めた様々な技術や経験を有する企業の役割は重要であり、市場における、自覚を持った企業活動の促進が重要である。

 

○専門家の活用

 よりレベルの高い美しさを実現するため公共事業の実施の際に専門家の一流の識見・知見を取り入れることや行政と国民とを媒介するなど専門家に求められる役割も大きく、様々な状況にふさわしい専門家の活用が重要である。また、美しさや景観に関連する専門分野は多岐にわたっており、これら多様な専門家の組織化・ネットワーク化も重要である。

 

○施策連携、機関連携、協調

 景観・風景は自然と公共施設、民間施設などから構成され、それらを管理する主体、それらに対する施策を所管する機関も様々である。良好な景観形成には様々な要素が全体として調和することが必要であり、その実現のためには事業などのハード施策と規制・誘導などのソフト施策の連携、行政機関相互や住民、企業等各主体との連携、協調が重要である。

 また、全体として調和のあるものとするためには、関係者間での方針の合意や合意に向けた取り組みが重要である。

 

 

(4)各主体の取り組みの前提となる条件整備

○人材育成

 美しい国づくりは、美しさを感じ行動する個々人の取り組みの積み重ねによるものであり、広く国民に対する教育・普及活動と国や地方公共団体で景観行政に携わる職員、地域におけるリーダー、技能者などの人材育成が重要である。

○情報提供等

 行政や住民がそれぞれの取り組みを進めるためには、地域の景観の現状に関する情報や景観を考える上で必要となる基礎的情報の共有が必要不可欠である。行政が住民と協働してこれら景観に関する情報を収集・蓄積、提供・公開することが重要である。

○技術開発

 長持ちする良質なものをつくる技術、過去の優れたものを保存・活用するための補修・補強技術、優れた景観・美しいデザインを評価する技術、優れた環境を保全・悪い環境を改善する技術など景観形成のための技術開発が重要である。

 


V 美しい国づくりのための施策展開

 

 国土交通省は、美しい国づくりに向け、U章「美しい国づくりのための取り組みの基本的考え方」に沿って、各主体によるこれまでの取り組みをさらに深化させるため、特に実効性確保を主眼においた下記の施策を具体的に展開していく。

 短期間で重点的・集中的に取り組むべき事業については、目に見える成果を上げるためアクションプログラムとして事業ごとに一定年限内に達成すべき目標を具体的な数値目標等で示す。

 さらに、実現を確かなものとするため具体的施策の措置状況等についてフォローアップを行っていく。

 

 

15の具体的施策

 

@事業における景観形成の原則化

 景観形成に寄与する要素を事業実施の際にグレードアップ的に実施するのではなく、必要な技術開発や現場での試行を経て可能となったものは、原則として実施すべき要素とするための措置を講じる。

 具体的には、技術基準や事業採択基準で景観の要素を明確に位置付けることや特別なモデル事業でのみ認められていたグレードアップを一般の事業で実施可能とすることを進めていく。

(例)

○雨天時に下水中のごみ等が河川や海等へ流出しないよう貯留施設の整備等により合流式下水道を改善【平成16年度に制度化】

○道路防護柵の景観への配慮を原則化【ガイドラインを平成15年度に作成】

○道路標識柱について景観に配慮した色彩を採用【平成16年度に対応】

○土地区画整理事業でモデル的に認められていた高い質の公共施設に対する補助を一般化【平成15年度に対応】

 

 原則化とあわせ、以下のような重点的な取り組みを行う。

■都市の顔となるような地区、国立公園等自然景観に配慮する必要がある地区及び歴史的・伝統的な景観が保存されている地区計17地区において、道路防護柵を景観に配慮したものとするとともに、木製防護柵(歩行者自転車用)を31箇所で整備する。     【平成15年度中に実施】

36箇所以上の灯台への配電線を撤去する。【平成19年度までに実施】

 

A公共事業における景観アセスメント景観評価システムの確立

 

  事業の実施主体が、必要に応じて構想段階、計画段階、設計段階など事業の実施前や事業完了後といった事業の各段階において、既存の制度に景観を評価の項目として織り込むことなどにより、事業実施により形成される景観に対し、多様な意見を聴取しつつ、評価を行い、事業案に反映する仕組みを確立する。 【平成15年度に評価システム検討、平成16年度に試行的に導入】

 

○事前評価

 事業の実施主体は、既存の制度と整合を図りつつ、必要に応じて、有識者や住民等から意見を聴取し、事業案に反映

○事後評価

 事業の実施主体は、完成後の状況について事前評価結果と比較し、  必要に応じ、有識者や住民等の意見を聴取して、事後評価を実施

 事後評価結果については、データベースに整理し、今後の景観検討  や評価に活用

 

B分野ごとの景観形成ガイドラインの策定等

 

 事業担当各職員が事業執行の各段階で活用するものとして、基本的 視点や検討方法、手続きの考え方など地域を問わず全国的に適用すべき基本的事項、意匠・色彩の計画や施工方法など地域特性に応じて適用する参考的事項を明解にかつ可能な限り網羅的に整理したガイドラインを分野ごとに策定する。【平成16年度までに策定】

 

 また、高い煙突類の昼間障害標識(赤白交互の塗色)やビル群等の航空障害灯の設置に係る規制について、景観にも配慮した基準改正を行う。                   【平成15年度に対応】

 

C景観に関する基本法制の制定

 

 良好な景観の保全・形成への取り組みを総合的かつ体系的に推進するため、以下の事項を含む基本法制の確立を目指すとともに、関連する諸制度の充実・強化を図る。【平成16年度目標】

 

○景観に関する基本理念、国、地方公共団体、国民等の責務・役割等に関する規定

○市町村単位で良好な景観の形成・保全を図るための総合的な計画

○総合的な計画に基づき、幅広く景観に関する行為規制を行う仕組み

○その他必要な措置

 

D緑地保全、緑化推進策の充実

 

 都市公園の整備、都市空間の緑化、緑地の保全を一体的に推進する ため、都市公園法、都市緑地保全法を統合する。

 両法の統合に際しては、新たに、以下の措置を中心に制度の充実を 図る。【平成16年度目標】

 

○民有緑地の保全・緑化のための制度として、大規模建築敷地におけ  る緑化面積の割合に関する規制を本格的導入

○NPO、民間事業者が整備・管理の主体となるよう、NPO等に対し公園管理者と同等の権能を付与

○都市公園制度を活用した歴史的環境の保全を図るため、公園内の建ぺい率制限などを歴史的建造物に対しては大幅緩和

                       

 また、所管事業において、以下のような重点的な取り組みを行う。

■国土交通省所管の中央官庁庁舎の屋上緑化整備を完了する。【平成15年度中に完了】

■緑陰道路プロジェクトとして指定された25地区について、沿道住民等と協力 しながら緑陰道路計画を策定し、街路樹を剪定しない緑陰道路の管理に取 り組む。                    【平成15年度より実施】

■都市における既存緑地の保全と併せて、公園、河川、道路等が一体的に事 業を推進することにより、都市近郊の大規模な森の創出、緑の骨格軸の形 成、都市内の水と緑のネットワーク構築を図る「緑の回廊構想」を推進する。【平成15年度より実施】

 

E水辺・海辺空間の保全・再生・創出

 

 水辺・海辺空間の保全・再生・創出に向けて、以下の視点から、関係事業の連携の下で総合的な取り組みを推進する。

                                      【平成15年度より順次実施】

 また、港湾において、良好な景観を保全・形成するため、港湾計画など法制度等の充実を図る。         【平成16年度目標】

 

○より良好な処理水質が得られる下水の高度処理の原則化等、水質汚  濁が慢性化している大都市圏の海や汚濁の著しい河川等における水  質の改善

○豊かな水量の確保や消波ブロック・放置艇等景観阻害要因の除却に  よる水辺・海辺空間の再生

○親水・交流拠点の整備等による新たな水辺・海辺空間の創出

○住民、NPO等の参画の推進

 

 特に以下のような重点的な取り組みを行う。

■美しい砂浜など景観上重要な9箇所の海岸において景観阻害要因となっている消波ブロックを全て除却する。今後、逐次対象海岸を拡大する。【平成19年度までに実施】

■美しい海辺空間を創出する16箇所の干潟を再生する。【平成19年度までに実施】

 

 

F屋外広告物制度の充実等

 

  屋外広告物について、良質で地域の景観に調和した屋外広告物の表 示を図るため、良好な自然景観・田園景観の保全、屋外広告物制度の 実効性の確保、特に良好な景観を保全すべき地区に係る市町村の役割 の強化、屋外広告業の適正な運営の確保などの観点から、制度の充実 を図る。                                     【平成16年度目標】

○良好な自然景観や田園景観の保全のため、屋外広告物法の許可対象  となる区域を中小町村の区域も含むよう拡大

○違反屋外広告物を都道府県知事等が簡易に除却できる制度に関する  手続きの整備

○美観地区、風致地区等の都市計画制度上特に良好な景観を保全すべ  き地区を対象とし屋外広告物規制に関する市町村の役割の強化

○屋外広告業の適正な運営を図るため、悪質な事業者に対する措置の  強化及び屋外広告に関する技術者の育成

 

 また、制度の充実とあわせ、以下のような重点的な取り組みを行う。

■各地方ブロックにおいて、地域景観の点検結果を活用するなど地元と連携し て、観光地など景観上重要な一定の地区を対象に違反屋外広告物など景観 阻害要因の除却等を重点的に実施する地区を選定し、当該地区では、地元 地方公共団体、警察等と連携して短期間に違反屋外広告物、不法占用物等 を集中整理する。 【平成15年度から開始し順次実施済み地区を積み上げ】

■あわせて全国的な事業所展開を行っている企業に対し、所管省庁と協力し 経済団体等を通じて屋外広告物制度等の趣旨徹底や良好な景観形成への 理解を求める。

 

G電線類地中化の推進

 

  まちなかの幹線道路に加え、非幹線道路や歴史的景観地区等におい ても電線類地中化の円滑かつ効率的な推進を図るため、関係行政機関 及び関係事業者と調整を図りながら、以下の事項について検討し、平 成16年度から始まる新たな「電線類地中化計画」を策定して、電線類 地中化の一層の推進を図る。

 

○電線類地中化のコスト縮減、沿道も含めた新たな整備手法、区画道路等における地中化推進のための地方公共団体等への支援制度、費用負担のあり方

○新たな電線共同溝整備道路指定等による一定の地区における原則地  中化

○今後実施される都市部のバイパス事業、街路事業等における電線共同溝等の原則同時施工

 

  特に以下のような重点的な取り組みを行う。

■東京都区部及び大阪市などにおいて実施される街路事業については、道路 管理者・地方公共団体・関係事業者が連携して原則地中化する。                            【平成16年度より実施】

■観光振興の観点に留意しつつ、道路管理者・地方公共団体・関係事業者が 連携して、電線類の地中化を緊急に推進すべき地区を選定し、地区内の主 な道路について、5年目途に地中化する。     【平成16年度より実施】

 

H地域住民、NPOによる公共施設管理の制度的枠組みの検討

 

 地域住民、NPOが公共施設の管理に実体的に参画し、景観の保全、改善を図るため、NPO等の権能を高める観点等から制度的枠組みを検討する。【平成16年度より順次実施】

 

I多様な担い手の育成と参画推進

 

  美しい国づくりの主体となる地域住民やNPO、行政機関職員、専 門家等の意識や技術を高め、活動しやすさを確保できるよう、以下の ような多面的な方策を講じる。【平成15年度より順次実施】

 

○NPO等に対し、育成支援や活動の場の提供を行うことにより、その活動の高度化を促進

○景観に関する様々な分野の専門家の組織化とネットワーク化推進

○身近な公共施設等の計画づくりから管理にいたる様々な段階で住民  が参画できるような仕組みを整備

○景観に関する意識や技術の向上を図るため、住民、行政機関職員、技術者のための景観に関する研修や学習を推進

○良好な事例の選定や表彰制度等を構築し、これらを広く紹介

○地域において住民と協働して行う良好な景観の形成に向け、景観の  改善を試行的に行う取り組みを実施

 

J市場機能の活用による良質な住宅等の整備促進

 

 耐久性等の高い良質な物件が、不動産市場において適正に評価されるよう、以下の視点から、総合的な取り組みを推進する。

                    【平成15年度より順次実施】  

○中古住宅性能表示制度とそれに係る紛争処理の普及促進

○成約価格も含めた土地取引関連情報の整備・提供

○美観等の住環境水準に係る指標の整備

○SI(スケルトン・インフィル)住宅や長寿命木造住宅等の開発・普及  等、耐久性の高い良質な新築住宅に係る取り組み

○消費者向け事業者情報提供などによるリフォーム市場の活性化

 

K地域景観の点検促進

 

 地方公共団体、NPO、まちづくり団体等の市民グループが各地域において景観の点検を行う取り組みを促進し、点検の結果、指摘された景観阻害要因については関係する施設の管理者と地域住民等とのコンセンサスのもとでその改善に努めるとともに、保全すべき優れた景観資源は「保全すべき景観資源データベース」に登録するなど点検結果を活用する。

  このような良好な景観形成に向けてのコンセンサス形成運動を地方 整備局等において積極的に支援する。

            【平成15年度に試行開始、16年度支援拡充】

 

L保全すべき景観資源データベースの構築

 

 地域景観の点検結果や国土交通省等で作成している各種の保全すべき景観リストなどをもとに全国の各地域における保全すべき優れた景観資源が登録されたデータベースを構築する。地方公共団体の土地利用計画策定、公共事業や民間開発事業の実施などにあたって参照する とともに、公共事業の景観評価システムの評価要素や観光資源情報と して活用する。         【平成15年度に公開、順次拡充】

 

M各主体の取り組みに資する情報の収集・蓄積と提供・公開

 

  保全すべき景観資源データベースや景観専門家リスト、新工法等の技術情報、土地・地理情報、良好な景観形成事例など、景観に関する各種情報を収集・蓄積し、国土交通省ホームページにおけるポータルサイトの整備などにより、地方公共団体や住民等に広く提供・公開する。【平成15年度に国土交通省ポータルサイト開設、順次拡充】

 

N技術開発

 

 社会資本ストックの劣化等診断技術、延命技術、転用技術などこれまで積み重ねてきた技術開発の成果を活かし、環境、財政制約を踏まえ、最も合理的に社会資本ストックを管理運営する技術、GIS(地理情報システム)を活用した三次元景観シミュレーションなど景観の対比・変遷を分析する技術、河川・湖沼における自然環境の復元技術や海域における総合的な環境改善技術など環境の保全・再生・創出のための技術の開発等を行う。     【平成16年度より順次成果】