国土交通省
 海洋汚染の防止に関する大臣共同声明(仮訳)
 −質の高い船舶輸送によるきれいな海を−

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  1.  我々は、21世紀の航海に出帆した今、この歴史的な機会を捉えて東京に集まり、20世紀において船舶により惹起された海洋環境の汚染を省みるとともに、来る時代における汚染発生の防止及び抑制のための対策を検討した。

  2.  我々の共通の遺産である海は、場合によっては汚染を惹起するような人々の諸活動にさらされている。我々は、船舶輸送は最も環境に優しい輸送モードの一つであると考えるが、しかしながら、ナホトカ号やエリカ号といったタンカーによる近時の重大な事故は、人類が現在直面するこの地球環境問題に世界の関心を集中させることになった。これらの事故は、サブスタンダード船や不適切に運航された海上輸送により惹起される甚大な被害を目の当たりにさせた。

  3.  このサブスタンダード船による多くの問題に対して、これまでも対策が講じられてきた。国際海事機関(IMO)において、SOLAS、MARPOL、STCW等の海上安全の強化及び海洋汚染の防止のための各種の国際条約が策定され、施行されてきた。この結果、これまで着実な進展が見られてきており、我々は、IMOのこの分野における役割及び貢献を非常に高く評価する。
     しかしながら、世界はなお、主として条約の実施が不十分であることからこれらの国際条約に適合できていないサブスタンダード船の運航などにより 惹起される、人命・財産の損失、そして海洋の汚染に直面し続けている。

  4.  我々は、世界中において、サブスタンダード船の排除に向けた多くの提案、イニシアティブ及び対策が、検討され、また、実施されてきたことを承知しており、また、我々は、多くの国が試みてきた強力なポートステートコントロールに対して支持をする。このような強力な寄港国の行動は、潜在的にはサブスタンダード船による問題を軽減しうるものであるとは評価するが、しかしながら、我々は、旗国の確乎たる行動こそが、船主と運航者の責任ある行動と相まって、この種の船舶を効果的に排除するために求められているのだ、と確信している。

  5.  我々は、サブスタンダード船に対するこのような対策は、次の3つの基本的な考え方に基づき検討され、措置されるべきである、と確信している。
    a) それらの対策は、船舶輸送の国際的な性格を十分考慮し、できる限り、IMOを通じて協調して実施されるべきである。
    b) それらの対策は、具体的なアクションプランに基づき、実行されるものであるべきである。
    c) それらの対策は、旗国、寄港国、そして海事産業界の3つの主要な関係者の役割が、考慮に入れられたものであるべきである。

  6.  我々は、船級協会が、海上の安全及び海洋汚染の防止のため、重要な役割を果たしていると考えている。したがって、旗国のために実施されている彼らの検査活動を、監査や監督という適切な措置により、効果的に監視することが重要である。この点に関して、ECによる船級協会の業務の評価のためのより厳密なシステムの導入が提案されていることに注目する。

  7.  我々は、「人的な問題」というものが良質な船舶輸送のための重要な構成要素であり、良質な船舶輸送には、船上及び陸上のいずれについても、適当な数の優良な人材が不可欠であると認識している。これに関して、IMOが、海上における事故を防止し、また、人命、財産そして環境への影響を緩和するため、人的な問題の検討を優先的に取り扱っていることを、評価しつつ特筆したい。我々は、IMO、そして、適当な他の国際機関、特に人的な問題に積極的に関与している国際労働機関(ILO)を通じて、引き続きこのような活動を行っていく。

  8.  我々は、IMOの下で採択された多くの国際条約が、その意義及び重要性にもかかわらず、なお未発効であることを認識している。これらの国際条約のうち、自国に関係するものでありながら未だ批准されていないものについては、我々は、できるだけ早期の批准及び実施に向けて、適切な対応をすることを検討すべきである。

  9.  我々は、今回、海上の安全及び海洋汚染の防止に関して議論し、別添のアクションプランを策定した。我々は、サブスタンダード船による海上の安全と海洋汚染に対する脅威の排除を目指した我々の決意を確証するため、このアクションプランを実行するための着実な措置を講じる所存である。

  10.  なお、我々は、アクションプランの中の事項は、我々のみならず国際的にも検討されるべきであると考え、IMOの枠組みの下における必要な検討と対応がなされるよう、我々のために、この声明及び別添のアクションプランとともに、この会議の報告をIMOに提出することを日本国の大臣にお願いする。


アクションプラン

  1. 旗国の条約実施状況に対するIMO監査プログラムの創設
     我々は、理事会の協力の下、MSC(海上安全委員会)及びMEPC(海洋環境委員会)に旗国の条約実施の更なる強化のための方策の検討を求めた IMO総会決議 A.914(22)に留意する。我々は、この決議を実施するための重要な対策は、旗国の条約実施状況に対する監査プログラムの策定及び開始であると確信する。
     IMOを通じてこのための作業が行われるべきであると考え、我々は、SOLAS、MARPOL及びSTCW(STCW条約については、監査に関連する規定に適宜留意のこと。)といった海上の安全及び海洋汚染の防止に関する適当なIMOの技術的条約についての旗国の実施状況に対する、自主的かつ試行的な「モデル監査スキーム」を創設するための提案を、2002年にIMOに提出する。このスキームは、最終的には、全ての旗国に適用されるものへと発展されることを目途としている。
     このため、我々は、2002年におけるIMOの適切な検討の場への提案に向けて、「モデル監査スキーム」の細部について検討するため、2002年早期に、専門家会合を設置することを約束する。

  2. 質の高い船舶に対するインセンティヴスキームの推進
     我々は、多くの海運会社が、海上の安全及び海洋汚染の防止のため、実行上、自社船舶を非常に高い水準に確保し、維持していることを評価する。
     我々は、米国によって始められた QUALSHIP21 のような、高い水準を充足し質が高いことが認められた船舶にインセンティヴスキームを適用することが、海上の安全及び海洋汚染の防止に寄与することを認識している。
     このため、我々は、質の高い船舶のための現行のインセンティヴスキームの原則、目的、効果、その他の長所に関して情報を交換し、さらに、所要の場合には、新たな又は追加のインセンティヴスキームを開発し、促進することにする。

  3. 船舶データベースの利用の拡大及び使用の推進
     我々は、海上安全を確保し、海洋汚染の防止するため、船舶データの透明性を高めることが必要であることを認識する。我々はまた、あらゆる関係者が、全ての船舶検査等に関する情報を交換し、また、これらの情報に容易にアクセスしうることを望んでいることを承知している。
     船舶データの透明性を一層高めることとし、我々は、EQUASIS ウエッブサイトの内容を充実し、利用の拡大を図ることに協力する。これに加え、我々は、船級協会、タンカー及び石油会社の団体、海上保険機構、用船社等の船舶検査等に関与している海事関係諸団体に対して、船舶の技術的な状態に関する情報がこの目的のために活用できるようにすることを要請する。
     さらに、我々は、IMOにより定義されるサブスタンダード船を特定し、これらに対して所要の措置を講じる際に活用できるようにするため、各自可能な限り、ポートステートコントロールにおける抑留率・欠陥率、事故率等に関する船舶統計を、引き続き作成し、また、この統計へアクセスできるようにするとともに、この点に関する一層の努力を行う。

  4. ISMコードの実施
     我々は、1998年7月1日に施行された国際安全管理(ISM)コードの第1段階が、世界的に、海上の安全及び海洋汚染の防止の向上並びに海上活動における安全文化及び環境意識の醸成に、重要な貢献をしたことを確信している。
     我々は、2002年7月1日から施行される第2段階が同様に成功することを確保する。この第2段階が、効果的かつ実行的に全世界で実施されることを促進するため、我々は、
    a) ISMコードの規制が適用される自国の船舶は、ISMコードに合致していなければ、2002年7月1日以降、運航が認められないことを担保する、
    b) 自国の港湾に入港する外国の船舶に対し、所要の場合には適正なISM証書を持たないと立証されるものの入港の禁止を含めて、強力なISMコードの施行を確保する、さらに、
    c) ISMコードの規制を遵守していない船舶に関する情報を交換する、
    ための適切な措置を講じる。

  5. ポートステートコントロールの運用方法の調和
     我々は、整合性のあるポートステートコントロールの運用は、サブスタンダード船の排除のために大きな貢献をするものであると考える。
     各地域・国間でポートステートコントロールの運用方法を更に調和させるため、我々は、所要の場合にはIMOと協力しつつ、より整合性のある運用方法の確立を目指し、これらの各地域・国の間で、ポートステートコントロール官の国際交流を行い、また、国際的な会合を開催するためのより強化されたプログラムを策定する。

  6. 開発途上国の旗国としての条約実施及びポートステートコントロール活動のための技術支援
     我々は、全ての海事当局による適切な旗国としての条約の実施及びポートステートコントロールの実施は、サブスタンダード船の排除のために大きな貢献をするものであると考える。
     開発途上国への技術支援は、旗国としての条約の実施及びポートステートコントロールを更に強化しうることを認識し、我々は、所要の場合にはIMOを通じて又は協力しつつ、例えば、旗国としての検査官及びポートステートコントロール官の訓練等の技術支援を提供する。

  7. サブスタンダード船に対する監視システムの整備
     我々は、サブスタンダード船と特定するためには、対象の重点化等の措置を含めて、旗国としての検査及びポートステートコントロールを効率的に実施することが必要であることを認識する。さらに、我々は、サブスタンダード船と特定され又はそう疑われる船舶、並びに、特に海上安全及び海洋環境に対する危険性の高い船舶については、その動向を監視することが必要であると確信する。
     我々は、このような船舶の動向を監視するため、沿岸地域における監視システムを整備し、設置する。この監視システムは、AIS(自動認識システム)等の自動の情報伝達システムその他の情報システムを組み込んだものであるべきである。我々は、所要の場合には、このようなシステムの協調に向けて協力する。この監視システムの利用に際しては、UNCLOS(国連海洋法条約)の規定、特に、無害通航権が遵守されなければならない。
     さらに、我々は、サブスタンダード船に対して、また、監視の結果、海洋環境又は海上安全に対して特に脅威を与えるような動向をしている船舶に対して、旗国又は寄港国として、適切な措置を講じる。

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