国土交通省
 「環境にやさしい自動車」の包括的戦略に関する
 大臣共同声明(仮訳)

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  1.  自動車の発明は、人類の活動領域に拡大をもたらした。20世紀には、自動車産業は繁栄し、『便利で快適な移動』という世界中の多くの人々の夢を実現するに至った。他の数多くの関連産業もまた、この自動車の発明の恩恵に浴し、繁栄を享受した。

  2.  一方、自動車が我々にもたらした利益は、副作用をも伴うものだった。例えば騒音の増加や汚染物質の排出による大気環境の低下である。さらに、自動車から排出される二酸化炭素は、気候変動問題を相当程度深刻化させている。

  3.  我々はそのような副作用を軽減するため、排気ガスと騒音の規制の実施、燃料の品質基準の設定、燃費効率化対策を適切に実施してきた。排出ガスの規制は大気環境を改善するのに大いに役立った。しかし、窒素化合物や粒子状物質、また自動車からの騒音などの残った問題の解決に資するため、さらなる努力が必要である。さらに、より燃費効率のよい自動車の普及にも係わらず、自動車の数と走行距離の増加のため、自動車から大気中に排出される二酸化炭素は減少していない。世界経済が成長し続けるに従って、移動の利便性向上への要求も高くなる。この観点から、大気汚染を抑制するための自動車排出ガス性能のさらなる改善及び騒音問題の解決、これと同時並行的に行われるべき燃料の質の改善は、それらの開発途上国への移転とともに早急に行う必要がある。

  4.  我々は、我々全てが以下の基本認識を共有すること、そして、我々全員と将来の世代のために持続可能な発展に資する最大限の努力を行うことを確認した。我々は、自動車が将来の世界経済において果たし続けるであろう役割を認識しつつ、貴重でかけがえのない我々の住む地球を守る道を探る。

A.基本認識

  1.  世界のいくつかの地域において、自動車交通量の増加のため、自動車排出ガスによる大気汚染が未だ深刻な問題である。我々はこの問題の深刻さを認識し、自動車排出ガス規制の強化や燃料の品質基準の改善により、一台一台からの自動車からの排出ガスを減少させる努力を行っている。これは、ヨーロッパのユーロ4、日本の新長期規制、アメリカ合衆国のティアーU及び大型車ディーゼル車排出ガス規制、並びにその他の多くの国で適用される規制により示されている。我々は、これらの政策が正しい方向への一歩であることを確信する。さらに、我々の努力は民間分野による、より環境にやさしい技術の開発の促進に、重要な役割を果たしてきた。

  2.  技術分野以外の施策も同様に重要な役割を担ってはいるが、我々は以下のような分野で、「環境にやさしい自動車」の新技術開発とその普及を促進する必要がある。

    a)乗用車の分野では、度重なる自動車排出ガス規制の強化、燃費基準の導入及びニ酸化炭素排出抑制のためのヨーロッパにおける自動車製造者との自主的合意の適用は、これまでよい結果を出し、そして今も好ましい結果を生んでいる。特にガソリン車については、ハイブリッド自動車やその他の種類の経済的に実現可能な自動車が既に市場に送り出されている。

     ディーゼルエンジンの技術、特に窒素酸化物と粒子状物質の排出抑制については、相当の進歩が見られ、今後ともさらなる進歩が予想される。

     しかし、将来、世界規模で自動車の台数が増加することを考慮すると、追加的な技術改善が、温室効果ガスと排出汚染ガスを実質的に減少させるために必要である。

    b)バスや大型貨物自動車に代表される大型車の分野については、動力源は近い将来もディーゼルエンジンのままであると考えられる。ディーゼルエンジンの排気は多くの国で厳しく規制されており、さらに厳しい制限が近い将来に導入される予定である。

     排出ガスゼロを求める厳しい基準に適合する実行可能な技術開発の見込みは、いくつかの場で熱心に議論されている。そのような技術の導入は排気ガスによる大気汚染が緊急の課題となっている国で大至急必要となる。

    c)他の優先度の高い問題は都市域における交通騒音である。高いレベルの騒音は生活の質の低下をもたらす。それゆえ、「環境にやさしい自動車」は低い騒音レベルを達成しなければならない。

B.将来の政策の方向性

 我々は我々の将来の行動が以下の政策の方向に沿うべきである旨、合意に達した。

a)「環境にやさしい自動車」の例としては、燃料電池自動車、CNG・LNG自動車、電気自動車及び超低公害ガソリン・ディーゼル自動車、の一部がある。しかしながら、汚染物質の排出ガス性能、温室効果ガスや騒音等の問題に対応した「環境にやさしい自動車」の概念を議論することは、自動車メーカーが環境にやさしい自動車を開発する助けになる可能性があるので、有用であるかもしれない。

b)我々は「環境にやさしい自動車」のさらなる開発と普及を支援し、促進するべきである。特に、政府の役割はバスや大型貨物自動車の分野でさらに重要である。なぜなら、いくつかの国では、自動車メーカーはこの分野の市場規模の小ささと開発費用の大きさとにより、排出レベルを改善する自発的な努力を行うことが困難であるかもしれないからである。適切な燃料が利用可能であることは、先進的な排出抑制技術の市場への導入を容易にするための重要な要素である。「環境にやさしい自動車」の利用拡大のためには、必要なインフラにも十分注意を払う必要がある。

c)適切な燃料の利用可能性は、環境にやさしい自動車の開発と普及のために極めて重要な要因であり、集中的一体的に取り組まれるべきである。有鉛ガソリンの使用の世界規模での禁止と低硫黄ガソリン・軽油の導入は早急に行われるべきである。また、非化石代替燃料の導入を加速すべきである。

d)「環境にやさしい自動車」の概念を議論し、また、その開発と普及を容易にするため、緊密な国際協力は効果的な手法である。まずその第一歩として、我々は「環境にやさしい自動車に関する国際会議」を開催することが重要であるというとの認識を共有する。その国際会議で、我々は現存の、又は将来の自動車技術と、種々の燃料の利用可能性についての知識を基礎として、環境問題に関する解決策を議論するとともに、「環境にやさしい自動車」の開発と普及を容易にする国際的な政策調整の可能性を探る。その際、他の既存のフォーラムとの議題の重複を避けるべきである。

e)「環境にやさしい自動車」の普及を促進するため、世界中の「環境にやさしい自動車」の基準を調和させることが必須である。この観点から、我々は国連・車両等の世界的技術規則協定(グローバル協定)に基づく、国連欧州経済委員会の自動車基準調和フォーラムの枠組みでの、環境にやさしい自動車の基準及び試験方法の調和に関するイニシアティブを支持する。

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