国土交通省
 所有営業主体の指定について
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平成14年8月12日
<問い合わせ先>

鉄道局

  総務課特定監理業務室

(内線40233)
  施設課   (内線40802)
TEL:03-5253-8111(代表)

 

 先の通常国会において新幹線鉄道に係る大規模改修引当金制度の創設等を内容とする全国新幹線鉄道整備法の一部を改正する法律が成立したところですが、この度、国土交通省において、東海道新幹線の土木構造物の状況や東海旅客鉄道株式会社(JR東海)の財務の状況等を審査した結果、JR東海において予め大規模改修引当金を積み立てることが必要かつ適当であると認められましたので、本日、全国新幹線鉄道整備法第15条第1項に基づき、JR東海を同法第16条第1項に規定する指定営業主体として指定いたしました。

  1. 指定の内容
    所有営業主体名 東海旅客鉄道株式会社
    路線名 東海道新幹線
    区間名 東京 〜 新大阪

  2. 指定の理由
    (1)大規模改修の必要性について
     東海道新幹線は、開業から今年で38年を迎え、他の新幹線より開業からの経過年数も最も長く、車両の走行実績についても、他の新幹線の2倍に達している。
     そのため列車の走行を支える土木構造物は、他の新幹線の構造物に比べ、大きな負荷を長期間にわたりうけている。
     国土交通省としてはこのような実情を踏まえ、将来にわたる新幹線の安定輸送の確保のため、東海道新幹線について、現地調査を含む実態把握を行い、鉄道施設の取替え等を伴う大規模改修の必要性について検討を行った。
     その結果、橋りょうやトンネルに経年劣化の兆候が確認され、将来大規模改修が必要となることが認められた。
     (土木構造物の実態についてはこちらをご覧下さい)

    (2)JR東海の財務の状況について
     東海道新幹線の大規模改修に要する費用は、国土交通省の試算によると総額約1兆円程度に上ると見込まれている。
     一方、JR東海の平成4年度から平成13年度までの10年間の平均営業収益は約1兆1千億円、平均経常利益は約650億円であるところ、長期債務は平成14年度首で約4兆3千億円に上り、営業収益及び経常利益に対する長期債務の割合は依然として大きい。
     JR東海は、開業以来継続して経常利益を計上し、長期債務も順調に償還しているが、今後の経済状況や金利の動向等によっては、東海道新幹線の大規模改修費用の調達にリスクを伴う可能性も否定できない。

    (3)結論
     以上のとおり、東海道新幹線については、橋りょうやトンネルにおいて、将来、総額約1兆円程度の費用を要する大規模改修が必要であると見込まれており、JR東海の営業収益、経常利益、長期債務の残高等に照らせば、将来にわたり東海道新幹線の安定的な輸送を確保するため、一定額を予め引当金として積み立てさせることが必要かつ適当である。

  3. 今後の予定
     今回の指定により東海旅客鉄道株式会社は6ヶ月以内に全幹法第16条第1項、第2項に基づき新幹線鉄道大規模改修引当金積立計画を作成し国土交通大臣の承認を受けなければならないこととなっており、これによって工事費、工事期間、積立額、積立期間が確定することとなる。

 

車両走行実績(図1)PDF形式
各新幹線の開業時期(図2)PDF形式

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東海道新幹線の土木構造物の実態について

 

 東海道新幹線は、国土の大動脈である東京〜大阪間(延長515km)を結ぶ世界初の高速鉄道として、当時の国鉄が約5年の工期をかけて完成させ、昭和39年10月に営業を開始した。
 その後、昭和62年の民営化に伴いJR東海が運営を引き継ぎ現在に至っており、今年10月で営業を開始してから38年が経過しようとしている。

  1. 東海道新幹線の特徴について
    (1)開業時との比較
     開業当初に210km/hであった列車最高速度は、その後車両の軽量化などの技術開発により速度向上を重ね、現在では270km/hで運転され、また、1列車あたりの編成についても開業当初の12両から16両へ、1日あたりの列車本数も60本から287本(上下線)と飛躍的に増加しており、現時点では東京〜大阪間の旅客の約8割を輸送している。

    (2)他の新幹線との比較
     東海道新幹線と他の新幹線との車両走行実績、開業時期を比較すると【図1】、【図2】のとおりであり、年間車両走行実績は、山陽、東北の約2倍、上越の約6倍であり、累積車両走行実績についても山陽の約2倍、東北の約5倍、上越の約13倍と圧倒的に多い状況となっている。

  2. 各土木構造物の実態について
     東海道新幹線の土木構造物については、資料調査及びJR東海からの聞き取りを行うとともに、構造物ごとに代表的な箇所を選んで現地調査を実施し実態把握を行った。
     東海道新幹線の各構造物の構成は次表のとおりである。

    東海道新幹線 構造物構成

    橋りょう トンネル 土工 線路延長
    172.4Km 68.6Km 274.3Km 515.3Km
    34% 13% 53% 100% 

     土木構造物は、2年に一度の全般検査で定期的に検査され、その結果必要により修繕が行われている。平成14年3月時点で集計した検査結果では、いずれの構造物も適切に維持管理されていた。
     各構造物の現況及び大規模改修の必要性については、以下のとおりである。

    (1)橋りょう
    1鋼橋
     東海道新幹線の鋼橋の形式としては、上路プレートガーダー、下路プレートガーダー、下路トラスの3種類がある。特徴としては、建設当時主流であった溶接構造を全面的に採用している点である。
     一般的に鋼橋では、腐食等の劣化以外に、列車の走行が累積すると溶接された橋りょうの継手等に疲労による変状(亀裂)が発生することが想定される。
     東海道新幹線においては、補剛材等の部材では疲労亀裂が発生し、いずれも適切に補修等がなされているが、列車荷重を直接受ける主要部材では現在までのところ疲労亀裂は発生していない。
     しかしながら、今後は主要部材においても亀裂が発生するおそれがあり、橋桁の取替等の大規模改修が必要になるものと考えられる。
     東海道新幹線の鋼橋は、こうした疲労の影響を考慮して耐用年数70年で設計されており、あと32年(平成46年)でこの耐用年数に達することになる。他方、近年の列車本数や今後品川駅開業による列車本数の増加を考慮すると、耐用年数70年以前に設計時に想定された列車本数に達する可能性もある。
     よって大規模改修の工事期間(10年間)を考えると、今から15〜20年後程度には大規模改修を始める必要があるものと考えられる。

    2鉄筋コンクリート橋
     鉄筋コンクリート構造物では、大気中の二酸化炭素の影響で経年による中性化が進み、これにより鉄筋が腐食すると構造物の強度が低下する。
     東海道新幹線についても、平成7年度のJR東海による調査及び今般の現地調査において中性化の進行が確認されており、およそ15〜20年後には中性化がコンクリート内部の鉄筋が腐食する位置まで進行するものと予測される。
     こうした中性化によるコンクリート橋の劣化対策として大規模改修が必要と考えられる。

    (2)トンネル
     東海道新幹線のトンネルは全線で66箇所あり、全てコンクリートで覆工されている。
     東海道新幹線のトンネルでは、平成11年に山陽新幹線等において発生した一連のトンネル剥落事故を受けて策定されたトンネル保守管理マニュアルに基づいて、覆工コンクリートの検査が行われた。
     この検査の結果、要対策箇所については既に補修が終了し、要注意箇所についても昨年度から計画的に補修が行われている。
     しかしながら、東海道新幹線では、これら以外に、当面は問題ない軽微なひびわれが約2万箇所で確認されており、今後これらが経年と共に要注意箇所、さらには要対策箇所へと進行していくおそれがある。
     特に高速で運行する新幹線では、在来線と比較して列車の走行による振動、空気圧変動の影響が大きく、また東海道新幹線の場合、他の新幹線より列車本数が多く、トンネル断面が小さいことから、トンネル覆工コンクリートのひびわれが速く進行するおそれがある。
     更にこれらひびわれを補修する工事は、1箇所に4夜を要する施工時間のかかる作業であり、今後ひびわれが進行した場合、将来的には現在の保守の範囲内では対応が困難になるおそれがあることから大規模改修が必要と考えられる。

    (3)土工
     東海道新幹線では、延長の5割強に及ぶ約270kmが土工区間である。通常の検査は、2年に1回の目視を中心とし、必要により補修を行うとしている。 過去、豪雨等の災害により盛土に被害を受けた例があるが、その後盛土法面の補強を行っており、大きな変状等は確認されなかった。

  3. その他
     前述のように将来的には大規模改修の必要性が認められたが、このことは、現在の構造物が危険であることを意味するものではない。
     東海道新幹線では毎日約2,500人強の作業員を投入して保守管理が行われており、大規模改修を行うまでの当面の間は、引き続き適切な保守管理を行えば問題ないものと考えられる。

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