国土交通省
 ライフジャケットの着用措置に関する安全評価について
 (概要版)

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平成14年7月3日
<問い合わせ先>
海事局安全基準課安全評価室

(内線43952)

TEL:03-5253-8111(代表)

 

  1. 評価の背景と概要
     平成13年3月に中央交通安全対策会議(会長:内閣総理大臣)により決定された「第7次交通安全基本計画」では、年間の海難及び船舶からの海中転落による死亡・行方不明者数を平成12年の331人から平成17年までに200人以下にするという数値目標が設定されており、この目標達成のための重点施策の一つとしてライフジャケット着用率の向上がとりあげられている。ライフジャケット(救命胴衣)は、転落事故等の際に人命を守るためのものであり、その着用率を高めることは人命の損失を防ぐために極めて有効であるが、実際にはその未着用による事故が後を絶たない。このため、行政及び各種海事関係機関においては、ライフジャケットの着用率向上に向けた様々な啓発活動に取り組んでいるところである。
     このような背景の下、平成14年6月7日に「船舶職員及び小型船舶操縦者法」が公布され、一定の小型船舶に対してライフジャケットの着用が来年度から義務化されることとなった。 国土交通省海事局では、この新しい措置の導入に当たって、当該措置の有効性を定量的に評価する観点より、独立行政法人 海上技術安全研究所の協力を得て、今般「ライフジャケットの着用措置に係る安全評価」を実施し、ライフジャケットの着用率向上に伴う年間溺死者数の減少期待値の試算及びライフジャケット着用措置の費用対効果の考察を行った。

  2. 評価の結果
     評価の結果は以下のとおりである。
    (1)着用措置の効果  
     小型船舶の乗船者のライフジャケットの着用率を50%、75%、100%と高めていけば、現状の着用率で年間160人程度とした海中転落及び特定の海難(衝突、転覆、浸水)による溺死者を、約40名(50%)、約60名(75%)、約80名(100%)といった程度減少させることが期待できるとの結果となった。(別添参考図参照)  
     すなわち、ライフジャケットの着用率を最大限高めると、溺死者数を現状から概ね半減することができる。

     

    (2)費用対効果  
     今回対象とした船種のうち、  
    •  水上オートバイやプレジャーボートについては、既に船舶安全法及び関係法令によりライフジャケットの積付が義務付けられているため、基本的には船舶職員法の改正によって新たにこれを購入する必要はなく、新たな費用負担は発生しないと考えられる。    
    •  一方、一部の小型漁船に関しては、ライフジャケットの積付が義務付けられていないため、今後、特に海中転落の可能性が高いものとしてライフジャケットの着用措置の対象となる場合は、これらについて新たな費用負担が発生すると考えられる。    
    •  小型漁船全体について、溺死者を1人減らすための年間の社会的コスト(ユーザーのライフジャケット購入コストとする)で費用対効果を試算した結果、約614万円/人(着用率100%の場合)となった。   

     当省においては、今後、今回の評価結果も踏まえ関係者の意見を聴取しつつ、ライフジャケット着用措置の具体的内容を定める国土交通省令等の制定作業を進めていくとともに、着用率向上に向けた啓発活動を行っていくこととしている。また、ライフジャケットの着用のみでは対応が困難な事故についても、今後、小型船舶の艇体の不沈化や落水時の再乗船設備等の措置に関する検討を進めることとしている。

    (注)上記(1)及び(2)で示した各種数値については、計算時のデータに関する各種制約条件やいくつかの仮定の導入等を行っているため、絶対的な数値ではなく、試算結果として位置付けられるものである。

     本評価の詳細版については、上記<問い合わせ先>までお問い合わせ下さい。


参考図 年間溺死者数の減少期待値

参考図 年間溺死者数の減少期待値

 (注)「子供のみ」とは、水上オートバイ及びプレジャーボートで想定した大人の乗
 船者数の2.3%の子供がこれらに乗船していると仮定した場合を指す。

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