国土交通省
 公共交通機関におけるハンドル形電動車いすの取扱いに
 ついて(交通バリアフリー技術規格調査研究委員会報告書)

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平成15年7月16日
<問い合わせ先>
総合政策局交通消費者行政課

(内線25502、25504)

TEL:03-5253-8111(代表)

 

  今般、公共交通機関におけるハンドル形電動車いすの取扱いについて、関係者からなる委員会の報告書が取りまとめられたところです。

報告書のポイント

詳細

  1. 背景
    (1)平成12年11月に施行された交通バリアフリー法では、高齢者、身体障害者等の自立した日常生活及び社会生活を確保することの重要性が増大していることにかんがみ、駅等の旅客施設あるいは車両等の移動円滑化のための施設整備を行うことにより、高齢者、身体障害者等の公共交通機関を利用した移動の利便性及び安全性の向上の促進を図ることとしている。

    (2)最近普及しつつあるハンドル型電動車いすについては、こうした旅客施設や車両等の施設整備の進展に伴い、今後その利用へのニーズが高まっていくことが予想されるところであるが、これまで、公共交通機関におけるハンドル形電動車いすの利用に関しては、機器の技術的制約に加え、利用実態、利用にあたっての課題等が十分に把握されていなかったこともあり、多くの駅で利用が困難であり、また、事業者ごとに異なる対応がなされていたところである。

    (3)このような背景から、有識者、ハンドル形電動車いすを使用している身体障害者、公共交通事業者、電動車いすメーカー、関係行政機関による研究会(別紙)を設置して、議論を重ね、今般、ハンドル形電動車いすの公共交通機関の利用に向けた技術的な課題の整理とその利用方針をとりまとめたものである。

  2. 報告書の概要
    (1)現在販売されているハンドル形電動車いすは、屋外利用を想定し、公共交通機関の利用を想定して設計されておらず、回転半径、重量等の制約から多くの鉄道駅では利用することが困難となっている。

    (2)ハンドル形電動車いすにより公共交通機関を円滑に利用するためには、1移動円滑化基準や整備ガイドラインで想定する基本的寸法を満たす回転性能、2小段差・溝の乗り越えのため介助者が持ち上げることを想定した取っ手、3介助時や緊急時に介助者が手押しで誘導することができるよう操作しやすいクラッチ等が具備された機器開発が行われることが望ましい。

    (3)一方で、こうした機器の開発や普及には相当の期間を要することが想定される。それまでの間、公共交通機関の利用を必要とし日常の移動用具としてハンドル形電動車いすを用いている肢体不自由者が公共交通機関を利用できない状態が続くことは望ましくはない。

    (4)したがって、こうした者の移動を確保する観点から、公共交通機関の利用を想定した機器が開発されるまでの間、鉄道の利用については以下の条件が考えられる。
     (なお、現行の鉄道事業者の取扱を踏まえ条件を緩和することを妨げるものでない。)
     1利用者の属性に関する条件として、補装具給付制度によりハンドル形電動車いすの給付を受けている者
     2鉄道駅・車両の整備状況に関する条件として、エレベーターの設置等により段差が解消されワンルートが確保されている鉄道駅 (ただし、乗降経路、車両内部の狭隘等の空間制約による当該駅の利用の可否は鉄道事業者が最終的に判断)

    (5)また、鉄道事業者において上記1に該当していることが容易に確認できるよう、ハンドル形電動車いすの使用者においては補装具交付決定通知書等を携帯し、駅係員等への提示を行うことにより、利用が円滑にできるよう配慮する必要がある。

  3. 今後の対応
    (1)鉄道事業者、電動車いすメーカー等の関係者においては、報告書に記載された対応方針が関係者の間の共通の認識であることを踏まえ、これに沿った対応を行うことが望まれることとなる。

    (2)国としても、別途、鉄道事業者に対しこの対応方針を通知するとともに、説明会を開催すること等により広く関係者に周知・普及を図っていく予定である。さらに、ハンドル形電動車いす使用者の便宜を図るため、駅ごとのハンドル形電動車いすの対応の可否についての情報提供についても検討していくこととしている。

[参考:ハンドル形電動車いすについて]

参考:ハンドル形電動車いすについて

*標準形(ジョイスティック形)とハンドル形との比較

  標準形 ハンドル形
全長 最大1,200mm 最大1,200mm
全幅 最大700mm 最大700mm
全高 最大1,090mm 最大1,090mm
回転半径 最小400〜900mm程度 最小1,100〜1,600mm程度
取っ手 標準的にあり。 基本的になし。

*出荷台数の推移

出荷台数の推移


(別紙)

交通バリアフリー技術規格調査研究委員会 委員名簿 (五十音順)

秋山 哲男 東京都立大学大学院都市科学研究科教授
石橋 正男 西武鉄道株式会社 取締役運輸部長
市川 哲 国土交通省海事局国内旅客課旅客船事業適正化対策室長
今福 義明 誰もが使える交通機関を求める全国行動 東京実行委員会 実行委員長
岩佐 徳太郎 財団法人 交通エコロジー・モビリティ財団 バリアフリー推進部長
大湯 俊之 自立生活センター板橋 渉外担当
片石 修三 厚生労働省社会・援護局障害保険福祉部企画課社会参加推進室長(平成15年第3回まで)
金井 博 厚生労働省社会・援護局障害保険福祉部企画課社会参加推進室長(平成15年第4回より)
鎌田 実 東京大学大学院工学系研究科教授
兒玉 明 社会福祉法人 日本身体障害者団体連合会
惟村 正弘 国土交通省航空局飛行場部管理課長(平成15年第3回まで)
大久保 仁 国土交通省航空局飛行場部管理課長(平成15年第4回より)
坂尻 敏光 定期航空協会専務理事
佐々木 宏 国土交通省住宅局建築指導課長
佐藤 正之 財団法人 自転車産業振興協会技術研究所 開発事業部主査
神保 憲二 東日本旅客鉄道株式会社 営業部担当部長
末井 誠史 警察庁交通局交通企画課長
妻屋 明 全国脊髄損傷者連合会会長
羽尾 一郎 国土交通省自動車交通局総務課企画室長
橋詰 努 東京都心身障害者福祉センター 地域支援課 支援担当係長
林原 弘明 電動車いす安全普及協会 事務局長
東濱 忠良 帝都高速度交通営団 運輸本部副本部長
樋口 嘉章 国土交通省港湾局環境・技術課技術指導官(平成15年第3回まで)
春日井 康夫 国土交通省港湾局環境・技術課技術企画官(平成15年第4回より)
藤井 直人 神奈川リハビリテーション病院
船戸 裕司 社団法人 日本バス協会業務部長
増田 時枝 社団法人 東京都老人クラブ連合会副会長
松尾 龍介 国土交通省海事局安全基準課長(平成15年第3回まで)
石田 育男 国土交通省海事局安全基準課長(平成15年第4回より)
松本 和良 国土交通省自動車交通局技術安全部技術企画課長
三浦 真紀 国土交通省道路局地方道・環境課道路交通安全企画官
水信 弘 国土交通省総合政策局交通消費者行政課交通バリアフリー対策室長(平成15年第3回まで)
小澤 一男 国土交通省総合政策局交通消費者行政課交通バリアフリー対策室長(平成15年第4回より)
山下 章 国土交通省鉄道局業務課長
山下 廣行 国土交通省鉄道局技術企画課長
吉田 良治 社団法人 日本旅客船協会業務部長
和田 恒人 社団法人 日本バス協会技術部長
渡邉 愼一 厚生労働省老健局振興課課長補佐
   
(事務局)  
日田 信博 社団法人 交通バリアフリー協議会 理事
村上 文洋 株式会社 三菱総合研究所 主任研究員
篠田 徹 株式会社 三菱総合研究所 研究員

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