国土交通省
 国際的拠点都市の形成に関する現状と課題
 〜「集積」と「国際性」による拠点都市の戦略的発展〜
 ―「国際的拠点都市の形成に関する現状と課題」研究会
 報告書の概要―

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平成15年6月25日

<問い合わせ先>
国土計画局総合計画課
(内線29366)
電話:03-5253-8111(代表)

 

 

  1. 本研究会の趣旨
     本報告書は、「日本の拠点都市のあるべき姿(ビジョン)を描くこと」を目的に、平成14年度委託調査として、東京大学先端科学技術研究センター都市環境システム分野大西隆教授を座長に迎え、3名の委員による研究会論議を行った結果をとりまとめたものである。
     我が国の拠点都市を取り巻く状況をみると、国内では、長引く景気低迷から抜け出せない日本は、激変する社会経済環境の中で、未だ将来を展望する新たな活力の源泉を見出せない状況にある上、目前に本格的な総人口減少、少子・高齢化時代を迎えることになる。 一方、国外に目を転じれば、東アジア諸国の急速な台頭など日本を取り巻く状況が大きく変化している。こうした国内外の動向に鑑みると、今後とも日本の国際競争力を維持強化するためのビジョンを国土計画の中で明らかにすることが重要になってきている。
     そこで、本研究会では、拠点都市が、「集積」と「国際性」を高めることで地域ブロックを経済、文化等様々な面で牽引する役割を担い、さらにその総和が日本全体を牽引するものと考え、検討を行った。

    研究会名簿

    座長 大西 隆 東京大学先端科学技術研究センター
     都市環境システム分野 教授
    委員 瀬田 史彦 東京大学先端科学技術研究センター
     都市環境システム分野 助手
    藻谷 浩介 日本政策投資銀行 地域企画部 調査役
    山ア 朗 九州大学大学院経済研究院 教授

  2. 報告書のポイント
    • いま拠点都市に関する国土政策が求められる背景
      • 本格的な人口減少・少子高齢社会への突入、新規の社会資本投資には著しい制約があり、生産性の高い分野への社会資本の集中投資が必要。そのなか、日本が今後とも国際競争力を維持強化するとともに、豊かな国民生活を実現するためには、地域ブロックの経済、文化等を牽引する役割を担う拠点都市に関する国土政策の立案が急務。
      • 中国に代表される東アジア地域の急速な発展のなかで、21世紀においては、人・モノ・カネの動きは一層ボ―ダーレス化することが見込まれる。今後、日本が隣接する東アジアとの関係を深化させ、相互発展につなげる視点が重要。

    • 拠点都市が担う役割
      • 拠点都市が、経済的、文化的等あらゆる面で地域ブロックを牽引し、地域ブロックが自立的に持続成長できることが必要。
      • そのためには、既存の「集積」を活かしつつ、「集積」と「国際性」という2つの機能を高めることが拠点都市の競争力を高める有力な方策であり、拠点都市に対する重点的投資もこの2つの機能を高めることを目標とする。

      図 地域ブロックを牽引する拠点都市の役割

      図 地域ブロックを牽引する拠点都市の役割

    • 日本の拠点都市の課題
      • 「集積」機能では1近未来における拠点都市の人口減少2脆弱な産業基盤、「国際性」機能では1東アジアを指向する戦略の欠如2外資系企業の集積の少なさが課題。

    • 成長する東アジア諸国と日本の拠点都市
      • 東アジア諸国は、経済成長による市場拡大、所得水準の上昇によるビジネス、学術交流、観光などによる人、モノなどの移動拡大の傾向。その代表都市である上海、シンガポール、香港、ソウルでは都市の「国際性」機能強化への取組がなされている。
      • 日本の拠点都市と可能性のある連携のあり方としては、1研究者間のネットワーク、2日本の拠点都市とアジア各都市との相互補完的パートナーシップの形成が考えられる。

                      

    • 日本における国際的拠点都市のあり方
      • 世界、特にアジアへ視野を広げ、後背地域との一体化による機能集積を活用し、国境を超えた他都市との相互補完的・協調的なネットワークを構築していくことが重要。
      • 各拠点都市において有すべき機能の方向性としては、それぞれのセールスポイントに応じて、以下の6つの機能のいくつかが複合したものになる。1国際サービス業拠点機能、2国際頭脳拠点機能、3国際物流ネットワーク拠点機能、4地場産業国際発信拠点機能、5国際アメニティ拠点機能、6国際交流拠点機能

    • 国際的拠点都市の形成を支援する国土システムのあり方
       日本の拠点都市全体の国際化促進のために国が行うべき点は、
      1立地コストの低減や対内投資規制の緩和
      2外国の最高水準にある人材誘致に向けた生活・居住環境の整備
      3労働と資本の移動が自由、迅速、安価、安全に行える都市システムの構築
      4地域特性を常に反映できる行政システムの構築
       拠点都市間の関係を変えるために国が行うべき点は、
      5東京のみを頂点とした国土構造から、東アジアとの交流深化に軸を移した国土構造への転換

    • 拠点都市において「集積」と「国際性」を高めるために行うべき方策
      1拠点都市への人材・資金等の集中戦略の構築とそれを活かすための都道府県と政令指定市等の協調といった地域全体との整合性を図ること。
      2東アジアとの交流を深化させる地域インフラに優先付けをすること。
      3美のある都市空間や海外人材の生活スタイルにも適合した環境を整備すること。
      4地域の魅力に関する海外への情報発信強化、内なる国際化の促進、海外とのパートナーシップを通じた成長産業の育成、大学の活用による知識集約型産業の集積と世界の最高水準にある人材誘致を行うこと。

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