国土交通省 Ministry of Land, Infrastructure and Transport Japan
フジテック(株)製エレベーターの部材の強度不足に関するフジテック(株)及びJFE商事建材販売(株)からの再発防止策等の報告について


 

 




 フジテック(株)製エレベーターの部材の強度不足に関する
  フジテック(株)及びJFE商事建材販売(株)からの再発防止策等の報告について
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平成19年8月3日
<問い合わせ先>
住宅局建築指導課
(内線39515、39519)
TEL:03-5253-8111(代表)

 

フジテック(株)が製造したエレベーター及びエスカレーターの部材の一部に、本来使用することを予定していた鋼材よりも強度の低い鋼材が使用されていた問題について、フジテック(株)及びJFE商事建材販売(株)に対して、原因の解明と今後の再発防止策の提出を求めていたところですが、7月31日(火)に両社から国土交通省に対して報告がありました。

  1. 両社からの報告の概要
    (1)フジテック(株)からの報告の概要
     (注)以下は、フジテック(株)からの報告内容を、国土交通省住宅局建築指導課において要約したものです。なお【経緯】については、フジテック(株)からの報告書に添付された調査委員会(弁護士3名)による調査報告書を、国土交通省住宅局建築指導課において抜粋要約したものです。

       原因解明と今後の再発防止策について、社外の専門家にも協力いただきとりまとめた。

    【経緯】

    • 当社は、2002 年までは複数の鉄鋼商社からSS400材を調達していたが、2002年9月頃から川鉄商事(現在のJFE商事)1 社に絞られた。
    • SS400材の納入実施は、川鉄商事(ないしJFE商事)の指示を受けた子会社の川商建材販売(ないしJFE商事建材販売(以下「JFE建販」))が直接当社に行っていたが、JFE建販の要望により、2006年7月からはJFE建販との契約に切り換えた。
    • 当社の作成した注文書、納品書、請求書はすべて「SS400」と記載されていた。
    • 川鉄商事との取引に関して提出されたミルシートで当社に保存されていたものの中には、改ざん・変造されたもの、不正な内容のものがある。(例:2002年にフジテックが受領したミルシートについて、「SPHC」と書かれている部分を、手書きにて「SS400」と改ざんしたものが存在している。)
    • 資材部の担当者A(2002年〜2005年)の供述によると、川鉄商事等との間で、同社側が主張する、SS400材の代わりにSPHC材を納入するといった合意は口頭ですら決してしていない。本件事態が発覚するまで、JFE建販が主張する2002年9月以来、SS400材の代わりにSPHC材が混在して納入されていたことは、全く知らなかった。
    • 資材部の担当者B(2005年〜)の供述によると、2005年7月か8月頃、JFE建販の担当者が、SS400材とSPHC材の仕様の比較表のようなものを持ってきて、「JFE建販がJFE商事を経由して納入している鋼材については、実際に納入しているのはSS400材だけではなくSPHC材もあり、以前からそのようにしている」と述べた。そして、「今後、注文書の鋼材の種類をSS400材ではなくSPHC材と明記してもらいたい」と述べた。資材部の担当者Bは「かかる注文方法を変える権限などないため、文書で正式に申し入れてもらわないと検討できない」旨伝えたが、JFE建販の担当者より文書を受領した記憶はない。
    • 資材部の担当者Bは、この時点で、SS400材の発注に対し、SPHC材が納入されていることがあることを認識したが、鋼材の知識を十分に持ち合わせていなかったため、両鋼材の違いがよくわからず、従前からSPHC材が納入されている、SPHC材がSS400材に代替できるといったことをJFE建販の担当者から聞かされ、そういうものかと思いこんでしまい、その後、上司や前任者のAに確認を行わず、JFE建販の申し入れに対しては回答することなく、そのまま取引を継続していた。

    【原 因】

    • JFE商事(株)(2002年9月〜2006年7月迄の購入先)あるいはJFE商事建材販売(株)(2006年7月〜2007年6月迄の購入先)が、当社指定の鋼材を納入していなかった。
      これは、以下のいずれかが原因と考えられる。
      • JFE商事あるいはJFE商事建材販売の商品管理がずさんであった。
      • JFE商事あるいはJFE商事建材販売がSS400材を安定して調達することが困難な状況にあった。

    • SS400材以外のものが納入されていることを長期にわたり、組織として発見できなかったことについては、以下の点が原因であり、今後対処されるべき問題であると認識。
      • 当社品質管理担当者が、JFE商事あるいはJFE建販に対する信用に頼り、十分な注意を払うことなくミルシートを受け取り、事務的に処理していた。
      • 情報管理体制が十分機能せず、当社発注担当者が2005年7月か8月頃にJFE建販担当者から口頭により、注文書と納入鋼材の不一致について告知を受けながら、技術的知識が不十分であったことから、上司へ連絡せず、問題の発見が遅れた。

    【再発防止策】

      原因調査の結果、日常の業務慣行を十分な吟味をすることなく継承する企業風土が背景となっていること、及び、鋼材受け入れのプロセス上の不備が要因と考えられることから、以下の強化・改善を行う。
    1)社内業務体制の見直し
     取引先からの情報の記録と迅速な連絡のルール化や、担当者と管理職との意思疎通の改善を行う。
     担当者の裁量事項と管理職の承認事項についての見直しを行い、業務処理のチェックを強化する。
    2)納入検査体制の強化
     トレーサビリティに優れた納入業者を選定(7月2日実施済み)するとともに、定期的に監査を実施する。
     納品毎にミルシート及び切断証明書の入手を行い、社内のチェック機能を強化する。
     社外の中立機関(滋賀県工業技術総合センター)に検査を委託する。
    3)教育研修体制の見直し
     全従業員対象のコンプライアンス研修を行う。
     発注部門、受入れ部門及び品質管理部門間の緊密な連携を図る研修を行う。
     事業継続計画の整備を行う。
     

    (2)JFE商事建材販売(株)からの報告の概要
     (注)以下は、JFE商事建材販売(株)からの報告内容を、国土交通省住宅局建築指導課において要約したものです。

     第三者も入れた委員会を立ち上げ調査・検討を進め、原因調査結果及び再発防止策についてとりまとめた。

    【経緯】

    • 1993年からごく少量のスポット取引で注文規格と異なる鋼板納入が始まっていることが分かった。その際、フジテック資材部と当社営業担当者との間で注文書の規格がSS400材であっても、SS400材相当の無規格品を納入するとの合意があった。当社はフジテックから鋼板の用途について全く知らされておらず、エレベーターの何処の部材に使われたかは確認できていない。
    • 1997年からは、納入鋼板のクレームに関するフジテックの要望に応じ、SPHC材を中心に納入するようになった。
    • 2002年9月から取引数量が増えたが、フジテックから鋼板の用途・品質などに関する特段の説明もなかったため、従前のスポット取引時の合意に基づく取扱いがそのまま踏襲された。
    • 1997年頃よりフジテックからの度重なる要求により、納入品とは異なる鋼板のミルシートであることをフジテックに説明し了解を得た上で、フジテックに提出したことがあった。
    • こうした状態を解消しようとフジテックに対し紐付き契約(※)化してSS400材を納入することを提案したが実現しなかった。また2005年9月に当社担当者が注文書の記載をSPHCに変更するよう申し入れたが、フジテックから特段の回答を得られないままとなっている。
      (※)最終ユーザーが確定しており、ユーザーが要求する仕様(規格、精度、強度等)に合わせて鉄鋼メーカーに製品を発注し、要求通りの製品を納入する、数量・価格・品質等が長期安定的な取引契約。
    • 当社納入鋼板の価格は、当初から業界紙の中板市況(SPHC及び無規格品市況)を基準にフジテックと協議のうえ決定していたので、当社が不当な利益を得る目的で鋼板を納入していることはない。またSS400材の規格品を納入すると価格が上がることはフジテックも知っていた。
    • フジテックの要請により、1993年から2006年9月まではJFE商事(株)が取引窓口として商流に入っていたが、実質的取引は当社が行っていた。2003年頃より実態に合わせて当社との直接取引をフジテックに要請し、2006年10月より直接取引となった。

    【原 因】
     注文規格と異なる規格の鋼板を納入したこと及び現品と異なるミルシートのコピーを提出したことの原因は、下記にあると判断。
    • 注文規格と異なる規格の鋼板納入について、フジテックの口頭ベースの了解で、注文書を変更してもらわずに納入をはじめたこと。
    • こうした取引が担当者の判断によって開始され、上司にも一切報告がなされておらず、新規取引開始時の承認ルールに問題があったこと。
    • その後も注文規格と納入規格が異なる取引が続けられたことに対し、会社として異例な取引をチェックする仕組みが不十分で、適切な対応が取られなかったこと。
    • ミルシートの重要性についての担当者の認識が欠如しており、フジテックの度重なる要求に対し、担当者が無断でミルシートのコピーを提出してしまったこと。
    • 担当者が無断でミルシートのコピーを提出しようとしても、それを防止する仕組みが会社としてできていなかったこと。
      また、本件の背景として
    • フジテックの要求で市中のコイルセンター在庫の購入とした結果、紐付き契約では当然行われるべき仕様確認や製造メーカーとの製造可否検討等が行われず、当社は納入した鋼板が製品のどの部位に使用されるかを把握していなかった。

    【再発防止策】

      注文規格と納入規格が異なったこと、現品とは異なるミルシートのコピーを渡したことは、営業担当が独自の判断で営業行為を行った特異な事例。今後二度と同様のことを発生させないように、以下の再発防止策を策定。

    1)営業業務管理委員会の設置
     営業以外の管理部門に営業業務管理委員会を設置し、営業業務の執行状況を監査する。
     営業部門の自主監査を徹底するとともに、営業業務管理委員会への報告を義務付ける。
    2)営業本部における再発防止策
     取引マニュアルの徹底、注文情報と発注情報のチェックシステムの構築により、異材納入を排除する。
     ミルシート管理責任者・取扱担当者の設置、ミルシート取扱・管理マニュアルの徹底により、ミルシートの不適切な使用を防止する。
     コンプライアンスガイドブックの読み合わせ、社員研修におけるコンプライアンス研修の必修科目化等により、社員教育を徹底する。

    (3)フジテック(株)からの追加報告
     JFE商事建材販売より、1993年からSS400材以外の鋼材の納入が開始されたと報告されたことについて、7月31日の報告後、フジテックから以下の報告がありました。(及びとも引き続きフジテックにおいて精査中。)

    1993年1月〜1999年12月までの間に川鉄商事から購入した鋼材については、すべてエレベーターの補助材に使用されており、建築基準法に定める基準に対して強度が不足しているおそれはないこと。
    2000年1月〜2002年8月までの間に川鉄商事から購入した鋼材については、エレベーター及びエスカレーターの構造材の一部に使用された可能性があり、現在、当該鋼材を使用したエレベーター及びエスカレーターの特定と強度計算を実施中であるが、現時点では、建築基準法で定める基準に対して強度が不足しているおそれのあるものはないと見込まれること。

  2. 国土交通省としての対応
     国土交通省としては経済産業省とも連携して、フジテック(株)及びJFE商事(株)・JFE商事建材販売(株)に対し、以下の事項について指示した。

    (1)フジテックに対して

     1993年1月〜2002年8月までに製造したエレベーター及びエスカレーターについて、川鉄商事から納入された、本来使用することを予定していた鋼材(SS400材)よりも強度の劣るおそれのある鋼材が使用されたものを早急に特定するとともに、強度計算の実施及び結果の報告(建築基準法で定める基準に対して強度が不足しているおそれがある場合は、必要な是正措置及び当該是正措置が実施されるまでの間の積載量の制限等による安全対策についての報告を含む。)を行うこと。
    エレベーター及びエスカレーターの安全を確保するため、報告された再発防止策に基づき、品質管理を徹底すること。
    新たな事実関係が判明した場合には、速やかに報告を行うこと。

    (2)JFE商事(株)・JFE商事建材販売(株)に対して

    フジテック(株)が行う(1)の事項が円滑に行われるよう、必要な情報提供、技術支援等の協力を行うこと。
    報告された再発防止策に基づき、取り扱う鋼材についての品質管理を徹底すること。
    新たな事実関係が判明した場合には、速やかに報告を行うこと。

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