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IMO 第57回海洋環境保護委員会 (MEPC57)の審議結果について

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 IMO 第57回海洋環境保護委員会 (MEPC57)の審議結果について

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平成20年4月7日
<問い合わせ先>
総合政策局海洋政策課
(内線24362)
海事局造船課
(内線43756)
海事局安全基準課
(内線43924、44192)
TEL 03-5253-8111(代表)

 

 

 

 

 

 

概要
  1. 大気汚染関係
    • NOx3次規制案:日本提案の80%減、地域規制を承認。実施は2016年から。
    • SOx規制案:指定海域は2015年に0.1%、一般海域は2020/25年に0.5%。
  2. 温室効果ガス(GHG)関係
    • 国際海運からの温室効果ガス削減対策に関する原則について合意。CO2排出指標等具体策については、次回MEPC58での合意を目指して、作業を加速化
  3. シップリサイクル関係
    • 条約案最終化に向けた審議。
    • 中間会合を次回MEPC58の前週に開催。
  4. バラスト水管理規制条約関係
    • 日立バラスト水浄化システム(Clear Ballast)基本承認を取得。

     

 3月31日から4月4日まで、英国ロンドンの王立園芸学協会ホール(Royal HorticultualHalls)において、国際海事機関(IMO)第57回海洋環境保護委員会(MEPC57)が、我が国を含む91の国及び地域並びに50の機関からの参加により開催された。
 我が国からは国土交通省、環境省、(独)海上技術安全研究所その他関係海事機関・団体から成る60名の代表団が出席し、我が国意見の反映に努めた。今次会合における審議結果の概要は以下のとおり。

  1. 大気汚染の防止
     船舶からの排出ガスによる大気汚染の防止については、MARPOL条約附属書Yが発効した2005年5月より規制が実施されており、将来の技術水準の向上を踏まえて、発効後5年ごとに規制を見直すこととされている。このため、2005年のMEPC53から規制見直しが進められてきた。

    (1)新造船のエンジンに対するNOx規制強化
    2次規制
     今年2 月に開催されたBLG12(第12回ばら積み液体・ガス小委員会)で合意されていた、2011 年からエンジンの定格回転数に応じて現行規制値(g/kWh)から15.5%〜21.8%削減する案が、今次会合でも維持、承認された。
    3次規制
     日本が提案し、BLG12 で合意された2016 年から指定海域において現行規制値から80%減とする案が維持、承認された。(別添解説参照)

    (2)現存船のエンジンに対するNOx 規制
     現存船に搭載されたエンジンからのNOx規制について、BLG12において取り纏められた2つのオプションをベースに検討が進められ、以下の規制案が合意された。
    対象エンジン:
     1990年以降に建造された現存船のエンジンのうち、シリンダー容積90L以上かつ 出力5,000kW以上であり、主管庁が規制適合手法を有すると認めたもの
    規制値:
     1次規制値
    規制実施時期:
     主管庁が規制適合手法を認証し、IMO に通報してから1年以後の最初の定期検査

    (3)SOx 規制の見直し
     SOx 規制については、我が国は、安定的な燃料供給の確保及び費用対効果の最大化を図ることが必要とした上で、環境保護が必要な海域に限定し、その規制値(燃料中の硫黄分)を0.1%のレベルまで下げることによって、その目的は達成できることを主張した。
     その他の主な主張としては、@アジア・中東諸国は、当面の一般海域の規制値は3.5%が限界とし、A船主国及び海運業界は、将来の安定的な燃料確保や代替措置を認めることを絶対条件とし、B燃料供給国及び石油業界は、留出油の供給には、20 年程度の期間を要するとするとし、C欧州等の環境急進国及び団体は、2018 年から全ての海域の留出油化を主張し、D欧州諸国・北米は、指定海域の規制値0.1%を主張した。
    審議の結果、上記主張を踏まえた案として以下のとおり合意された。
    注:主に大型船で使用されるC 重油(残渣油)は通常硫黄分が1.0%以上であるため、本改正により、船上に処理装置を設置するか、硫黄分が0.5%以下のA 重油に転換することとなる。

    (4)今後の予定
     今次会合で承認されたMARPOL 条約附属書Y改正案は、本年10月に開催されるMEPC58 で採択のための審議が行われる予定。

  2. 船舶からの温室効果ガス(GHG)削減対策関連
     気候変動枠組み条約京都議定書は、その対象を附属書Tに掲げる先進国に限定しており、国際海運については、第2条第2項において、国際航空とともに専門の国際機関(IMO,ICAO)を通じた作業によって、GHG排出量の抑制を追求することとされている。
     我が国は、国際海運からのGHG 削減策としては、技術革新や運航の効率化策といった実質的な排出削減策を優先させるべきとの考えから、今次会合に先立ち、「新造船の燃費効率を評価する指標(実燃費指標)を策定すること」を提案していた。
     今次会合の主な結果は、次の通り。

    (1) GHG 排出削減対策に関する原則について

    • 1 地球規模のGHG 総排出量の削減に効果的に貢献すること。
    • 2 抜け道を防ぐため、拘束力を有しすべての旗国に平等に適用されること。
    • 3 費用に見合う効果が得られること。
    • 4 市場歪曲を防ぐ(少なくとも効果的に最小化する)ことができること。
    • 5 世界の貿易と成長を阻害せず、持続可能な環境開発に基づくこと。
    • 6 目標達成型アプローチに基づくものとし、具体的手法を規定しないこと。
    • 7 海運産業全体における技術革新・研究開発の促進・支援に役立つこと。
    • 8 エネルギー効率分野における主導的技術に対応していること。
    • 9 実用的であって、透明性があり、抜け道がなく、管理が容易であること。

    (2)CO2 排出指標について
     原則に関する議論を踏まえて行われた個別事項に関する審議において、指標についてはMEPC58での合意を視野に入れて以下の作業を行うこととなった。
    CO2 排出設計指標(デザインインデックス)
     個別の船舶の環境性能を示すCO2排出設計指標(わが国提案の実燃費指標もここに含まれる)については、その有効性及び必要性が認識され、我が国及びデンマークが関心を有する他国と共同して、規則化の草案を5 月末までに作成し、中間会合(本年6 月)で議論することとなった。
    CO2 排出運航指標(オペレーショナルインデックス)
     個別の船舶から実際に排出されたCO2 量を示すCO2 排出運航指標については、MEPC53で採択された「船舶からのCO2 排出運航指標の自主的な試行に関するガイドライン」の見直しを行うことに合意した。今後、効率の観点からのCO2 排出のベースライン決定方法の開発等について最終化を図る予定。

    (3)燃料課金、排出権取引等の経済的手法について
     船舶燃料への課金については、課金の徴収方法、得られた資金の配分方法等を含め具体的実施方法について詳細な議論が必要であること等の課題が指摘され、中間会合において詳細な議論を行うこととした。また、排出権取引(ETS)及びクリーン開発メカニズム(CDM)によるGHG 削減手法の開発についても中間会合において検討することとした。

    (4)その他の手法について
     減速航行等自主的なGHG 削減方法について、そのベストプラクティス(最良実行方法)に関する決議案を事務局が用意し、MEPC58での合意を目標に、中間会合において検討することとした。

    (5)今後の予定
     MEPC57 の結果に基づき、本年6 月23 日から27 日まで、ノルウェー・オスロにおいてGHG 中間会合を開催することに合意した。

  3. シップリサイクル
    (1)背景・経緯
     シップリサイクルに関しては、2009年5月の採択を目指してIMO 新条約の策定作業が進められているところ、前回会合(昨年7月)及びシップリサイクル作業部会中間会合(今年1月)に引き続き、今次会合においても議題3「Recycling of ships」の下でワーキンググループを設置し、条約案の逐条審議が行われた。

    (2)審議結果
     今次会合での審議結果の概要は以下のとおり。

    条約策定にかかる今後の作業計画が見直された。
    2008 年9 月 シップリサイクル作業部会中間会合(条約案の審議)
    10 月 MEPC58(条約案最終化)
    2009 年5 月 条約採択会議(開催日程は2008 年6 月の理事会にて最終決定)
    7 月 MEPC59(関連ガイドラインの審議及び採択)
    条約草案については、検討中ということで括弧付きとなっていた箇所について集中的に審議が行われた結果、その多くの部分で合意に達した。
    条約の要件を満たす施設であれば非締約国施設であっても、締約国船舶のリサイクルを可能とするか否か検討した結果、締約国船舶は締約国施設のみでリサイクルされることとなった。そのため、締約国の解撤能力が十分でない場合の方策に関する採択会議決議を今後検討することとなった。
    条約の発効要件に関する我が国提案については、時間的制約により審議できなかったため、次回中間会合において審議することとなった。
    ISO(国際標準化機構)標準とIMO 新条約(関係ガイドラインを含む)との間では、重複問題(ダブルスタンダード化)が発生する強い懸念があることから、IMO/MEPCはISO とのリエゾン(情報交換・連絡体制等)を強化するとともに、ISO に対し適切な情報開示、透明性の確保を求めるべきとの我が国提案については、多数国の支持を得たため、合意された。

  4. バラスト水管理条約関係
     バラスト水の移動に伴う生物の移動防止を目的として、2004年2月にIMOにおいてバラスト水管理条約が採択された。同条約では、2009年新船(バラスト水容量5000m3未満)から段階的に一定の生物殺滅性能を有するバラスト水処理システムの搭載を義務付けることなどが定められている。
     今次会合では、バラスト水処理システムに使用する活性物質の承認について、基本承認及び最終承認あわせて7件の審議が行われ、我が国が提案した日立製作所及び日立プラントテクノロジーが開発した「日立バラスト水浄化システム(Clear Ballast)」について基本承認が得られたほか、3件の基本承認及び1件の最終承認が得られた。審議された具体的なバラスト水処理システム名、審議結果については、以下のとおり。  

  5. その他
    (1)
    MARPOL条約附属書X(廃棄物)の特別海域である地中海海域について、施設の不十分性から特別海域としての要件の適用が見送られていたが、施設が確保されたことを受けて、同海域について特別海域としての要件を2009年5月1日から適用することが合意された。

    (2)
    米国北西ハワイ諸島(Papahanaumouakea)を特別敏感海域(PSSA)とすることが合意された。(航行に関する措置が、2008年5月1日から適用される。)

    以上


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