現在、普及の進んでいるガソリン自動車、ディーゼル自動車、液化石油ガス(LPG)自動車は、排出ガス規制の強化や、燃費基準の設定等に伴い、年々技術的な改良が加えられ、環境負荷の低減が図られてきている。
また、大気汚染物質の排出が少ない等の特徴があることから開発が行われているハイブリッド自動車(ガソリン又はディーゼルエンジンと電気モーター等とのハイブリッド)、メタノール自動車、圧縮天然ガス(CNG)自動車、電気自動車については、税制上の優遇措置等により性能改善・普及が進められている。
さらに、次世代の環境自動車として期待される、ジメチルエーテル(DME)自動車、燃料電池自動車、液化天然ガス(LNG)自動車等について、研究が進められている。
また、より低公害な車両の普及を促進する「低排出ガス車認定制度」により、使用する燃料に拘わらず、認定基準を満たした自動車が、低排出ガス車として認定・公表されている。
水素を燃料とする燃料電池自動車は走行時点の排出ガスが水蒸気のみであり、また、高いエネルギー効率も期待できるため、将来的に最も環境負荷の少ない自動車となる可能性を有している。しかし、燃料電池によるエネルギー源とする自動車は、内燃機関を利用する自動車とは全く異なることから、解決すべき課題が多く、普及に至るにはなお時間がかかるものと考えられる。また、燃料電池自動車は乗用車等への開発・普及が期待されているが、トラック等については、現行の自動車と同等の性能を得るには燃料電池の単位体積当たりの出力、必要な補器類の大きさ等を踏まえると荷物の積載効率が悪化する懸念があることから、乗用車等の開発より後に開発が行われるのものと考えられる。
このため、トラック等においては燃料電池自動車が普及するまでの間の21世紀初頭における環境自動車、また、乗用車等においては燃料電池自動車・内燃機関を利用する自動車を含めた21世紀初頭における環境自動車のあり方について模索し、環境自動車の効率的な開発・普及を促す観点から、自動車の使用形態、使用燃料の特徴を踏まえ、それぞれの環境自動車の特性に応じた開発・普及の方向性を示す必要がある。
現時点では今後の技術開発の進展を完全に見極めることは困難であるが、自動車に起因する大気汚染問題や地球温暖化問題への対策として、ガソリン自動車やディーゼル自動車の排出ガス及び燃費性能の改善に加えて、ディーゼル自動車からNOx・PM排出量の少ない環境自動車に代替する等の21世紀初頭における環境自動車の開発・普及の方向性を、現在得られている知見を基にして、以下のとおりまとめた。
1. | 小型・中型トラック | ||
主に地域内の集配活動に使われる最大積載量2トン程度の小型トラックについては、主に長距離幹線輸送に使用される大型トラックに比べ、航続距離、大排気量※1を必要としない。このため、ディーゼル自動車の代替としてのガソリン自動車、普及段階にあるLPG自動車及びCNG自動車について、引き続き性能改善・普及が期待される。 主に地域内の集配活動に使われる最大積載量4トン程度の中型トラックについては、LPG自動車等より、大排気量の自動車にも適するCNG自動車の性能改善・普及が期待される。また、拠点都市間の輸送まで視野に入れた中型トラックについては、大排気量の自動車にも適し、かつ、一定の航続距離を有すると考えられる※2DME自動車の開発が期待される。 | |||
※1: | 多量の貨物、多数の旅客を運送するためには、大きな出力を得ることができる大排気量のエンジンが必要である。 | ||
※2: | 液体状態で燃料を搭載できるDME自動車等は、気体燃料のCNG自動車より燃料搭載性に優れ、一充填当たりの航続距離を長くできる。 |
2. | 大型トラック |
主に長距離幹線輸送に使用される最大積載量10トン程度の大型トラックについては、航続距離、大排気量が必要とされる。このため、大排気量の自動車にも適し、かつ、一定の航続距離を有すると考えられるDME自動車及びLNG自動車の開発が期待される。 |
3. | 路線バス |
主に市街地を走行する乗合バス(路線バス)については、主に地域内で使われ、航続距離は必要としないが、大排気量を必要とし、また、停留所、信号等において停車・発車を頻繁に繰り返すことが多い。このため、CNG自動車や、ブレーキ時の制動エネルギーを回生して効率よくエネルギーを使用できるハイブリッド自動車の性能改善・普及が期待される。さらに、大排気量の自動車にも適すると考えられるDME自動車、市街地走行に適すると考えられる燃料電池自動車の開発が期待される。なお、路線バスは燃料供給設備をバスの車庫に集約して設置することができるため、CNG・DME等の燃料にあっても効率的な燃料供給体制を整備することができる。 |
4. | 観光・高速バス |
観光バス(主に観光地と都市を往復する観光用途のバス)・高速バス(主に高速道路を走行する路線バス)については、航続距離、大排気量を必要とする。このため、大排気量の自動車にも適し、かつ、一定の航続距離を有すると考えられるDME自動車及びLNG自動車の開発が期待される。 |
5. | 乗用車 |
乗用車については、CO2排出の問題が大きいため、排出ガス低減とCO2排出の低減を同時に達成する自動車の普及が望まれる。このため、LPG自動車やCNG自動車の燃費向上や、ハイブリッド自動車の性能改善・普及、燃料電池自動車の開発が期待される。 |
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