国土交通省
8.船舶からの排出ガス対策
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1.問題の所在とこれまでの取り組み

 船舶からの排出ガスは、ディーゼル機関等から排出されるものであるが、そのうち環境上の問題が指摘されているものに窒素酸化物(NOx)と硫黄酸化物 (SOx)がある。これらは、高濃度で呼吸器に影響を及ぼし、広く拡散した場合に酸性雨の原因になると、バルティック沿岸諸国を始め、いわれている。
 東京や大阪周辺の大都市地域におけるNOxの総排出量のうちの船舶からの排出量が占める割合は、東京都全域で約2%、大阪府全域で約4%である。船舶からの排出量は、自動車(東京都全域で約68%、大阪府全域で約51%)、工場・事業場(東京都全域で約15%、大阪府全域で約36%)等の他の発生源に比べ少ない値となっている。これは、船舶は自動車や工場と異なり、人の生活地域から離れた海洋を航行していることによると考えられる。
 このような状況を踏まえ、自国籍船にのみ規制を行っても効果があがらないため、世界的なNOx、SOx対策として、MARPOL73/78条約に次のようなNOx、SOx等の排出規制を定める「船舶からの大気汚染防止のための規則(附属書Y)」を追加する97年議定書が採択された。同議定書は、15ヶ国以上が締約国になり、その締約国の商船船腹量が総トン数で全体の50%以上になった日から12ヶ月後に発効することとなっている(現在未発効)。なお、2002年までに発効しなかった場合には、早期発効のための検討を行うこととなっている。
1.総トン数400トン以上の船舶は、排出基準等に適合することを確保するために、旗国主管庁の検査を受け、国際大気汚染防止証書の発給を受ける。
2.130kWを超えるディーゼル機関にNOx排出基準(1990年のNOx排出量の約 30%低減を目標)が適用される。この基準は、97年議定書が発効した場合、2000年1月1日以降に建造される外航船舶に搭載されるディーゼル機関に対して、遡及適用される。
3.SOx排出規制のため硫黄分4.5%以下の燃料を使用する、特別海域においては、硫黄分1.5%以下の燃料を使用する又は排出ガス浄化装置を備える。

2.2010年における環境制約要因となるか否か

 船舶からのNOx、SOxの排出が酸性雨の一因であると指摘されているが、現在NOx、SOx規制が行われていないことから、船舶に起因する大気汚染が深刻化する可能性がある。また、東京や大阪周辺の大都市地域におけるNOx問題が深刻化しているため、全ての発生源について対策に努めることが必要になってきており、自動車、工場・事業場のみならず、船舶についてもNOx対策を講じていく必要が生じる。
 そのため、船舶からの排ガス問題は2010年における環境制約要因となると考えられる。

3.今後の施策の方向性

 (1)NOx、SOx対策−附属書Yの実施−
 97年議定書の発効のためには、圧倒的多数の商船船腹量を有するパナマ、リベリア等の便宜置籍国が締約国となる必要がある。メーカーの対応状況は、内航船舶用のものも含めディーゼル機関の多くは既に附属書YのNOx排出基準に適合できる状況にあり、大きな価格増はない。しかし、運航に際してはディーゼル機関の燃費が2〜3%程度悪くなる。これらの状況を踏まえて、議定書の批准のための方策を検討するとともに、早期発効のための国際的なコンセンサスの形成を図るためIMOに働きかけていく必要がある。

 (2)議定書発効前のNOx対策
 外航船舶は、発効前であっても2000年1月1日以降に建造されるものには、基準に適合したディーゼル機関を事実上搭載することとなるが、内航船舶、漁船は、条約上、遡及適用の対象外とするか否かは各国の判断に委ねられている。今般、内航船舶、漁船の所有者の意識調査を開始したところであるが、その結果を踏まえ、内航船舶、漁船からのNOx排出実態や議定書発効の動向を勘案しつつ、日本籍船のNOx対策の実施を検討する必要がある。

 (3)将来のNOx対策のための技術開発の推進
 将来、附属書YのNOx排出基準を超えて更に排出量を低減させるためには、脱硝装置、次世代型の舶用機関等について実用化のための更なる技術開発の必要があり、そのため、技術開発の推進策を講じる必要がある。

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