国土交通省
9.舟艇の騒音、排気ガス対策
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1.問題の所在とこれまでの取り組み

 (1)騒音問題
 現在10万台の保有隻数を有する水上オートバイ(PWC)に対し、一部地域の住民等から騒音等に関する苦情が寄せられており、同地域の静穏な環境の保全等を目的として、看板の掲示によるPWCの走行禁止区域指定及び当該区域での警察及び自治体による警邏等、独自の規制を実施している自治体がある。
 近年、国民の自然・生活環境の保全等への関心が高まりつつあることを勘案すれば、我が国の健全な舟艇利用の振興を図るためには、本件問題への積極的な取り組みが必要であり、このため、(社)日本舟艇工業会が中心となって生産業界による自主規制の導入を決定したところである。
 具体的な対応としては、舟艇の騒音の評価方法について共通の物差しがなかったことから、官民協力の下、既にPWCの発生音の特殊性を考慮した「PWC加速騒音測定法」の開発がなされている。これは、PWC独自の一定水域を反復的及び集中的に走行する形態を考慮した測定法で、最大速度時での通過音量を計測するものではなく、停止時から最大速度への加速状態の音量を計測・評価するものである。
 今後、自主規制により、同測定法により計測されるPWC機器発生音を、現在の79dB(電話のベル及び電車の車内程度)から段階的に低減し、2004年モデル機では日常の騒音領域外とされている74dB(デパートの売場程度)以下とするよう、2001年以降段階的に低減することとしている。

 (2)排気ガス問題
 現時点では、我が国においては、マリンエンジンの排気ガス総量は陸上交通機関のエンジンの排気ガス総量等に比べると少量であることから、社会的に大きな問題として取り上げられてはいない。
 他方、プレジャーボート用のエンジンには、騒音抑制等の観点から排気ガスを水中に直接排出する機構を採用している機種があり、当該ガスに含まれる未燃焼ガソリン等による水源である湖川等への影響が、一部の地域において問題視されるようになってきている。
 現在、舟艇の利用が増加していることを考慮すれば、今後、我が国においてもマリンエンジン排気ガスのクリーン化が求められていくものと考えられる。
 このため、(社)日本舟艇工業会が中心となって、生産業界による自主規制が実施されており、より排気ガスのきれいなエンジンへの移行等が進められている。
 具体的には、プレジャーボートから排出される炭化水素(HC)やNOx等を2000年から段階的に削減することとしており、最終年となる2006年には現状のマリンエンジン排出ガスの上記物質の合計量を総量的に75%削減する予定である。

2.2010年における環境制約要因となるか否か

 (1)騒音問題
 上述の業界による自主規制により、2004年にはPWCエンジンの騒音発生量を74dBまで低減する予定であり、また、利用者への啓蒙活動及び指導等を行うことにより騒音問題は抑制できると考えられる。さらに、各地域において走行エリアの設定等の取り組みが進められていることを勘案すれば、2010年における環境制約要因となる恐れは少ないと考えられる。

 (2)排気ガス問題
 騒音問題と同様に、上述の業界による自主規制により2006年には現状のマリンエンジン排出ガス中の炭化水素の合計量を75%削減する予定であること等より、2010年における環境制約要因となる恐れは少ないと考えられる。

3.今後の施策の方向性

 騒音・排気ガス問題は舟艇利用者による舟艇の利用形態及び地域的な問題とも大きく関係するため、舟艇の設備・構造面での対策のみならず、舟艇の利用方法等運用面の対策についても検討する必要がある。
 具体的には、製造事業者及び販売店等を中心として舟艇利用者の組織化を推進するとともに、当該利用者に対し、遊走水域における騒音・排気ガスの実態調査をもとに策定された適正な利用方法の周知・啓蒙及びマナーの徹底を行う。
 加えて、水域を管理する関係行政機関による遊走水域の設定・拡大や安全管理体制の充実等利用環境の整備を進めることにより、適正な舟艇利用がより促進されるものと考えられる。

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