国土交通省
はじめに
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 我が国の交通は、年間500兆円を超える巨大な経済活動と1億2600万人もの国民の足を支え、また、地域の振興に大きく貢献している。
 その一方で、交通は化石燃料の燃焼による二酸化炭素や窒素酸化物などの排出や、運行(航)に伴い発生する騒音・振動などにより絶えず環境に対して負荷を与えてきており、その軽減のための措置を講ずることが求められてきた。
 中でも、近年、交通部門における二酸化炭素排出量の増加が地球温暖化の原因として、緊急に取り組むべき課題となってきている。

 1997年の気候変動枠組条約第3回締約国会議で採択された京都議定書において、我が国は、2010年前後に1990年比6%の温室効果ガス排出削減を行うことを約束した。
 京都議定書の目標達成のために、我が国全体の二酸化炭素排出量の2割を占める交通部門については、2010年に、何も対策を取らない自然体ケース(1990年比40%増)に比べて1,300万トンの二酸化炭素排出削減(1990年比17%増に抑制)が必要であり、現在、自動車の燃費効率向上を目的とした自動車税制のグリーン化の提案等を含め、2010年前後の目標達成に向けた様々な取り組みが行われている。

 しかし、交通部門の二酸化炭素排出量については、景気が低迷しているにもかかわらず、コンスタントな増加傾向が続き、1997年時点で1990年比21%増と、既に2010年の抑制目標(17%増)を超過している状況にある。また、我が国全体に占める交通部門の排出量のシェアも1990年の19%から1997年時点で21%と増加している。
 わが国の交通部門からの二酸化炭素排出量の約9割は、自動車からの排出によるものであり、京都議定書の目標達成のためには、環境負荷の少ない自動車社会を構築することが最重要の課題となっている。

 大都市を中心とする大気汚染の深刻化、社会問題化も重要な課題となっている。1998年の大都市部における窒素酸化物(NOx)、浮遊粒子状物質(SPM)に係る環境基準の達成割合は、それぞれ36%、12%に過ぎず、翌1999年にはこれが59%、64%と改善したものの、夏季の強風等の特異な気象状況が原因の一つとされており、状況の深刻さは変わっていない。
 三大都市圏における公害訴訟の進展、東京都のディーゼル車NO作戦等を考慮するまでもなく、NOx、PM対策の強化の必要性はこれまでになく高まっている。

 交通をめぐる環境問題は、このほかにも、海洋汚染問題、オゾン層破壊問題、騒音・振動問題等数多い。また、リサイクル対策の推進による循環型社会の構築も緊急の課題となっている。
 これらの環境問題の解決は、限られた資源を有効に活用しつつ、持続可能な社会を形成し、国民の健康的な生活を確保するためにも、21世紀初頭における最重要課題の一つと位置づけていく必要がある。

 本報告書は、このような問題意識に基づき、交通をめぐる環境対策のあり方について総合的な検討を行った結果を取りまとめたものである。 

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