国土交通省
II.交通部門の21世紀初頭における主要な環境課題と施策の方向性
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1.交通部門の21世紀初頭における環境課題と施策の方向性

 交通に係る環境問題について、本委員会においてこれまでの経緯を検証し、かつ、今後の輸送需要の増加等を勘案して、検討課題を絞り込んだ結果、(別紙)の15項目を抽出した。

 これらの項目はいずれも重要な課題であり、それぞれ十分な対策を講じることが必要であるが、環境問題を大きく括ると、@地球環境問題、A地域環境問題、B循環型社会形成に向けての取り組みに分けられる。また、交通部門における地球環境問題、地域環境問題の解決のためには、「環境にやさしい自動車社会の構築(自動車交通のグリーン化)」が最重要の課題となっている。
 これらに係る基本的考え方は次のとおりである。

 (1)地域環境問題

地球温暖化問題
 地球環境問題については、交通部門の二酸化炭素排出量が急増していることにかんがみ、地球温暖化問題への対応を重要課題として取り組む必要がある。 
 そのため、地球温暖化の悪影響を及ぼさない水準に温室効果ガス濃度を安定化させるという気候変動枠組条約の最終目的に向けた端緒となる取り組みとして、京都議定書において定められた、我が国の温室効果ガス排出削減目標を達成することが必要である。
 また、二酸化炭素排出削減目標の達成を確実にするために、二酸化炭素排出削減量の具体的な進行管理及び公表を行う必要がある。

自動車交通のグリーン化
 地球温暖化問題への対応に当たっては、交通部門の排出量の約9割を占める自動車からの二酸化炭素削減を進めることが最重要の課題であり、環境にやさしい自動車社会の構築(自動車交通のグリーン化)のための総合的な施策を推進していくことが必要である((3)参照)。

海上輸送の新生
 エネルギー効率が高く、環境にやさしい海上輸送について、抜本的対策を講じることによってその新生を図り、モーダルシフトの推進を通じた二酸化炭素の削減を進めることが重要である。このため、低環境負荷型ガスタービンエンジンをはじめとする革新的技術を活用した次世代内航船(スーパーエコシップ)の開発や、海上ハイウェイネットワークの構築ををはじめとする海上輸送の効率化、高速化及びIT化を図るための施策を推進する必要がある。

オゾン層破壊
 オゾン層の破壊が依然として進んでいる状況に鑑み、オゾン層保護対策として、平成11年度現在18%にとどまっているカーエアコンからの特定フロンの回収率を高めるとともに、代替フロンについても地球温暖化防止の観点から同様の取り組みを進める必要がある。

海洋汚染問題
 ナホトカ号事故等大規模な油流出事故が深刻な海洋汚染を引き起こしていることに対応し、引き続き大型油回収船等の防除資機材の整備、我が国に寄港する外国船舶の監督(PSC)の強化等に努める必要がある。また、平成11年12月のフランス沖でのエリカ号事故への対応も踏まえつつ、IMO(国際海事機関)における事故の未然防止対策の強化に関する検討に積極的に寄与することが必要である。加えて、近隣諸国と協力し、油流出事故の被害を最小限にくい止めるため、現在、国連環境計画(UNEP)の提唱により推進されているNOWPAP(北西太平洋地域海行動計画)について、活動の拠点である本部を我が国に誘致すること等により、活動の充実を図っていく必要がある。

地球環境観測体制の強化
 これらの問題について的確な施策を実施する基礎として、地球温暖化、オゾン層破壊等の実態を正確に把握する地球環境観測システムのさらなる強化が必要である。このため、国際的な協調体制の下、既存の観測網の充実に加え、全世界の海洋の状況をリアルタイムで監視・把握する高度海洋監視システムの構築(アルゴ計画)、大気中の温室効果ガス等の立体的な分布を監視するための、飛行検査機を用いた地球環境観測体制の構築(空のアルゴ計画)等を着実に推進していくことが求められている。

 (2)地域環境問題

a 自動車に係る地域環境問題
 自動車排出ガスの問題については、NOxやSPMについて、環境基準が達成されていない地域が大都市を中心に引き続き多数残っており、その早急な解決が重要な行政課題となっている。
 自動車は、大都市地域におけるNOxの主要な排出源であり、ディーゼル自動車が全体の32%、ガソリン自動車が9%のNOxを排出している。さらに、特殊自動車(建設機械、産業機械、農業機械)からのNOx排出も全体の19%にのぼっており、これらを含む移動排出源からのNOx排出量は全体の約65%を占めている。
 このため、自動車NOx法を改正し、古いディーゼル車の最新規制適合車への代替の義務等、単体対策を強化するとともに、同法の規制対象物質へのSPMの追加、規制対象地域の拡大等を図るための検討を進めていくことが適当である。
 また、自動車交通のグリーン化を進め、環境自動車の普及を図るとともに、自動車への過度な依存を脱し、公共交通を中心とした環境の改善に貢献する持続可能な都市交通の実現を目指すことが必要である((3)参照)。

b その他の交通機関に係る地域環境問題
 航空機の騒音問題、新幹線の騒音問題については、規制とあわせた対策を講じたことにより、大幅に改善されてきているが、引き続き、発生源対策、空港周辺対策、新幹線沿線地域の適切な土地利用対策を進めていくことが必要である。
 船舶からの排出ガス問題については、現在NOx、硫黄酸化物(SOx)規制が行われていないため、その排出規制を定めるMARPOL条約附属書Yの早期発効を働きかけるとともに、発効前の日本籍船の対策の実施の検討等を行う必要がある。また、その排出削減に向けた技術開発を進める必要がある。

 (3)自動車交通のグリーン化

自動車交通のグリーン化の必要性
 京都議定書の目標達成のため、我が国全体の二酸化炭素排出量の2割を占める交通部門については、2010年に、何も対策を取らない自然体ケース(1990年比40%増)に比べて、1,300万トンの二酸化炭素排出削減(1990年比17%増に抑制)が必要であり、現在、自動車の燃費効率向上を目的とした自動車関係諸税のグリーン化の提案等を含め、2010年前後の目標達成に向けた様々な取り組みが行われている。
 しかし、交通部門の二酸化炭素排出量については、景気が低迷しているにもかかわらず、コンスタントな増加傾向が続き、1997年時点で1990年比21%増と、既に2010年の抑制目標(19%増)を上回っている。また、我が国全体に占める交通部門からの排出量のシェアも1990年の19%から、1997年時点で21%と増加している。
 わが国の交通部門からの二酸化炭素排出量の約9割は自動車からの排出によるものであり、京都議定書の目標達成のためには、環境にやさしい(環境負荷の少ない)自動車社会の構築、すなわち「自動車交通のグリーン化」に向けた総合的な施策を講ずることが最重要の課題となっている。

自動車交通のグリーン化のための施策
 自動車交通が抱える地球環境問題を解決するためには、地域環境問題にも配慮しつつ、環境にやさしい自動車社会の構築(「自動車交通のグリーン化」)のための総合的対策を講じていくことが必要である。
 自動車交通のグリーン化を実現するためには、以下のような総合的な政策を講じていく必要がある。
 温室効果ガス(二酸化炭素等)、NOx、PMの排出の少ない自動車(環境自動車)の開発・普及
 交通需要マネジメント(TDM)手法を通じた都市交通システムや都市内物流の効率化による地域環境問題及び地球環境問題の改善
 「自動車税制のグリーン化」による環境自動車の開発・普及の促進
 都市部における道路整備や踏切の立体交差化の推進、駐車対策の強化等による渋滞対策の推進
 自動車NOx法の改正による、NOx・PM対策の強化
 ディーゼル車からの排出ガス改善のため硫黄分の少ない軽油を導入する「自動車燃料のグリーン化」
 特殊自動車(建設機械(クレーン車等)、産業機械(フォークリフト等)、農業機械(トラクター等))の排出ガス規制の導入

自動車税制のグリーン化
 「自動車交通のグリーン化」を進める上で、環境自動車の普及を中心とした「自動車単体のグリーン化」は中心的課題の一つとなる。このためには、環境自動車に係る技術開発やTDMと一体となった普及策とともに、自動車税制を活用して環境自動車の技術開発や普及の促進を図ることが重要な課題となっている。

 現在運輸省等から提案されている「自動車税制のグリーン化」は、既存の自動車関係税制を前提とし、自動車の取得又は保有の段階で、より環境負荷の小さい自動車の普及を図ることを目的とするものである。
 グリーン化の推進により、自動車税制を自動車の燃費効率のみならず、NOx、PM等の排出削減にも配慮したものとすることを通じ、自動車税制をより環境にやさしいものとし、環境自動車の普及を促すことが必要であり、これが自動車社会のあり方を変革する原動力となることが期待される。
 このため、「自動車税制のグリーン化」の平成13年度からの実現に向けて、関係者、国民のより一層の理解を得られるよう努力していくことが必要である。

燃料課税としての炭素税(環境税)
 化石燃料の使用に伴う二酸化炭素の排出を抑制する観点から、燃料課税としての炭素税(環境税)の創設が検討されている。
 炭素税については、今後持続可能な社会の発展、汚染者負担の原則(PPP)等の観点を踏まえ、導入に向けた検討を進めることが必要である。また、その際、税収の使途や、特定の分野、業種にのみ負担を求める制度とならないよう配慮すること等の点について勘案することが適当である。

TDM施策の推進
 都市交通においては、自動車がその優れた利便性により大きく貢献してきたが、その一方で自動車への過度な依存が、排出ガスや騒音等による沿道環境悪化の要因となっている。
 都市における公害問題、ひいては地球温暖化問題を克服するためには、自動車への過度な依存を脱し、公共交通等を中心とした環境の改善に貢献する持続可能な都市交通の実現を目指す必要がある。
 このため、TDM施策を推進する必要がある。その際、社会実験的な手法を活用しつつ、関係省庁や地方自治体が行う自動車交通の調整策と一体となって、公共交通のサービス水準向上、環境自動車の導入、都市内物流の効率化等の促進を図ることが重要である。
 具体的には、
 快適な歩行空間、緑地空間の確保されたトランジットモール等の整備
 駐輪場、自転車道の整備等の自転車利用の促進
 公共交通専用空間の設置、LRTの整備等を通じた公共交通サービスの向上
 トラックの積載効率向上やモーダルシフトの推進、荷さばき駐車場の整備等
に向けた措置を講ずる必要がある。
 また、自動車交通の調整策については、選択肢の一つとしてロードプライシング(混雑地域・路線・時間帯の道路利用に料金を課し、経済的負荷により自動車交通量を削減する手法)についても検討していく必要がある。

 さらに、TDM施策を進める際には、自家用車と公共交通機関の中間的な形態の第3の交通機関として、自家用車の所有形態を「個有」から「共有」に変えるカーシェアリングの提案を行い、都市生活者が、都市交通の円滑化とともに、環境の改善に貢献する持続可能な交通体系の構築に積極的な役割を果たすことができるよう、選択肢を拡げることが必要である。

TDM施策の推進に係る留意事項
 都市部における渋滞の解消は、バス等の公共交通機関の利便性の向上のみならず、自動車単体の燃費の向上にとって不可欠の課題である。このため、都市交通の円滑化を図る上では、都市部における道路整備や踏切の立体交差化の推進、駐車対策の強化等、渋滞対策の推進が強く求められている。
 さらに、TDM施策の推進に当たっては、ITSの活用を推進し、交通管制能力の向上・交通情報の提供や自動車の知能化(インテリジェント化)による交通容量の増大や渋滞の解消を図るなど先端的な情報通信技術を活用した交通の円滑化を図ることが必要である。

 ITS:Intelligent Transport Systems の略。最先端の情報通信技術などを用いて、人・道路・車両を一体として構築することにより、道路交通の効率性や安全性・快適性の飛躍的向上を図るシステム。

自動車単体対策
 自動車単体対策については、引き続き、排出ガス及び騒音規制の強化を進めるとともに、排気後処理技術や自動車燃料のグリーン化(軽油に含まれる硫黄分の低減)等のディーゼル車の排出ガス対策を進めることが必要である。また、点検整備の着実な実施の促進、違法改造車の排除対策の強化等の対策を進めることが必要である。一方、環境負荷の少ない自動車(環境自動車)の普及を促進するためには、自動車税制のグリーン化を背景に、環境自動車の開発支援が必要である。
 今後実用化が予想される燃料電池自動車等新たなタイプの環境自動車については、開発の進捗に合わせ、試験方法、基準等の整備や審査体制の確立を図り、適正な安全・環境規制を行うことが必要である。この場合、これらの措置がすぐれた新技術の開発・普及の障害とならないよう十分配慮することが必要である。
 また、現在排出ガス規制の対象外となっている特殊自動車については、2004年度から排出ガス規制が実施されることとなっているが、実施時期の前倒しや実効性のある規制の実現に向け、検討を進めることが必要である。

 (4)循環型社会形成に向けての取り組み

 大量生産、大量消費、大量輸送、大量廃棄型の社会のあり方に根ざした環境課題を解決するためには、特に、社会における物質循環の確保により、天然資源の消費が抑制され、環境への負荷の低減が図られた「循環型社会」を形成することが必要である。
 現在、循環型社会形成推進基本法をはじめ、建設廃材、食品等個別のリサイクル法制度についても国会において成立する等、あらゆる部門における施策が必要であるという認識の下、交通部門においても、交通事業者やメーカーによる取り組み、静脈物流の取り組み、港湾や空港における取り組み等が必要となっている。
 交通分野については、カーエアコンからの特定フロンの回収も含め、特に、自動車、自動車部品等の分野で新たな取り組みが求められることとなると考えられるが、関係事業者のうち、廃棄物削減の数値目標を設定している業種は未だ少数であり、循環型社会の構築に向けて、リデュース、リユース、リサイクルを促進することが必要である。

 使用済み自動車のリサイクルについては、今年9月のEU指令において定められた最終消費者が使用済み自動車の処理費用を負担しないこととする制度やスウェーデンで導入された使用済み自動車回収促進のための賦課金制度等を参考としつつ、以下のような自動車リサイクル促進のための総合的な施策を推進する必要がある。
使用済み自動車の不法投棄の防止および適正処理の推進
リサイクル部品の在庫情報充実等によるリサイクル部品の利用促進
リサイクル性の高い自動車の開発促進やユーザーへの使用の啓発
リサイクルを促進するための税制上の措置の創設

 プレジャーボート不法投棄の減少及び資源の有効活用を図るため、廃船処理能力の向上や処理費用の低減に資する技術開発を推進するとともに、FRP廃船のリサイクルシステムを構築する必要がある。

 また、今後、各主体のリサイクル等の取り組みが進むことに伴う、廃棄物・リサイクル輸送の増大が予想される中、それに伴う環境負荷を軽減するため、効率的で環境にやさしい静脈物流システムの構築を検討する必要がある。

 社会資本整備においては、社会資本の計画・建設・利用の各段階における循環型社会の形成、良好な環境の創造等の視点も踏まえ、港湾において、環境と共生する港湾(エコポート)や、廃棄物海面処分場等を一層形成・整備するとともに、空港において、自然環境への影響軽減、水循環の促進、廃棄物の減少等に向けた循環型の空港整備・管理に関する取り組みを行うことが必要である。

2.交通部門の21世紀初頭における環境施策を推進するに当たって留意すべき事項

 以上の施策を推進するに当たっては、特に、個人、民間非営利団体、行政、企業各主体間のパートナーシップの確立、ポリシーミックスの必要性、予防的措置の必要性、国際協力の必要性について留意する必要がある。

 (1)個人、民間非営利団体、行政、企業各主体間のパートナーシップの確立

 「経済社会のあるべき姿と経済新生の政策方針」(平成11年7月8日 閣議決定)においては、「21世紀の国内外の社会経済活動に対応するためには、人々が自己責任の下、個人の個性や独創性を発揮し、積極的に経済活動に参画することが必要不可欠である」と述べられているが、このことは、環境問題への対応に関しても、同様に当てはまる。このような新たな役割分担の下で環境の改善に貢献していく必要がある、という意味で、現在は、環境政策の転換期である、と言える。

 地球環境問題、地域環境問題、廃棄物・リサイクル問題等の様々な環境問題の原因は、個人の生活や通常の生産過程に存在している。
 こうした環境問題に対し、個人は、市場経済におけるこれまでの受け身の立場から、積極的に企業、行政に働きかけるようになることが求められる。
 また、民間非営利団体は、情報の橋渡し、専門的能力を生かした提言、行動を行うことが求められる。
 行政の活動については、国際的に環境配慮を組み込む取り組みが進んでおり、我が国においても、国の内外を見据えて環境政策の充実・強化を図ることにより、企業の環境技術の開発や環境関連産業の創出を促し、我が国産業の国際競争力を高めることが必要である。これを規制により実現するいわゆる戦略的規制の実施や、個人が自らの消費行動により環境負荷の低減を企業等に促すことを後押しする取り組み等が求められる。
 さらに、企業は、製品のライフサイクル全体を考慮して、リサイクルしやすい製品の製造、使用済み製品の回収等に取り組むことが求められる。企業が環境対策を進めることは、環境技術の開発等を通じて、我が国産業の競争力を高めることにつながる。
 個人、行政、企業等の環境問題への取り組みは、環境をキーワードとする新市場が開拓されることにつながる。すでに、国と自動車メーカーで共同で検討してきた超小型自動車について、各地で共同利用等の新たな都市交通システムの実証実験が行われたり、超小型電気自動車を広範に導入する企業も現れる等の動きが生じており、今後、新市場の拡大が期待される。

 このような各主体の取り組みを通じて、個人、行政、企業、民間非営利団体各主体間のパートナーシップの確立を図ることが必要である。

 (2)ポリシーミックスの必要性

 我が国では、これまで、環境問題への対策として、自動車の排出ガス規制などに代表される規制的な手法が使われてきた。規制的な手法は主な発生源が特定されている場合には効果を発揮するが、小規模な発生源が多数存在する問題については、行政コストが高くならざるを得ないため効率的な対応が困難である等の欠点がある。
 したがって、今後の環境の改善に向けての政策の実施取り組みに当たっては、環境問題の性質に応じ、規制・税制・補助金等の活用、企業の自主的な取り組みを促すための施策等さまざまな施策の特性を生かした組み合わせの方策、すなわちポリシーミックスに係る検討が必要である。

 (3)予防的措置の必要性

 近年の環境問題は、地球温暖化やオゾン層の破壊等長期かつ広域にわたるものが多く、これらによっていったん及ぼされた人や生態系への影響は、回復困難なものが多い。
 そのため、交通部門を含む各部門の環境対策においては、問題が顕在化してからその都度対処するというやり方ではなく、不可逆的な変化が生じるおそれのある事象に対しては、積極的な予防的措置を講じることが必要である。

 (4)国際協力の必要性

 今日の地球環境問題の原因である二酸化炭素、フロン等の排出については、気候変動枠組条約、オゾン層の保護に関するウイーン条約等の様々な国際的な取り決めに基づいて、各国内の対策を進めているところである。
 しかし、国によっては、資金不足から公害防止装置の導入が遅れたり、環境保全のための技術の不足から監視体制が十分に敷けなかったり、環境問題への認識の違いから経済成長が優先され、環境対策がおざなりになる等、各国ごとの取り組みにはばらつきが生じている。
 我が国のような先進国は過去に公害等の環境問題を経験し、その原因に関する知見や対策予防のための技術等を有している。
 一方、京都議定書では、先進国間あるいは先進国と途上国間の技術移転等を通じて削減された温室効果ガス排出量を、先進国の温室効果ガス排出削減量に算入できることが規定されている。
 このようなことも踏まえ、我が国の経験・教訓を各国間で共有し、特に社会的な基盤整備が不十分なまま急速に経済発展を遂げようとしている途上国に対して、少しでも環境負荷の少ない経済社会のあり方を提示できるよう、自動車の排出ガス対策等の分野で積極的な情報提供や技術支援を進めるとともに、都市鉄道の整備等環境負荷の少ない交通体系の構築を支援していく必要がある。

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