国土交通省
1.地球温暖化対策
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1.問題の所在とこれまでの取り組み

 (1)二酸化炭素対策
 平成9年(1997年)12月の気候変動枠組条約第3回締約国会議(COP3)において採択された京都議定書で、我が国に対しては、二酸化炭素を始めとする温室効果ガスの排出を、2008年から2012年までの間に1990年比で6%削減するとの法的拘束力のある数値目標が定められている。
 このまま何も対策を講じない場合には、我が国の交通部門の二酸化炭素排出量は、2010年に1990年比で約40%増加することが見込まれているが、平成10年6月に決定された地球温暖化対策推進大綱に基づき、京都議定書の目標達成のため、諸対策を講ずることにより2010年度における交通部門の二酸化炭素排出量を1990年比17%の増加、すなわち、二酸化炭素排出量を自然体ケースから1,300万トン削減し、1995年の排出量と同水準に抑えることとしている。
 平成9年度(1997年度)における我が国全体の二酸化炭素排出量のうち、交通部門の占める割合は20%以上を占め、また、交通部門からの二酸化炭素排出量は1990年度から1997年度にかけて21.3%の伸びと、年々増加している。これは、排出量の大半を占める自動車について、台数の増加、大型化及びRV車の普及等による自家用乗用車のエネルギー消費の増加が主な原因となっている。

 (2)代替フロン対策
 京都議定書において、代替フロンであるHFC、PFC、SF6が排出削減対象物質として指定されたことから、代替フロンについても排出抑制対策を講じる必要が生じている。
 運輸省は平成10年2月に主要な関係業界団体等に対し、地球温暖化対策を自主的に取り組むよう要請し、同要請を受け、倉庫業、貨物運送取扱業、鉄軌道業、バス事業、トラック事業、タクシー事業等の26の団体等が地球温暖化防止ボランタリープランを策定した。そのうち21の団体等については、フロン等の排出抑制に努めることが明記されている。

2.2010年における環境制約要因となるか否か

 京都議定書の我が国の温室効果ガス排出削減目標の達成のため、運輸省では、地球温暖化対策推進大綱に基づき、

○自動車、船舶、航空機等輸送機関ごとのエネルギー消費効率の向上
−省エネ法に基づく自動車の燃費の向上
−クリーンエネルギー自動車・低公害車の技術開発 等
○物流の効率化
−海運・鉄道による貨物輸送の推進(モーダルシフトの推進)
−トラックの積載効率の向上
−物流の情報化 等
○自家用自動車から鉄道・バスへの利用の転換を中心とした公共交通機関の利用促進
−鉄軌道の整備及びサービス改善
−バス・タクシーのサービス改善 等
等を柱とした各種施策を推進している。

 しかし、前述したように交通部門における二酸化炭素排出量、我が国全体に占める交通部門からの排出量のシェアともにコンスタントに増加が続いている。このような現状を考慮すると、京都議定書において2010年前後に我が国が達成することを約束した温室効果ガス排出削減目標の達成のみならず、気候変動枠組条約の究極的な目標である「気候系に対して危険な人為的干渉を及ぼすこととならない水準において大気中の温室効果ガスの濃度を安定化させる」ことを達成するためには、大綱に掲げられた政策目標を確実に達成するため、さらなる施策をとる必要がある。
 従って、地球温暖化対策は、2010年における環境制約要因となると考えられる。

3.今後の施策の方向性

 (1)二酸化炭素対策
 自動車、船舶、航空機など輸送機関単体ごとの燃費効率の向上をさらに推進する必要がある。
 そのうち、交通部門における二酸化炭素排出の太宗をしめる自動車について、「自動車交通のグリーン化」を推進することとし、環境自動車の開発普及、都市交通システムや物流の効率化、自動車税制のグリーン化等を総合的に推進する必要がある。
 また、これまで省エネ法によって自動車の燃費向上を促進してきたところであるが、引き続き環境負荷の小さな自動車の開発・普及を促進する必要がある。
 中長距離の貨物輸送については、引き続き他の輸送機関に比べて単位輸送あたりの二酸化炭素排出量の少ない海運・鉄道の活用を図ることが必要である。
 海上交通については、その効率化、高速化、IT化のための施策を総合的に推進することによってその新生を図り(海上輸送の新生)、モーダルシフトの推進を通じた二酸化炭素の削減を進めることが重要である。このうち、@効率化については革新的技術を活用した次世代内航船(スーパーエコシップ)の技術開発・実用化や環境負荷低減船の建造促進、A高速化については、テクノスーパーライナーの実用化や、湾内航行のボトルネックを解消する国際基幹航路の整備等を行う海上ハイウェイネットワークの構築、BIT化については「海のITS」の構築を推進する。
 貨物鉄道については、架線下荷役に対応した貨物駅の整備等、貨物鉄道の輸送力増強や効率化を図る施策を推進する。
 都市部において排出原単位の小さな輸送モードへの転換を促進するため、中心部への自動車流入規制と公共交通機関の利用促進策を結びつけた交通需要マネジメント(TDM)を実施する。
 事業者の自発的な取り組みである関係業界団体による地球温暖化防止ボランタリープランの確実な実施を通じて、二酸化炭素排出削減対策をさらに強化する必要がある。
 また、二酸化炭素排出削減目標の達成を確実にするために、二酸化炭素排出削減量の具体的な進行管理及び公表を行う。

 (2)代替フロン対策
 関係業界の協力を得て、フロン等の回収・再利用・破壊対策を一層促進する必要がある。その際、オゾン層保護対策として講じたCFC等の回収・再利用・破壊促進策の経験を踏まえ、今後新たに地球温暖化対策として実施することになるHFC等の排出抑制対策についても、関係省庁等と連携しつつ、CFC等の対策と同様に実施する必要がある。
 また、地球温暖化防止ボランタリープランのフォローアップを確実に実施すること等により、関係業界の取り組み実態等を的確に把握し、施策に反映する必要がある。

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