1. | NOx(窒素酸化物) |
二酸化窒素(NO2)等の窒素酸化物(NOx)は、自動車、工場等から排出されている。近年、自動車の保有台数、走行距離、輸送量及び消費燃料はいずれも増大し、平成6年度NO2排出量では、自動車が全体の52.3%(大都市地域では64.9%)を占め、自動車からの排出量削減がポイントとなっている。 | |
また、NO2の環境基準は「1日の平均値が0.04〜0.06ppmまでの範囲又はそれ以下」とされているが、その達成状況は、ここ5年間では横這い状況(平成10年度68.1%)、特定地域(NO2に係る環境基準の確保が困難と認められる地域であり、具体的に、東京、神奈川、埼玉、千葉、大阪及び兵庫の一部地域)においても同様に横這い状況(平成10年度35.7%)であり、依然として達成が厳しい状況にある。 |
2. | PM(Particulate Matters;粒子状物質) |
粒子状物質に係る環境基準は、浮遊粒子状物質に係るものがある。 | |
浮遊粒子状物質とは、大気中に浮遊する粒子状物質のうち、粒径が10μm (1μm=10-3mm)以下のものをいう。 | |
浮遊粒子状物質には、工場・事業場やディーゼル車等から排出される人為発生源によるものと、土壌の飛散や巻き上げ、海塩等の自然発生源によるものとがある。また、生成機構の違いにより、発生源から直接粒子として排出されるばいじん、粉じん、ディーゼル排気微粒子(DEP:Diesel Exhaust Particles)等の一次粒子と、硫黄酸化物、窒素酸化物等のガス状物質が大気中で化学反応等により粒子化した二次粒子に分類される。 | |
平成10年度において浮遊粒子状物質の環境基準を達成した自排局は269局中96局(35.7%)で、その割合は、平成9年度の34.0%(250局中85局)と比較するとわずかに上昇しているが、依然として厳しい状況で推移している。 |
1. | 自動車NOx法 |
自動車交通の集中する大都市地域を中心に、従来の対策だけでは環境基準の達成が困難な地域において自動車から排出されるNOxの総量を削減するために、NOx法が公布(平成4年6月)・施行(平成5年12月)され、以下のような措置が講じられている。 | |
総量削減計画 | |
国が作成した基本方針に従い、特定地域を有する都道府県知事が具体的な総量削減計画を策定し、各種の対策を総合的・計画的に推進することとなっている。平成9年度に中間評価を実施したところ、自動車からのNOx排出量は減少傾向にあるが、現行計画の12年度目標排出量にはなお一層の削減を要する状況にある。 | |
使用車種規制 | |
特定地域内に使用の本拠の位置を有する特定自動車に対する排出基準を適用し、基準を満たさない車は特定地域内に登録することができない。また、使用過程車にも猶予期間を経過した後、適用される。 | |
事業者による自主対策 | |
事業所管大臣は、排出抑制を図るための指針を定め、この指針により事業活動に係る自動車の使用に関する指導・助言を行っている。運送事業者においては、自主的な環境改善の為の計画を策定し、運輸大臣に取り組みの実績を報告している。 |
2. | 低公害車開発普及 |
先駆的低公害車実用評価事業により、圧縮天然ガス(CNG)自動車、ハイブリッド自動車等の実用化段階にある低公害車の導入を図ろうとする使用者に対し、その購入に要する経費の一部を補助するとともに、実用に供されて間もない時期の状況をモニターするなどして、技術的な情報を把握することにより、その特性に合わせた検査基準等の策定を図り、低公害車の普及・促進を図っている。 また、次世代低公害車技術評価事業として、液化天然ガス(LNG)自動車、ジメチルエーテル自動車、燃料電池自動車等の現在開発段階にある低公害車について、技術指針を策定するとともに、試作車の技術評価を行うことによって、次世代低公害車に対応した新たな審査・検査基準の整備を図るための事業を行い、低公害車の開発等を促進している。 さらに、自動車の排出ガス低減性能に対する一般消費者の関心と理解を深め、一般消費者の選択を通じ、排出ガス低減性能の高い自動車の普及を促進するための低排出ガス車認定制度を創設し、平成12年4月1日より実施している。 |
3. | 排出ガス規制強化 |
道路運送車両法によって、自動車が一定の条件で走行した場合に排出ガス基準を下回る車の走行は認められていない。排出ガス基準は逐次強化され、今後とも強化される方向である。 さらに、大型特殊自動車の排出ガス規制については、中央環境審議会答申において平成16年より実施することとされているが、現在その前倒し実施等について同審議会において審議されているところである。 |
乗用車 | トラック・バス(ディーゼル) | ||||
ガソリン | ディーゼル | 軽量車(副室式) | 中量車(直噴式) | 重量車(直噴式) | |
低減率 | 2.5% | 16% | 16% | 14% | 26% |
(年次) | H12 | H9 | H9 | H9,H10 | H9,H10,H11 |
4. | サーベイランス |
使用過程において排出ガス性能が維持されていることを監視する措置としての抜取試験(サーベイランス)等の導入について検討を行っている。 |
5. | 低公害車普及のための税制優遇措置 |
電気自動車、天然ガス自動車、メタノール自動車及びハイブリッド自動車等のいわゆる低公害車等の普及促進のための税制優遇措置については、従来より、国税・地方税の軽減措置が受けられることとなっている。 さらに、NOx法の特定地域内で、非適合車を廃車して最新排ガス適合車を購入した場合には、自動車取得税の軽減措置が受けられるようになっており、低公害車等の普及を促進している。 |
○ | 排出ガス規制の強化 |
自動車単体の排出ガス性能を向上させる必要がある。このため、引き続き、適宜排出ガス基準を強化する必要がある。 また、都市圏において大きなNOx排出源となっているものの、現在未規制の特殊自動車(建設機械等)の排出ガス規制を導入する必要がある。 | |
○ | ディーゼル車の排出ガス性能向上 |
ディーゼル車の粒子状物質対策としてはフィルター等ディーゼル微粒子除去装置の採用が考えられるが、現時点におけるディーゼル微粒子除去装置については、車種等によっては有効性が期待できる可能性もある一方で、耐久性等の技術的課題等も残されていることから、これらの問題点の解決の見通し等について検討が求められている。 さらに、今後の有効なPM低減技術である連続再成型ディーゼル微粒子除去装置を採用するに当たっては、軽油に含まれる硫黄分を低減することが必要であり、また燃料品質の改善により、粒子状物質の生成自体も抑制する効果も期待されることから低硫黄軽油の普及方策を検討する必要がある。 |
○ | 環境自動車※の開発・普及 |
自動車に起因する大気汚染問題への対策として、ガソリン自動車やディーゼル自動車の排出ガス及び燃費性能の改善に加えて、自動車の使用形態・使用燃料等の特徴を踏まえ、ディーゼル自動車からNOx・PM排出量の少ない環境自動車に代替する等の21世紀初頭における環境自動車の開発・普及を図る必要がある。 環境自動車の開発・普及の方向性については、別添のとおり。 | |
※環境自動車とは、自動車から排出される大気汚染物質や地球温暖化物質による環境への負荷が少ない自動車をいう。 | |
○ | 低公害車導入に対する補助 |
低公害車の購入費用・維持費用は依然として高いことから、低公害車購入や保有に対する補助の必要がある。このため、低公害車を保有する運送事業者に対する税制優遇措置とともに、低公害車を安価にリースできるような方策を検討する必要がある。 |
○ | 運送事業者の取り組みの強化 |
運送事業者の車の走行距離は多いため、事業用自動車に対する対策を強化する必要がある。 このため、低公害車導入等事業者が取り組むべき目標を策定し、目標を達成した事業者を評価する制度を検討する必要がある。 また、技術開発による価格低下、燃料スタンドの普及、導入に当たっての支援措置の拡充等所要の環境を整えることと併せて、低公害車を一定比率導入することについて検討する必要がある。 さらに、事業用自動車の運転方法の改善、環境対策責任者の選任等を義務づけていく必要がある。これに伴い、事業用自動車の運転方法等の環境上の取り組みを確認する方策を検討する必要がある。 |
○ | 環境負荷の少ない交通システムへの誘導 |
都市部における公共交通機関の利用促進、モーダルシフトや共同輸配送及び物流拠点の整備等による物流の効率化の推進、高度道路交通システム(ITS)の活用等により、交通全体の利便性を損なうことなく効率的な輸送の実現を推進する必要がある。 |
○ | 使用車種規制 |
製作年が古い車は新しい車に比べ、排出ガス性能は相対的に悪く、環境へ悪影響をもたらすと考えられるが、自動車の使用年数は限られており自然と廃車され、環境に悪い車は徐々に削減されていく。このため、使用車種規制の効果を慎重に見極めた上で、新たな使用車種規制を検討する必要がある。 | |
○ | 点検整備の促進 |
自動車の点検整備の着実な実施を促進するとともに、違法な改造車の排除対策を強化する必要がある。 |
○ | エコドライブ・アイドリングストップの推進 |
乗用車は、NOx排出量全体の16%を占めることから、一般自動車ユーザーによるアイドリングストップ等エコドライブの実施を義務づけることについても検討する必要がある。 |
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