国土交通省
6.航空機の騒音対策
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1.問題の所在とこれまでの取り組み

 (1)環境基準
 航空輸送需要の増大に対応したジェット機の運航回数の増加は、利便性の向上をもたらす反面、空港周辺地域に深刻な航空機騒音問題を引き起こしてきた。
 これに対し、国は昭和48年に航空機騒音に係る環境基準を制定するとともに、環境基準の達成を目指して、以下のような空港環境対策を行ってきた。

表 航空機騒音に係る環境基準
地域の類型基準値(単位:WECPNL)
I専ら住居の用に供される地域70以下
II上記以外の地域であって通常の生活を保全する必要がある地域75以下

1.発生源対策
 発生源対策として、航空機の低騒音化施策を以下のように段階的に進めてきた。
 昭和50年、一定水準以上の騒音を発する航空機の運航を認めない騒音基準適合証明制度を発足させた。
 また、昭和53年には、国際民間航空機関(ICAO)基準の改正に伴う基準の一部強化を行った。
 平成7年には、昭和53年の基準(新基準)に適合しない航空機の段階的な運航制限を開始し、平成9年に規制対象をプロペラ機及びヘリコプターにも拡大した。
 これらの取り組みにより、新基準適合機の割合は平成10年において90.4%まで向上している。
 また、大阪国際空港、福岡空港等においては発着時間規制を行っている。
2.空港構造の改良
 「「航空機騒音に係る環境基準」制定後の新設飛行場(帯広、女満別、秋田、福島、関西国際、岡山、広島、高松)については、騒音対策を考慮した立地となっていることもあり、環境基準が達成されている。
 また、既存空港について滑走路の移転が可能なものについては、これによって騒音対策を行っている(例:東京国際空港の沖合展開事業)。
 これらの取り組みにより、東京国際空港においては、平成9年7月から24時間化が実現したほか、大阪国際空港においては、平成12年4月から航空機騒音防止法に基づく騒音対策区域の縮小(約40%の縮小)を行うこととしている。
3.空港周辺対策
 これらの発生源対策を行ってもなお騒音影響が残る空港に対しては、昭和42年に制定された航空機騒音防止法に基づく空港周辺対策を積極的に講じており、教育施設防音工事(1,374施設)、住宅防音工事(153,764世帯)、移転補償(6,217世帯)、緩衝緑地整備(78 ha)、再開発整備事業(15 ha)等総額約1兆円(平成10年度までの累積)の国費を投入してきた結果、昭和60年度中に住宅防音工事が概ね完了し、屋内及び屋外それぞれにおいて大幅な環境改善が図られた。
 上記のように騒音問題に対して積極的に取り組んだ結果、平成10年度において運輸省が設置する特定飛行場のうち8の飛行場については環境基準が達成されているが、以下の6飛行場においては環境基準が依然達成されていない状況にある。

飛行場名測定地点数達成地点数WECPNL
新潟空港141163〜79
名古屋空港1269〜86
大阪国際空港1666〜85
福岡空港251962〜81
宮崎空港66〜75
那覇空港59〜74
資料:平成10年度環境庁大気保全局「各都道府県における航空機騒音の測定状況等について」より抜粋

2.2010年における環境制約要因となるか否か

 2010年に向けて、さらに航空需要が増大することが想定されている。
 その航空需要の伸びを前提とし、低騒音機材の導入等を考慮すれば、現行の騒音対策区域の拡大に到る騒音影響の増大はないものと予測される。
 しかしながら、屋外環境基準の達成については、引き続き達成されない地域が残ることが予測される。

表 運輸省の設置する特定飛行場※1における将来の騒音動向について
空港名2010年における75(WECPNL)を超える騒音影響の範囲に関する見通し
見通し※2備考
函館空港 
仙台空港 
東京国際空港沖合展開事業の概成
新潟空港 
名古屋空港2005年中部国際空港開港
大阪国際空港 
松山空港 
高知空港 
福岡空港 
熊本空港 
大分空港 
宮崎空港 
鹿児島空港 
那覇空港 
※1「公共用飛行場周辺における航空機騒音による障害の防止等に関する法律」による特定飛行場
※2凡例
◎:対策区域縮小の可能性
○:概ね現行の対策区域に納まる(環境基準が達成されない地点は残らない)
△:概ね現行の対策区域に納まる(環境基準が達成されない地点はなお残る)
▲:対策区域拡大のおそれ

3.今後の施策の方向性

 環境基準が達成されていない空港については、騒音影響の軽減を図るために、平成14年4月以降旧基準機の運航を禁止する等により、高騒音機の早期退役、低騒音機材の導入等の発生源対策を積極的に進めるとともに、なお騒音影響が残る空港においては、引き続き住宅防音工事等の空港周辺対策を実施する。
 また、かつてとりわけ航空機騒音問題が深刻であった市街地空港においても、空港周辺対策の進捗等により都市施設としての空港の重要性が見直される等、空港環境対策の重点が空港と周辺地域との調和ある発展に移行してきている。このような観点から、従来からの緩衝緑地整備に加え、移転補償跡地等を活用し都市計画手法を用いたパークゴルフ場、市民農園等の開放型緑地の整備や物販施設、集客施設等の再開発整備事業を関係地方公共団体と協力しながら積極的に推進する必要がある。
 航空機の単体対策については、なお、技術進歩に応じより一層の騒音低減が可能となっていくことを踏まえ、ICAOにおいて逐次基準の見直しが行われていることから、我が国もその検討に積極的に参加する必要がある。
 なお、滑走路の移転等により大幅に騒音影響が軽減され航空機騒音に係る環境基準を満たす空港においては、航空機騒音防止法に基づく特定飛行場の解除を含めた騒音対策区域の見直しを検討する必要がある。

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