国土交通No.133
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社会資本の効果とは—まず基本的なことですが、改めてストック効果とは何か、教えてください。毎年実施される公共投資が積み上がったものが「社会資本」です。公共投資と社会資本の関係は、お風呂に入れる水とお風呂にたまった水との関係に例えると理解しやすいかもしれません。水道からお風呂に流れていくもの(フロー)が公共投資で、風呂桶にたまったもの(ストック)が社会資本です。このような公共投資が社会資本として積み上がることで中長期的に生産活動の効率性を向上させたり、私たちの暮らしの利便性を向上させたりする効果が「ストック効果」です。その一方で、公共投資そのものによる効果を「フロー効果」と呼ぶ場合があります。これはどちらかというと短期的・即時的な効果で、例えば公共事業による雇用創出などがそれに当たります。少し前に、フロー効果という言葉が話題になった時期もあるので、こちらは聞いたことがあるという人もいるかもしれません。しかし、社会資本を整備する目的から考えれば、むしろストック効果が第一であり、フロー効果は副次的な効果なのです。より効果的になった日本の社会資本整備—道路や鉄道は便利になったと、最近よく感じます。道路や空港、上下水道、河川の改修や通信網の整備など、近年はさまざまな社会資本の恩恵を実感しやすくなったと言われていますが、実際はどうなのでしょうか。今なぜその効果がより実感されるようになったのか。はっきり言ってしまえば、80~90年代の公共投資はあまり費用対効果を考えて行われていなかったのではないかと考えています。当時の日本の公共投資水準は先進国の中でも突出していまして、国内総生産(GDP)に対する割合で見ると、他の先進国に比べて倍以上の水準で公共投資が行われていました。しかし2000年代になるとかなり絞られて、現在では他の国と同じくらいの水準にまで減っています。金額で言うと、ピーク時には35兆円くらいでしたが、今は約15兆円と半分以下になっています。つまり、とにかくたくさん整備しようという時代を終え、必要性が高いところに優先して投資が行われるよう東京大学大学院経済学研究科林 正義 教授 ストックとフローの効果ストック効果はよくお風呂の水に例えられる。注がれる水の投資によって蓄積した水がストック、そのたまった水から生じるさまざまな便益がストック効果だ。投資によって生じる雇用増加などの効果はフロー効果と呼ばれる。ストック効果をこれからの日本社会でどう活用していくべきか社会資本が持つ多様なストック効果を私たちはどう活用すれば良いのでしょうか。今までの、そして今後の社会資本の活用について、東京大学大学院経済学研究科の林正義教授に伺いました。江戸川春日部市投資減耗フローストック

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