国土交通No.133
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13明治以来の歴史を誇る国際子ども図書館国の建築物の整備は、一部の特殊な施設などを除いて、建築の専門家集団である国土交通省の営繕部が一元的に実施しており、各施設に入居する各省庁の要望を反映しながら、施設の建設工事や改修工事を行っています。「国際子ども図書館」の工事についても、関東地方整備局営繕部が設計、建設を担当しています。上野公園の緑豊かな地域にある国際子ども図書館は、威風堂々とした外観の西洋建築です。今から100年以上前の明治39年に帝国図書館として開館しました。国家の近代化を図っていた明治政府は、帝国図書館を東洋一の図書館とすることを目指し、真水英夫(文部技師)を当時世界最先端だった米国・シカゴのニューベリー図書館に派遣し視察させました。帰国後に描かれた構想は、ルネッサンス様式の建物を「ロの字型」に配置し、中央には中庭を持つという壮大なものでした。最初に完成したのは側面の建物。現在の国際子ども図書館本館(レンガ棟)です。しかし、日露戦争が勃発し建設は中断。その後、昭和4年に一部増築したものの、第二次世界大戦に突入していくなかで、さらなる増築がされることはありませんでした。戦後は、国立国会図書館の支部上野図書館としての役割を果たしてきましたが、次第に、国内における児童書の研究や子どもの国語力強化支援の必要性が認識されるようになり、日本で初めての児童書専門の国立図書館として、この支部上野図書館を改築することが決定されました。平成12年「国立国会図書館 国際子ども図書館」として開館以来、児童書の永久保存、閲覧サービス、研究・研修機関としての役割を果たしています。関東地方整備局営繕部は、国際子ども図書館開館に伴う増築工事を手がけました。設計は世界的な建築家である安藤忠雄氏と日建設計の設計共同体でした。この改修工事により、歴史ある建物を保存・活用しながら、子どもたちが利用しやすい図書館としての新しい機能が付加されました。増え続ける図書で書庫は限界にしかし、この「レンガ棟」で所蔵できる本は約40万冊であり、平成24年には限界に達することが見込まれていました。国立国会図書館は「納本制度」をとっており、出版社が発行した本を納本し、図書館は永久にこれを保存するという規定に基づいて運営されています。つまり、本は増え続ける一方なのです。新たな建物の必要性から計画されたのが「アーチ棟」です。敷地内にあった職員宿舎を取り壊し、そこにレンガ棟と中庭を囲むように、地上3階地下2階の新館が建てられることになったのです。設計はレンガ棟の増築と同じく、安藤忠雄氏と日建設計の設計共同体。安藤氏の建築的な特徴の一つであるコンクリート打放しの壁と中庭に面したガラスのカーテンウォールで構成する力強い空間の建築が提案、採用されました。書庫の収蔵能力は約65万冊です。1 国際子ども図書館の外観。2 1階「世界を知るへや」は旧帝国図書館時代の貴賓室(きひんしつ)を改築した。天井の漆喰装飾(しっくいそうしょく)や床板の寄木細工(よせぎざいく)など当時の内装を可能な限り修復・保存している。3 3階「本のミュージアム」前のラウンジ。旧帝国図書館時代に西向きの外壁だった場所は、ガラスに囲われる形で通路になった。当時の細やかな造形を目の前で楽しむことができる。4 明治39年に帝国図書館が竣工した直後の3階普通閲覧室(現在の「本のミュージアム」)。多くの人が利用し、にぎわっていた。1234

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