国土交通No.133
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14現場力業務密着ルポシリーズFILE34「図面通りに」では終わらない施工現場での可能性の追究公共工事に限らず建築では、まず基本となる平面計画や使用する材料や寸法などを設計します。実際の工事では設計図に基づき、より具体的な工事方法などを記した施工図を作成します。さらに、工事の途中でも施設の管理・使用者からの詳細な要望があれば、変更を検討し、最善の方法を探さなければなりません。アーチ棟の建築でも確認作業の連続でした。雨水が土に染み込みます。その水が壁に染み込まないように、コンクリート壁の外側から防水材が入ったシートを貼り、内側からも止水加工を施しました。さらに、このコンクリート壁の室内側に空間を設けながら、もう一つ壁を設ける二重壁の構造にしたのです。壁と壁の間には万が一水が染出したときのために排水口を設け、発生した水を床下のピットに流す構造としました。とりわけ要望が厳しかったのが書庫の機能でした。アーチ棟では建築基準法の高さの制限から地上は3階までしか建てられなかったため、地下2階分が書庫に充てられています。一方、本の保存において、水は大敵です。簡単に言えば「一滴たりとも、書庫には水を入れないでください」という要望が国立国会図書館側から示されたのです。営繕部では、これまでの建築の知見を生かしながら、設計を担当する日建設計と具体的な構法を検討しました。地下階は土中にあるため、雨が降れば現場で主となる建築工事の主任監督で責任者として各方面の責任者との調整を図ってきたのが、保全指導・監督官の小林克己です。「国立国会図書館には図書館が果たすべき﹃保存﹄﹃閲覧﹄﹃研究﹄という3分野について、それぞれ高度なプロフェッショナルがいます。専門的な知識に基づいた要望を理解し応えるために、設計や施工の事業者との調整には苦労しました。発生する課題に知恵を出し合いながらリアルタイムに解決する。その繰り返しです」新たに増築したアーチ棟は、国際子ども図書館の北側に位置し、レンガ棟と調和したデザインになっている。互いは2階の連絡通路でつながり、スムーズに移動できる。※イラストは設計段階で描かれたものです地下の書庫は、漏水と湿度の管理において一般の建築物よりもはるかに厳しい水準が求められた。二重の壁(左)は土中の水分が室内に染み込むのを防止する。また、室内の壁には各所に換気口があり、結露などで室内に水滴が生じるのを防止している。アーチ棟には、充分な書庫の空間が求められるが、建物の高さ制限があったため、地下に広い空間をとった。アーチ棟の地下1・2階だけで約65万冊の書物を保管できる。      調べものの部屋児童書ギャラリー児童書研究資料室連絡通路事務室書庫子どものへや・世界を知るへや・おはなしのへや休憩・飲食・授乳スペース研究室書庫ホール本のミュージアム書庫3階1階1階地下2階2階3階アーチ棟レンガ棟書庫書庫書庫書庫書庫アーチ棟レンガ棟

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