国土交通No.133
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15のコミュニケーションが最も重要だったと思います」工事現場だけでなく周囲への配慮も重要国際子ども図書館の増築工事において、もう一つの大きな課題は限られた敷地内での工事に必要な資材置き場や工事事務所の確保でした。レンガ棟とアーチ棟の間には、平成14年の全面開館時に完成した中庭があります。今回の工事では、その一部を取り壊し、資材置き場を設けました。また、工事事務所はレンガ棟正面の車寄せとして使われていたスペースに3階建てのプレハブを建て、必要な事務スペースを確保しました。工事現場の敷地には、東京藝術大学や国立教育政策研究所といった教育関連機関が隣接しています。周辺機関との調整を担当したのは建築工事監督の岩井葵です。「隣接する教育関連施設では、年間を通じて授業や研修、演奏会をはじめとしたイベントなどが行われており、静かな環境であることが求められます。一方で、工事を進めるうえでは、どうしても大きな音、振動、埃、臭いが発生する場面があります。隣接施設のスケジュールに支障が生じない時期、時間に工事を行うよう調整を図りました。また、工事が最盛期を迎えた際に、狭い敷地の中では資材の搬出入がままならない期間があり、その間、隣接の東京藝術大学の敷地をお借りしてクレーン作業をすることもありました。隣接する機関のご理解とご協力なしに、この工事は進められなかったと言っても過言ではありません」丁寧な対話を繰り返すことが仕事の質も個人の技量も向上させる平成24年2月に始まったアーチ棟の建設は、今年の6月に完了しました。41カ月に及ぶ工事期間に、延べ4万6000人もの人々が携わりました。明治期の日本政府が東洋一の図書館を目指し建設したレンガ棟。当初の計画を踏まえて設けられた中庭。そして、現代の建築の粋を集めて建てられたアーチ棟。国民の共有財産である書物を未来へとつなぐプロジェクトは、100年以上の時を経て、完成を迎えようとしています。「レンガ棟は東京都の歴史的建造物にも指定される文化的価値の高い建物です。その新館であるアーチ棟を建てる仕事に携われたのは光栄なことです」(小林)「営繕部が手がける工事案件は、どれ一つとして同じものはありません。だからこそ、施設の管理・使用者との密接なコミュニケーションが必要です。各省庁には、それぞれの使命があります。コミュニケーションを通じて、その意図を理解し、建築物に反映する。今回のアーチ棟建設でも厳しいリクエストが多くとても大変でしたが、それだけ困難な内容を乗り越えてこそ、私自身も少し成長できたのではと思っています」(齋藤)関東地方整備局営繕部は今日も使用者、現場で働く事業者、敷地周辺の方々との密接なコミュニケーションを図りながら、よりよい公共施設を実現するため奮闘しています。漏水だけではなく、湿度にも厳しい基準が示されました。室内に換気装置が設置されたのはもちろんのこと、二重壁の中に室内からの空気を循環させ、壁と壁の間の湿度も抑える工夫が凝らされました。建築設計の担当であり、要望の調整にあたってきた保全指導・監督官の齋藤公治はこう語ります。「図書館の専門家の方々は、本を永久保存するという使命を負っています。また、これまでの経験から起こりうるさまざまな事態への予測もしています。厳しい要望に対して、提案を行い、納得していただけるまで議論する。そ関東地方整備局 営繕部整備課保全指導・監督官齊藤 公治関東地方整備局 営繕部保全指導・監督室保全指導係岩井 葵関東地方整備局 営繕部保全指導・監督室保全指導・監督官小林 克己納品された資材が、発注書と誤差がないか測定、確認する。

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