国土交通No.133
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05が生まれました。従来、新宿(西新宿JCT)から羽田空港(空港中央)までの混雑時の所要時間は平均40分でした。これが中央環状線を利用することで平均19分に短縮されました。渋滞が緩和されたことによって、所要時間のばらつきが大幅に減り、「定時性」も向上しています。例えば、羽田空港への定期路線バスを走らせる東京空港交通株式会社。山手トンネルの開通に伴い、新宿駅西口から羽田空港までのダイヤが混雑時で最大15分短縮したダイヤに変更されました。物流にもメリットが生まれています。例えば、港に荷揚げされる国際標準コンテナには規格のサイズがあり、高さの制限から通行できるルートが限られていました。新たに完成した山手トンネルは国際標準コンテナ車(背高4・1m)が通れる充分な高さがあり、高速道路を使っての輸送が可能になったのです。また、開通後は、「到着時間が短縮され、到着時間の予測もしやすくなりました」(ヤマト運輸株式会社)などの意見が寄せられました。観光事業にも効果中央環状線の開通によって、もう一つ期待されているのが観光の活性化です。例えば、はとバス株式会社からは、「浅草、お台場、明治神宮といった都内の観光地を巡るバスツアーの場合、山手トンネルを利用するルートに変更すれば臨海部に位置するお台場から明治神宮への移動時間が短縮されます。移動時間が短縮されれば、それぞれの観光地での滞在時間が増え、ツアーの満足度向上にもつながると思われます」という意見がありました。また、都心と房総半島を結ぶアクアラインへのアクセスも向上しました。八王子や立川など東京の西側からも、房総半島への観光がしやすくなったのです。「こういった効果は首都高速上のみで発現しているわけではありません」と加藤さん。「これまで都心環状線という高速道路を使っていた方には、中央環状線全線開通によって直接的なメリットが生まれます。一方で、並行する山手通りや環七通りから中央環状線への交通転換が図られた結果として、混雑している時間帯での所要時間が山手通りで約3割、環七通りで約1割短縮され、周辺一般道路の混雑緩和にも寄与しており、これまで一般道路を使っていた方にとっても、間接的なメリットが生まれています」人と物を運ぶ以外の価値も中央環状線の全線開通により、アクセス性や定時性の向上が図られ、物流の効率化や観光の活性化に寄与するなど道路整備によるさまざまなストック効果が現れてきているところですが、さらに、人や物を運ぶ以外の価値を高速道路に付加する取り組みも行われています。今回開通した山手トンネルの大橋ジャンクションは、目黒区に位置しています。在来の高速道路とをつなぐジャンクション建設においては、周辺の再開発とともに工事が進められました。また、大橋ジャンクションの屋上は公園として整備され、周辺住民が憩う公共空間として活用されています。「都心では高速道路を建設できる用地が限られています。大橋ジャンクションも限られた可能性の中で知恵を絞った結果として現在の形になりました。大橋ジャンクションの事例をモデルケースに、今後は人や物を運ぶ以外の価値も高速道路に付加したいと考えています」(加藤さん)高速道路網は、首都圏の人と物の流れを円滑にするために不可欠な存在です。そのストック効果を高めることはこれからもいっそう重要になっていくでしょう。大橋ジャンクションの屋上は緑地化され、目黒区が公園整備を行っている。また、大橋ジャンクションの換気所屋上には、首都高速道路株式会社が広さ100m2の田んぼを整備し、地元小学生の稲作体験が実施されている。※肩書きは取材当時のものです05中央環状線の全線開通によるさまざまな効果● 産業の経済効率向上渋滞が緩和し、輸送や交通事業の経済効率が向上。● 国際的な物流の強化国際標準コンテナ車(背高4.1m)が通過できる経路が拡大。● 観光の収益拡大移動時間が短縮され、観光地に滞在できる時間や立ち寄る観光地が増加。● 環境改善渋滞緩和により、CO2排出量を大きく改善。● 災害時の経路に柔軟性災害時など突発的な通行止発生時に迂回できる経路が増加。首都高速道路株式会社計画・環境部計画調整課長加藤浩樹さんストック効果

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