国土交通No.133
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06世界最大級の地下河川でまちを豊かにするストック効果の好循環防災・減災も大切な社会資本整備の一つです。首都圏外郭放水路は、中川・綾瀬川流域の浸水被害を軽減するための治水施設です。春日部市はその能力をPRしながら企業の誘致、福祉の向上、まちの活性化まで、次々と好循環を生み出しています。水害を大きく減らした首都圏外郭放水路埼玉県の東部に位置する春日部市は、かつて水害に見舞われることが多い地域でした。周辺には江戸川や利根川、荒川が流れており、市域には大おおおとし落古ふるとねがわ利根川や中川をはじめ多数の河川が流れています。石川良三春日部市長は「この流域は海抜が低く、お皿の底のように水がたまりやすい地形です。戦後に水田地帯が宅地開発されたこともあり、台風や大雨が発生すると、広い地域で冠水が生じていました」と語ります。この問題を解決するために整備されたのが、「首都圏外郭放水路」。平成18年に完成したこの放水路は、春日部市を東西に走る国道16号の地下約50 mに建設されました。増水した河川の水を取り込み、地下の放水路を通じて江戸川に排出します。この放水路の完成によって浸水被害は大きく軽減しました。「水害に強いまち」に企業が進出首都圏外郭放水路が完成すると、民間の集合住宅の建設が増加しました。現在、市内にある大規模マンションのほとんどは、放水路の完成後に竣工したものだといいます。整備前と比べると着工件数は約2・8倍に増加。春日部市では東洋一のマンモス団地と呼ばれた武里団地がありますが、近年は核家族化などにより住民が約1万人減少しています。しかし、民間の大型マンションの建設などにより、市の人口減少傾向は改善し、横ばい状態を維持しています。もう一つの大きな効果は、企業の進出です。春日部市では国道4号バイパスと国道16号が交差していて、首都圏と各方面とを結ぶ物流の拠点として非常に適した立地なのですが、水害の発生は企業にとって大きなリスクとなるため、進出を阻んできました。しかし、放水路完成後は、春日部市でも「水害に強いまち」を積極的に広報し、現在までに28件の企業が進出しました。平成25年には大型商業施設も開業し、地域住民の利便性も向上。28社の総従業員数は約3200名に及び、地元での雇用創出、市の財政にも波及効果があります。企業の進出は、現在も続いています。お皿の底のようにくぼんだ地形に春日部市があり、首都圏外郭放水路はその地下を走る。写真は地下を通るトンネルの内部。埼玉県春日部市の石川良三市長。背後は建設中の新・春日部市立病院。江戸川春日部市

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