国土交通省No.135
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11ています。これを一元的に集積し、参照・分析が可能になれば、例えば中古車の販売において、これまで見た目だけでは判断できなかった、オーナー数、点検や整備の履歴などの車両履歴情報を見える化することができ、適切な点検・整備が行われている中古車の下取り価格の上昇が期待できます。これにより、自動車ユーザーによる点検・整備の励行につながる他、中古車取引時の信頼性が向上することによる中古車流通市場の安全・安心の向上、活性化も期待できます。また、集積した車検や整備に関する情報を分析することで「この車種はこの部品の修理が多い」といった傾向から、早期にリコール対象を発見するなど、社会の交通安全・安心の向上にもつながります。次世代自動車に応じた整備環境の促進近年の自動車では、その走行データなどを常時コンピュータが監視しており「車載式故障診断装置(通称O B D:On-board diagnostics)」と呼ばれる装置から故障の有無や原因を特定するための情報を読み取ることができます。しかしながら、先進的な安全装置について、その故障の原因を特定するための情報を読み取るには、各自動車メーカー専用読み取り装置の購入が必要な場合もあり、整備会社の経営負担となっています。全国の整備工場で適切な整備環境を持続するために、各自動車メーカーに共通化したOBD読み取り装置製作の検討が進んでいます。ビッグデータが可能にするさまざまな未来ここまでに紹介したビッグデータの活用は、2020年頃までの実現を2013年出典:次世代自動車振興センター2.7%2006年新車販売台数における次世代自動車の割合 次世代自動車が新車に占める割合は急速な増加傾向にあり、2013年には全体のほぼ3分の1に達した。今後もこの傾向は続き、コンピュータ制御の自動車は標準になると考えられている。34.4%アメリカでトレーサビリティサービスを提供するCARFAX社のウェブサイト。自動車の識別番号であるVINを入力すると、その自動車の過去のオーナー人数や、いつどこの整備工場で何を修理したのかなど、さまざまな情報を確認できる。出典:CARFAXウェブサイト http://www.carfax.com/目標に、自動車局の重点テーマとして取り組みが進んでいるものでした。しかし、ビッグデータの活用が持つ潜在的な可能性という点では、さらに多種多様な利活用を考えることができます。例えば膨大な数の自動車の急ブレーキの記録を集積して地図にプロットしていけば、大きな事故が起きる前に道路の危険箇所を見つけて改善することができるかもしれません。また、自動運転の技術が発展すれば、各自動車の位置や目的地情報などは共有化が進むでしょうから、それらを踏まえた目的地までの最適ルートの設定などが可能となるかもしれません。その他にも、自動車のワイパー稼働記録からゲリラ豪雨の軌跡を明らかにし、気象研究に寄与するといったアイデアもあります。ビッグデータの持つ可能性は非常に多方面に広げることができるため、関連当局も自動車局だけではなく、今後、多岐にわたる関係者と高度な連携と準備が必要となる場合があります。ビッグデータを活用した、いっそう安全・安心で快適な社会の実現には、国民の皆さまの関心がさらに高まっていくことも重要だと言えるでしょう。取材協力自動車局 自動車情報課 専門官 大橋明史ソニー損保オリジナルのドライブカウンタ写真提供:ソニー損害保険(株)運転の仕方に応じて保険料が変わる自動車保険でやさしい運転を奨励する仕組み 写真は、ソニー損害保険(株)が開始した保険サービスの加速度センサー内蔵のデバイス(ドライブカウンタ)とその設置の様子。急発進と急ブレーキの少ない運転ほど高得点が与えられ保険料の一部が戻る。現段階では、車両内部の情報や通信による外部連携は活用していない。将来はそうした情報も活用し、保険以外でも安全運転のメリットを高めたり、安全運転を補助したりできる新しいサービスの登場が期待されている。点数キャッシュバック率90点以上20%80~89点15%70~79点10%60~69点5%59点以下(キャッシュバック無し)特集自動運転とビッグデータの活用

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