国土交通省No.135
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緊急時に用いるボートを確認する2人。つり下げフックが正常か、艇体や備品の食料や水、救命信号などに問題がないか確認。この検査ではフックの接続に軽微な問題があったため、それを指摘して是正した。学)で学び、船舶分野の技官として入省しました」という関口は、平成17年に入省。検査事務を1年経験した後、日本船を検査する船舶検査官を2年間務めました。技官は、この船舶検査官の経験が外国船舶監督官となるために必要になります。その後、産休・育休を経て船舶検査官として復帰、また2年の経験を積み、昨年の4月からPSCを行う技官として働いています。このように、PSCを実施する事務官は運航労務監理官、技官は船舶検査官といったように、それぞれ対応する国内の仕事で経験を積み上げた者が外国船舶監督官を任されるため、コツコツと勉強することをいとわず、言葉も文化も違う外国の船員たちとコミュニケーションを取る努力が不可欠な職務だと言えます。海洋安全の一翼を担う実感外国船舶監督官の仕事について、渋谷は「抜き打ちの立入検査は必ずしも歓迎されることではありません」と前置きし「私はなるべく船員の母国語で挨拶をするようにしています。今日はフィリピン人だったのでタガログ語ですね。そうすることで、少しでもコミュニケーションを良くしたいと思うからです」と自身の工夫を語りました。関口は「時々船員たちも船内の欠陥に気付いていながら、会社に対して意見できずにいたというケースもありま関東運輸局海上安全環境部外国船舶監督官関口 理絵平成17年入省関東運輸局千葉運輸支局外国船舶監督官渋しぶたに谷 和也平成6年旧運輸省入省す。PSCでの指摘は改善につながるので、私たちの検査が感謝されることもあり、そんなときはうれしいですね」とやりがいを語り、笑顔を見せました。責任の重さは、そのままやりがいの大きさにも通じています。「自分たちが検査した船が無事に出港していくと、海難事故の防止にほんの少しでも役に立てたかな、と思います」(渋谷)「私たちが気付くことで、人命を救ったり環境を守ったりできたのかもしれないと考えると、やはり大事な仕事だと感じます」(関口)時代の変化とともに複雑化し続けている外国船舶監督官の仕事。研修や情報交換、自己研さんによって常にPSCの健全な実施を目指し努力し続ける現場には、重要な職務にまい進する職員たちの活気があふれています。東京MOUとは 1970年代以降、外国船の安全性を確認するためにPSCの実施体制が確立されたが、そこには「港によってPSCの実施方法に差があると効果が薄れる」「寄港の度に検査を受けては船側の運航に支障をきたす」などの課題があった。そこで一定地域で国際的な協力を行い、互いの検査水準を維持しつつ、協力国が認めた船は一定期間再検査しないなどの約束事を定めたのがMOU(了解覚書:Memorandum Of Understanding)。 1982年に採択された欧州地域のパリMOUを参考に、アジア太平洋地域では1993年に東京MOUが成立。太平洋のPSCの国際協力は日本が指導的立場で運営している。

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