国土交通省No.135
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04「自動運転」の可能性と未来交通安全の向上に向け、今、自動運転技術に世界的な注目が集まっています。最近よく耳にする「自動運転」とは…その可能性と未来についてのぞいてみましょう。自動車局技術政策課専門官谷口正信※BRTについてはp.12も参照すが、実際に体験してもらうことで、自動運転の発展を社会がどう受け入れるのかを問う機会にもなると考えています。自動運転技術の向上で死亡事故減少に期待この数年、自動車に搭載された最新技術の大きな飛躍は、皆さんが実感されている通りです。自動ブレーキアシストをはじめ、速度や車間距離を一定に維持するA C C(Adaptive Cruise Control)など、ドライバーの運転をサポートする高度な機能を搭載する自動車がとても増えてきています。こうした技術はいずれも交通事故やそれによる被害を減少させるために発展してきました。平成26年度の交通事故による死亡者数は4113人。これまでもさまざまな取り組みによって交通事故を減らす努力は続けられ、過去最悪だった昭和45年と比較すれば4分の1程度に減りました。しかし、いまだ毎年およそ4千人もの命が失われる現状も決して満足できるものではありません。平成25年度の調査では、死亡事故の原因の9割以上がドライバーのミスだと分かっています。そこで人間よりも素早く正確に操作できる自動運転の発展は、交通事故をさらに減少させるものとして、その効果が大変期待されているのです。また自動運転が普及すれば、手足の不自由な方や高齢者がより運転しやすくなる可能性や道路渋滞緩和なども期待されています。2020年を足がかりに自動運転の実現へ国内における次世代自動車への取り組みとして、内閣府を中心に自動車に関係する省庁が連携したSIP(戦略的イノベーション創造プログラム)において、2010年代後半から自動運転の実現と普及を段階的に進めることとしており、国土交通省もこれに参画しています。現在、各自動車メーカーでは、さまざまなシステムを複合化し、高度な運転支援型の自動運転の技術開発を進めています。人間のミスを減らすという観点で突き詰めれば、人は目的地を設定するだけで、自動車が安全に目的地まで連れて行ってくれる「完全自動運転」が考えられますが、それに至るには、環境整備や制度の改革、責任の所在の整理など、いくつもの壁を乗り越えなければならず、一民間企業だけで実現できることではありません。そこで我々は、各自動車メーカーの基礎研究から実用化・事業化までを見据えた研究開発を推進し、次世代自動車の実現を目指すと同時に必要に応じて基準の見直しなどにも取り組んでいかなければならないと考えています。こうした取り組みの成果を、公共の場で披露する機会として、最初の目標に掲げているのが2020年の東京オリンピック・パラリンピックです。すでに世界的に導入されているB R T(バス高速輸送システム:Bus Rapid Transit)※に自動運転システムを搭載したA R T(Advanced Rapid Transit)を東京都が導入する予定です。A R Tは東京オリンピック・パラリンピックの会場周辺で運行され、海外からの観光客を含めた多くの方が、安全で快適に移動できる次世代自動車を体験・認知する機会になるでしょう。現在、機械に運転を預けることに対して抵抗感を持つ方も少なからずいると思いま高度な運転支援システム技術と運用の高度化100%0%運転の自動化完全自動運転(無人運転)緊急時のみ人間が操作一定条件の走行を機械が代行操作の一部を機械が補助自動運転の段階的な変化自動運転と聞くと、多くの人が無人でも走る自動車を想像するが、実際はさまざまな中間段階が存在する。自動ブレーキアシストなどのように、人間の操作とは別に機械が判断して操作する「運転支援システム」が組み合わさり高度化すると徐々に人間の操作が不可欠では無くなり「完全自動運転」に近づいていく。

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