国土交通省No.135
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09なぐ空間情報の開発が進むと、今度は自動車がセンサーの一部となり、走行しながら情報を取得して変化を更新できるようになるでしょう。こうした情報を整備する一方、それを活用する技術は、すでに各自動車メーカーで研究が進んでいます。トヨタでも今年の10月6日に国土交通省の協力を得て、首都高速道路で自動運転での進入路からの合流、レーンチェンジ、追い越し、ジャンクションの分岐合流のテスト走行を行いました。2020年のオリンピック・パラリンピックイヤーには、その一部が実用化されるシステムの開発を現在進めています。安全のための国際ルールの確立二つ目の協調的な取り組みはHSIの開発です。聞き慣れない言葉だと思いますが、例えば「自動運転と手動運転が切り替わるときの警告方法やタイミング」の規格や枠組みの各メーカー間の統一が必要です。また、緊急時にドライバーの操作と機械の判断が違った場合、どういった考え方で制御するのかといったことも非常に重要です。HSIは現在、国連の自動車基準調和世界フォーラム(WP29)を中心に議論されています。自動車に関する国際標準化に向けた議論の場は、ヨーロッパ主導のISO(国際標準化機構)とアメリカのSAEインターナショナルが強い影響力を持っています。しかし、今回の自動運転の国際安全標準化においては、WP29が主導権を握っており、このWP29の会議は日本とドイツが共同議長国です。日本の自動車メーカーとしてはとても心強い思いでいます。日本は、俗に"ガラパゴス化"と表現されるように、国際標準化が苦手だと世界から言われ続けてきました。今後は国際安全標準化の議論を優位に行うためにも、HSIの技術的な裏付けやデータ提出などによって、国土交通省への支援を続けたいと思います。三つ目のサイバーセキュリティは、自動車が高度化したことで生じる課題への対処です。通信機能を持つナビを搭載する以前の自動車は、外部の情報とはつながっていなかったため、サイバーセキュリティには無頓着でした。しかし、今後の自動車は外部のあらゆる情報に接続し、連携するようになります。そこで、外部からプログラムを改ざんされたり、テロに利用されたりすることが無いよう、各社が協調してセキュリティレベルを強化し統一することが必要です。これもWP29の議題の一つです。官民一体で国際競争へ近年は、情報分野を強みとするグーグルやアップルといったIT企業が自動運転車の新興勢力に名乗りを上げています。今のところ、彼らの研究は私たちとは方向性が異なるように感じます。私たち自動車メーカーが、既存の自動車と同じ混在交通の条件下でも安全に安心して走れる自動運転の開発を進めているのに対して、彼らは無人運転の自動車をまずは形にするという姿勢のようです。このため現在は特定の環境下での運用を想定した技術であるように思えます。しかし、私たちも現状に甘んじることはできません。新しい技術開発のアクションを積極的に行い、日本の強みであるクオリティの高い自動運転の開発を続けなければなりません。それには、他社との協力も、国土交通省からの協力も欠かせません。国内の自動車メーカーは互いに切磋琢磨しながら、よりいっそうの技術開発を続ける一方、官民一体での協調も行い、人にも環境にも安全・安心な自動運転の実現に向け研究開発を今後も進めてまいります。「車内外」のさまざまな情報と、フロントガラス全体を透過モニターに活用する既存の技術が合わされば、例えば道路の名称や、街路樹に隠れた標識、センサーで検知した歩行者などが視界に自然と表示されることも可能になる。またリアルタイムで変化する動的情報が加わると、道の混雑状況、駐車場の空き状況といった情報も確認しながら運転できるようになる。レクサスのセダン「GS」を改造した自動運転試験車。ドライバーの操作無しに高速道路を自動運転できる自動車は、2020年の実用化を目途に研究が進められている。P8-P9 写真提供:トヨタ自動車(株)特集自動運転とビッグデータの活用

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