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管制情報処理業務・システムの最適化を実施することにより、平成33年度において年間21億円(試算値)の経費削減を見込む。
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(1)航空管制支援の継続性の向上
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航空管制支援の継続性を向上させるため、新システム技術検討会において策定された基本コンセプトとして、[1]飛行計画情報処理及び追尾処理の高度化、[2]航空の安全性・定時性に直結する基幹機能とそれ以外の機能の分離、[3]システムのバックアップ系機能の拡充等の機能要件が求められた。
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[1]飛行計画情報処理及び追尾処理の高度化
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現行システムの飛行計画情報処理では、飛行計画情報(便名、機種、装備、飛行経路、高度等)を元に運航票をタイムリーに生
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成することを目的に、必要な情報を処理している。これから構築する新システムでは、従来の飛行計画情報に航空機の動態情報や位
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置情報、管制指示・承認及び調整履歴等を追加した飛行関連情報の集合体である「フライトオブジェクト」の考え方を導入することによ
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り、飛行に関与する関係者から得られる当該飛行に関して整合のとれた詳細な情報を蓄積することができ、管制支援情報を生成するこ
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とが可能となる。
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また、多様なレーダーセンサーから航空機位置情報を取り込むとともに、航空機からデータリンクによって伝えられた航空機位置情報
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及び航空機動態情報を活用し、精度の高い位置情報の継続的な提供を可能とする。
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[2]航空の安全性・定時性に直結する基幹機能とそれ以外の機能の分離
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システム障害時においても基幹機能の運用を継続させ、システムの信頼性を向上させるために、航空機位置情報の処理等、極めて
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高いリアルタイム性を要求される処理(追尾処理及び個別管制情報処理)・継続性を要求される処理(飛行計画情報処理)と、それ以
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外の処理(準リアルタイム管制支援処理)に分離する。
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また、個別管制情報処理で一体的に動作していた管制情報入出力(HMI機能)を独立させることにより障害の局所化を図る。
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[3]システムのバックアップ系機能の拡充
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航空管制支援の継続性・安定的運用を確保するために、2拠点におけるマスター・スレーブ同期レプリケーション方式によるデータ
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(フライトオブジェクト)の冗長化を可能とする業務・システム構成を検討する。
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また、各システムのデータ形式を共通化し、そのデータの共有化を行うことにより、複数拠点での相互バックアップ機能を実現する。
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さらにサブシステム単位でのフォールバック機能を充実させ、相互バックアップ機能と組み合わせて使用することで、システムの致命
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的な障害等においても、航空管制支援の継続性を確保することとする。
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なお、管制情報処理システムは航空輸送を支える重要なインフラであるため、大規模災害等によりシステムが壊滅的な被害を受けた
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場合にも航空交通の安全と秩序を維持し、一定量の交通量を確保するため、費用対効果に十分配慮しつつ、地理的冗長性を持たせた
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構成とすることによる危機管理機能の強化を図る。
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(2)システム構成の見直し
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システム全体の信頼性・安定性向上を図り、上記(1)を実現するためには、システム全体を視野に入れて構成を見直す必要があり、飛行情報管理システム(FDMS)、洋上管制データ表示システム(ODP)、航空路レーダー情報処理システム(RDP)、ターミナルレーダー情報処理システム(ARTS)、空港レーダー情報処理システム(TRAD)及び運航情報提供システム(FIHS)として個別に構築しているシステムを「統合管制情報処理システム」として再構築する。
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具体的には、運航データ情報の受配信及び中継業務を実施する運航情報処理と飛行計画情報及びその他飛行に関連した情報をフライトオブジェクトとして管理する飛行計画処理系、レーダー等の各種センサーから航空機位置データを受信し、追尾・情報処理・情報配信する航空路・ターミナル・飛行場・洋上の各個別情報処理系、運用の安全性確保及び航空交通量増大の実現を目的とする管制支援処理系、航空機位置・管制支援・気象等の情報を提供するインターフェースを有する管制運用卓とシステム障害時においても航空管制支援の継続性を確保するためのフォールバックからなる。
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(3)十分な拡張性の確保
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今後の航空交通量増大への対応を実現するためのコンセプトとして、高度な管制支援機能を実現する必要があると整理された。このことから、統合管制情報処理システムの構築にあたっては、最新の情報処理技術を適切に活用するとともに、将来の航空交通量増大に対応するための管制支援機能等の性能向上及び国際的な調和を図るための機能拡張に対応できる柔軟な設計とし、十分な拡張性の確保を図る。
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(4)人材育成及び効率的な人員配置
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管制情報処理システムは、その機能が低下又は利用不可能な状態に陥った場合には、航空機の運航に支障を与え、国民生活や社会経済活動、更に人命に影響を及ぼすおそれがあることから、専門的な知識・経験に基づいた一元的な管理が必要であるとともに、関係機関との綿密な調整を実施する必要がある。
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また、システムの信頼性及び安定性を確保するためには、システムの運転・監視を継続的に実施し、システムの点検・整備を行うことによりシステムの機能を十分発揮するように維持する必要がある。
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このため、システム構成の見直し後においても、引き続き情報システムに関する専門的な知識や技術を持ち、運用者の業務に精通した職員の人材育成を行うとともに、システム設置官署への効率的な配置について平成29年度までに結論を得ることとし、統合管制情報処理システムの運用及び保守の確立を図り、航空交通の安全の確保に一層努める。
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(5)信頼性確保を前提としたトータルコスト削減
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近年、電子計算機の処理能力が飛躍的に向上していることを踏まえ、既存メインフレームのオープンシステム化等によりシステムの処理能力の増強を図る。また、システムの信頼性・安定性の確保を前提としつつ、可能な限り、汎用的な通信技術及び調達容易な汎用機器を用いた構成とする。
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(6)調達の透明性確保
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調達については、「情報システムに係る政府調達制度の見直し」に鑑み、原則として一般競争入札(総合評価落札方式)によることとし、調達の透明性・公平性を図る。
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