沿岸域圏総合管理計画策定のための指針
 
 
平成12年2月23日
「21世紀の国土のグランドデ
ザイン」推進連絡会議決定
 
 
1 前文
 
我が国の沿岸域においては、高潮、津波等の自然災害から国民の生命・財産を守り、産業、生活、文化、交通等の振興・連携を促進する空間整備を図るという課題に加え、最近における地球環境への意識の高まりの中、海岸侵食の進行、干潟、藻場等の著しい減少など自然の持つ循環、復元性、多様性の劣化への対応が今日的課題となっている。このため、質の高い安全な沿岸域の形成、多様な機能をもつ空間としての臨海部・海岸の整備といった視点とともに、自然と調和した土砂管理、水質・底質の改善、干潟、藻場等の浅場の質的・量的な回復等により、美しく健全な沿岸域環境の復元・創造を図る観点から、自然的社会的経済的要請を総合的に調整・管理することが重要である。
新しい全国総合開発計画である「21世紀の国土のグランドデザイン(平成10年3月31日閣議決定)」においては、沿岸域の安全の確保、多面的な利用、良好な環境の形成及び魅力ある自立的な地域の形成を図る観点から、沿岸域圏を自然の系として適切にとらえ、地方公共団体が主体となり、沿岸域圏における各種事業、施策等を総合的かつ計画的に推進するための沿岸域圏の総合的な管理計画を策定・推進することについて定められている。
この指針は、「地域の選択と責任に基づく主体的な地域づくりを重視して、多様な主体の参加と相互の連携によって国土づくりを進める」とした「21世紀の国土のグランドデザイン」の基本的な考え方に立って、沿岸域圏の総合的な管理に主体的に取り組む地方公共団体や様々な民間主体が計画を策定・推進する際の基本的な方向を示すものである。今後、これをガイドラインとして、各地域における創意工夫を生かしつつ沿岸域圏の総合的な管理が推進されることにより、沿岸域において安全で多様な機能をもつ質の高い空間が形成されるとともに、美しく健全な沿岸域環境の復元・創造が図られ、もって「21世紀の国土のグランドデザイン」で提唱された「庭園の島」としての美しい国土の創造と世界に誇り得る魅力ある国土の形成が進むことを期待する。
 
 
2 定義
 
この指針において、次に掲げる用語の定義は、それぞれに定めるところによるものであること。
 
@「沿岸域」とは、海岸線を挟む陸域及び海域の総体をいう。
 
A「沿岸域圏」とは、沿岸域のうち、自然の系として、地形、水、土砂等に関し相互に影響を及ぼす範囲を適切にとらえ、一体的に管理すべき圏域であって、4及び5に従い沿岸域圏総合管理計画に定められた圏域をいう。
 
B「沿岸域圏総合管理計画」とは、沿岸域圏の保全及び利用に係る各種事業、施策等の総合的かつ計画的な推進に関する計画で、4及び5に従い定められたものをいう。
 
 
3 沿岸域の総合的な管理の必要性及びその理念
 
沿岸域の総合的な管理は、沿岸域の特性を踏まえ、次に定める沿岸域の総合的な管理の必要性及び基本理念に基づき行われるものであること。
 
(1)沿岸域の総合的な管理の必要性 
沿岸域は、水圏、地圏及び気圏の交わる空間であり、自然の微妙なバランスの下、優れた景観や多様で豊かな生態系が形成されるなど環境上貴重な資源である一方、産業利用、交通・物流利用、観光・レクレーション利用等さまざまな利用の要請が輻輳し、多様な関係者間の調整を要するなどの特性を有していること。
このような特性を有する沿岸域において、安全で多様な機能をもつ質の高い空間の形成や、美しく健全な沿岸域環境の復元・創造を推進するに当たっては、単一の事業若しくは施策のみによる場合又は単一の地方公共団体のみによる場合には、次に掲げる必要性を十分に踏まえた対応をすることが困難であり、沿岸域における総合的な調整・管理が必要であること。
 
  @ 持続性の確保
沿岸域は、多様な機能(生物の生育・生息、水質浄化、大気浄化、国土保全、景観、やすらぎ等)や多様な資源(水産物、鉱物・エネルギー、水資源、産業空間、リフレッシュ空間、景観、歴史文化等)を有している。この恵沢を広く国民が享受し、かつ、美しく健全な沿岸域環境の復元・創造により現状又はそれ以上に優れた状態で次世代に継承することが必要であること。
 
  A 多様な利用と保全の調和
沿岸域では多様な経済社会活動が営まれ、利用が輻輳しているとともに、保全に関する様々な要請があり、関係者間の調整が必要であること。このため、沿岸域の良好な環境の形成、安全の確保、多面的な利用、魅力ある自立的な地域の形成などの様々な要請の調和を図る観点から、公平性、効率性及び効果的な利用と保全を確保するよう多様な関係者間の調整及び既存の各種計画等との間の調整を十分に図ることが必要であること。
 
  B 相互影響性への配慮
沿岸域の水環境、土砂環境、生物環境等は、広域にわたり相互に影響しやすく、水質保全、土砂管理、生態系の保全、海洋汚染防止等広域的な対応を求められている。このように相互に影響を及ぼし合うことから発生する問題に対して、河川流域、湾域、外海等の広域的な影響範囲を視野に入れ、適正な調整を図るための広域的かつ総合的な管理が必要であること。
 
(2)沿岸域の総合的な管理に関する基本理念
沿岸域の総合的な管理は、地球環境への意識の高まりと国連海洋法条約上の我が国の権利と責務を踏まえ、沿岸域を人類共有の財産である貴重な国土空間として認識し、その多様な機能及び資源を適正に保全するとともに多面的に利用していくため、次に掲げる事項を旨として行われるものであること。
   ア 美しく安全で生き生きした姿の沿岸域を復元・創造して子孫に引き継ぐこと。
   イ 良好な環境の形成、安全の確保及び多面的な利用の調和を図ること。
   ウ 多様な関係者の参画により魅力ある自立的な地域を形成すること。
 
 
4 沿岸域圏総合管理計画のあり方
 
沿岸域の総合的な管理は、3(2)に定める基本理念(以下「基本理念」という。)にのっとり、効果的かつ効率的に実施する観点から、行政区分にかかわらず、自然の系として、地形、水、土砂等に関し相互に影響を及ぼす範囲を適切にとらえた沿岸域圏に区分した地域を設定して、総合的かつ計画的に実施されることが必要であること。
沿岸域圏総合管理計画(以下「総合管理計画」という。)は、沿岸域圏ごとに、地域の特性に応じた固有の課題について地方公共団体が中心となって自主的かつ長期的に取り組むため、沿岸域圏に関わる多様な関係者の合意を得て策定されるマスタープラン(沿岸域圏の将来像を見据えた長期構想で、関係者が個別具体の事業・施策の企画・推進に当たり踏まえるべき基本方針をいう。)であり、以下に掲げる沿岸域圏の設定の基本的な考え方及び総合管理計画を策定するに当たっての視点に基づき、策定されるものであること。
 
(1)沿岸域圏の設定の基本的な考え方
沿岸域圏の設定は、沿岸域について、自然の系として、地形、水、土砂等に関し相互に影響を及ぼす範囲を適切にとらえ、一体的に管理すべき範囲として、地域の特性(行政界、社会経済活動による利用の実態等)を配慮しつつ、海岸線方向及び陸域・海域方向に区分した圏域を明示して行うものとし、各沿岸域圏ごとに総合管理計画が策定されるものであること。
 
(2)総合管理計画を策定するに当たっての視点
 
  @ 参加と連携の視点
行政機関、民間企業、漁業者、住民、NPO等当該沿岸域圏に関わる多様な関係者の参加と連携による十分な調整を図り、公平性、効率性等が確保された計画とすることが必要であること。
 
  A 広域的な視点
相互影響性を有する沿岸域圏を一体として管理するため、広域的な視点から策定された計画とすることが必要であること。特に、総合的な水質保全、土砂管理等の課題に対しては、閉鎖性内湾・内海や漂砂系等を視野に入れた取組みに加え、河川の影響が明らかな場合においては、河川流域を視野に入れた取組みを含むことが必要であること。
 
  B 長期的な視点
沿岸域圏の持続性の確保を図るため、沿岸域圏のあり方の将来像の設定や将来への影響の予測等を踏まえた長期的な視点から策定された計画とすることが必要であること。なお、ここでいう長期とは、自然の系としての循環、他の長期計画の期間等を勘案し、かつ、「21世紀の国土のグランドデザイン」の考え方に従い、概ね50年先の将来を見据えたものであることが望ましい。
 
  C 一貫的な視点
総合管理計画の実効性を継続的に担保するため、沿岸域圏の環境の復元・創造に向けた事業、施策等の実施状況について、長期にわたり、定期的に又は必要に応じて点検・調査するとともに、その結果を分析して必要な見直しを行うなど総合管理計画に定められた事業、施策等について一貫的な視点からの取組みを含む計画とすることが必要であること。
 
 
5 沿岸域圏総合管理計画の策定に関する基本的事項
 
(1)総合管理計画の目的と意義
総合管理計画の目的と意義は、安全で多様な機能をもつ質の高い空間の形成や美しく健全な沿岸域環境の復元・創造を推進するに当たって、沿岸域圏ごとの問題点を抽出し、地域の特性等に応じて重点的に取り組むべき課題を明らかにするとともに、その達成に向けた行政その他の多様な関係者の個別具体の事業、施策等の調整及び密接な連携による総合的かつ計画的な取組みを図ることにあること。
 
(2)地域特性等現状の把握
沿岸域圏の設定その他の総合管理計画の策定に当たっては、沿岸域圏における自然等の環境、災害、社会経済、歴史文化等の地域特性を把握するとともに、必要な調査を実施し、既存の計画・施策、住民の意向等を十分に把握することが必要であること。この場合において、必要に応じて、別添1に掲げる国等において保有している沿岸域関連の情報を活用するほか、地理情報システム(GIS)等の活用により情報の効果的な分析等を行うよう努めるものとすること。
 
(3)総合管理計画に盛り込むべき事項
総合管理計画には、以下の事項を盛り込むものとすること。
 
  @ 総合管理計画の対象地域(沿岸域圏の範囲)
沿岸域について、自然の系として、地形、水、土砂等に関し相互に影響を及ぼす範囲を適切にとらえ、一体として管理すべき範囲につき、地域の特性(行政界、社会経済活動による利用の実態等)を配慮しつつ区分し、図面に表示するなどの方法により、沿岸域圏を設定するものであること。
この場合において、海岸線方向の区分にあっては別添2に示す区分を基本として設定し、陸域・海域方向の区分にあっては別添3を参考に当該総合管理計画で取扱う課題を勘案して設定するものであること。
 
  A 総合管理計画の期間
総合管理計画の期間は、総合管理計画で取扱う課題、沿岸域圏の特性等に応じて定めるものであること。なお、計画期間の目安としては、総合管理計画が長期を見据えたマスタープランであること、及び段階的な計画による沿岸域圏の整備等が進められることを考慮し、概ね10年程度の期間ごとに変更していくことが考えられる。
 
  B 基本方針
基本方針は、基本理念にのっとり、当該沿岸域圏の特性に応じ、長期を見据えた沿岸域圏の望ましい将来像、4(2)に示す視点並びに良好な環境の形成、安全の確保、多面的な利用等についての取組みに関する基本的な方針について定めるものであること。
 
  C 事業、施策等に関する事項
事業、施策等に関する事項については、Bの基本方針を踏まえ、別添4に掲げる事項を参考として沿岸域圏の特性に応じた課題を明らかにし、各課題ごとに関係する事業、施策その他の取組みを定めるとともに、それらについてできる限り個別具体的な方向性等を示すものであること。また、各課題に対して総合的な取組みが必要である場合には、広域的な効果が期待される事業、複数の事業、施策の連携など総合的な事業を定めるものであること。
この場合においては、例えば、沿岸域圏全域についてゾーニングをして、各ゾーンごとの個別具体の事業、施策その他の取組みを定めることが考えられる。
 
  D 推進方策に関する事項
推進方策に関する事項については、次に掲げる事項を定めるものであること。
 
   ア 総合管理計画の推進体制に関する事項
沿岸域圏の実情に応じて、(4)@に定める協議会その他の計画策定・推進に係る多様な関係者の参加と連携による推進体制を定めるものであること。
   イ 総合管理計画の進捗状況の把握及び事後評価の方策に関する事項
 
総合管理計画の進捗状況についての点検・調査に係る主体、時期、対象事項その他の方法に関する事項を定めるとともに、その結果の分析に基づく総合管理計画の評価に関する事項を定めるものであること。
 
   ウ 総合管理計画の変更及び関係行政機関への要請に関する事項
イの評価に基づく総合管理計画の変更及び必要に応じた関係行政機関その他の関係者に対するそれぞれの個別具体の事業・施策等について講ずべき措置の要請に関する事項を定めるものであること。
 
  E その他の事項
その他沿岸域圏の特性等に応じて、その総合的な管理に必要と認められる事項に関して定めるものであること。
 
(4)総合管理計画の策定及び推進の体制
総合管理計画の策定及び推進の体制については、沿岸域圏に関わる既存の組織等の実情を勘案し、次に掲げる組織体制を確立して実施するものであること(別添5参照)。
 
  @ 沿岸域圏総合管理協議会
沿岸域圏総合管理協議会(以下「協議会」という。)は、総合管理計画の策定及び推進を行うことを目的として設立されるものであること。
 
   ア 構成員
協議会の構成員は、関係地方公共団体(沿岸域圏内の都道府県及び政令指定都市(必要に応じて、これら以外の市町村を含む。)をいう。以下同じ。)が中心となり、自らの選択と責任の下、行政機関、民間企業、漁業者、住民、NPO等の当該沿岸域圏に関わる多様な関係者の代表者を構成員とするものであること。
国の行政機関(地方支分局を含む。以下同じ。)は、多様な関係者の代表者としては構成員とならない場合にあっても、沿岸域圏の範囲が二以上の都道府県の区域にわたる場合、関係地方公共団体から要請があった場合その他必要に応じて、関係地方公共団体の同意を得て、協議会の構成員となることができるものであること。
当該沿岸域圏の範囲外の地方公共団体は、当該沿岸域圏の総合的な管理に利害関係を有する場合においては、関係地方公共団体に対して、協議会の構成員となる旨要請することができるものであること。
 
   イ 情報公開窓口
協議会は、基本理念及び総合管理計画に関する知識の普及、情報の提供等を行うとともに、地域住民その他の関係者の理解及び協力を得るための啓発活動を推進するため、情報公開窓口を設置するものであること。
協議会は、協議会の構成員以外の関係行政機関及びBの協議会に関連する組織に対する情報の提供等を行うものであること。
 
  A 総合管理計画の認定機関
総合管理計画の実効性を担保し、円滑かつ確実な実施を図るためには、関係地方公共団体が総合管理計画の内容について合意しておくことが必要であることから、協議会の構成員である地方公共団体の長(国の行政機関が協議会の構成員となっている場合にあっては、当該国の行政機関の長を含む。)は、協議会が策定した総合管理計画が適当と認められるときは、これを認定するものであること。
 
  B 協議会に関連する組織
総合管理計画の策定及び推進に関し、関係行政機関の連携及びできる限り多様な関係者の参加を図りつつ、沿岸域の総合的な管理上の専門技術的な審査を行い、関係者間の合意を円滑に得るために協議会が必要と認めるときは、当該協議会に、次に掲げる委員会等を置くことができるものであること。
この場合において、当該委員会等の代表者は、協議会と委員会等との相互連携を円滑にするため、原則として、協議会の構成員となるものであること。
 
   ア 沿岸域圏委員会
沿岸域圏委員会は、NPO、地域住民、漁業者、民間企業、有識者、行政機関等当該沿岸域圏における多様な関係者の参画と十分な調整を図ることを目的として設置されるものであること。
その構成員は、沿岸域圏に関わる多様な関係者の参画による調整を行い、総合管理計画の実効性を高める観点から、多様な地域又は分野・立場の関係者の意向を適切に調整・集約するための組織となるよう、個別地域又は個別分野等のそれぞれの代表者となるよう配慮するものであること。
 
   イ 技術専門委員会
技術専門委員会は、総合管理計画に盛りこまれた具体的な目標の客観的な評価及び施策の合理性の立証等を行うため、その内容に関する技術的・学術的な検討を実施することを目的として設置されるものであること。
技術専門委員会の構成員は、沿岸域に関する技術的・専門的な知識及び経験を有する行政機関、各種研究機関等の代表者及び学識経験を有する者等とすること。
技術専門委員会は、協議会又は沿岸域圏委員会の円滑かつ十分な審議に資するため、沿岸域圏の現状、将来動向等に関する客観的な認識及び知見の提供、個別事業、施策等の広域的な相互影響性に関する分析・評価その他の技術的・専門的な検討を行い、その結果を協議会又は沿岸域圏委員会に報告するものであること。
 
   ウ 行政連絡調整会議
行政連絡調整会議は、沿岸域圏の総合的な管理に係る関係行政機関の連絡調整を円滑に実施することを目的として設置されるものであること。
行政連絡調整会議の構成員は、協議会の構成員である地方公共団体(国の行政機関が協議会の構成員である場合にあっては、当該国の行政機関を含む。)の担当部局とすること。
行政連絡調整会議は、総合管理計画の策定後、各行政機関の事業実施計画等と総合管理計画との整合を図りつつ、各行政機関間の事業、施策等の調整を行うほか、協議会に対し、総合管理計画の円滑な推進を図るための助言又は支援を行うものであること。
 
 
6 総合管理計画の策定・推進に当たっての配慮事項
 
総合管理計画の策定・推進に当たっては、以下の事項に配慮するものであること。
 
(1)総合管理計画の性格
総合管理計画は、法律や条例のように法的拘束力を有するものではないが、沿岸域の輻輳する保全及び利用の調整を行う際の拠り所として活用されるなどの実効性を担保するため、参画する多くの主体(行政機関担当部局その他の多様な関係者)の合意を得て策定されるマスタープランとするよう努めるものであること。
 
(2)関係する各種計画・施策との調整
総合管理計画の策定に当たっては、沿岸域圏に関連する国及び地方公共団体の各種計画や各種施策との整合性を図るとともに、隣接する沿岸域圏に係る総合管理計画との調和に配慮するよう努めるものであること。また、総合管理計画の策定後においては、沿岸域圏における新たな個別具体の事業、施策等は、当該総合管理計画との整合性を図るものであること。
 
(3)総合管理計画の策定が特に望まれる沿岸域圏
次に掲げる要件のいずれかに該当する沿岸域圏の都道府県その他の関係地方公共団体は、総合管理計画を早急に策定されることが期待されるものであること。
 ア 国土保全上、緊急かつ広域的な対策が必要と認められる沿岸域圏
 イ 閉鎖性内湾・内海等多面的な利用が相当程度輻輳している沿岸域圏
 ウ 優れた景観、自然、歴史及び文化の資源を有する沿岸域圏
 エ 経済社会及び自然環境に相当程度の影響を及ぼす事業その他の取組みが予定され ている沿岸域圏
 オ 干潟、藻場、砂浜等の復元・創造など緊急かつ広域的な課題を有する沿岸域圏
 
(4)計画の一貫的な推進
総合管理計画の一貫的な推進のためには、計画策定後における推進体制の確立及び推進状況についての定期的な点検・調査が不可欠である。定期的な点検・調査に当たっては、個別具体の事業、施策等の中で実施される調査結果及びNPO等関係団体によるモニタリングの実施等を活用するなどその確実な実施について特段の配慮をするものであること。
 
(5)住民意識の高揚及び情報公開
地方公共団体は、沿岸域圏の総合的な管理の必要性及び基本理念について住民意識の高揚を図るとともに、策定された総合管理計画の内容その他の沿岸域に関する情報につき、協議会 に設置される情報公開窓口等を通じて積極的な情報公開に努めるものであること。
また、協議会の情報公開窓口へ寄せられた一般からの意見の分析、多様な関係者を対象とした沿岸域に関するアンケート調査、各種懇談会、シンポジウム、イベントの実施等の情報発信等により、沿岸域圏委員会に参加しない個人等の意見も把握し、協議会又は沿岸域圏委員会の審議に活用することが望ましい。
 
(6)同種の既存計画の点検等
地方公共団体は、総合管理計画と同種の計画が既に策定されている場合にあっては、この指針の趣旨を十分に踏まえて、既存計画を点検し、必要があると認められる場合には変更することが期待されるものであること。
 
 
7 むすび
 
国は、地方公共団体等による総合管理計画の策定を促進する観点から、沿岸域の総合的な管理に係る意識高揚、保有している情報の提供、人材の斡旋・派遣、民間や非営利組織等の活力の誘導、諸事業の活用等により地方公共団体を支援するものとする。
特に、地方公共団体から要請のある場合その他必要があると認められる場合には、国は、自ら協議会に参画するなどして広域的な連携を促進し、総合管理計画の策定及びその円滑な実施を促進するものとする。
なお、国は、今後、この指針に基づく地方公共団体等による計画の策定に向けての検討状況、策定実績等を踏まえ、地方公共団体の連絡や調整を円滑に進めるなどの沿岸域の総合的な管理を一層推進する観点から、必要な方策について検討する。