2030年の日本のあり方を検討するシナリオ作成に関する調査概要

 2007年から始まる人口減少を控え、国民の間で不安・不透明感が拡大している。国土政策上も地方中小都市の衰退、地域社会の維持が困難な地域の拡大、森林・農地の荒廃など緊喫の課題が表面化しつつある。また、国際的には東アジアが急速に台頭しており、我が国が21世紀中も経済社会の活力を維持していくためには東アジアとの緊密な連携が極めて重要となっている。このような状況には、従来の「開発」中心、視野の中心が国内になりがちな国土計画では対応が難しくなってきていることは明らかである。

 このような困難な背景を踏まえて、21世紀が日本の社会にとってより豊かな実りをもたらすものであるためには、長期的な見通しのもと、様々な社会変化を想定、柔軟な対応が可能な、これまでとはまったく異なる新しい発想の国土政策を構築する必要がある。本調査はそのような新しい国土政策の構築に資するため、2030年における日本の姿のシナリオを作成することを通じ、そのあり方を具体的に検討した。

 通常長期的な計画を考えるためには現状をもとに将来を予測(フォアキャスト)するが、予測どおりにはならないことがほとんどである。これに代わって長期的視野のもと実際的な計画を立てる方法として、将来の想定に基づいて、これからの道筋を定める方法論(バックキャスティング)がある。これはまずマクロな条件をもとに理想的な未来像を想定し、そこから現在を振り返ってみる(バックキャスト)手法である。このことにより、理想とする未来像と現状の間のギャップを正確に把握し、その認識をもとにその未来像の実現に向けてなすべきことを明確にすることができる。このバックキャストのベースになるのが、未来像のシナリオである。このように将来の社会像を具体的に検討することで、多くの人々の間で目標を共有し、またそれに至る実現性の高い計画を立てることが可能になる。この方法は、1997年にスウェーデンの環境保護省が "Sustainable Sweden 2021"レポートをまとめる際に使用したことで知られるようになった。

 2030年の日本社会を考えるにあたっては、私たちが今直面する最大の課題である日本、国際社会、そして地球そのものの持続可能性を確保しなければならない。今回の調査では、2030年の日本社会が持続可能であることを大前提に、さまざまな外部要因によって変化し得る日本社会の未来像について四つの異なるシナリオを考え、外部専門家がそのシナリオのロジックを検討・補強し、2030年のあるべき未来像として具体的に描いた。以下にあげる4つのシナリオは、このようなプロセスを経て、長期的な国土計画を作成する際のベースとして作成された。この4つのシナリオを元に、今後、私たちが目指すべき2030年の日本社会像について、全国民的レベルでより具体的な議論が行われることを期待して、ここにその概要を紹介する。

ワークショップまとめ


シナリオ


ワークショップを通じて、以下の4つのシナリオ(未来像)を作成した。



A.環境・農業を重視するシナリオ

B.東アジア経済発展シナリオ


C.多様性社会シナリオ

D.地域コミュニティ活性化シナリオ

 これらは必ずしもお互いに背反なわけではなく、場合によってはシナリオのいくつかが互いに融合することもあり得る。しかし、各シナリオはそれぞれに独立の視点、問題意識をもったものとなっており、その影響を考察したものになっている。ここでは、それぞれのシナリオを独立に示すことにより、シナリオごとの特徴を比較・検討できるようにした。
 各シナリオの説明は、原則としてまずシナリオの概要を示し、そのイメージをイラストで表現し、さらに側面ごとに詳細な記載を行った。またそれぞれのシナリオを実現するための課題や目標も併せて記した。




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